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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep44清浄なる優しきもの・運命を切り拓く翼・白き純潔の希望~Lieiβ~

†††Sideエリオ†††

「ストラーダ!!」

≪Thunder Rage≫

フェイトさんやなのはさんと合流した僕たち地上班は、“オラシオン・ハルディン”の魔力・供給施設やソーラーパネルを制圧するために、地上部隊と協力して“ガジェット”群の掃討をしている最中だ。フェイトさん達も、地上部隊の人たちもみんな、これ以上の被害が出ないように精いっぱい戦ってる。

――ソニックムーブ――

“ガジェット”Ⅲ型3機の攻撃を避けつつ、接近して“ストラーダ”で破壊していく。どれだけ破壊したのか判らないけど、すで10機は破壊したはずだ。
そんな中、空から連続で起きる爆発音が聞こえてきた。シグナム一尉とヴィータ教導官たちが、カルド隊と戦っているものだ。
空を見上げるのを止めて戦闘再開しようとしたとき、“女帝の洗礼”の先端が白銀の光を灯した。

「また撃つのか!?」

“オラシオン・ハルディン”内に、さっきのデバイスの声ような放送が流れる。

≪チャージ完了。照準、第3管理世界ヴァイゼン・地上本部。照準座標調整・・・クリア。砲撃準備完了。洗礼の一撃・・・発射≫

次元跳躍砲がまた撃たれた。今度はヴァイゼンの地上本部。辺りが騒然となる。所々で戦闘を繰り広げている地上部隊の隊員たちの叫びだ。聞こえてきた言葉から、あの騒いでいる隊員たちはヴァイゼンからの応援部隊というのが判った。
守れなかった、と悲しんでいる。僕たちもまた止められなかった。そこに、フェイトさんとなのはさんから、魔力の供給と生成をする施設を2基制圧した、と通信が入った。

≪第3・第4ジェネレーター大破。魔力供給・生成システムにエラー。再起動・・・不可。第3・第4ジェネレーターの破棄を決定。第3・第4を除くジェネレーターの稼働率をアップ。・・・洗礼の一撃、目標まで、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、着弾。目標、第3管理世界ヴァイゼン・地上本部センタービルの破壊に成功。次弾エネルギーの供給開始≫

“オラシオン・ハルディン”にこだまする放送。ヴァイゼンの地上本部は守れなかった。だけど、次は撃たせない。絶対に!!

「行くよ、ストラーダ。もうこれ以上は撃たせない!」

†††Sideエリオ⇒なのは†††

「ヴァイゼンの地上本部が・・・!」

制圧した施設から別の施設へと向かう最中に流れてきた放送。ヴァイゼンの地上本部を破壊して、さらにどこかの管理局施設を破壊するために再チャージするっていう内容だった。
私とフェイトちゃんで制圧した施設2基程度じゃ、“女帝の洗礼”は止められない。私は前を飛ぶフェイトちゃんへと念話を送る。

『フェイトちゃん、次の発射までどれくらいか判らないけど、これ以上は撃たせられない』

『・・・うん。ここは分散した方がいいかもしれない。でも・・・』

『私とフェイトちゃんはこの後、セレスさんとルシル君との戦いがある。だけど、このまま温存とか言っていたら・・・』

『もっと被害が大きくなる・・・。シャルもディアマンテとの戦いで大変だし、シグナム達もカルド隊と今も・・・』

空から爆発音が連続で聞こえてくる。シグナムさんの紫とヴィータちゃんの赤、そしてカルド隊の黒が、高速で空を翔けているのが見える。
一応、はやてちゃんからさっきキャロ達をこっちに向かわせるって連絡はあった。でもすぐには来れないはず。

『フェイトちゃん』

『キャロ達が来るまで、私となのはで出来うる限りのことをやろう』

私とフェイトちゃんは横に並んで拳を突き合わせる。そして、私とフェイトちゃんは別れて、それぞれ施設制圧に乗り出す。

†††Sideなのは⇒レヴィ†††

わたしはルーテシアとキャロを置いて先行して、“オラシオン・ハルディン”の入り口に辿り着く。
“女帝の洗礼”の次元跳躍砲に必要なエネルギーを担う施設には地上部隊が向かってる。ならわたしは、“アインヘリヤル”を沈めてやろう。形態は“モード・バスター”のまま。わたしの砲撃で、砲台を破壊してやる。管理局艦隊に向けられている砲口から撃ち出される砲撃に当たらないように脇を飛ぶ。

