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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep23反撃開始!のちょっとその前に・・・ ~Interval 3~

†††Sideなのは†††

シャルちゃんがこの世界へと呼び出されて2日目の朝。昨夜はシャルちゃんが色々と馬鹿なこと言ったりやったりして少し・・・ううん、やっぱりすごく楽しかった。そんな私は、隣ですぅすぅ寝息を立てているシャルちゃんをじっくり観察中。

「シャルちゃん・・・」

5年前に別れた時から何の変化も無い、だけど息を飲むくらいに綺麗な肌と髪。同性でもドキドキするくらいにシャルちゃんは美人だ。もう変われない、変わることの出来ないシャルちゃん。いつの間にかシャルちゃんの歳を追い抜いて、私は、私たちは今を生きている。

「・・・やっぱり翠屋のケーキは最高だよぉ・・・むにゃむにゃ・・・」

「・・・プッ。シャルちゃん、今の寝言?」

すっごく幸せそうな笑みを浮かべて眠っているシャルちゃん。寝言に出るほど翠屋を好きでいてくれたことがすごく嬉しい。でも、お父さん達やアリサちゃんやすずかちゃんは、シャルちゃんとルシル君を憶えていない。だけどシャルちゃんはみんなを憶えている。どういう気持ちなんだろう。自分だけが憶えていて、でも相手は自分を何も憶えていないなんて。

「シャルちゃんとルシル君は、いつもそういう世界で過ごしてきたのかな・・・?」

それがどれだけシャルちゃんとルシル君にとって残酷なことか、私が知った気でいるわけにはいかない。想像は出来ても理解できない、してはいけない。理解したと思った時、それは自分の驕りでしかないのだから。

「・・・ん・・・ぅん?・・・なのは・・・?」

「おはよ、シャルちゃん♪」

半開きの目のままムクリと身体を起こして「ん~~~~」と背筋を伸ばすシャルちゃんが一息ついた後、「おはよーございま――」まで言って、す、と言い切る前に寝息を立て始めた。シャルちゃんの奥義・座ったまま寝る、だ。他にも秘奥義・立ったまま寝る、もある。

「ほら、シャルちゃん起きて。今日はミッドに降りるんでしょ」

そう。今日は私とシャルちゃんとレヴィの3人でミッドに行くことになっている。昨日の夕食時、シャルちゃんが突然、ミッドに行きたぁ~い☆と言いだしたからだ。どの道シャルちゃんの言う“調整”というのが終わらないと、私たちは幹部と戦えない。だからその調整を行っている間に、久しぶりにミッドを観て回りたいとのことだ。

「・・・はっ! そうだった! えっとえっと、朝食時に他の六課メンバーに挨拶。そんでもって夕方までミッド散策。夕方にエリオと模擬戦。カートリッジに魔力チャージ開始。よし! 今日の予定はこれで決定! そんじゃ早速着替えますか!!」

覚醒したら覚醒したで物凄いハイテンション。ちょっと付いていけそうにもない。でも、着替えって、シャルちゃんどうするんだろ? 元から着ていた服しかないんだけど・・・。

「我が言の葉は幻想紡ぐ鍵」

それはまるでルシル君の“我が手に携えしは確かなる幻想”という呪文のようだった。シャルちゃんがそう告げた後、シャルちゃんの手元には冬モノらしい服があった。見憶えのある服だ。それもそのはず。

「これ、なのはが私にくれた誕生日プレゼント。すごく大事にしてるんだよ。でもごめんね、あまり着る機会が無いんだ」

5年前に私がシャルちゃんに贈った誕生日プレゼントの服だった。白のワンピースに黒のパーカー。少し厚手だから、今のミッドなら十分暖が取れるはずだ。そそくさと私が貸していたパジャマを脱ぎ始めたシャルちゃん。そういうことが出来るなら、どうして昨日から使わなかったんだろう?

