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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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神明裁判 ④

「にしても・・・」
「いくらやっても、数が減りませんね。」

音央と鳴央は、そうぼやきながら分身体を相手していた。
当然、二人の攻撃が効いていないわけではない。

音央は自らの力で妖精を片っ端から召喚して相手の気を引き、やれる場合には茨で拘束する。
鳴央はその隙に、奈落の穴で削り取り、血の一滴すら落とさせずに消滅させる。

今回のアジ・ダカーハに対して鳴央はかなり有効な一手だ。
流れた血から分身体を作り出す力は、しかし血が流れなければ発動することはない。
奈落の穴で吸い込む、という手段は血を流さずに無効化することが出来、その先で待っているのは忘却による消滅。
何の抵抗も出来ずに、ただただ存在そのものがゆったりと消えていくので、第一世代をそのまま消し去ることが出来るのだ。

とはいえ、これはいつでも通用する手段ではない。
今回は音央が気を引いていることと、相手が生まれたばかりであるから通用してこそいるが、成長して知力を持てば持つほどこの技は通用しなくなっていき、無駄になっていく。

「それでも、今、この場を相手するだけであれば、」
「問題なくいけるわね!」

そう言いながら、二人は次々と襲い掛かってくる分身体を片付けていく。
元々、この作戦を提案したのはアルマだ。
二人はあまりあの魔王についての知識もなく、知識のあるものが同伴するわけでもないので前もってアルマが二人の技量を元に作戦を提案したのだ。

ぶっつけ本番であるその作戦を完全に息を合わせて行えるあたり、流石は元は同一の存在である、といったところだろうか。

「鳴央、次行くわよ!」
「はい、音央ちゃん!」

そんなこんなで、二人は次々と分身体を無力化していく。
音央が一瞬拘束して、それに抵抗する時間を与えずに鳴央が神隠しにあわせる。
その隙に攻撃しようとするものは、全て妖精によって抑えられる。
この場においてのみ言うのであれば、完璧な作戦に完璧な行動。
今目の前にいる敵だけを倒す作戦。
だからこそ・・・

「おお・・・ようやく見つけたぞ、我が花嫁よ。」
「「!?」」

イレギュラーに、弱い。

「おやおや、そんな驚いた顔を・・・私のことを忘れてしまったのか」

そいつは・・・マクスウェルの友人であるそのキモイヤツは、劇でもやっているかのようなオーバーリアクションでそのことを嘆かわしく思っているかのように振舞う。

そして、そんなキモイヤツに対して・・・二人は、とっさに距離をとる。
無意識のうちに感じ取った格の違いと・・・

「・・・ねえ、鳴央。」
「はい、音央ちゃん・・・」

「「この人、ダメだ」」

同様に感じ取った、生理的に受け付けない面から、とっさに離れようとしたのだ。

「おお・・・何故私から逃げるのだ、私はこんなにも愛しているというのに!」

二人は無表情で攻撃を放ち、それをキモイ人は笑顔で受ける。
普通に気持ち悪い。控えめにいっても気持ち悪い。

「あぁ・・・記憶が戻っていないのだな。でも安心してくれ!君がゲームに捕らわれていたときは助けることが出来なかったが、今は違う!こうして、君の前に現れることが出来た!今度こそ、君を助けてあげよう、タイターニア!」

ここに来てようやく、キモイ人の目的が分かった。

「・・・って、私?」
「あの呼び方なら、そうでしょうね。私がタイターニアなわけないですから。」
「え、でも・・・私、ティターニアよ?」
「そこまで、差はなくないですか?」

その意味には大きな差があるのだが、箱庭の世界においてはそこまで大きな差ではない。
それゆえに、キモイ人も音央が目的なのだ。

「さあ、こっちに来たまえ!」
「イヤよ!私はアンタに助けてもらうつもりはないわ!茨の檻!!」

音央が割りと本気ではなった茨は、キモイ人の前で燃え尽きる。

「だったら・・・女王の命令に従いなさい!」

音央はそのまま、妖精を召喚して使役し、キモイ人を襲わせようとするが、

「王の命を聞け」

その一言で霧散してしまい、効果を出さない。

「な、なんで・・・」
「音央ちゃん!奈落の穴!!」

呆然とする音央を守るように、鳴央が奈落の穴を二人の前に展開する。
だが、キモイ人はそんなこと気にもせずに手を突っ込み、霊格を少し開放して中から破壊する。

「私とタイターニアとを邪魔するとは、どういうつもりだ?」
「・・・音央ちゃんを、連れていかせはしません!」

鳴央はそう言いながら手に桜羅天の炎と天狗のうちわの組み合わせで攻撃するが、それも効いた様子はない。
これまでに二人が相手したことのある中でも、かなりの実力者なのだ、このキモイ人は。
キモイが、確かに力は持っているのだ。キモイが。
大事なことなので三回言いました。

「そうか。だが、邪魔だ。」
「きゃあ!」

鳴央は腕の一振りで吹き飛び、木に当たって気を失う。
すぐそばにいた音央も同じように気を失い、キモイ人は慌てて駆け寄り、抱き上げる。

「おお、すまない・・・だが、すぐに君の記憶も戻る。そうしたら、謝らせてもらおう。」

そう言って、キモイ人は再び羽根を広げ、飛び立った。
 
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