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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep41全ての終わりと始まりが集う世界 ~War for the Ambition~

かつては14脚とあった幹部が座する席も、今では半数の7脚となっているここ最上階に1人、席に座る幹部が居た。メサイア・エルシオン元陸曹長。コードネームをディアマンテ。彼はただ1人で最上階へと昇り、襲撃を受けた拠点の様子をずっとモニターで観ていた。そしてすべての拠点が陥落したのを観て、彼は小さくめ息を吐く。

(やはりアマティスタとアグアマリナは裏切ったか。まぁいい。どうせサフィーロの粛清攻撃で処理させれば問題ないのだから。しかし、どうしてこうもピンポイントで障壁システムのある拠点を襲撃できたんだ・・・?)

背もたれに身体を預け、腕を組んで唸る彼は思考する。しかしいつまで考えても解が出ないことに苛立ちを覚え、意識を切り替える。彼は手元にコンソールを展開し、計画を次の段階に移すために操作する。その計画とは元よりテスタメント・リーダーであるハーデ、セレスが最終フェイズとして組んでいた計画の1つだ。

「ディアマンテよりオラシオン・ハルディン管制システムへ。魔力供給、生成開始。電力は貯蔵しているものを使用」

≪オラシオン・ハルディン管制システム了解。照射エネルギー充填まで240秒≫

彼は次元跳躍砲掃射塔、“女帝の洗礼エンペラトゥリス・バウティスモ”を始めとした“オラシオン・ハルディン”の管制システムに指示を出す。管制システムは指示に従い、次元跳躍砲発射の準備に入った。彼は次にセレスがかつてより組んでいたプログラムを起動させた。それと並行して時空管理局本局を始めたとした主要施設へと通信を繋げた。

「我らが思いを踏み躙りし管理局よ。前置きという時間すら惜しいので単刀直入に伝えよう。これより管理局主要施設に保管されている全データを、我らがエヘモニアの天柱(しろ)へと移させてもらう。そして、データを移し終わった施設から順に次元跳躍砲で破壊させてもらう。避難するなら今のうちだ。砲撃による崩壊に巻き込まれて死にたいというのであれば止めはしないがね。それでは早速データ回収に移らせてもらおうか。避難するのなら急ぎたまえ、以上」

一方的に通信を繋げておきながら、また一方的に切ったメサイア。フードの中に隠れる彼の表情はどこか楽しそうな笑みだった。先程起動したプログラム通りに管理局各施設から“エヘモニアの天柱”のデータバンクへとコピーされたデータを次々と移していく。そしてもう1度“オラシオン・ハルディン”の管制システムへと通信を入れる。

「チャージ完了後、照準合わせ。目標、第3無人世界・軌道拘置所アルドラ。続いて第13無人世界・軌道拘置所クサンティッペ。続いて―――」

彼は無人世界の軌道上に建造されている拘置所ばかりの名を挙げていく。管制システムを反論することなく≪了解≫と、破壊リストにその名を追加していく。

≪チャージ完了。照準、第3無人世界・軌道拘置所アルドラ。照準座標調整・・・クリア。砲撃術式効果を物理破壊に設定開始・・・クリア。砲撃準備完了。洗礼の一撃・・・発射≫

白銀の閃光、洗礼の一撃がアルドラへと向けて放たれた。アルドラ。凶悪な次元犯罪者のみを収容しているところとして有名な拘置所だ。そこへと向けて放たれた次元跳躍砲。

≪目標まで、10、9、8、7、6、5、4、3、2・・・着弾。目標の破壊を確認≫

彼の前面に新しく展開されたモニターには、次元跳躍砲によって破壊されたアルドラが映っていた。彼はその光景に何も思うことなく「次弾発射用意」と指示。管制システムは≪了解。再チャージ≫と応えた。

(さて。次はここに乗り込んでくるであろう管理局への対策だな)