「フンフ~ン♪っと、どしたのなのは?」

「ほぇ?」

いきなり声を掛けられて、そんな声を出してしまった。考え事してたから気付かなかったけど、さっきから私、着替えてるシャルちゃんから視線逸らしてなかった。うわぁ、同性とはいえまじまじと着替えを見てたなんて・・・これは恥ずかしい。

「あ、ううん。何でもないよ・・・」

顔が熱くなるのが自覚しながら目を逸らして言うと、シャルちゃんは「変ななのは♪」って笑いながら服を着出した。
それから私も着替えて、朝食の時間までシャルちゃんと話す。昨日の夕飯やお風呂、眠る前に話せなかったこと。シャルちゃんがあれからどういうことをしてきたのか、とか。
シャルちゃんとルシル君は、テルミナス撃破という偉業を成したことで、積極的に“アポリュオン”との戦いに参加することになったって。でもそんな戦いの中でも、心落ち着ける契約もあったみたい。その度に私たちのことを思い出してたって、シャルちゃんは少し恥ずかしそうに教えてくれた。

「でも嬉しいよ、シャルちゃん。そっか、それだと私たちは光栄に思わないといけないんだろうね」

ある意味神様なシャルちゃんにそこまで想われる私たちって何気に凄いのかもしれない。

「ん~~どうだろ? なのはがそう言ってくれると嬉しいんだけどね」

シャルちゃんは苦笑した。朝食の時間になって私とシャルちゃんは食堂に向かった。そこで紹介される六課の隊員たちにシャルちゃん。隊員の中にシャルちゃんのファンクラブメンバーが居たことでそれはお祭り騒ぎになって、シグナムさんが鎮圧(物理的)なんてことになった。大変だったけど、それでもやっぱり楽しいという感情の方が遥かに上だった。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

なのはやレヴィと一緒に、久しぶりにミッドの地・首都クラナガンに降り立った。本当ならフェイト達も一緒の方が嬉しいんだけど、さすがに全員では無理だった。それにしてもこのミッドの空気。まさかもう1度吸うことが出来るなんて思いもしていなかった。これはルシルに最大の感謝をしないとダメだね。

「で? どこを観て回るのシャルちゃん」

「フフフ。なのは、昨日言った通りにヴィヴィオに私のこと話してないでしょうね?」

なのはの質問にそう答える。私がミッドに来た理由の1つに、ヴィヴィオに逢って、ついでに驚かすというのがある。その他にも元ナンバーズの様子を見たいというのもあるし。
ナカジマ三佐のところへチンク、ディエチ、ノーヴェ、ウェンディが養子になるなんて、それはもうビックリだ。んで、セインとオットーとディードが、騎士カリムとシスターシャッハのところに。
そして私にとっての一番のニュース。あのルキノがグリフィスと結婚したいたことにも驚いた。いやぁ、“機動六課”時代から、もしかしたら、なんて思っていたけど、まさかこうも早く結婚まで行くとは。あー、でも5年でそこまで行くのは普通なのかな?かな?

「え? あ、うん。サプライズ・・・なんだよね? だからシャルちゃんついては何も話してないよ。でも、シスターシャッハには敷地内に入る許可を取るために話したけど・・・」

「ん! よし。そんじゃ・・・いざ参らん、St.ヒルデ魔法学院!」

ビシッとSt.ヒルデ魔法学院のある北部へと指を差す。ふふん、なかなか決まったんじゃない?

「シャルちゃん。そっち東だから。北はこっち」

なのはが若干呆れながら私とは別の方向を指差していた。私たちの今の背景には“・・・・・”が浮かんでいて、全体的に白くなっている。間違いなく。

「・・・プッ。くくくく・・・あはははは! シャルロッテ、有り得な――うふふふ・・・あははははは!」

「っ~~~~! わ、笑うなぁぁぁぁッ!!」

レヴィお腹を抱えながら爆笑しだした。確かに方向を間違えたのは可笑しいけど、そこまで笑うほどのものじゃないはず!!

「カッコつけた上に自信満々に指差して、なのに北じゃなくて東を指差すなんてマヌケ過ぎ! もーおかしい!! どれだけ方向音痴!? あはははは!!」

「うるさぁ~~~い!」

「あはははは――痛だだだだ!!」

レヴィの頭を左右から拳骨でグリグリする。笑った罰だ。そして昨日私に恥ずかしい格好をさせた罰!
勝手に騎士甲冑のデザインを変更したその悪魔の所業! “トロイメライ”のコアに“閃駆”の術式があるかどうか調べるだけならまだしも、騎士甲冑を変更して、レヴィの防護服のデザインのネタにしていたというその行い!

