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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第六十四話

 あたしの前を進んでいたカヤックに乗っていたショウキが、レコンからの質問を返そうとして落ちた。

 それだけなら、ただ笑い話の種になるだけなのだけど、それから反応がないとなれば話は変わる。カヤックで渡らなくてはならないほどの、急流から落ちて反応がないとなれば、最悪の自体を嫌でも想像してしまう。

「……ショウキ!?」

 カヤックからついつい身を起こして水中を観察するものの、緑色と黒色が混じったコートを着た、ショウキの姿はどこにもない。そのまま急流に飛び込むことも辞さなかったが、ギリギリのところで理性がそれを引き止めた。

「レコン、索敵して!」

 注意深く水面を観察したままに、あたしの前でさらに慌てているレコンに声をかける。あたしは全くと言って良いほど事前情報を仕入れていなかったけれど、レコンは索敵の魔法が使える、ということぐらいは道中で分かる。

「え、ええっ!? でもショウキさんが……」

「ショウキがただで落ちる訳ないし、そのままな訳もないわ! 多分、水中に敵がいる!」

 この河にはモンスターがおらず、カヤックを使わないといけない急流ということで、レコンは《索敵》を怠っていた。……もちろんショウキもあたしも、だ。その油断をついた、敵プレイヤーがいるはずだと、あたしは考えた。

「……いた、かなり後方に《ウンディーネ》のPCが二人!」

 水妖精《ウンディーネ》。確か、回復魔法と水中の行動に長けた種族……と、ショウキが言っていた気がする。そしてレコンの索敵の結果には、重要な情報が欠けていた。

「ショウキの……ショウキの位置は!?」

「……近くにはいないみたい」

 《索敵》用のレーダーを見たレコンが首を振ったものの、すぐさまあたしはシステムメニューを開く。そのまま見るのは、バグアイテムだらけの――どうしても捨てられなかった――アイテムストレージではなく、メールボックス。

「……うん、大丈夫。レコン、ショウキが戻って来るまで耐えるわよ!」

 最初に、あたし自身に言い聞かすように小声で呟いた後、慌てたままのレコンへと叫ぶ。どことなく小動物のようなレコンは、やはり放ってはおけなくなってしまう。

 あたしがショウキの健在を確認した手段は、メールボックス。ログアウトしていた場合には、名前が灰色に染まるシステムからで、ショウキの名前は灰色に染まっていない。……アインクラッドの《笑う棺桶》攻略戦でも同じように確認していて、ショウキの名前が灰色になった時、みっともなく取り乱してしまったものだ。

 そしてログアウトしていないのならば、きっとショウキは追いついてくる。ならば、あたしがやらなくてはいけないことは、ショウキが来るまで耐える……いや、ショウキが来るまでに倒して、彼に吠え面をかかせること。

「……行くわよ、レコン!」

 とは言っても、戦闘職ではないあたしの実力は心得ているし、レコンもどちらかというとサポートタイプ。無理はしない……というか、出来ないというべきか。

「う、うん……」

 やはり自信なさげな声だったものの、レコンからも一応の返答が来て、二人でカヤックを進行方向から、ウンディーネがいる方向に反転させる。……カヤックの経験など無いので、反転するだけで、あたしもレコンもおっかなびっくりだったけれど。

 そして、片手にカヤックのオール、もう片手にショウキの《銀ノ月》のついでに作ったメイスを構えると、ウンディーネの襲来に水底を見る。あたしたちに極力バレないように、きっと水底を歩くように来ているはずだ。

「いた……!」

 狙い通り、水底を這うように泳ぐウンディーネが一人こちらに向かって来ている。悔しいけれど、あたしには遠距離攻撃手段がなく、ここはレコンの魔法に任せようとしたところ――

「……リズちゃん、右にいる!」

 ――レコンの叫び声が響き渡り、あたしはつられるように右を見ると、水面に、カヤックへと手をかけようとしているウンディーネの姿が映る。反射的に、メイスがその手に向かって振り下ろされたものの、手応えは水を殴った時のようなドボンという感覚。