全てのモニターを一度閉じ、新たなモニターを面前に展開させた。そこに映し出されているのは・・・

「ジェイル・スカリエッティ。お前の技術を使わせてもらおうか」

彼によって殺害されたスカリエッティの作品の1つ、“ガジェット・ドローン”の改良型がずらりと並ぶ光景だった。

†††Sideシャルロッテ†††

4つの拠点を制圧してきたなのは達が戻り、今はシャマルを筆頭とした医療チームの治療を受けている。私とはやては、私が留まらせたクイントさんとティーダから聴取を終え、合流したフェイトとブリーフィングルームの椅子に座ってみんなが来るのを待つ。

「フェイト・・・」

フェイトは作戦待機中に入った、スカリエッティが何者かに殺害された、という報せからずっと黙りこんでいる。長年追っていて、そして5年前のJS事件で逮捕。だというのにその結末が殺害された、だ。フェイトからしてみれば色々と考えることがあるだろうから、私とはやてはフェイトをそっとしておくことにした。

(スカリエッティを殺害する動機、か。アレッタ三佐らとAMF関連でしょうね、やっぱり)

それから少しして、扉の開閉音と共に「ただいま戻りました」との声が耳に届く。振り向くと、会議室に入った瞬間にスバルとティアナを除くメンバーは絶句、しばらく硬直していた。

「えっとなぁ、まずは座ってくれるか・・・」

ドア付近で突っ立って戸惑っているなのは達にはやてがそう促したことで、なのは達は長テーブルの両側に設置されている椅子へと座っていく。みんなが落ち着いたところで、はやてが部隊長席からみんなを見渡す。

「さて。まずは、どうしてこの場にテスタメント幹部のクイント元准尉とティーダ元一尉が居るか説明するわ」

はやてがそう話を切り出して、話の後を継ぐために私も事情を知らないなのは達を見る。そう、なのは達が絶句してフリーズしていた理由は、ここ会議室に幹部の一員であるクイントさんとティーダが居る事だった。私はそれを説明にする為に口を開いた。

「クイント元准尉とティーダ元一尉には、オムニシエンス攻略の戦力として、六課に付いてもらうために残ってもらった」

クイントさんは消える前に捕獲して、ティーダは気を失っているティアナを介抱している最中に通信を繋げて留まらせた。

――家族に迷惑をかけたまま居なくなって、本当にそれでいいの?本当に?――

それがスカウト文句(軽く脅しとも言うかもしれない)。まぁ他にも言葉を掛けて無理やり留まらせた。

「信用できるのか? 理由はどうであれ、元はテスタメント幹部。我々を裏切らないという保証はあるのか、フライハイト」

当然疑いというのも出てくるわけで。疑問を抱いているはずのなのは達を代表してシグナムが私にそう聞き、次にクイントさんとティーダへと冷たい視線を送った。スバルとティアナがそれに答えようとするけど、それを手で制すクイントさんとティーダ。

「信用できないのは当然のことだと思います。私たちはそれだけのことを、今までしてきたんですから。ですが、すでに暴走を始めたテスタメントは・・・いいえ、ディアマンテは何をしでかすか判らない」

「僕たちの目的はあくまで管理局の現体制に異を唱え、より良いシステムへと変革すること。復讐を誓っていても、改革を目的とするカローラ一佐もそうです。その側近のディアマンテもそうだ、と思っていた。だけど、僕とクイント准尉に魔族を強制憑依させたことで、すでに彼は正気じゃない」

魔族の強制憑依という単語に、驚愕に眉を顰めるなのは達。それで大体事情を理解してくれたみたいだ。“テスタメント”幹部内はすでに瓦解し始めているのだと。ディアマンテを放っておけば最悪の事態になりうるのだと。

「テスタメント・リーダーのカローラ一佐をも欺き、彼独自の計画が始まっている今、私たちはテスタメントを止める義務がある。それが今まで幹部として存在していた私たちの最後の役目、そう思っています」