「許すまじ!」

どうしてわざわざ私の“トロイメライ”でするのか理解不能! 別の誰かのデバイスを使えば良かったのにさ!ていうか、“トロイメライ”も断らずに快諾した事実にもビックリ、プッツンだ!

――マイスターが居なくなり、自分を使用してくれる騎士が居なくなったことで暇だったのです――

そりゃ悪かったけどさ! だったらあの時、騎士甲冑を生成する前に一言くらい断りを入れろぉぉぉぉぉぉッ!というわけで、しばらくグリグリアタックを受け入れろ、レヴィ・アルピーノ!!
私とレヴィに集まる視線もなんのその。観たい奴は観て行け。さぁ寄ってらっしゃい!観てらっしゃい! 痛みに悶えた涙目の美少女レヴィですよ! 見学料は超お得なタダ! そこのお兄さん、どうですかっ!? 可愛いですかっ!?

「急がないとレールウェイの時間に間に合わなくなるよ?」

グリグリグリ・・・なのはの言葉もなんのその。グリグリアタック続行中。

「痛いって! シャルロッテェ~!」

「わははははは! ごめんなさい、はどうしたぁ!」

「・・・シャルちゃん、レヴィ。私と・・・いっぺん、お話ししてみる?」

透き通るなのはの冷めた声が私とレヴィの耳に届く。

「「ごめんなさいでしたッ!」」

こめかみをピクピクさせながら目の笑ってない笑顔を浮かべるなのはに、私とレヴィはすぐさま整列して頭を下げた。しかもさっきのセリフ、どうしてか“いっぺん、死ん〇みる?”に聞こえた。めっちゃ怖かったよぉ(泣)
とまぁ、そんな騒ぎも治まって、私とレヴィはなのはの後ろに続いてレールウェイのステーションへと向かう。街中を歩く中、私たちの耳に届くあるニュース。

『第35管理世界オーレリアを代表する魔導端末メーカー・アムストル社に、反時空管理局組織テスタメントとの癒着の疑いでがあるとのことで、強制捜査が行われています』

なのはが立ち止まって、モニターに視線を移す。女性キャスターの読むニュースの内容は、私たちが関与した出来事だ。テスタメント。私の“最後の戦い”を飾るには相応しい相手だ。かつては同じ連合世界だったヨツンヘイム。だけど、どちらかと言えば味方ではなく憎き敵。
ミッドガルドを脅して、私たち“天光騎士団”を強制的に連合軍に組み込んだヤツら。その末裔と戦える。でもこれは八つ当たりだ。当の魔術師はあの時代を生きたヤツじゃない。だけど、ヨツンヘイムの血族である可能性の魔術師を討てる。これはかなり重要だ。この時代に、あの時代の血を残しちゃいけないんだ。

「シャルちゃん。今度こそルシル君は残れるよね・・・?」

なのはの突然な問いかけ。

「フェイトとルシルが対人契約を行うには、ルシルの契約者の魔術師を倒して、ルシルとの契約を解除させる。それかルシルをボコにして、消滅寸前までダメージを与えて魔術師との繋がりを無理矢理断つ。このどちらかを成しえて、初めてルシルを残せることになる」

手っ取り早いのがルシルをボコにする方法だ。現状のルシルはメチャクチャに力が抑え込まれてる。レヴィに聞いた通り、ルシルの力が魔術師に流れ込んでいることが最大の原因だ。理由は不明だけど、それならルシルを倒す方が簡単かつとても早い。
でも、それに成功するとルシルの戦力は期待できなくなっちゃう。ルシルは人間となって、そして魔術師ではなく魔導師になる。神秘の無い味方を増やしても、この戦いじゃあまり役に立たないのだから。まぁ敵戦力を削れるんだから、どういったタイミングでも問題はないような気もする。

「今度こそ私は、フェイトちゃんとルシル君に幸せになってほしい。そう思うんだ」

「そうだね。でも、なのはも幸せになんないとダメだよ? 相手も身近に居るんだし、そろそろ将来を考えないと。シングルマザーも大変でしょ」

「相手? 私にそんな人、身近に居ないんだけど・・・。それにヴィヴィオと2人でも十分幸せだし」

マジで言ってやがりますかこの娘は。ユーノ。あなた、この5年の間に一体何をしていたの? ホントにこのまま“ずっと仲の良い友達でいましょうね♪”ってことにするつもりか?