 さらに、カヤックの上でメイスによる攻撃を仕掛けたことにより、バランスが崩れたあたしの船に、正面から来ていたウンディーネが接近する。その動きは、この世界に来たばかりのあたしたちとは違う、熟練した技を感じさせた。

「リズちゃん、どいて!」

 しゃがんだあたしの頭の上を、レコンの魔法が通り過ぎる。後ろからのレコンのカマイタチのような風魔法が、正面にいるウンディーネを襲い、なんとか事なきを得る。

 二人のウンディーネは一旦は距離を取り、あたしのカヤックから少し離れた場所で優雅に泳いでいる。その動きはいつでもこちらを倒せる、という自信の現れのように感じられた。

「ぐぬぬ……ムカつくわね……」

 かと言っても対応策があるわけではなく。オールでカヤックのバランスを取りつつ、早くこの河の終わりまで行き着く事を祈るしかない。……たとえ、そんなのが性分にあっていなくとも。

「…………?」

 しかし、河から離れてしまえば、ウンディーネたちの有利な状況は五分五分になる。正確にはあちらの方がベテランな分、ウンディーネたちの方が有利だろうが、あたしたちが――レコンはベテランらしいけど――入ってすぐなのを相手が知っている筈がない。

 よって、待機することには全くメリットが無いにもかかわらず、彼らはこちらに攻撃を仕掛けようとはしていない。河の中に入って、こちらの様子を伺って、レコンの魔法攻撃を軽くあしらっているだけだ。

 何か狙っていることでもあるのか、と勘ぐっていたあたしだったが、すぐにその思考は中断されることとなった。あたしのカヤックの下の水が、突如として破裂するように衝撃を起こしたのだ。その影響でカヤックは空中に吹き飛び、あたしは慌ててカヤックに掴まりながら空中を飛翔することになる。

「きゃああ!」

 空を舞う――って言ってもダンジョンの中だけど――カヤックから吹き飛ばされまいと、必死に船体に掴まりつつも、もう片腕でメイスをしっかりと握りしめる。空中に飛んで身動きが取れないあたしを、ウンディーネたちが追撃をしてくるはず。そこを痛烈に叩くべく、わざと大げさに悲鳴を上げつつ、絶対に目を閉じないようにして敵の姿を捉える。

 ……しかし、ウンディーネたちはあたしの方へ来ることはなく。敵を叩こうと気を張り巡らせていたあたしの眼は、皮肉にも、レコンがカヤックから落とされて、水中へと引きずり込まれていく姿を見た。

「レコン!」

 あたしはそう叫ぶとともに空を舞うカヤックから飛び降りると、そのまま頭上から、レコンを引きずり込もうとしているウンディーネに向かってメイスを叩き込んだ。敵もまさか、あたしが飛び降りるとは思っていなかったらしく、ウンディーネの頭にメイスが直撃して火花を散らし、レコンの手を離して水底に沈んでいく。

「せいやぁ!」

 もう一人のウンディーネにもメイスを払って攻撃するものの、思っていた以上にあっさりとレコンのことを離し、メイスを避けて軽々と水の中へ潜っていく。……ああいう人魚のように泳ぐ姿を見ると、ウンディーネも良かったかも、と思ってしまうのは仕方がない。敵は男二人だけれど。

 そんなことより、あわや水中に引きずり込まれそうになったレコンだったけれど、魔法を唱えようとして水を飲み込んだのか、ちょっと咳き込んでいたけど……まあ無事の範疇だろう。

「ご、ごめんねリズちゃん」

「……色々言いたいことはあるけど、後にしとくわ。まずは、今どうするかが先ね」

 『ちゃん』って付けないでとか、ごめんじゃなくてここはありがとうだとか、色々後にするとして。実際、このピンチをショウキ抜きでどうするか考えなくては。

 あたしもレコンも、身動きが取れないほどの急流に落ちてしまった今……あたしは自発的に飛び降りたけれど。この水の中を自由自在に動けるウンディーネに対して、あたしたちが圧倒的に不利なのは火を見るより明らかなのだから。