そう締めくくって、シグナムの視線を受け止めるクイントさんとティーダ。シグナムは腕を組んだまま視線を逸らさず考え込んだ後、立ち上がって2人に右手を差し出した。

「・・・ご協力、感謝します」

「「・・・こちらこそお願いします」」

2人はシグナムの手をとって握手を交わした。なのは達も納得しているような顔してるし、とりあえずは2人の協力問題は解決かな。はやては「うん」と頷いて、話を先に進め始める。

「スバルとティアナのフォスカム拠点制圧はこういう形で決着した。次はエリオとキャロのフェティギア拠点。2人とフェティギア部隊のおかげで無事制圧。そして幹部の1人、グラナードを送り出すことが出来た。ホンマお疲れ様やったな」

私はフォスカムに出向いていたから、エリオとグラナードの決着を途中までしか見られなかった。だけどエリオの満足そうな表情を見たら、全部とはいかなくても納得できる決着を迎えられたんだな、と思う。フェイトの隣に座るエリオ、そのエリオの隣に座るキャロも本当によく頑張った。

「そしてウスティオ拠点のシグナム、ヴィータ、リインとアギト。結果は見て通り、4人とも無事で戻ってきてくれた」

「でもカルド隊は出て来なかったんだよね。アイツらなら絶対手段を選ばずに突っかかって来ると思っていたんだけど・・・」

そう言うと、シグナム達ウスティオ拠点制圧チームは黙り込んだ。そうなのだ。ウスティオの拠点に出向いたシグナム達のところに幹部は、カルド隊は姿を現さなかった。出てきたのはアギラスの2部隊。映像で見てとれたエンブレムからして、射手座のサヒタリオと牡牛座のタウロ、計40機。結局、その内のほとんどがシグナムとヴィータによって撃墜されていた。

「つまんねぇモンだったぜ? まるで始めっから捨てているような感じでさ」

「クイント准尉、ティーダ一尉。何か知りませんか?」

ヴィータが少し不満そうに呟いて、リインがクイントさん達にそう尋ねた。だけど返ってきたのは「判らない」だった。セレスの第一級命令が発令されてすぐに幹部は散り散りになって、それっきり会うことなく、ディアマンテに魔族ゲヴァルトゼーレを憑依させられたということだった。

「どういうわけがあるにせよ、ウスティオの拠点は落とせた。それだけは確かや。そしてなのはちゃんとレヴィのエストバキア拠点制圧。幹部マルフィール隊の3人を送り出せた、ってことでええんやったな・・・?」

「う、うん・・・マルフィール隊は・・・倒せたよ」

なのはがそう言い淀みながら答えた。レヴィの様子も何かおかしいし。エストバキアで何かなのはにとって辛いことでもあったのかもしれない。
はやてとフェイトは“ヴォルフラム”で様子を観ていたから判っているようで、少し悲しそうな顔をした後、はやてはキリッとした表情に戻して話を進める。

「これでオムニシエンスを護る障壁は無くなった。そうゆうわけで、テスタメントのこれ以上の暴走を止めるために――っ!」

はやての話はエマージェンシーを報せる警報で掻き消された。直後にブリッジのオペレーターから通信が入って、本局に居るクロノからの通信をこっちに回してくれた。

『今いいか? いや緊急だからこのまま進めさせてもらう。先程、本局を始めとした局の主要施設へとテスタメントから通信が入った。内容からしてかなりまずい状況だ。すぐにでも管理局の有する戦力はオムニシエンスへと向かうことになった』

モニターに映るクロノはかなり緊迫した様子で、モニター越しから物凄い慌ただしい雑音が聞こえてくる。私が代表して何があったのか聞いてみると、クロノは信じられないことを口にした。