「そう。だけど、あなたはもっと視野を広めなさい。これは長い間存在してきた私からのありがたいお言葉。覚えていて損は無いはずだから」

「え? あ、うん・・・」

なのはの鈍さに呆れながらも、レールウェイを乗り継いで(ところどころでウィンドウショッピングして)辿り着いたのはSt.ヒルデ魔法学院。今日は授業が午前中までということで、私となのはとレヴィは草陰に隠れてヴィヴィオの姿を探す。

『すっごい楽しみだなぁ♪ レヴィと組んでルシルを倒したあの戦い、とんでもなく強くなってるじゃん』

昨日見たヴィヴィオとレヴィ対ルシルのバトル。あの小さく可愛かったヴィヴィオがとんでもなく強くなってることにもう興奮した。えっと何だっけ? そうそう、ムーンライト・ブレイカー。あれは魔法じゃなくて魔術の域だった。あんな術式を組むレヴィには驚かされるよ。それについていくヴィヴィオにもビックリだ。

『そうだよ。ヴィヴィオは毎日すごく頑張って鍛えてるから。じゃなくて、どうして草陰に隠れる必要があるの? もっと普通に再会すればいいと思うんだけど・・・・』

『普通の再会じゃサプライズじゃないでしょうが。もっとインパクトのある再会じゃないとつまらないよ。そう、何を隠そう私がつまらない』

胸を張って、えっへん。フェイトの持ちネタだ。

『ならシャルロッテ。どういうのがインパクトのある再会なわけ?』

草陰の中でひっそりと下校している生徒たちに目を光らせながら念話で会話する。

『現在必死に思案中』

レヴィにそう返す。するとなのはとレヴィは大きく溜息。なによなによ。普通じゃないサプライズなんて、すぐには思いつかないってば。そんなこんなでヴィヴィオの姿を探していると、生徒たちの数が減っていた。まずい。もしかしてヴィヴィオを見逃した・・・?

『なのは・・・?』

『たぶん大丈夫。ヴィヴィオ、お友達と学院の図書館に寄ることがあるんだ。もしかしたら今日も図書館に寄っているかも・・・』

それならいいんだけど。もし私たちが見逃していたら、それは悲しい事態が私たちを襲うことになる。待~てども待~てども来~ないヴィ~ヴィオ~♪ だ~けどそ~の子はおうちに帰ってたぁ~♪・・・なんて。それを知らずに待ち続ける私たち。しかも草陰に隠れてひっそりと。悲惨過ぎる。

『・・・あ、来た!!』

レヴィからの念話で、この後に起こりえたかもしれないバッドエンドの回避に安堵しつつ、レヴィの視線の先を見る。居た。確かにヴィヴィオだ。5年で大きく成長したヴィヴィオが、友達2人と楽しそうに話しながら歩いてる。
何か用事があるのか友達2人はヴィヴィオと別れて、別の方へ向かって歩き出した。んで、ヴィヴィオはそのままこっちに向かってきた。

『わぁわぁ♪ ヴィヴィオだよ! うわぁ、ホントにヴィヴィオだ! すごい! 私の目の先、すぐそこにヴィヴィオが居るよ! ねぇなのは!』

『ちょっとシャルちゃん。(ひと)の愛娘を見つけて、そんな幻の珍獣を発見しました、みたいな感じで報告しないで』

私のテンションに呆れているのか苦笑を浮かべるなのは。だってこっちに来てから映像でしか観てないヴィヴィオがすぐそこに居る。憶えてるかなぁ? ルシルのことは憶えてるみたいだし、私のこともきっと憶えていてくれるはず。
あ~、でももし、もしも私を憶えてなかったら・・・やばい。何か泣きそう。頭を抱えて唸っていると、『ほら、シャルちゃん。早くしないと・・・』となのは。確かにこのままじゃヴィヴィオは私たちに気付かずに行っちゃう。どうしようどうしようどうしよう・・・あ、これでどうだ!!

