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えすえふ(仮)

作者:えすえふ
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第四話「とても不幸でみんなが不幸でそして俺が大富鉱」

 
前書き
人は誰しも生きていく中で辛い現実に直面する。
程度はまちまちだが、それは神の試練と言わんばかりに人の心に襲い掛かる。
当然、その試練は誰にでも越えられるものではない。
だからこそ、人々は過酷な試練を乗り越えることに価値を見出すのだ。

ここに、渋難に打ち負けた少年が一人。
辛苦の最中に楽園を見た彼は、現実を捨てることを決意する。
それが、何の解決にもなっていないと知らず… 

 
 桜の花が散って間もない頃のことである。ふと冬二は何かに起こされた気がした。
 窓からは昼下がりの暖かい日差しが降り注ぎ、そのぬくもりが風に乗って自分を撫でるように吹き流れている。その暖かな陽気の誘いに釣られ、冬二は再びうつらうつらと夢の中に流されていく。

 また、何かに起こされたような気がした。

 ぼんやりとする意識の中で、温かい何かが自分の背をなでるように叩いたのをようやくはっきりと感じる。冬二は、未だにこの何かの意思を感じ取ることが出来ずにいた。

「はぁ…昼休みの後だから眠いのは分かるんだけどね…」

 不意に冬二の耳に声が届く。
 確かに、眠くて仕方ないな。春眠暁を覚えずとはこのことか。じゃあこのまま寝るのも仕方ないよな。

 そんな思考を巡らせていると、天からやや苛立ちを含んだ声が降り注いだ。

「先生としては、貴方には是非暁もお勉強も覚えて欲しいのよね」

 それは天からではなく、頭上からの声だった。冬二が寝ぼけ眼で見上げた先には物理教師の滝本仁美の姿があった。
 机に伏せるように寝ていた冬二からは仁美の高い身長も相まって、仁王立ちと言わんばかりの風貌を醸し出している。尚且つ、前方に張り出した彼女の双丘からは何やらただ事ではない威圧感と圧迫感を与えてくる。白衣の下のブラウスが服の上からでもそれが見事な形であることを彷彿とさせている。仁美は普段から淑やかな身なりを心掛けるために白のブラウスを着ているのだが、その体躯が上品な着こなしを全く別の雰囲気に仕立て上げていることに、彼女は自覚するどころか考え付きもしていない。

「…滝本先生には、人の心でも読む力があるんですかねぇ」

 むっつりとした表情で冬二はぼやくように仁美に聞く。しかし、視線は彼女の顔ではなく、その無自覚に主張する胸に向けられていた。

「貴方がはっきり寝言を言いすぎるからです。全く、テストで赤点取っても私は知りませんからね?それと、話をするときは人の目を見て下さいね」

 言われてようやく、自分が何処を見ていたかを自覚する。冬二は『すみません…』と会釈しながらようやく仁美の顔に視線を向けた。

 別段怒ってはいないようだが、何処か困ったような表情をしている。ややおっとりとした性格所以か、見られているということより、目を見てくれないという点に困惑しているのだろう。勝手な憶測ではあるが、そう察しながら自分の心から毒気が吸われていくのを冬二は感じるばかりだった。

「ちょっと眠かったんで…気を付けますよ」

「はい。なら後30分ばかりですが、頑張ってくださいね」

 そう言いながら仁美は、次に開くページを指示しながら教壇に戻っていく。

 何人かの生徒は黙って教科書を捲っているが、その他の大勢は今のやりとりに何かを察したのか、好奇や憐憫ないし嘲笑の視線を送ってくる。
 その中には春香もいた。やはり、彼女にも自分の毒気が気付かれていたのだろう。その眼差しには侮蔑の感情が込められているように感じた。

(うわぁ…あいつ凄く睨んでるじゃん…)

 あたかも視線に気付かないような素振りを見せつつも、内心困惑する。

(元はといえば、化学室の机の冷たさも気にならなくなるようなこの陽気が悪いんだ)

 クラスメイトに嗤われ、つい顔が火照ってしまい、つい責任を気候に転嫁してしまう。
 気恥ずかしさから二度寝に走ろうという欲求を噛み殺しながら、冬二はそっと溜息を吐いて教科書に手を伸ばす。

 押し潰されて開いたままになった教科書は、冬二の体温で机と共にほんのりと暖かかった。


 
 

 
後書き
はじめましての人ははじめまして。今回の担当を務めました中佐です。
今回は書くのが遅れて大変申し訳ありませんでした。
億劫になる時点で自分の怠慢さが顕著に表れてしまいますよね。
次回はスケジュールに負けることなくビシっとやってやります。

今回は、そもそもいろいろと話を考えていたんですよ。
朝公園で運動している老人やスポーツマン達に無理な運動をやらせる話とか。
そう、色々と…

ですがね、今回はすでにタイトルが決まってたんで「あー、これわかんねぇな」ってなりまして。
仕方ないんで、適当に不幸っぽそうな話をつらつらと書いてみました。
中学や高校でやっぱりあると思うんですよね。授業中の赤っ恥。
自分はただうとうとしているだけな筈だったのに…、気付けば大爆睡して皆の注目を集める的な。
または、先生の起こし方がやけに陰険だったり…。

や、僕もよくやりました。
眠たかった時に首を下げて眠りにつかないように出来る限り顔を上げてたんですが、気付けば首だけ天井を見上げて寝てしまって…
「お前のような寝方をする人間は初めて見た」
ええ、もう恥ずかしかったです。先生のその言葉で爆笑の渦が湧いた時にはもう一度寝てやろうかと。
以後その先生には目を付けられ、事あるたびにあんなことこんなこと…

ないです。

確かに目を付けられたのは事実ですし、事あるたびに絡まれたりはしましたがね。
ただし、いつもやられたのは逆水平チョップでした。
そんなに痛くなかったので、最後はお互いギャグみたいな気分でやったりやられてたりしたのはいい思い出です。

さて、話を戻しますが、今回のタイトルにもなりました「不幸」な話。
やはり普通の高校生の不幸ってのはそんなに辛いことがない限りはささやかなものだと思うのです。
そりゃ中には誰もが同情するような事情があるケースもありますが…。
それか、以前あったリアルな話でもモデルにしてやろうかとも思いましたが、下ネタばかりの話になりかねないので…それはまた別の話にしようかと。

さて、長々と書いてしまいましたが今回はこれまでにしようと思います。
次回はビシッとやりますので、よろしくお願いします。

最後に一言。
別に僕はおっぱいが好きなわけじゃないです(半ギレ) 
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