『例の女帝の洗礼の砲撃で、偽善の象徴である本局を破壊する、と。そんなことをすれば未曾有の混乱に陥ると思っていたんだが、律義にも本局を含めた主要施設に有る管理、管理外世界に関するデータを現在進行形で回収している。それだけでなく、凶悪次元犯罪者が収容されている拘置所も砲撃で既に2基破壊された。それで今、管理局全体は大慌てだ。これは本気だと。だから君たち六課もすぐにオムニシエンスへと向かってほしい』

会議室に居る全員が絶句する。まさかそんな大それた方法を採ってくるなんて思いもしなかった。何とかそれぞれ「了解」と答える。

『それとシャル。君の提案についてだが、こちらで手配しておいたから、オムニシエンスで合流できるはずだ』

「おお、ありがとう! さっすがクロノ! 頼りになるぅ♪」

私とクロノだけにしか判らない内容に、みんなが首を傾げる。なのはが「何の話?」って聞いてきたけど、「今はまだ秘密♪」ってウィンク。

『・・・管理世界標準時間1800時ジャストに、一斉にオムニシエンスへと仕掛けることになっている。シャル、そして特務六課。君たちが頼りだ。くれぐれも遅れないでくれ』

クロノとの通信が切れ、会議室に重い沈黙が流れる。そりゃそうだ。管理局が物理的に破壊されるとなればどれだけショックなことか。そんな沈黙を最初に破ったのは、

「え・・・っと、とりあえずオムニシエンスへ行く、んだよね・・・?」

信じられないと言った風のフェイトだった。

「そ、そうやな。ルキノ、本局へは戻らんとこのままオムニシエンスへ向かうことになった。針路、テスタメント本拠地オムニシエンス。速度最大」

『了解しました。針路をオムニシエンスへと変更します』

「・・・まさか管理局をあの砲撃で破壊するなんて・・・信じられない・・・」

“ヴォルフラム”の行き先を“オムニシエンス”へと変更、最後の戦いへと赴くことになった。そして話は、“女帝の洗礼”による管理局主要施設破壊の件となる。

「お母さん。前からそういった話はあったの?」

スバルの問いと同時にみんなの視線がクイントさんへと集まる。するとクイントさんは「ええ」と、本局への直接攻撃の話があったことを認めた。

「なんだそれ? それもまさかセレスの考えたことなんか?」

「・・・そうです。管理局施設破壊は、計画の最終フェイズとして組みあげられたもの。僕たちテスタメントの本部、エヘモニアの天柱のデータバンクへとデータを送り、天柱を本局の代わりとして世界管理の中心とするというものです」

ヴィータの問いにティーダがそう答えた。また何とも言えない沈黙が・・・。

「・・・みんな、ちょっとええか? まずこれを観てほしいんやけど・・・」

はやてがそう切り出して、テーブルの上に幾つかのモニターを展開させる。表示されるのは・・・拠点制圧作戦の最中にリインフォースから“ヴォルフラム”へと送られてきたデータ。モニターに映る画像を観て、クイントさん達が驚いている。「これは・・・まさか・・・」となのはも驚いて、はやてがみんなを見回して頷いた。

「テスタメントの本拠地、オムニシエンスの正確なデータや。今、ティーダ元一尉が言っとった本部のエヘモニアの天柱ゆうんはコレやな」

表示されたのは塔の設計図らしきもの。全高2000m。各所の説明書きにはミッド語が使われ、塔の名称である“エヘモニアの天柱”にはヨツンヘイム語が使われている。“レスプランデセルの円卓”内のほぼ中心に位置するように建造された“テスタメント”の本部だ。

「これへ・・・!」

「どこでこんなものを・・・!」

当然こんな情報があることに驚愕する元幹部のクイントさんとティーダ。2人には元幹部ノーチェブエナ、リインフォースが生き残っていることはまだ話してない。
“六課”のみんなに協力関係を認めさせてから、情報提供者であるリインフォースのことを話そうと、はやてとフェイトと話しあったからだ。ここでようやく2人に説明した。リインフォースは消滅せずに生き残って、そして私たちに情報をくれたことを。

