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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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異なる物語への介入~クロスクエスト~
  探索1―Search1―

「じゃぁ刹那さんは、この世界の住人じゃない、という事なんですね?」
「はい。付け加えるなら、あなたもそうでない可能性が」

 アインクラッド第五十三層の迷宮区にて、天宮刹那と名乗った少女は、ハリンにそう言った。彼女の語るところによると、彼女は本来ならばこの世界とは違う世界…なんとそこではもうすでにSAOがクリアされているらしい…からきた存在で、この世界は何者かによって現在特定プレイヤー以外から切り離されている状態らしい。ハリンはこの世界が自分が住んでいた世界だと思っていたが、この世界から見れば、ハリンの方が異物なのだ。

 奇妙な事実をいくつも知る、この白い髪の可憐な少女が操る鎌は非常に強力で、出現するモンスターを片っ端から薙ぎ払っていく。ハリンも双刀スキルでモンスターと応戦するのだが、貢献度は天と地ほどの差だろう。

 モンスター達は、ハリンの知る第五十三層の物ではなかった。包帯を巻きつけた様な奇妙な存在……言ってみれば、ミイラ男の様な人型。昆虫のサナギを思わせる、緑色の異形。どれもこれも、本来ならば第五十三層迷宮区どころか、SAO自体にも存在していないモンスターだった。

 彼らには、カラーカーソルやHPバー、ネームタグが出現しない。それは目の前の少女もそうだ。加えて、今現在SAOでは、本来ないはずの流血描写が発生し、また、ペイン・アブソーバーも切られているようだった。

「……ヤミーにワームですか……なぜそっち方向……」
「え?」
「あ、いえ……何でもありませんよ」

 出現したサナギ系モンスターを一撃でほふりながら、刹那は答える。

「ただ……ちょっとだけ、見たことがあるかな、と思いまして。……もしかしたら、ボスの部屋にも、新しいボスモンスターが出現しているかもしれません」
「え……!?」

 現在ハリン達は、アインクラッド第五十三層迷宮区、その最奥部であるボス部屋へと向かっている。理由は至極単純、使えなくなった転移門や転移結晶以外で、他の層に行くためには、迷宮区を通らなければならないからだ。迷宮区最上階、ボスの部屋を通り抜ければ、その先には次の層へと向かう階段がある。プレイヤーやNPCが消滅するこの謎の現象が、五十三層以外でも起こっているのかどうかを確かめなければならない。そのためには、どうしても別の階層に移る必要があったのだ。

「私の予測が正しければ、恐らくお兄様もこの世界に入り込んでいるはずです。彼の助力を仰げれば、敵の情報をもう少し掴めると思います」
「本当!?……でも、お兄様って……?」

 ハリンが問うと、刹那は何を聞くか、と言わんばかりに答える。

「お兄様はお兄様です。私の。……今まで私たちが戦ってきたモンスターは、全て古い特撮番組の敵勢力です。お兄様はあのシリーズの熱狂的なファンなので、多分彼らに関する情報も持っているかと思います」

 さて、と刹那は呟くと、ハリンの持つ二本の刀を見た。

「ハリンさん、少し」
「え?うわっ!?」

 刹那が突然、ハリンの手を握ってくる。数秒ほど目を閉じていた刹那は、にわかに目を見開くと、呟いた。

「なるほど……これが《双刀》のデータですね……分かりました」

 刹那が手を離す。そしておもむろに、彼女は言った。

「ID【グリーア・イクス・アギオンス・オブザーバゼロ】より、アクセス《マスターズ・メモリア》。モードを《ヴァイオレットドレス》から《レッドドレス》に移行。技術情報を《鎌》から《双刀》に変更します。同時に使用武器を《ラティカペインR2》から《超震動神格装備試作二号機》に変更。実行します(スタート・オン)

 瞬間――――刹那の装いが変わった。薄紫色のコートはドレスめいた真紅のコートに変わり、黒いスカートは、同色のフレアスカートへと変貌。ブーツの代わりに銀色のグリーヴが出現。同時に腕の部分の服も変化。グリーヴと同色のガントレットが装備される。持っていた鎌は消滅し、代わりに水色の光の刀身をもつ、二ふりの刀が出現した。髪はショートカットからポニーテールに、銀色がかった髪色は朱色がかったものに変化し、目の色もオレンジから翡翠色に変わる。

 ふぅ、と髪を払う刹那は、まるで戦乙女の様であった。

「これでいいでしょうか……。鎌よりはこまわりが効くと思います」
「あ、え、あ……はい」

 何を言ったらいいのか分からないハリンは混乱するのみである。つくづく思うが、この少女はSAOのシステムを真っ向からガン無視しているのではないか……否。しているのだ。

「それでは、お兄様を探しに行きましょう。まずはこの層を突破することからですね」

 妹がこれなのだ――――兄とは一体どのような人物なのであろうか。ハリンは先行きが不安になって、こっそりため息をついてしまった。

 
 ***


「ハ―――――ッハッハハハハハハハハ―――ッ!!!イェャッハァ!!」

 一方そのころ、噂の兄は別階層の迷宮区で乱舞中であった。ここはアインクラッド第七十四層迷宮区ボスの部屋。アツヤのいた七十五層は最前線の為、別の階層に移るには迷宮区を下って行かなければならない。

