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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第二十話







「………やはり王双は曹徳ね」

「は…………」

 曹操は自軍に戻る最中、ポツリと呟き夏侯淵が頷く。

「軍儀で私を見つけた時は驚いてたけど直ぐに目を逸らしたわ。それに曹徳が何か嘘をつく時は何時も頭をかいていたわ」

「………よく見ているのですね」

「私は曹徳の姉よ? 姉は義弟の事を何時も見ているのよ」

 曹操が笑う。

「ですが……曹徳様に真名は……」

「えぇ。母上が嫌って付けてはいなかったわ。恐らく曹徳は自分で付けたのよ。曹家との絶縁の意味でね……」

「……………」

 曹操の言葉に夏侯淵は何も言わなかった。

 まぁ、実際は真名が無かったから自分で前世の名前を付けただけなのだが……。

「でも……戦略はまだまだだけど、武は強くはなっているわ。まぁまだ私達には敵わないけど」

「曹徳など私の大剣で地に伏せさせてみますよ華琳様ッ!!」

 夏侯惇が意気込む。

「あら、頼りにしているわ春蘭。さて、私達も準備をしましょ」

 歩いて話しをしているうちにいつの間にか自軍の陣営に到着していた。

「「はッ!!」」

 夏侯姉妹は曹操に元気良く返事をした。






―――夏侯惇SIDE―――

「ふぅ……」

 私は天幕に設置されている椅子に座る。

「……やはり曹徳殿は生きておられたか……」

 思わず安堵してしまう。

「おっと、曹徳にはキツイ目で見ないとな。何せ、曹徳殿からの命令だからな……」

『曹操を何が何でも守れ。俺の事は気にする な』

 私が幼少時に曹徳殿とお会いした時に言われた言葉。

 最初は分からなかった。

 だが、曹徳殿が華琳様より劣るのを知った 時、分かってしまった。

『曹徳殿は始めからこうなるのを分かっていたのではないか?』

 ……曹徳殿、私は華琳様を必ず守ります。

 だから……貴方は貴方の道を歩んで下さい。

 夏侯惇は天幕の外に出て青空を見た。






―――森の中―――

「ブェックシュンッ!!」

 俺は盛大に嚔をした。

「……五月蝿い。気付かれる」

「分かったから怒るな孫権」

 誰か噂をしているのか?

 ……多分夏侯惇だな。

 俺の言葉を勝手に美化してるんだろう。

 あぁそうそう。

 俺は奇襲部隊の司令官として、廃城の後方にある森の中に潜んでいた。

 袁術軍からは五千、孫堅軍は二千五百、曹操軍も二千五百だ。

 袁術軍からは俺、凪、クロエ。

 孫堅軍からは孫権、甘寧、周泰。

 曹操軍からは夏侯淵が来ていた。

 孫権が参加しているのは戦に馴らすためらしい。(孫堅が言っていた)

「とりあえず、もうすぐ夜だからこのまま待つしかないな」

 呆れた事に黄巾軍は後方の森を全く警戒していなかった。

 やっぱ烏合の衆だよな。






―――夜中―――

「偵察によれば、食料庫はこの倉です」

 偵察に出ていた周泰が俺に言う。

「よし、周泰。周りに魚油は撒いたか?」

「はい」

 周泰が頷く。

「なら王双。早く攻撃を」

「慌てるな孫権。夏侯淵、火矢の用意は?」

「準備は完了している」

 俺の言葉に夏侯淵は頷く。

「弓隊、構え」

 俺の言葉に火矢を持った弓隊が構えた。

「放てッ!!」

 弓隊が一斉に火矢を食料庫などに放ち、食料庫は瞬く間に燃えていく。

「か、火事だァッ!!」

「火を消せッ!!」

 眠っていた黄巾軍兵士達が慌てて消火活動をしようとする。

「全隊抜刀」

 俺の言葉に兵士達が剣を抜く。

「弓隊は援護射撃に徹しろ。残りは斬り込む ぞ」

 俺は刀を抜いて、廃城に刀身を向けた。

「目標、廃城にいる黄巾軍ッ!! 一兵残らず叩き斬れッ!! 全軍突撃ィィィーーーッ!!!」

『ウワアァァァァァーーーッ!!!』

 兵士達は雄叫びをあげて廃城に突撃を開始した。





―――董卓軍(張遼)―――

「張遼将軍ッ!! 廃城から火の手が上がりましたッ!!」

「作戦が始まったな。全軍に通達や突撃準 備ッ!!」

「はッ!!」





―――袁術軍―――

「お嬢様。廃城から火の手が上がりましたよ」

「おぉ、長門がやってくれたかの。突撃準備 じゃ」

「はい~」

 美羽の命令に七乃が頷く。






―――曹操軍―――

「華琳様、廃城から火の手が上がりました」

「そう。門が開いたら突撃よ」

「は」

 曹操の言葉に夏侯惇が頷く。

「……曹徳。貴方の戦い、見せてもらうわ」

 曹操は炎をあげる廃城を見て呟いた。







 
 

 
後書き
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