| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

神明裁判 ⑥

「スレイブ、あわせてくれ。」
「イエス、マイマスター。」

スレイブが懐かしい呼び方をするのと同時に、一輝はマクスウェルの拳を握っていない方の手でスレイブを構え、唱える。

「我は鉄を打つもの。鋼を打ち、武具を造りしもの。」
「我は剣。打たれ、鍛えられ、武具となりしもの。」
「我は今ここに、我が剣を鍛える。我が武具は全てを切り裂き、全ての敵をなぎ払おう。」
「我は今ここに、和が主に鍛えられる。我は主とともに万物を切り裂き、主の障害をなぎ払おう。」

その瞬間にスレイブは輝き、一輝がそれをマクスウェルに向けて振るう・・・が、マクスウェルは自らの手を切り離し、後ろに跳んで避ける。
空間を飛んで避けようとしたが、一輝の中にある妖怪の一つの力で、それは防がれているのだ。だから、自分の腕を切り落として避けた。
・・・否、避けたつもりになった。

「「刃よ、全てを切り裂け!!」」

二人の声が重なった瞬間に、マクスウェルの体は両断される。
空間すらも切り進んだ刃によって。

「ふぅ・・・湖札、あれでいけたと思うか?」
「え、あ・・・たぶん、ダメだと思う。あれを倒すには、存在後と吹き飛ばすしか・・・」
「それは、ちょっと面倒だな・・・仕方ない、いったん引くぞ。」

一輝はそう言いながらスレイブを納刀し、動けないでいる湖札をお姫様抱っこの要領で抱き上げる。

「ちょ、兄さん!?」
「ん?呼び方戻ったな。」
「あ・・・あぅ・・・」

湖札は一瞬で顔を真っ赤にして黙り、一輝はその隙に是害坊の力で作り出した翼で飛び、先に行った一行に追いつこうとする。

「・・・なぁ、スレイブ。なんか不機嫌になってないか?」
「はて、何のことでしょうかマスター?」
「いや、間違いなく不機嫌だよな。呼び方も戻ってるし。」
「ああ、申し訳ありません。先ほどそうお呼びしましたので、それが抜け切っていないようです。」
「ああ・・・なんだかよくわかんないけど、なんかスイマセン。」

一輝はその原因に気づくことができなかったが、自分が原因で不機嫌になったことくらいは察したようで、自分から謝る。

「えっと・・・スレイブちゃん、だっけ?」
「なんでしょうか、妹君?」
「あ、湖札でいいよ?」
「では湖札。なんでしょうか?」
「えっと・・・苦労してそうだね。」
「・・・ああ、かなり。」

そして、二人の間に何かしらのつながりが出来た。

「さて、湖札は大丈夫か?怪我とか。」
「あ・・・うん、大丈夫・・・」

一輝が湖札に問いかけると、湖札は視線をそらしながらそう返す。
それは恥ずかしいからではなく、これまではどうにか兄と会話をしないようにしていたのが、兄から話しかけられたことでそうも行かなくなったのだ。
そう、湖札には一つ、気にしていることがあるのだから。

「そうか、ならよかった。もしそうじゃなかったら・・・あのクズは、本気で消し飛ばさないといけなかったし。」
「・・・確かに、兄さんならやれそうだよね。昔っから、何でも出来ると思ってた。」
「何でもは出来ねえよ。出来ないことだらけだ、今も昔も。」

一輝がそう語る表情には、どこか寂しげなところがあり・・・それが、湖札には昔の一輝の表情と一致して、聞かずにはいられなくなった。

「あの・・・兄さんは、記憶が・・・」
「ああ、神成りを使ったときに戻ったよ。」

その瞬間に、湖札は目の前が真っ暗になった。
だが、それは・・・

「だからって、何か変わるわけじゃないけどな。」

一輝のこの発言で、一瞬で払われる。

「え・・・」
「ん?どうかしたのか?」
「どうかしたかって・・・だって、私は」
「本当の妹じゃない?」
「・・・うん。」

一輝のその一言は、湖札がずっと危惧していたことだった。
自分が一輝の本当の妹じゃない以上、それはこれまでの一輝とともに過ごした時間が無駄になってしまうのではないか。
それが、偽物になってしまうんじゃないか。
そう、ずっと不安だったのだ。

