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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:ジ・アリス・レプリカ~神々の饗宴~
  第二十三話

 純白の宮殿。名を、《白亜宮》と言う。

 この世界が始まったその時に、世界を創った《その存在》が創り上げた居城。監視のための、『神の家』。

 その通路の色はひたすらに白。純白だ。穢れなきその宮殿は、住民が現れた時だけ質感を持つ、奇妙な世界である。

 だが、その通路の向こう側、扉を挟んだ部屋たちは、純白以外の色でも構成されている。

 たとえば、この部屋。色は、白ではなく黒。漆黒の闇だ。中央には巨大なモニターが浮かび、外の世界の様子を映し出している。

「おうおう、面白いように踊りよるわい」

 そのモニターを見つめる影たちのうちの一つ――――白い髪の、十二単の少女が、映し出された映像の感想を漏らす。モニターが現在映している外の世界の画像は、《白亜宮》に侵入せんとやってきた六門神達と、番人として配備した《六王神》達の戦いだった。

「当たり前でしょう。すべての展開はお兄様(マスター)が管理していらっしゃるのだから」
「貴様も面白みがないのぅ、トリス。妾かてそのようなこと分かっておるわ。兄者の為すことに間違いは無い」

 からからと笑う十二単の少女。彼女と会話したのは、先端が()()く染まった、不思議な白髪を持つ少女だった。両者ともに、目の色はやはり()()

 騒ぐ十二単の―――エリィに向かって、半分愉快そうな、半分気だるげな表情で声を発したのは、黄金の長髪の少女だ。やはりこの少女も目の色は()()。纏う雰囲気はエリィが《女帝》ならば、彼女は《皇帝》。女性に対する呼称としては不適切なようにも思うが――――

「そのくらいにしてはどうかな?卿らよ。余は静かに弱きものが踊るのを見たいのだが?」
「ふん、貴様の言うとおりに等誰がするか」
「ほぅ……卿よ、余と卿、どちらの方が強いのか、分かって行っているのかね?」
「それはこちらのセリフじゃ。何、身の程が分からぬと?」

 にらみ合うエリィと金髪の少女。それぞれから、膨大な量の神気があふれ出す。

「喧嘩はやめなさい、エリィ、アニィ」

 トリスと呼ばれた白髪の少女が、エリィと、アニィと呼ばれた金髪の少女をいさめる。彼女の声に、しぶしぶエリィとアニィは矛を収める。

「そう言えば……兄者はどうしたのじゃ?眷王はいつものことじゃが、いつもは来る兄者が来ておらぬではないか」
「……お兄様なら、ミナトの、所……」

 エリィの問いに答えたのは、四人目の少女だった。

 もっとも、この少女はほかの三人と比べれば圧倒的に幼い。トリスが二十歳ほど、エリィ、アニィが十八歳ほどの外見をしているのに対し、この少女だけが十代初めの外見をしている。加えて、この少女は右目だけが緑色で、左目だけが()()であった。

「ああ、ミナト様の所であったか」
「そうじゃったな、今日はあの方の誕生日であったか……」
「……もうすぐですよ、ミナト様が外に出られるようになるのも」



 ***



 ところ変わって、話題に上っていた《その存在》は、白い道を歩いていた。だが、以前エリィや青い髪の少女が歩いていた時とは異なり、その白い少年が道を歩くごとに、時空が悲鳴を上げてきしむようであった。

 少年の後ろに着き従うのは、機械の兵装で身を蓋った、白髪のメイド。

「ここまででいいよ、ミカ」
了承(アクセプト)

 ミカと呼ばれたメイドが、機械めいた応答を返す。

「さすがに娘の誕生日だ、グリヴィネに来てもらうわけにもいかなくてね。君を呼ばせてもらったんだ。すまなかったね」
「いえ。お気になさらずに。私はお兄様(マスター)の人形ですから。いつでも、どこでも」

 ふっと微笑んだミカを見て、白い少年も笑う。

「そうか。ありがとう。それじゃぁ戻っていいよ」
「はい」

 直後、ぐぃん、と時空が歪んで、ミカの姿が掻き消える。同時に、少年が何もない壁に手をふれた。その壁もまた、歪む。出現したのは、鎖と大がかりな錠で縛られた、一つの扉。