「そう、だったんですか・・・。彼女が居なくなってサフィーロは落ち込んでいたんで、彼女が生きていると知れば、サフィーロは喜ぶかもしれないなぁ。・・・って、え? あれ? 何でこんなに静かになるんですか? 僕、何か言ってはいけないことを言いましたか?」

ブリーフィングルームがシ~ンと静まる。その様子に困惑するティーダ。さっきまでの管理局そのものの崩壊の危機という緊張感が、ルシルの所為で別の緊張感に変わってくよぉ(泣)

「サフィーロって、確かルシルのことだよね・・・? なに? リインフォースのことで落ち込んでた? それってどういうこと・・・?」

「やっぱり、ルシル君とリインフォースはそうゆう関係なんか・・・?」

そんな変な緊張感の中、声を発したのはフェイトと、はやての2人。それになんか八神家(ヴォルケンズ一同)も変な空気出してるし。エリオとキャロは若干震えてるし。スバルとティアナは苦笑して震えを誤魔化そうとしてるし。なのははなのはで「浮気はダメだよね・・・?」と言いながら、それを伝えるべきフェイトから目を逸らしてるし。

(ルシル、出来るか判らないけど、もし記憶が戻っている状態のあなたに会ったら殴らせてね)

それから、フェイトとの契約後のルシルを何らかの形で犠牲(イケニエ)することを条件にして決着、本筋の話を進める。

「こほん、えー、話が逸れたから戻すな。少し予定が早まったけど、オムニシエンス攻略戦の担当をここで決めさせてもらう。何か意見あったら遠慮なく言ってな」

そしてあらゆることを想定した話し合いの結果、それぞれが担当する戦闘が決まった。私はディアマンテとトパーシオと“女帝の洗礼”。リインフォースから送ってもらったデータには内部の詳細、設計図があったから大助かりだ。そして2人の幹部を倒した後、私はなのはと協力してセレスを逮捕する。
フェイトはルシルとの一騎打ち。前からそうだけど、これはフェイトの意思だ。シグナムとヴィータは、もちろんカルド隊と戦うことになった。

はやては“ヴォルフラム”で待機、“六課”の指揮を執ってもらう。その方がリインフォースとの合流が楽そうだからと私が決めさせてもらった。
正直リインフォースが“オムニシエンス”へ来るか判らないけど、居場所が判らない以上はその方がいい。
まぁ彼女も彼女で動いているだろうからきっと来ると私は思ってる。そして上手くリインフォースと合流できれば、そのまま契約を交わしてユニゾン。というか、ユニゾン自体がはやてとリインフォースを繋ぐための契約となるようにしておいた。ユニゾン出来れば、そのままカルド隊撃破に参加。その後、劣勢となっているかもしれない戦闘に参加してもらう予定だ。

エリオとキャロとレヴィは、ある“戦力”や航空部隊と一緒に“アギラス”殲滅に出てもらう。スバルとティアナは、ザフィーラとクイントさんとティーダ、私がもう1つクロノに頼んで寄越してもらった部隊や地上部隊と一緒に、構成員たちの逮捕に向かってもらう。

そして最も重要な勝利条件の1つである最終防衛基地“オラシオン・ハルディン”攻略。ヨツンヘイム語で〈祈りの庭〉という意味を持つ“オラシオン・ハルディン”は、5つの兵器で構成されていることがデータから判明している。
まず1つ目が本体とも言える次元跳躍砲塔・“女帝の洗礼”1基。
その外周にそびえる“女帝の洗礼”防衛用の砲塔・“騎士の洗礼”8基。
さらに外周に建造されている侵入者を拒むための砲台・“アインヘリヤル”10基。
最後に、次元跳躍砲に必要なエネルギーを賄うソーラーパネルと魔力を生成・供給する建物が20基、だ。