「まあ、確かにそうだな。あの記憶の感じだと、湖札は俺の実の妹じゃない。」
「うん・・・だから、」
「でも、湖札は俺の妹だ。それは変わらない。」

一輝がそういった瞬間に、湖札は信じられないというように顔上げた。

「ん?おいおい・・・なんだよ、その信じられない、見たいな目は?軽く・・・いや、ざっくりと傷つくぞ?」
「あ、ゴメン・・・でも、」
「でもじゃない。じゃああれか?湖札が俺の妹として過ごしてきた十一年間は、そんなことでなかったことになるのか?」
「・・・そんなことはない。絶対に。」

湖札は、はっきりとそういった。

「ならいいじゃねえか。何があっても、湖札は俺の妹だ。頼むから、兄貴をひとり残さないでくれよ?寂しがり屋の、ダメ兄貴なんだから。」

一輝が冗談めかしてそう言うと、

「・・・うん、分かった。お互い最後の家族だもんね。もう二度と、兄さんから離れない。・・・と思う。」

湖札は、そう返した。

「曖昧だな、オイ。」
「いやぁ・・・一応、私も魔王でウロボロスに所属してるから」

ようやく、二人の会話が昔のものに戻った。

「・・・でも、」

湖札の声音が一瞬で真剣なものになり、一輝の胸に右手を当てる。

「湖札・・・?」
「今回のゲーム、アジ・ダカーハが討伐されるまでは、一緒にいれる。」

湖札はそう言いながら、奥義を発動する。
ぬらりひょんから全ての奥義を継承された一輝も知らない、湖札だけの奥義を。

「我は鬼道に連なるもの。我は鬼道の乙女。我は力なき乙女。」

湖札が望んだ力は、兄とともに戦う力。
どのような形でも、兄とともに戦うことだけを望んだ力だ。

「故に我は全ての力を託す。我が全てを託す。我は、鬼道の長に我が存在、その全てを託す。」

湖札が唱える言霊に応じて、湖札という存在が一輝の中・・・一輝の檻の中へと、入っていく。

「なんだよ、この奥義・・・」
「・・・今、我と汝は統一される。我が力・・・存分に、使いこなしたまえ。」

言霊を唱え終わると同時に、湖札という存在の全ては一輝と統一される。
檻の中身も、湖札のギフトも、この瞬間に一輝のものになった。

「・・・なんだよ、この奥義。俺は知らないぞ?」
『当然だよ。私のために生み出された奥義だもん。次の世代からじゃないと分からないよ?』
「・・・念のために聞いとくけど、」
『大丈夫だよ。この奥義は簡単に解除できるし、解除すればちゃんと分離されるから。』

一輝が尋ねようとしたことは、たずねるまでも無く湖札に答えられる。
今、湖札は一輝の中にいる。一輝の感情は、お見通しなのだ。

「っと、合流できましたね、一輝さん。えっと・・・湖札さんは?」
「ん?あ、ジン。何でウロボロスと一緒に?」
「あ・・・ちょっと、停戦協定を結びました。一輝さんのおかげで今は問題ありませんが、マクスウェルの魔王をこのまま放置するわけには行きませんので。」
「そっか。それで、湖札だけど・・・」
『ここにいるよ?』

一輝の中から、湖札が声をかける。
その声に、その場にいるメンバーの中で殿下以外は驚きを示したが、

「・・・そうか。そういうこと(・・・・・・)なのか?」
『あー・・・うん、片方は。もう片方は、まだ分からないけど。』
「あっそ。なら、その気になったら遠慮なく言えよ。元々、そう言う話なんだから。」
『分かってるよ。躊躇う理由なんてないし。』
「いやいや、少しは躊躇えよ。」
「二人は何の話をしてるんだ?」

二人の会話に対して、一輝が口を挟むが・・・

「いや?オマエは、まだ知らなくていいことだ。」
『そうだよ。兄さんは、まだ知らなくていいの。』

その質問は、二人によって却下された。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