「ガジェット・・・。スカリエッティの遺品、か」

真下から光線を撃ってくる“ガジェット”の群れ。わたしは“アインヘリヤル”から放たれる砲撃の上へと移動することで光線をやり過ごす。砲撃が途切れたその瞬間に、“アインヘリヤル”の砲口の真ん前へと移動。

「さすがに砲口にシールドなんて張ってないよね・・・!」

――紫光裂破(ハーツイーズ・クラッカー)――

射撃魔法クラッカーを直接砲身の中に撃ちこむ。砲口内が光ったのを見て、すぐさま離脱。直後に爆発が起きて、“アインヘリヤル”の到る所から爆炎が噴き上がる。
まずは1基を破壊。このまま全ての“アインヘリヤル”を破壊してやろう。とは思うけど、“オラシオン・ハルディン”の広さは直径にして約10km。
地上部隊のほとんどが施設制圧に動いてる。でも“騎士の洗礼”と“アインヘリヤル”を制圧しようとしているのはそう多くない。

「悩んでても仕方ない。今はやれるだけのことをやってやれ、だ」

わたしは沈黙した“アインヘリヤル”から、別の“アインヘリヤル”を目指して飛ぶ。

†††Sideレヴィ⇒ティアナ†††

≪アインヘリヤルⅠ、大破。1番基の破棄を決定。第1ジェネレーター、大破。女帝の洗礼の砲撃掃射システムに遅延発生≫

“オラシオン・ハルディン”に放送が流れる。あたしは一緒に施設を制圧したお兄ちゃんを見る。
お兄ちゃんは「やったな、ティアナ。でも、まだまだこれからだ」と言って、また別の施設を制圧するために移動を始め、あたしも急いでお兄ちゃんの後を追うように走る。
正直、お兄ちゃんとこうして一緒に戦える日が来るなんて思わなかった。

「こうして(ティアナ)と共に戦えるなんて、少し嬉しいような悲しいような、複雑な思いだよ」

前を走るお兄ちゃんが少し躊躇いがちにそう言った。お兄ちゃんはあたしと同じことを考えていた。本来ならこんなことは起きない。お兄ちゃんはすでに亡くなっているのだから。あたしはカローラ一佐に少しだけ感謝する。もう1度お兄ちゃんと同じ時間を過ごせる機会をくれたことに。

「あたしも、あたしはお兄ちゃんと一緒に戦えて・・・嬉しい」

「そっか。ありがとう、ティアナ」

「ありがとうはまだ早いんじゃない?」

「・・・あぁ、そうだ。全てが終わったら、もう1度言おうかな・・・?」

お兄ちゃんとの別れの時間が近付いてきてる。それは必然で、回避できない絶対の現実。だから、神様、もう少しだけでいいです。

「ガジェットだ。行くぞ、ティアナ!」

「はい!!」

もう少しだけでいいです。後もう少しの間、お兄ちゃんと一緒に居させてください。

†††Sideティアナ⇒スバル†††

あたし達ナカジマ家は、ひたすらに施設、ソーラーパネルの破壊を行っていた。地上部隊のおかげで“ガジェット”の数も武装構成員もほとんど見かけなくなった。

「チンク姉!」

「ああ! 姉に任せろ・・・!」

――ランブルデトネイタ―――

チンクの放ったナイフによって、また1つソーラーパネルが吹き飛んだ。それもチンクの能力“ランブルデトネイター”のおかげ。金属を爆発物に変える、戦闘機人としての能力。それがあるから、そう苦労せずにソーラーパネル“だけ”は簡単に破壊できる。

「それにしてもオラシオン・ハルディンって広過ぎっスね~。内周を回りながら施設を破壊とかってメンドー過ぎっス」

「そんなこと言ってる暇なんてない。早くしないと、次の砲撃が撃たれちゃう」

「ディエチの言う通りだぜ、ウェンディ。みんな頑張ってんだ。これ以上の被害を出さないためにも、あたしらがやるしかねぇ」

「判ってるっスよ。でも少しは休みたいな~って思っただけっス~~」

そんな話をしていると、施設から爆発音。お母さんとギン姉の2人で制圧しに行っているんだけど、あの施設の様子から見てもう終わったみたい。2つのウイングロードがあたし達のところまで伸びてきて、その上を走る2人が見えた。あたし達は2人に「お帰りなさい」と言うと、2人も「ただいま」と返してくれた。