『レヴィ!』

『な、なに!?』

『私とレヴィでヴィヴィオを襲う!』

『『はい?』』

なのはとレヴィが首を傾げて、こいつ何言ってんの?って顔をした。

『サプライズ! 私が直でヴィヴィオの実力を測る!!』

『『はぁぁぁぁ!?』』

驚く2人を余所に私は「我が言の葉は幻想紡ぐ鍵」と詠唱する。これはルシルの呪文を自分なりにアレンジしたものだ。

ルシルの固有能力・“複製”。
あれを疑似的に再現した、私独自の固有魔術・“複製の魔眼”。それで覚えた“力”を、私の創世結界・“剣神の星天城ヘルシャー・シュロス”の書庫に貯蔵する。そしてさっきの呪文で使用する。ルシルの“英知の書庫アルヴィト”と同じ能力だ。
そう、何を隠そう早い話が完全なパクリなのだッ(自慢げ)!!んで、今持ってる術式のほとんどはルシルから貰った物。この3千年の間に、ルシルと同じ契約になった時に“アルヴィト”に入れてもらって出来るだけ覚えた。それでも6割程度しか覚えきれてないけど。まったく、どんだけ複製してるんだか。

『って、シャルロッテ。わたしに変身して何するつもり!?』

『これもサプライズの一環ゆえに』

レヴィの姿に変身して、ヴィヴィオがどこまで反応できるか(というか驚いた顔が見たい)を確かめる。レヴィがぎゃあぎゃあ言ってきてるけど無視。私“が”楽しみたいんだよ!!(本音)
ヴィヴィオが通り過ぎていって、背後からの奇襲の舞台は整った。レヴィの腕を引っ張って、いざ、ヴィヴィオに突撃だぁぁぁッ!

『やだっ! そんなことしたら、わたしの好感度が下がるでしょ!』

というのに抵抗を止めないレヴィ。奇襲するのがレヴィ、そしてレヴィに変身している私。下手をすれば確かにレヴィへの好感度は下がるし、シスターに見つかればお説教(無論私は逃げる)。ハイリスクだ。そう、レヴィに限って言えば、ね・・・。

『よし。行こう!』

『話聞いてた!? 嫌われたくないんだってば! こんなアホなことで!』

抵抗を依然としてやめないレヴィ。だったら、これでどうだ!

「我が言の葉は幻想紡ぐ鍵」

詠唱と同時にレヴィの周りに淡い真紅の光が生まれる。そして光が晴れると同時に姿を現すレヴィ。

「こ、これは・・・!」

なのはがレヴィの姿も見て1歩2歩と歩み寄っていく。レヴィはなのはの様子に首を傾げて、小さく可愛らしい口を開いた。

「みゃうぅ~?・・・・???」

出たのは人語じゃナッシング。

「みゃぅ? みゃ? みゃうみゃう~!?」

「か、可愛い・・・」

レヴィは人語が話せなくなったことに混乱しだし、なのははレヴィの姿と言葉に落ちた。レヴィが勢いよく私に振り向いて、そのフワフワした身体を近付けてきた。

「みゃう! みゃぅみゃぅ! みゃああう! みゃ・・・『シャルロッテ! これはどういうつもり!?』」

お、早速念話でのコミュニケーションを見つけたか。さすがに念話にまでは影響を及ぼすことが出来ないんだよね、この変声術式。

「いや~、そのままの姿が嫌だっていうから、着替えさせてあげたんじゃない。ヒマラヤンの着ぐるみにさ。可愛いよレヴィ。そのもふもふフワフワしたヒマラヤン姿」

「みゃぅーぅ! みゃぁう!『どこを間違えてそういう結論に至るのかが全然理解できない!!』」

今のレヴィの姿は白いヒマラヤン(フワフワしたネコで、とても可愛いのだ!)の着ぐるみだ。顔だけ胸のあたりからひょこっと出していて、それが余計に可愛らしく見える。

「シャルちゃん。これは確かに可愛いけど、どこがサプライズになるのかが解からない」

「みゃあぅ、みゃぁみゃあぅー!『なのはさんの言う通り! ていうか、なのはさん! 苦しいです! 抱き締めるのは良いんですが、力が強過ぎます!』」

なのはが神速の動きでレヴィに抱きついて、そのフワフワした身体に顔を埋めている。フッ、恐るべしヒマラヤン・レヴィ。エースオブエースのなのはを意図も容易く陥落するとは。

