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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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オリジナルストーリー 目覚める破壊者
  57話:決意と決戦 皆と一緒なら

 
前書き
 
予告通り、ギリギリ投稿……ちょっと短いけど。
  

 
 


「そうか…士が…」
「うん…会話からして士が大ショッカーに加担しているみたいだったよ」

所変わって、ハラオウン家。そこにはなのは、フェイト、はやての三人だけでなく、三人の先輩に当たるクロノ・ハラオウン執務官と、その母親であるリンディ・ハラオウン。
そしてクロノの執務官補佐、エイミィ・リニエッタ。フェイトの使い魔のアルフと、はやての融合騎(ユニゾンデバイス)リインフォースⅡ、今や「お若い司書官」とも呼ばれるようになったフェレットもどき、ユーノの計九人(?)がいた。

「なんか今失礼な事を言われた気がする…」
「どうしたんや、ユーノ君?」
「い、いや…なんでもない…」
「何かあるんでしたら、仰っられた方が…」
「いやほんと何でもないから、心配しないで…!」

するとなのは達が提供した映像を見ていたクロノが、軽くため息をついて映像を切った。

「これを見る限り、士は完全に大ショッカーの側についたようだな」
「っ……!」
「信じたくは、ないがな…」

そういうとクロノはチラリと、先程から泣き出しそうな顔をするなのはへ視線を移した。

―――士が…自分の家族が、敵として戻ってきた。
そんな考えが浮かんだ瞬間、なのはは頭を振ってその考えを振り払う。そんな筈がない。そんな筈が……

次の瞬間、頭の中に銃口を向けてくる士の姿が浮かび上がった。なのはは無意識に、自分が着ていたスカートを握りしめる。
一年ぶりに、ようやく会えたというのに…向けられたのは殺意と銃口、そして刃。なのはを見つめる冷たい目が、なのはの記憶にこびり付いていた。

信じたいのに…あの目が、あの殺意が…その信頼を少しずつ削っていってしまう。

「―――だけど、様子がおかしいのは明らかだ」
「えっ…?」

その時、クロノが腕を組みながらそう言った。それを聞いたなのはは聞き返すように、声を漏らした。
また、クロノの言葉を聞いたリンディは、一度頷いてから口を開いた。

「そうね、確かにこれは彼らしからぬ行動わね」
「彼自身、怪人達を倒す事にかなり意識していましたからね。自分から加担する事は、まずないと考えた方が自然ですね」
「だけどそれだったら、なんで士はあいつらなんかと一緒に?」

ここまで胡坐を組んでクロノ達の話を聞いていたアルフが顎に手を当てながら聞いてきた。
それを聞いたクロノも、顎に手を添えて考えるような素振りを見せた。

「考えうる可能性は三つ。一つは君達が出会った彼が、本当に『士』ではなく別の人物だった場合。もう一つは彼の記憶がなくなっている事。そして最後は―――彼が洗脳、もしくは操られているという可能性だ」
『っ!!』

クロノの考察を聞いた全員が一瞬驚きの顔をした。だがリンディやユーノはすぐに同じように考えるような素振りを見せた。

「確かに、クロノの考えも納得できる。士があいつらに連れ去られて、何らかの形で洗脳された…」
「でも普段の彼ではそんな事はまずされない筈。だから怪人達は……」
「―――あの時…私達を逃がす為に重症を負った士君を狙って、だよね?」

そこで声を上げたのは、一番辛い筈のなのはだった。

「で、でも…それはなのはの所為じゃ…」
「ううん、あれは私が無茶しすぎた結果なの」

なのはは目を伏せて呟く。周りにいた全員は声をかける事が出来なかった。

「私が弱かったから、一人で抱え込んで…」

結局は自分も彼も傷ついて…彼はいなくなってしまった。

「さっきだってそう。私は士君を…止められなかった」

そう呟いて、なのはは胸の辺りの服を静かに掴む。その目は、静かな悲しみを帯びていた。

その時、服を掴むのとは逆の手が温もりに包まれた。少し驚いて目を向けると、なのはの手を取っていたのは、隣に座っていたはやてだった。

「でも、今は違うんやろ!」
「っ、はやてちゃん…」
「今は私達がいる。私達だって、皆士を助けたいと思ってる」
「そうですよ、なのはさん!」
「フェイトちゃん…リインちゃん…皆…!」