 ……しかし、この川から乗って来たカヤックに戻ろうにも、ショウキとレコンのカヤックはウンディーネにやられてひっくり返っているし、あたしの空を舞っていたカヤックは位置が遠く、そこまで泳いでいけそうにない。

「レコン、なんか水中で泳げるようになる魔法ないの!?」

「そんな魔法持ってないよ!」

 急流による轟音で、隣り合っているにもかかわらず大声で会話する。……そして残念ながら、レコンの魔法もこの状況を覆せるものではなく、あたしのメイスなど言わずもがな。

 だからといって諦めるのは、『助けに向かって来ている』筈のショウキに、申し訳がたたない……と、どうするか頭をフル回転させていた時。

 あたしとレコンの足に何かが装着されたような感触が現れ、足がズシッと重くなって河に沈んでいく。

「えっ……!?」

 あたしとレコンは声が重なりながら、反射的に沈んでいく自分たちの足を見ると、そこには水で出来た足枷。……水の中なのに水で出来た、というのもおかしな話だけれど、何で出来ていようが、それは本物の足枷のようにあたしたちを拘束した。

 そして気づく。レコンの魔法でショウキの反応が無かったのも、この足枷をかけられて水底に沈められたのだと。

「えい!」

「ディスペ……うわぁ!」

 とっさにメイスで足枷を破壊しようとしたものの、水中にあるせいでメイスに力が上手くはいらず、ドボンと水を叩くのみ。さらに、恐らくは魔法を解除する呪文を唱えていたレコンは、いつの間にか足元に現れていたウンディーネに、やはり水中へと引きずり込まれてしまう。

「レコン!」

 そうなると次はあたしの番。レコンのことを心配している暇もない。しかし、足枷を付けられた状態では、泳ぐことやキックすることなどロクな抵抗も出来ず、あっさりとレコンと同じく水中に引きずり込まれてしまう。

 ……そして水中で、先程あたしが空中からメイスを叩き込んだウンディーネが、短剣を持ってゆっくりと沈んでいくあたしに近づいて来ていた。……わざわざHPを回復していないところを見ると、かなりやられたのを根に持っているらしい。

「…………!」

 ここは水中。あたしは悲鳴を上げることすら許されず、舌なめずりしているウンディーネに対し、睨みつける以外の抗う術を持っていない。先に沈んだレコンに対しても、もう一人が全く同じことをやっていて、二人揃って悪趣味ね、と心中で吐き捨てる。……ショウキのことは先に沈めて放置し、後で二人で楽しむのだろうか。

 そして、あたしに見せびらかすように短剣を振りかざし、あたしの身体を見て、生理的に受け付けない下卑た笑みを浮かべながら、ウンディーネは――あたしのメイスに叩きのめされた。

 ……だから言ったじゃない、次はあたしの番だって――!

「……よくも好き放題やろうとしてくれたわね!」

 目を白黒させているウンディーネに対し、メイスの連撃を思うさま叩き込む。深々と。一撃一撃、魂と怒りを込めて。水の中で好きなだけ叫びながら。足枷があるせいでその場からは動けないけれど、近くにいる敵をボコボコにするだけならば、動かなくても充分だ。

 ……ショウキが言うには、こういう時のあたしは凄く楽しそうに笑っているそうだが、残念ながらあまり否定は出来ない。

「ええいっ!」

 トドメに一撃顔面にメイスを叩き込むと、そのウンディーネは吹き飛んでそのまま、水色のリメインライトとなり果てた。その顔に、最後まで疑問の表情を残したままで。

 あたしが水中で動ける理由とタネは、そんなに疑問に思うほどの物ではなく、ただのレコンの支援魔法に過ぎない。サポートと毒殺に特化した彼のビルドには、水中で行動出来るようになる程度の支援魔法は、慌てる必要もなく最初から持ち合わせていた。……けれど、あくまで行動出来るようになる程度であり、正面からウンディーネに勝つには焼け石に水だった。