「これで行けるよね。そんじゃ、レヴィ・ゴー!!」

「みゃぁーーーう! みゃあみゃぁーぅ、みゃーぅ!『だ・か・ら! もう少し違った路線のサプライズを考えてってば!』」

「何が不満なわけ? 言語をみゃう、から、もきゅ、にでもすればいいの? しょうがないなぁ。いいよ。もきゅ、に変更すれば良いんでしょ? ついでにヒマラヤンから桃色がかった羊にしてあげるから」

「みゃあぅぅーーーー!『そんなこと誰も望んでなぁぁぁーーーい!』」

ついには頭を抱えて唸り始めるレヴィ。少しイジメ過ぎたか? でも私の楽しみのためにもう少し頑張ってもらおっと♪
苦悩に悶えるレヴィと別の意味で悶えるなのは。そんな2人を見つつ、私は自分の変身を解いて、別の誰かに変身しようとした。

「シャル・・・さん・・・?」

その声が耳に届いたことで全ての終わりを察した。ギギギ、という擬音が聞こえそうな感じで私は声のした方へと振り返る。ヴィヴィオが信じられないと言った風に私を見ていた。

「それに、なのはママと・・・レヴィ?」

「あ」「みゃうぅ『見つかった』・・・」

視線が交じり合うヴィヴィオと私たち。サプライズ云々という計画は水泡に帰してしまった。こうなったらもう普通でいいや。丸投げだぁ!

「久しぶり、ヴィヴィオ。元気?」

「・・・シャルさん・・・シャルさん!」

「おお!?」

再会の挨拶をしたと同時にヴィヴィオが飛びついて来た、と言ってもいいくらいの勢いで抱きついてきた。ふわりとした良い香りのする綺麗な金髪が私の鼻をくすぐった。

「ヴィヴィオ・・・」

ヴィヴィオを抱き締めて実感する。5年前、別れる時も抱きついてきたヴィヴィオを抱きしめた。あの小さく幼かったヴィヴィオがこんなに大きくなって。

「ホントに久しぶり」

少し強くヴィヴィオを抱きしめた。

†††Sideシャルロッテ⇒レヴィ†††

シャルロッテに散々遊ばれて、ヴィヴィオを驚かせるというサプライズも無くなって、心労が溜まる一方だった今日この頃。
レールウェイの車内、シャルロッテの前に座るヴィヴィオの笑顔を見たら、そんな軽いストレスも吹き飛ぶというものだ。今わたし達は聖王教会本部に向かっている最中。シャルロッテは姉妹たちと会いたいらしいし、ヴィヴィオはイクスにシャルロッテを会わせたいみたい。

「それでねシャルさん! ウェンディってば――」

今のヴィヴィオは興奮冷め止まず、と言ったところだ。もう会うことの出来ないと思っていたルシリオンは敵として、記憶操作された形で再会。シャルロッテともまた会えないと思っていたのは間違いない。でも、そんなシャルロッテとこうして楽しく会話できる。それがヴィヴィオのとってすごく嬉しいことなんだ。

「あははは! ウェンディらしいって言えばらしい!」

ヴィヴィオのハイテンションの中で進める会話を聞いていたら、時間なんてあっという間。ベルカ自治領に到着して、わたし達はカリムさん達の居る聖王教会本部に向かった。

†††Sideレヴィ⇒シャルロッテ†††

快速レールウェイに揺られて十数分。私たちが聖王教会本部に到着して、すぐにその顔を見せたのが、

「??・・・???・・・????・・・あーーーーーーッ!!」

こっちに、正確には私を指差して絶叫する姉妹の1人だ。水色の髪をした娘。修道服が何とも言えないくらいに似合わない。

「シスターがそんなんでいいわけ? セイン」

敬虔なるシスター(修道騎士でもあるらしい)であるはずのセインの絶叫。しかも大口を開けての絶叫の上にビシッと人を指差すその行為。セインがシスターになるのは何かの間違いなんじゃないだろうか、と思う。

「ええええ!? あ、え?・・・えええええ!?」

私の存在が信じられないのか、セインの絶叫は止まらない。そこに新たな姉妹が加わる。セインの絶叫を聞きつけて来たみたいだ。

「「・・・あ」」

「オットー、ディード。そのリアクションは逆に少し寂しいなぁ」

男装のオットーと、その妹ディード(こっちは修道服が似合うなぁ)の登場だ。私を見て指を差して絶叫し続けるセインよりかはマシだけど、それでももう少し反応が欲しかったり。