 少年は鎖たちに手をふれる。瞬間、鎖たちがその手を恐れるかのように何処(いずこ)へと消えていった。 

 少年は自由になったドアノブに手をかけ、その扉を開ける。

 中は、夜であった。この部屋の窓の向こうに見える景色は、一年中、五年中、十年中、そう、永遠に夜のままだ。少年が、『変わってよい』と許すまで。

皆徒(みなと)、来たよ」

 少年が恐らく普段眷属たちにすら見せないであろう優しい笑みと声で、部屋の中に入る。直後、明るい声が聞こえた。

「お父様!」

 少年は、部屋の中央を占める巨大な天蓋付きベッドに進む。そこには、一人の少女がいて、上体を起こしていた。

 金色の髪の少女だった。頭頂に、一房だけ反対向きにはねた髪のある、癖っ毛の少女だ。目の色は、少年や、その眷属たちと同じ()()。表情は満点の笑顔。

「やぁ、皆徒(みなと)。久しぶり。元気そうで何よりだ」
「えへへ。お父様が来るのを楽しみにしてました~!」

 そうか、と笑い、少年は皆徒と呼ばれた少女に近づき、その頭をなでる。

お誕生日おめでとう(HappyBirthday)僕の娘(皆徒)。これでまた、君の《誕生》に近づいたね」
「はい!お父様と『会える』のが、今から楽しみです」

 ふふ、と少年はまた笑う。そして、どことも知れない空間から、いくつかの物を出してきた。

「これはみんなからのプレゼントだよ。このネックレスはグリヴィネの、着物はエリィだ。こっちの絵本はノイゾだし、この制服か?はアニィだな。ペンダントはたぶんトリスだ。で、エインだけが手描きイラスト。『ミナトへ』だとさ」

 さまざまなプレゼントが皆徒に渡されていく。一つひとつを受け取るたびに、彼女の表情が輝いていく。

「で、こっちはミカで、これがガヴラの。そいで、こっちがウリエで、こっちがラファエラかな。この本!これはラジエラの自信作だな。気合入りすぎだろ。このところてん半額券はサンディだな。間違いなく。それでもって、こっちがシャルルフォンシャルロッテとサクリファイス、あとサタナイルので、これが多分一号機からだな。まだあと29999有るから気を付けろ」
「はーい」
「グリーア部隊からのは割愛としまして、じゃじゃ~ん、こいつが俺からのプレゼント~」

 そして少年が、シンプルに、しかし可愛らしく装丁された箱を取り出す。

「うわぁ……!開けてもいい?」
「もちろん」

 皆徒が箱をひらくと、中には一冊の本と、綺麗な洋服が入っていた。レースが小さく着いたその服は、幼い少女には非常によく似合うように思えた。

「わぁ……この本欲しかったんだぁ……!それにこのお洋服!」
「どう?気に入った?」
「うん!」
「よかった」

 少年は、再び皆徒の頭をなでる。皆徒は目をとじながら、ぽつり、と呟いた。

「いつかこの服を着て、外に出られるかな?お父様と、皆徒と……お母様と」
「……」

 少年の動きが止まる。そのまま数瞬少年は止まったままだった。

「……大丈夫さ」

 そして小さく、しかしはっきりと言った。

「大丈夫さ。また、外に出られるよ。その時は、この服をきて、出かけよう。俺と、皆徒と……君の『お母様』の3人で。できれば、本当の『お母様』と」
「うん!」

 にっこり、と、幼い女神は笑った。



 少年が扉の外に出ると、再び黄金の鎖たちが部屋を塞ぐ。少年は一人、暗い表情で呟いた。

「……『大丈夫』、か……何でだったんだろうな。なんで、そんなことをあの子に言わなくちゃいけない状態になってしまったのかな……」

 言わなくても良かったはずなのに。そんなことを言わなくていい未来が、約束されていたはずなのに。

「……少なくとも、この世界の《未来》は、俺の思い描くように変わっていく」

 少年は、空中にホロウィンドウを出現させる。

「――――特定のユニットIDの無条件侵入を許可、っと。……皆徒、信じてるよ。君は俺の娘だからね」

 少年は時空をゆがめて、いずこへと去って行った。

 
 神話の勇者たちが、光の神王の攻撃にさらされた、丁度その時の出来事だった。 
 

 
後書き
 と言うわけでHappyBirthday皆徒~!!

刹「作者……あなた三か月ほど前からそれを言うためだけにこの話書こうと思ってましたよね……」

 当然じゃん。だって皆徒はお(ry

刹「ネタバレになるので強制的に省略です。それでは次回もお楽しみに」 
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