 ……そこで少し小芝居をしてみた。水中で行動出来る魔法などないと、わざと大声で言うことで、メイスを叩き込める位置までおびき寄せる。……まさか、ここまで上手く行くとは、思っていなかったけれど。

「やったね、リズちゃん!」

 先程は不発となった解呪魔法で、あたしと自身の水の足枷を――やはりウンディーネの魔法による物だったようだ――解除しながら、レコンがあたしの方へと泳いで来る。……だから、ちゃん付けしないでったら、と言おうとしたけれど、まあ、今回だけは良いだろう。

 ところで、レコンが相手をしていた、もう一人のウンディーネはどうしたのだろう……と思えば、全身動けないように麻痺毒をかけられて、死んだように水底に眠って……いや、眠らされていた。むしろリメインライトになった方が良かっただろう結末に、敵とはいえ同情せざるを得なかった。

「あんた、アレはやりすぎじゃないの……?」

 ……メイスで必要以上にボコボコにした、あたしが言えることじゃないかも知れないけど。レコンもそう思ったのか、あたしの台詞に苦笑して返す。

「あ、あはは……――リズちゃん後ろ!」

 ――レコンの台詞に反応して反射的に背後を向くと、そこにはあたしがさっき倒したはずのウンディーネの姿。ウンディーネが得意とするのは、水中での行動と回復魔法……どうやっては分からないけど、リメインライトの姿から回復して来ているのだ。

 そして、あたしに復讐せんと血走った目で短剣を持ち、先程のような『遊び』もなく、一直線にあたしへと向かってくる。逃げられない……あたしの反応が間に合わない。

 ……しかしあたしは恐怖することはなく。そのウンディーネの胸から突き出ている、美しい銀色の刀身だけを見ていた。リメインライトから復活してHPが残り少なかったのか、その銀色の刀身の一撃により、再びリメインライトとなり果てた。

 もう一度ウンディーネが復活する様子はなく、代わりにその場には、黒い服のシルフが現れていた。……その人を、姿が変わっていても見違えることは絶対にない。

「ありがと、ショウキ」

「………………!?」

 ショウキも何か言おうとしていたようだったが、ショウキには水中で行動出来る支援魔法はかかっておらず。むしろ平気で水中の中で喋っているあたしを見て、驚いて口を開いてしまいそうだった。そのまま驚いているショウキを二人で、あたしが元々乗っていたカヤックまで連れて行くと、無理やり三人で一つのカヤックに乗った。そもそも一人乗りようだけれど、詰めればまあ何とかなったり。

「あー服ビショビショ……それより。遅かったじゃない、ショウキ」

 カヤックの席に座ることが出来たあたしは、ニヤニヤと笑いながら、カヤックの後方に座っているショウキに語りかける。最後はやはり助けられてしまったけれど、ショウキが遅刻して来たのは事実なので、この程度の軽口は許されるだろう。

「悪い悪い。あー……それより……なんだ」

「ん?」

 どうにもショウキの歯切れが悪い。敵にやられて溺れかけてたんだから、そうなるのも当然なんだけど……なんだろう、そういう歯切れの悪さとは違った。チラチラとあたしの方を見つつ、照れたような顔をしつつあたしと視線を合わせようとしない。

 気になって、ショウキの視線を追ってみると。あたしの服、特に胸の部分へと到達し……

「――――キャァァァッ!?」

 ……あたしの服が、水に濡れて透けていることに気づく。レコンとショウキは上着があって大丈夫だったようだけれど、あたしの服は白いエプロンドレスなわけなので、白い部分が水で肌に纏わりついて透けている。

 アインクラッドの時にアスナがコーディネートして、ここ、アルヴヘイムでショウキがそれっぽいのを買ってきた、この服で白いところというと。まずは手袋、これは別に問題ない。それとエプロン、外せば問題ない。最後に胸部がまるまる全て白い。

 ――そこは問題しかない!