 回廊を下って最初に入るのは、正攻法とは逆で《ボスの部屋》だ。この階層のボスは本来、キリトが二刀流の一撃でほふった山羊頭の悪魔、《ザ・グリームアイズ》。だが――――

 今、この部屋の主は全く違う存在であった。

「グォォォ―――――ン……」

 シャノンの巨剣に斬りつけられ、《ソレ》が悲鳴を上げる。石像のようにも見える、サイのような恐竜の様なそのモンスターは、非常に巨大だ。SAOのモンスターの中でも最大であった、アインクラッド第六十二層の海に出現するクジラ型モンスターと同じくらいのサイズだ。

「くふふふふっ!!ドーパントの次はオルフェノク!!しかもエラスモテリウムオルフェノクときた!!くぅ―――ッ!000(オーガ)555(ファイズ)の気分が味わえて最高だね!!」

 真紅の巨剣と黄金の巨剣を振るい、小型のビットを散開させるシャノンは、まさに鬼神。黄金のエフェクトライトを纏うソードスキルで、石像の巨大怪物を攻撃していく。だが、さすがにシャノン一人が戦うには、敵――――シャノンが言う通りなのであれば、エラスモテリウムオルフェノク…エラスモテリウムは絶滅したサイの仲間だが、オルフェノクとはどういう意味だろうか…という奇妙な名のそれは、あまりにも巨大すぎた。

「シャノン!手伝うぞ!!」

 アツヤもソードビットを展開する。アツヤの持つ黒い大剣、《悪我》によく似た漆黒のソードビットが出現し、エラスモテリウムオルフェノクに迫る。大剣が石像の怪物の動きを阻害し、攻撃を許さない。

「ハハッ!!」

 シャノンの巨剣の周りに、ビットたちが連結する。まるで鋸の様な姿になった巨剣を構え、シャノンは技名発声。

「――――《アメンラー・インティカ》」

 眩いばかりの黄金のエフェクトライトが発生し、大音響と共にエラスモテリウムオルフェノクを貫く。鮮血は飛び散らなかったが、石像の怪物は苦悶の叫びをあげる。

 それに呼応するように――――突如、ボス部屋の外から、何者かが侵入してきた。

 多い。二十人近くのそれは、黒と銅色のボディースーツに身を包んだ、奇妙なつるりとまるい頭の人型だった。

 シャノンの顔が驚愕と狂喜に彩られる。

「ライオトルーパー!!」

 どうやらシャノンはこの奇妙な人型たちを知っていたらしい。エラスモテリウムオルフェノクの攻撃を器用にさばきながら、解説を始める。

「スマートブレイン社が開発した、いわばライダーズベルトの量産機、《スマートベルト》で変身する、俗にいう《量産型ライダー》だ。ほかにはウィザードの《メイジ》なんかがあげられるよね。……オルフェノクでないと使用できなかったライダーズベルトと違って、装着者を選ばない事、ファイズ、カイザを超える汎用性でライダーたちを苦しめた……ちなみに一体一体はそんなに強くないよそんなに、だけどね」

 にやり、と笑うシャノン。うん。全く分からん。話の内容について行けない。とりあえず、倒さなくてはいけないことは分かった。双大剣ソードスキル《デストラクション・デストラスト》を起動する。九連撃の攻撃が、それぞれ片手ずつの剣から放たれる。合計で十八連撃だ。ライオトルーパーは大抵一体が二撃でポリゴン片に変わるほど弱い。攻撃が終わるころには、すでにその大半が消滅していた。

「ヤァッハハ――――ッ!!」

 シャノンがこれが最後と言わんばかりに、真紅のエフェクトを宿した二本の巨剣で、石像の怪物を斬りつけまくる。断末魔の方向を上げ、エラスモテリウムオルフェノク、爆散。

「くふふっ、あとはライオトルーパーだけ?」
「ああ。この調子なら結構簡単に倒せ……………!?!?!?!?」

 そこでアツヤは、信じられないものを見た。

 ライオトルーパーが入ってきた、七十四層迷宮区ボス部屋の扉は開かれている。そしてその向こう側に――――いつの間に現れたのか、少なくとも百を回るであろう数の、つるつるヘッドが現れていた。言わずもがな、全員がライオトルーパーである。

「おーおーおー。一万体いるっていう設定はホントだったのね……よしっ、殺ろうか」
「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!?」

 アツヤの叫びを感知したかのように、ライオトルーパーたちは、一斉に突撃を始めた。 
 

 
後書き
 迷宮区の出口は外に出たら消える?……無視します。

刹「片っ端から仮面乗り手ネタ……しかも未公開話のネタバレまで入ってるじゃないですか!!」

 大丈夫。何とかなるさ!!

 次回もお楽しみに。 
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