「こっちは終わったけど、みんなの方は・・・って、聞かなくてもいいみたい」

お母さんはバラバラになったソーラーパネルを見て、「さすがうちの娘たちね」と笑った。やっぱりお母さんに褒められるのはすごく嬉しい。でも、この戦いが終わったら、今度こそお母さんは居なくなる。ごめんなさい。あたし、今・・・終わらなければいいのに、なんて思った。

「スバル・・・? どうしたの? 調子悪い?」

「ギン姉・・・ううん、大丈夫! 行こう、みんな。次の砲撃を撃たせないために!」

ギン姉の心配に、あたしは無理矢理明るく振舞う。お別れは辛い。したくない。だけど、あたしはここで立ち止まれない。

†††Sideスバル⇒シャルロッテ†††

ディアマンテとの戦闘の最中、はやてから通信が入った。正直受け答えするような余裕はないけど、私は通信に応える。

「どうしたの、はやて。出来れば手短にお願い・・・!」

――風牙真空烈風刃(エヒト・オルカーン)――

ディアマンテへと風の壁に真空の刃を複数巻き込んだ一撃を放つ。だけど雷そのものであるアルトワルドの力で回避される。本当にあのスピードは厄介だ。真技を当てる自信が無くなった。

『フリングホルニとナグルファル。その2隻の攻略法って知っとるか?』

「は? 何でまたその2隻の名前が出て・・・」

はやてはこんな状況で無意味なことは言わない。なら、信じたくないけど・・・。

「出てきたのね、フリングホルニとナグルファルが。このオムニシエンスに・・・!」

アルトワルドから放たれる雷撃砲を回避しながらそう聞き返す。私は飛行の途中で、生前に2度、それと“ジュエルシード事件”でルシルと最後に闘ったときに使った魔術を発動。そのまま距離を開け、ディアマンテへと魔力刃を連続で放ち続ける。ディアマンテは手に持つ剣でそれを弾き返していく。

『うん。アギラスは残り少ないんやけど、スキーズブラズニル以上の巨大帆船が2隻現れた。ヴォルテールも白天王もそれに邪魔されて動けへんし、艦隊からもすでに3隻の損害が出とる』

(最悪だ。ルシルは何てモノを持ち出してくるんだ、まったく・・・!)

“フリングホルニ”と“ナグルファル”。アースガルド同盟軍の保有していた戦艦だ。その戦力、その大きさ、共に“スキーズブラズニル”以上。撃沈方法は・・・。

「ごめん、はやて。私にも判らない。ナグルファルは、たぶんスキーズブラズニルと同じ。操舵室にあるコアを潰せばいいと思う。だけどフリングホルニはきっと違う。魔術を生み出したアースガルドの魔道技術の粋を結集して造られた旗艦。神の加護を受けし不沈艦フリングホルニ。対抗手段は・・・無い」

ディアマンテを睨みつける。さっきから“オラシオン・ハルディン”内に流れる放送。“アインヘリヤル”もジェネレーターと呼ばれる施設もすでに半壊。なのは達も地上部隊もよくやってくれている。なのに、ここに来て“フリングホルニ”という反則を持ってくるなんて・・・。

「再誕神話に登場する不敗なる艦フリングホルニ。さすがの剣神といえど焦るか」

「貴様・・・!」

このタイミングで出してくるなんて、狙っていたとしか考えられない。ダメだ、抑えろ。戦場に怒りを持ちこんだら自滅の道を歩くことになる。深呼吸して、何とか冷静を保つ。

『はやて、クロノは何て言ってる?』

はやてに通信じゃなく念話を繋げる。

『18時までに間に合わんかった援軍が集まって来とる。すでにXL級艦が8隻来てくれた。それで艦隊による一斉砲撃で対抗するって。だから、せめてオラシオン・ハルディンの砲撃だけはどうにかしてもらいたい、って』