「リ、リズちゃん? 急に悲鳴上げてどうしたの?」

「前を向く! 後ろを見ない!」

「はいっ!」

 カヤックの前に座っているレコンの耳元で叫び、二次被害をこれ以上増やさないことに成功する。だけど、後ろに座ってた奴には見られていてたわけで。それもじっくりと。

「ちょっ、えっ、あああああああんた」

 動揺で何を言っているか良く分からなくなってきた。あたしからは見ることが出来ないけれど、きっと顔を真っ赤にしているに違いない。ショウキは、目をそらしながら頬を掻くと、まさかの決め台詞を吐いた。

「あー……えっと。ナイスな展開じゃ……」

「ないわよ!」

 エプロンドレスの胸部を両手で押さえつつ、不自然にどこかを見ているショウキへと背中を向ける。ついつい手が出そうになったものの、手を出そうとしたら胸を見せなければならないというジレンマ。アバターだから、あたしの身体ではないわけだけど、そういうのは気持ちの問題である。

「……バカ!」

「いや、ちょっ……」

「……変態!」

「…………」

 髪の毛を掻いて苦笑いをするショウキに――ショウキが困っている時のサインだ――さっきのウンディーネ以上にキツい連撃を叩き込む。それは金属製の重い武器ではなく、ただのあたしの言葉だったけれど、ショウキにはメイス以上に痛い攻撃のようで。ブツブツと攻撃を続けるあたしに、後ろから皮で出来た服が投げられた……シルフの初期装備だったような。

「悪かったって……これは、その、男としては仕方ないんだ」

 むしろ開き直ったかのようなショウキにジト目を向けながら、ありがたくシルフの初期装備を羽織っておく。そして一発小突くと、他の場所を不自然に見つめていたショウキはバランスを崩し、カヤックの後ろから落ちそうになったものの、何とか無事にカヤックに留まった。……流石のバランス感覚。

「……ちぇっ」

「機嫌直してくれよ……」

 器用にも、掴まるところのないカヤックの後方で座りつつ、ショウキは苦笑いでこちらを見て来る。あたしが服を羽織ったおかげで、こちらを見れるようになったらしい。やはり困ったように苦笑いするショウキに対し、あたしは眉をひそめてアヒル口になりながら、その苦笑いを眺める。

「……明日、アスナの病院一緒に行く。それで許してあげる」

 SAO事件が攻略組のおかげで75層時点で終わったとしても、一部のプレイヤーたちは目覚めていないらしい……未だにアインクラッドから帰って来ていないかのように。アスナもその一人であるらしく、親友がどのような状態なのか……あたしは知っておきたい。

 ……今まで、逃げていたけれど。

「……ああ、分かったよ」

「えーっと……何の話か良く分かんないけどさ」

 ショウキがシリアスな口調で頷いた後、あたしが前を向けと脅したせいで蚊帳の外だったレコンが、おずおずと話に入ってくる。……少し、レコンには悪いことをしたかも知れない。

「そろそろ次の中立の町だから、一旦そこでログアウトしない? もう入りっぱなしだし……」

 確かに言われてみれば、午後からずっとこのゲームをやりっぱなしだった……もう夜だというのに。ログアウト出来なかったSAOのせいで、そこらへんの感覚が少し……いや、かなり鈍っているらしい。

「一回、リアルで調べてみたいことがあるんだ。だから、二人も晩御飯にしてよ」

「そうさせてもらうかな……」

 ショウキの言う通り、やはりこんな何時間もゲームをしているとお腹が空く。急いでいるのは確かだけれど、少し休ませてもらうことにしよう……

 ……こうして、あたしたちのパーティーは、待ち合わせをしてダンジョン途中の中立の町でログアウトした。あたしは、何か考え事をしているような……迷っているようなショウキの横顔を見つつ。 
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