そして、“オラシオン・ハルディン”全体を管制するシステムが、“女帝の洗礼”最上階の管制ルームにあるというのが判明した。魔力生成・供給施設か管制システム、そのどちらも完璧に潰せれば、残りの砲塔群も全て沈黙するらしい。ちなみに施設の方は、スバル達が上手くいけばそのまま制圧してもらうように頼んだ。

「それにしても、こんなところでアインヘリヤルって名前を耳にするなんて・・・」

なのはが“オラシオン・ハルディン”のデータを観てそう呟いた。“アインヘリヤル”。今は亡きレジアス中将が推し進めていた計画の一端を担っていた魔導兵器。“オラシオン・ハルディン”の1番外側にある10基の回転式砲台の名称が“アインヘリヤル”だった。
5年前のJS事件で破壊された物も、“ミュンスター・コンツェルン”の作品だったのかもしれない。会議も終わり、1度解散した私たちは“オムニシエンス”到着までに夕食を採り、それぞれ休むことになった。

†††Sideシャルロッテ⇒はやて†††

私ら“六課”もようやく“オムニシエンス”の軌道上へと辿り着いた。“ヴォルフラム”が到着したときにはすで大型のXL級が13隻、中型のL級が15隻、計28隻の艦が揃っとった。そのうちの1隻、クロノ君の“クラウディア”からの通信がここブリッジに入る。

『よく来てくれた。先程送ってもらった六課の方針・・・了解した。こちらは六課をサポートするように動くことが決定している。だから安心して背中を任せてくれて構わない』

「何から何までホンマありがとう。これで六課も気兼ねなく動けます」

『いや、正直な話、君たちに頼らざるを得ないというのが現状だからな。情けない限りだが、君たちをサポートするしか出来ないんだ。だからこそ何だってやるさ。・・・さて、それでは時刻になったら一斉に降下する。ヴォルフラムもそのつもりでよろしく頼む』

「了解しました」

クロノ君との通信が切れる。背もたれに身体を預けて一息つく。おそらく“テスタメント”との問題は今日、この戦いで決着することになる。色々なことがあり過ぎて長く感じたけど、実際は“テスタメント”が現れてから1ヵ月も経ってないんやなと思う。

「・・・シャルちゃん」

降下ハッチ近くの待機室に居るシャルちゃんへと通信を繋げる。シャルちゃんは『どうしたの、はやて』と優しい声で返してきてくれた。

「これできっと最後になるんやろ? その・・・」

『??・・・あー、はいはい。みんなに言っておきたいこととかだよね? そうだなぁ~・・・・う~ん・・・ありがとう、かな。うん。ありがとう。私がみんなに言っておきたいのはそれだけ。短い間だったけど、また同じ時間を過ごせたことに感謝を』

シャルちゃんはホンマに綺麗な笑顔でそう言った。ありがとう。シャルちゃんらしいわ。
それから作戦開始時間まで、他愛ない話、そやけど楽しい時間を過ごした。そして運命の時間、18時ジャスト。

「時間や! ヴォルフラム降下開始。アドゥベルテンシアの回廊に進入後、全部隊は降下、各自作戦通りに行動開始。管理局施設に砲撃が放たれる前に、何としてもテスタメントを止めるよッ!!」

ブリッジから、そして降下ハッチから、了解、と返ってくる。これで最後や。セレス、ディアマンテ。絶対に止めさせてもらうからな。そしてシャルちゃん。これで最後かもしれへんから、ここで言っておくな。

「ありがとう」
 
 

 
後書き
どうか途中で飽きずに読んでやってください。
さてさて、ついに始まった最終決戦。現状では予定通りに終わりそうです。
あと・・・七話かな? 今年中にもう一話は更新できそうです。さてさて、次はどの幹部が旅立つのやら、フフフ、です。  
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