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美しき異形達

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第四話 第二の怪人その二

「それに屋敷の中には執事さんがいてメイドの娘も何人もいるさ」
「それ何処の貴族だよ」
 執事やメイドの話を聞いてだ、呆れた顔で応えた薊だった。
「漫画みてえだな」
「それだけ祖父様の特許が凄いってこそさ」
「特許でこの屋敷が立ってか」
「それでな」
「執事さんにメイドさん雇ってか」
「凄いだろ、だから俺も報酬弾んでもらってるよ」
 庭師はにやりとしてまた自分のことを話した。
「有り難いさ」
「気前のいい家なんだな」
「金持ちこそ気前がよくないとな」
 駄目だというのだ。
「世の中そうだろ」
「確かにそうだよな」
「それで坊ちゃんもな」
 智和もだ、どうかというのだった。
「若いながら出来た人だよ」
「先輩は確かにな」
「いい人よね」
 二人は庭師の言葉を受けて顔を見合わせて話した。
「お金持ちなのに威張ってないしな」
「飾らない感じでそれでいて紳士でね」
「性格もいいよな」
「悪い人じゃないわ」
「だからだよ、俺達庭師も気持ちよく仕事が出来るのさ」
 仕事をするにもいい人のところでしたい、それでだというのだ。
「いい家だよ」
「そうなんだな」
「庭師さんにしても」
「そうだよ、とにかくさ」
 庭師は二人にさらに言った。
「坊ちゃんに会いに来たのならな」
「何処にいるんだよ、先輩」
「お屋敷の中ですか?」
「玄関にチャイムあっただろ」 
 ここでこう言った庭師だった。
「左横にな」
「あれっ、そうだったか?」
「そうだったんですか」
 二人は庭師の今の言葉にはきょとんとした顔になって返した。
「ちょっとそれはな」
「気付きませんでした」
「いや、あまり立派な門だからさ」
「本当に宮殿の門みたいで」
 それでだというのだ。
「チャイムまではな」
「気付きませんでした」
「まあな、白い門に白いチャイムだからな」
 庭師もこのことから言う。
「最初の人は見付けにくいかもな」
「じゃあそこに行ってチャイムを鳴らせばいいんだな」
 薊は庭師の言葉を聞いて応えた。
「そうすれば」
「ああ、そうだよ」
 その通りだと答えた庭師だった。
「そうすればいいんだよ、それか屋敷の玄関にもチャイムがあるからな」
「そこで押してもいいんだな」
「そうしてもいいぜ」
「そうか、じゃあもう行くついでだしな」
「お屋敷の玄関のところでね」
 チャイムを押して智和を呼ぼうとだ、二人は話した。
 そしてだ、そのうえでだった。
 二人は庭師に礼を言ってから屋敷の玄関のところに向かった、そしてだった。
 その樫の木の扉の前まで来た、あまり背の高くない二人から見ればその扉はかなり大きい。その扉の左手にだった。
 黒いチャイムがあった、薊がそれを押すと心地よい音が鳴った、それを鳴らしてからだった。
 薊は裕香に顔を向けてだ、こう言った。
「何時来るかな」
「それで誰が来られるかよね」
「やっぱり執事さんかメイドさんだよな」
「広いお家でだからね」
 それでだと言う裕香だった。
「来られるのに時間もかかるし」
「そうだよな、少しな」
「じゃあここで誰が来てくれるかね」
「楽しみに待とうか」
 だが、だった。そう話したところでだった。
 扉が開いた、そして智和が出て来た。ダークグレーのスラックスに黒い革靴、白ブラウスと青と白のストライブのネクタイ、それに赤いベストを身に着けている。 
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