フェイトとリインフォースの言葉で周りを見ると、そこにいた皆も頷いてくれた。
士を助けたい気持ちは、皆同じ。彼が作り上げた絆は、決して小さなものではなかった。

「助けよう、士君を」
「今度は皆で、一緒に!」
「…うんっ!」

決意は固まった。なのはは流れていた涙を拭い、真剣な顔つきで頷いた。

「…じゃあ、今度はこれから先の話だ」

そのタイミングを見計らってか、クロノが腕を組みながら一歩前に出て言った。皆は一斉にクロノに視線を向ける。

「これから、というと?」
「さっきなのは達が提供してくれた映像で、彼と『月影』という青年の会話を覚えているか?」

ユーノの口から出た質問に、クロノは逆に質問してくる。

「士は確かに、『現地ぐらい自分の目で確認したかっただけ』と言っていた。つまりそれはここで…この地球で何かやるべきことがあって、その為の下見をしていたんじゃないか…というのが僕の考えだ」
「なるほどな~。となると、奴らは何をやってくると思う?」

クロノの考えを聞いたはやてが思った疑問を投げかけると、クロノは表情をさらに厳しくした。

「憶測の域だけど、一つ最悪のケースを考えてる。それは…彼らによるこの世界の侵略」
「っ、それは…!」
「彼らはいつも、僕達に対して攻撃的に出ていた。闇の書事件の時のプロトWの言っていた言葉……『世界を作り替える』という目的。元々闇の書を狙ったのだって、その力で世界を一度破壊して、そして作り替える事だった」

そう言ってクロノは、キーボード状のホログラムを出現させて何やら操作を始める。すると再びモニターが出現して映像が流れる。
だが今度は先程の映像ではなく、今さっきクロノの言った『闇の書事件』における映像…プロトWと士の決戦時の映像だった。

「この時、プロトWは紛いなりにも闇の書の一部を取り込んでいた。だが士はそれを倒し、超えて見せた。だから今度はその士の力を使って、世界を変えるつもりなんだろう」
「そんな事って…」
「士はそれぐらいの力があるんだ。現に提供された映像の士のパラメーターは、依然の物より変化していたんだ。しかも、強化の方向でだ」

それを聞いた三人は、やはり士のビジュアルが変化していたのも関係しているだろうと思った。

「他にもやってくると思われる事はいくつかあるが、最悪のケースはできるだけ防ぎたい」
「そうだね。町での戦闘とかになると、市民への被害を抑えないと」
「あぁ。それで艦長、お願いが」
「うん。すぐにアースラ手配して、中隊一つ連れて警戒よね?」
「えぇ、お願いします」

クロノはそう言って、次に私達の方へ視線を移した。

「君達は今まで通り、学校などに行っていてくれ。向こうが仕掛けてきたら、街全体に結界を張るから、すぐに出てきてくれ」
「うん」
「わかった」
「でも待つのってなんか嫌やな」
「しかしマイスターはやて、今のままじゃどうしようもないですよ?」

少し不満そうに口を尖らせるはやて。リインフォースⅡはそれを聞いて、はやての肩に降り立って言った。
それを見ていたクロノは小さな笑みを浮かべた。

「安心してくれ。おそらくだが、士は君達三人に任せると思う」
「っ!?ほんまか!?」
「でも、なんで…?」
「さっき言った通り、士は多分操られると思う。だから君達に任せるんだよ」

そう言ってクロノは踵を返して、ハラオウン宅にある転送ポートに向かった。

「君達なら、きっと士を救い出せるだろうから」

背中越しに聞こえてきたクロノの言葉に、三人は目を丸くした。





















そこは白と黒と灰色だけで彩られた世界。

黒い雲が白い空に浮かび、見渡す限りの灰色の海が広がる。
島も大陸もない、ただ海面がゆらゆらと揺れるだけだった。太陽は世界を白く照らしていた。


その海に沈んでいく人影が一つだけあった。

頭を下にしたまま、どんどん沈んでいく。海水越しに映る淡い太陽の光が、ぎりぎり彼に届く。
だが彼にその光はなんの意味もなく、目を閉じたままさらに沈んでいく。

次第に光は薄れていき、彼の姿は見えなくなっていく。


彼はどこまでも沈んでいく。ただ深く、ただ深く……



























士となのは達が再会した日から数日。
海鳴の街の人達はここが戦場となるともつゆ知らず、普段通り行き交っている。

だがそんな海鳴の昼下がりをぶち壊すように、灰色のオーロラが展開される。
さらにそこから見たことのない姿をした者達が現れてきた。しかも刃物や武器を持って、だ。

普段平和に過ごしている日本人達にとっては、逃げる理由には十分過ぎるぐらいの光景だった。
海鳴の人々は悲鳴を上げながら逃げ惑う。それを追うようにオーロラから出てきた者達―――怪人達が走りだす。

しかし、そこで街に変化が訪れる。
街の色が変化していき、怪人達の視界から次々と消えていった。

何事かと怪人達が疑問に思っていると、

「スティンガースナイプ!」
〈 Stinger snipe 〉

水色に光る球体が、怪人達を急襲する。即死レベルの攻撃ではないにしても、いきなりの事で群がる怪人達は少し慌て始める。
その上に浮遊するのは、いつもの如く黒いバリアジャケットで身を包んでいる、クロノだった。