『・・・了解。はやて、あなたもオラシオン・ハルディンの攻略に参加して。六課全体で、ここを潰す』

『了解や。全力で向かう』

『お願い。出来るだけ戦力が欲しい』

念話を切る。はやての広域魔法なら、施設を簡単に制圧できる。私はさっさとディアマンテを斃すために“キルシュブリューテ”を構え直す。

『オラシオン・ハルディン攻略中の六課メンバー及びナカジマ家へ! 至急女帝の洗礼へ集合! 女帝の洗礼を制圧する! その前にみんなにやってもらいたいことがあるから、よく聞いて!』

戦闘再開のその前に、ここ“オラシオン・ハルディン”内に居る六課メンバーらに念話を入れる。そして、みんなにお願いする“女帝の洗礼”攻略への布石。
ディアマンテとの戦闘中に何度か“女帝の洗礼”に攻撃を向けたけど、全然ダメージを与えることが出来なかった。私だけじゃあの堅すぎる装甲を突破できないということだ。だから、みんなには外壁に穴を開けてもらう。

「掛かってきなよ、ディアマンテ。こっちは時間が無いんだ・・・さっさと終わらせる!」

みんなへのお願いを終え、戦闘再開のために挑発。

「お前が掛かってこい、剣神・・・!」

だというのに、ディアマンテも挑発。睨み合う。

「「・・・お前が来い!!」」

――光牙閃衝刃(シュトラール・ランツェ)――

――深淵より来る雷霆――

私が放つ紅光の槍とアルトワルドが放った銀雷の砲撃が真っ向からぶつかる。私たちの間に2つの閃光が炸裂する。視界が光に埋め尽くされる。

(来い、来い、来い、ディアマンテ!)

直後、お腹に響く轟音が閃光の中から聞こえて、衝撃波が閃光を全て吹き飛ばした。私の目に映るディアマンテは、アルトワルドから落ちて、地面へと落下していく。そしてアルトワルドもまたダメージによってか姿が揺らぐ。見事に決まった。
私がさっき周辺にバラ撒いた魔術・圧縮爆弾(トーベン・ヴート)。不可視の大気を圧縮して設置する機雷のようなものだ。ディアマンテはそれに突っ込み、ダメージを負った。

「お前にはもう、勝ち目はない!!」

これでお前との戦いにピリオドを打つ。

†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††

シャルからの念話の通り、全力で“女帝の洗礼”を目指して飛ぶ。私も、なのはも、そして“女帝の洗礼”へと走る3つのウイングロード、スバル達も向かってる。
“オラシオン・ハルディン”の終焉は近い。そう思える。“アインヘリヤル”は残り3基という放送が流れた。ジェネレーターと呼ばれた魔力供給・生成施設もまた、半数の10基を破壊し終えている。
“騎士の洗礼”はまだ1基しか破壊できてないけど、それでも“女帝の洗礼”を停止させれば全てが止まる。

「もう少し・・・!」

空から聞こえるシャルとディアマンテ、シグナムとヴィータとカルド隊の戦闘音。そして“オラシオン・ハルディン”に流れる放送。

≪緊急命令受諾。次弾標的を、時空管理局本局に設定。洗礼の一撃のチャージを再開。砲撃照射まで360秒≫

「な・・・っ!? なのは!!」

「う、うん! 急がないと! 本局に向けて次元跳躍砲が撃たれる!」

さらに速度を上げて、“女帝の洗礼”へと急ぐ。砲撃が撃たれるまで、残り6分。その間に何としてもシャルの願いを果たす。そして辿り着く“女帝の洗礼”の根元、白銀の外壁。

「なのはさん! フェイトさん!」

少し遅れてスバル達が辿り着き、そしてレヴィ、エリオとザフィーラ、ティアナとティーダ元一尉、最後にはやてとキャロとルーテシアが揃った。みんなが頷き合って、早速始める。“女帝の洗礼”の外壁破壊を。たとえ破壊できなくても、シャルの一撃で破壊できるほどにまで弱らせればいい。