「まぁいいや。久しぶり、セイン、オットー、ディード」

「あ、ああ・・・ホントにシャルロッテ?」

ようやく絶叫をやめたセインの、私かどうかを確かめる発言。んー、口で答えるより実際に私かどうかをその目で確認して見せて、セイン。

――閃駆――

「「「「「「っ!?」」」」」」

一瞬でセインの背後に回る。手にするのは魔力を固定させて具現した魔力剣。でもセインもなかなかの反応を見せる。彼女の能力“ディープダイバー”が発動。地面を潜行して私からすぐさま距離を取った。

「な、なななな何をいきなり・・・!?」

突然のことだというのにしっかりと反応したセイン。私の持つ真紅の魔力剣を指差して口をパクパク。あなたは金魚か鯉ですかぁ?

「ごめんごめん。でもこれで私が本物だってことは判ったでしょ?」

「だからっていきなり閃駆!? そんで斬りかかって来るなんて、ありえなくない?」

軽く涙目なセイン。魔力剣を消して、セインへと近付こうとすると「ぎゃぁぁぁッ!」って今度は別の意味で絶叫する。まずいなぁ。どうやら今の私は嬉しさのあまりにちょっとやり過ぎるようだ。

「まあまあ、落ち着いてセイン」

「「陛下、ようこそいらっしゃいました」」

セインを宥めるヴィヴィオに、オットーとディードが恭しく一礼。

(へぇ、オットーとディードってあんな顔が出来るようになったんだ~)

オットーとディードの表情が以前に比べて随分と豊かになった。きっとここの環境があの娘たちをすごく良い方向に変えたんだ。

『シャルちゃん。どう? あの娘たちの現在(いま)の様子を見て』

なのはが私の隣にまで寄ってきて、念話でそう聞いてきた。私は「うん」って頷いて、ヴィヴィオたちが賑やかに話しているその光景を見詰める。眩しいくらいのひと時。だから言うことはただ1つだ。

『良いね。セインとオットーとディード。すごく良い顔してる』

かつては敵だったけど、今ではああして笑い合える仲にまで。5年という年月が、みんなにとって本当に大切なんだって、私は改めて思った。

「シャルさ~ん!!」

ヴィヴィオが私に手を振りながら駆け寄ってくる。どうしたんだろう? あ、そういえばここに来る前に会わせたい友達が居るって言ってたっけ。

(えっと確か、イクスヴェリア・・・?

(その子も元はベルカの王様だって話だ。そしてセイン達も一緒に駆け寄ってきたんだけど、セインだけは何か逃げ腰だ。いつでも私からダッシュで逃げるといった感じ。

「え~っと、シャルロッテ。まずは騎士カリムに挨拶してもらいたいんだけどさ」

「え、あ、うん。判ったけど・・・セイン、そこまで引かないで、お願い」

反省するから(形だけ)、そんなビクつかないで。そういう行動されるとお姉さんは少し悲しくなるよ。

「いや~、なんかもー・・・無理」

両手を振りながら苦笑するセインが遠く感じるよ。

「別にコンクリ詰めにして、カドス海に(チン)するわけでもないんだし。そこまで私を怖がらないでほしいなぁ~。というか、あんだけでビビるなセイン」

「結構無茶言うよねシャルちゃん」

「いきなりあんなのされたら誰だって引くよ」

「シャルさん、わたしも引きそうです」

おお、気が付けば私は孤立状態。オットーとディード以外は明らかにセイン派に属してる。私がオットーとディードに視線を移すと、2人は私からスッと視線を逸らす。巻き込むな、と言外に告げてる。そうですか。今の私は孤立無援なんだ・・・そうなんだ。

「それではご案内しますので、こちらへ」

妙な空気のまま、私たちは騎士カリムの執務室に案内された。
 
 

 
後書き
シャルにかつてのような馬鹿をさせるにはどうしても必要だと思ったルシルの有する複製術式。
ですからシャルはルシルの能力を丸パクリ。彼女の最後の暴走はまだまだ続く?
 
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