数体の怪人が倒れていく中、一体の怪人がクロノのスティンガーを弾こうと腕を振り上げる。

「スナイプショット!」
「ガァアッ!?」

だがそれをクロノがさせる訳がなく、弾丸加速のキーワードで弾かれる前に命中させる。
たかが魔力弾一つに怪人達が苦戦する中、クロノはさらに魔力刃を多量に展開する。

「くらえ!スティンガーブレイド・エクスキューションシフトッ!!」

魔力弾に気を取られていた怪人達にこれを防ぐ術はなく、次々攻撃を食らっていく。
このクロノの攻撃で、現在この場に立っている怪人達はほとんどいなくなった。

そしてそのタイミングを狙ってか、その怪人達の背後に新たなオーロラが出現する。
そこから出てきたのは、先程の怪人達よりも明らかに屈強に見える怪人達と、その背後にさらに三つの影。

一つは白いスーツに身を包んでいる、なのは達も一度見たことのある男、月影。
もう一つも白いスーツを着ている男性。こちらはそれに加え黒ネクタイを着けていた。

そして、最後の一人は……

「―――やはり阻むか…」

そう言葉を漏らすのは、ディケイドへ変身している士だった。

それを見たクロノはゆっくりと降下して、アスファルトに足をつけた。

「エイミィ、他の局員には結界の強化をするように伝えてくれ」
『了解!もう皆移動し始めてて、そろそろそっちに着くと思うよ!』
「わかった」

エイミィと連絡している内にも、クロノの後ろに数人が降り立つ。

「クロノ君!」
「美少女三人、ご到着や!」
『お待たせしました!』
「大丈夫、クロノ?」
「あぁ、大丈夫だ。今のところはな」

そう言ってクロノは視線を士のいるところに移す。それに釣られるようになのは達も視線を移すと、三人共苦い表情をする。

「士の事は任せるが…そっちは大丈夫か?」
「…うん」
「なんとか、してみせる」
「『なんとか』やなくて、救うんやろ?三人で」
「「……うん…!」」
「はやてちゃん、私も忘れないでほしいです!」
「あはは、ごめんなぁ」

三人はそれぞれのパートナーを手に取り、構える。
その時、さらにその後ろに、新たに数人が降り立つ。

「はやて、なのは!」
「テスタロッサ、来ていたか」
「ヴィータちゃん!」
「シグナム!」
「私もいま~す!」
「主はやて、お待たせしました」
「シャマル、ザフィーラ!」

やってきたのは、ヴォルケンリッターの面々だった。

「良くここに来れたな。仕事の方は大丈夫だったのか?」
「まぁ、なんとかな」
「しんどかったけどな~…」

クロノの質問にシグナムはレヴァンティンをスラリと取り出し、ヴィータは苦笑いをしつつもグラーフアイゼンを肩に乗せる。
さらに横に魔法陣が展開され、そこにアルフとユーノが現れる。

「ごめん、遅くなった!」
「大丈夫だよユーノ君。一番最後だけど…」

あはは、となのはの言葉を聞いて苦笑いを浮かべるユーノ。

「…挨拶はそれぐらいにしよう。そろそろ行くぞ…!」

そう言ってクロノは静かに構える。そんなクロノの緊張感に刺激され、他の面子もしっかりと構える。

「まずはなのは達三人以外で、士までの道を作る。それまで三人は少し待っててくれ」

クロノの言葉に三人共一様に頷く。その他の面子は三人の前に出る。

「その他は、シグナムとヴィータ、ザフィーラとアルフで前衛。僕とシャマル、ユーノで後衛だ」
「「「「「「「おう(はい)(うん)!」」」」」」」
「クロノ、士に一発入れてもいいか?」
「……まぁ、いいだろ」
「よっしゃ…!」

クロノの返事に、ヴィータはテンションが上がったようで、口角を上げる。

「それじゃあ…行くぞ!!」

そしてクロノの掛け声で、七人が一斉に飛び出す。
それと同時に怪人達も走りだす。

遂に新たな決戦の火ぶたが、切って落とされた。


 
 
 

 
後書き
 
なんか鎧武、凄い方向に行きそうな気がしている最近の作者です。

この作品も久しぶりに纏まった戦闘描写になります。おそらくページ数的に多くなるかな…?
というか戦闘描写が入ると、意外と長くなるんですよねぇ…私の小説って。

多分早くて一週間後ぐらいには投稿できるかと。戦闘描写頑張りますんで、皆さんお楽しみに!
 
 
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