「ナカジマ家姉妹! ここが正念場よ!」

「「「「「「はいッ!!」」」」」」

作戦開始だ。全員が物理破壊設定の魔法を使うことになる。クイント元准尉の号令に応えるナカジマ家の姉妹たち。まずはチンクの力、オーバーデトネイションによる攻撃。投擲されたナイフは外壁に当たったと同時に爆発。
すぐにスバル、ギンガ、クイント元准尉の“リボルバーナックル”による拳打と、ノーヴェの“ガンナックル”による拳打。それらが外壁に打ちつけられるけど、弾かれる。スバル達は一斉にその場から退いた。

「合わせるっスよ! ディエチ! ティアナ! ティアナのお兄さん!」

「何でウェンディが仕切るんだよ?」

何故かウェンディの指示の下、同時に放たれる高威力の砲撃。大爆発。だけど外壁が壊れた気配はない。

「打ち壊すッ!!」

“モード・コンバット”のレヴィによる猛烈な連撃。最後にゼロ距離の近接砲撃を撃って、離脱。すぐにエリオの対グラナードのために覚えた一撃、雷槍。ザフィーラの連撃。フリードの火炎砲、と続くけど、一向にヒビすら入らない外壁。そして私となのはとはやてによる同時砲撃。それでも傷がつかない外壁。

「おまえら、どけぇぇぇぇぇぇッ!!」

背後から聞こえたヴィータの声。一斉に振り向くと、“グラーフアイゼン”をツェアシュテールングスフォルムにしたヴィータがこっちに向かって来ていた。私たちは一斉に外壁から離れる。

「ブチ貫けぇぇぇぇぇーーーーッッ!!」

ヘッドのドリルが火花を散らしながら外壁を突破しようと唸る。私は外壁から空へと視線を移す。ヴィータがここに居るということは、シグナム独りでカルド隊と戦っているということだ。シグナムだけで抑え込むのはやっぱり出来なかったようで、カルド隊の内の1人がこっちに向かって来た。私たちが構えようとしたとき、何を思ったのかはやてが躍り出た。

「ヴィータの邪魔はさせへん! 夜天の主(わたし)が相手や、カルド隊!!」

私となのはとレヴィが、神秘の無いはやてを守るために前に出ようとしたその時・・・

「ちょっとごめんよ!」

「うごぉっ!?」

私たちとカルド隊の誰かとの間にディアマンテが落ちてきて、カルド隊の一1の背中を踏みつけるようにシャルが落ちてきた。呆気にとられる私たちに視線で、離れていて、と送ってきたシャル。シャルはもう1度、カルドの1人の背中を踏みつけて、立ち上がろうとしたディアマンテへと疾走。“キルシュブリューテ”を構えて・・・

――牙突――

突っ込んだ。

†††Sideフェイト⇒はやて†††

ディアマンテを貫いたシャルちゃんの疾走を止まらんと、そのまま一直線に外壁へ向かう。ヴィータもその様子に気付いてすぐさま攻撃を止めて、シャルちゃんに道を開けた。

「ありがとう、みんな。行ってくるよ」

――光牙裂閃刃(リッター・ネーメズィス)――

直後、ディアマンテを外壁に叩きつけたシャルちゃんは、私らにお礼を言った。ディアマンテから“キルシュブリューテ”を抜いて、ほぼゼロ距離で光の一撃を撃ち込んだ。視界が真紅に染まる。視覚が元に戻った時、外壁に大穴が開いとって、シャルちゃんとディアマンテの姿は無かった。これで、本局に砲撃は撃たれへん。シャルちゃんが中に入った以上、私らの勝ちや。

「はやて!」

ヴィータの叫び。やってしもた。私の後ろには、カルドの1人が居ることを失念しとった。振り返る。目に映るカルドの大剣。目を逸らせへん。瞑ることも出来ん。こんなとこで死ぬんか? リインフォースとの約束もまだ果たせてへんのに? 愛する家族を、友達を、仲間を置いて、私は、ここで死ぬんか?


「私の主に手を出すことは、誰であろうと許さん」


そう思った時、待ち望んだ、愛しい家族の1人の声が聞こえた。直後にカルドの1人は横から殴り飛ばされて、遠くの方にガシャンと音を立てて倒れ伏した。

「御無事ですか、主はやて。それと、お待たせして申し訳ありません」

殴り飛ばしたのは、大きな白い1枚布を身体に巻いただけの「リインフォース・・・!」やった。その格好はまるで、小さい頃に本で読んだ挿絵にあった、天使のような、女神のような神々しい姿。それに、辺りに純白の羽根が舞っとるから、さらにリインフォースを幻想的にする。

「リインフォース!」

私はリインフォースに飛びつくように抱きつく。そんな私らのトコまでヴィータが走ってきて、「遅ぇよ、リインフォース! 遅刻だぞッ!」って泣き笑いの表情でリインフォースの背を叩いた。

『そうですよ! わたし達を待たせ過ぎです!』

リインの思念通話。リインフォースは「すまない」と謝って、私を力強く抱き返してくれた。

「主はやて。私とユニゾンを・・・また共に戦ってくれますか?」

「・・・当然やッ!」

私ももう1度強く抱きしめる。

「「ユニゾン・・・イン!」」

リインフォースとユニゾンを行った。胸の内に広がるリインフォースの力強くて、優しくて、温かい想い。全てが白い空間。私とリインフォース、2人だけが存在しとる精神世界。

『主はやて。よろしければ、私に新たな名を頂けませんか?』

『新しい名前? リインフォースやったらアカンの?』

『祝福の風リインフォースの名は、すでに受け継がれています。ですから、私がこれから主はやてと騎士たちと共に歩むために、新たな名を頂きたいのです』

そう言われて、私は考える。いろんな知識を総動員して、小さい頃にルシル君から教わった花言葉の知識を選ぶ。うわっ、なんやこれ、こんなんまるで両親が子供に名前を付けるみたいや。微妙な恥ずかしさにうろたえながらも、かつてと同じように・・・。

『汝に新たな名を贈る。清浄なる優しきもの・運命を切り拓く翼・白き純潔の希望・・・』

リインフォース、と呼ぶのはこれで最後になる。だから最後に小さく『リインフォース』と呟いてから、彼女の両手を取る。

『リエイス』

そして新しい名前、“リエイス”、と告げる。

『リエイス・・・。ありがとうございます。我が主はやて。この身、この魂、全ては愛おしき家族のために・・・』

この瞬間、私とリインフォースが繋がった感覚を得た。ユニゾンすることが契約すること。

(シャルちゃん、ホンマありがとう)

視界が現実の光景に戻る。みんなの視線が集中する。

「おのれ・・・生きていtaのかノーチェブエナ!」

リエイスに殴り飛ばされて遠くで倒れとったカルドの1人が立ち上がりながら、身体中から闇色の炎を噴き上げさせる。

『カルド・デレチョ。私はもうノーチェブエナではない。よく憶えておけ。私は、清浄なる優しきもの・運命を切り拓く翼・白き純潔の希望・・・リエイスだ!!』

烈火の将シグナム。紅の鉄騎ヴィータ。風の癒し手シャマル。蒼き狼ザフィーラ。祝福の風リインフォースⅡ。烈火の剣精アギト。
そして今ここに、私ら八神家最後の1人、希望の翼リエイスが舞い降りた。

「そうか・・・ならbaキサマ諸共滅ぼすまdeだッ!」

私とヴィータ、そしてカルド・デレチョは、シグナムとカルド隊の待つ空へと上がった。
 
 

 
後書き
はい、リインフォースがついに参戦です。はやてとユニゾンを果たし契約、正式に八神家の一員として復活です。
そして新たな名前をはやてに贈ってもらい、“リエイス”と名を変えました。リインフォース・アインス(1という意味ですね)より、やっぱり生まれ変わったという意味で、別の名前を付けました。

ちなみに“リエイス”は造語です。
花の“百合”をドイツ語にしたLilie(リーリエ)と、“白色”のドイツ語であるWeiβ(ヴァイス)を組み合わせて“白百合(リエイス)”としました。
彼女の騎士甲冑も翼も白く変更してますし。というか、この新しい名前の為に変更したようなモノですし。

あ、何故百合にしたかと言えば(聞かなくてもいい? まぁ聞いてやってください)、百合を始めとした、竹島百合、姫百合、百合水仙、鬼百合、透百合、グロリオーサなどなど。
それらユリ科に属する花の花言葉はどれも彼女にピッタリと判断しましたので、百合を採用しました。

さて、次回から幹部最終戦の後半戦をやっていきます。
第一戦は、復讐の業火カルド隊との決着となります。

完結まで、残り六話。

 
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