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悪役スター

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第二章

「こんな奴早くやっつけられたらいいんだ」
「早くライダーにやられたらいいんだ」
「あらあら、本当に人気なのね」
「子供達にも注目されてるのね」
 だが、だ。母親達はこう言うのだった。
「特撮に出たの正解だったわね」
「この人にとってもね」
「何が正解なんだよ」
「こんな奴死ねばいいんだ」
「ライダー頑張れ」
「こんな奴に負けるな」 
 子供達は秋山が大嫌いだった、彼が演じる大佐も嫌いだがそれと共に秋山が嫌いだった。それで秋山に事務所には。
「今日も手紙一杯来てますよ」
「そのうち子供の割合は幾らかな」
「七割ですよ」
 伊武は笑って秋山にこう話す。
「というかお手紙の量が増えた分は」
「子供の分だけ」
「そうです、それだけ増えてます」
「子供は凄いね」
「まあ内容は内容ですけれど」
 その内容はというと。今はメイクをしておらず普段着の秋山が開いて行くと。
『御前なんか負けろ!』
『悪いことするな!』
『人殺し!』
『悪者!』
『これ以上ライダーを苦しめるな!』
『僕が御前を倒すぞ!』
『正義は絶対に勝つんだ!』
 完全に大佐と同一視されている、それで秋山は笑ってこう言うのだった。
「最近いつも思うけれどな」
「子供って凄いですよね」
「俺そこまで悪いんだな」
「今日本で一番悪い人間と思われてますよ」
 伊武は笑って秋山に言った。
「多分ですけれど」
「まあそうだろうな」
「はい、特撮に出てから」
「そうだろうな。しかし」
「しかし?」
「何か面白いな」
 楽しげに笑ってだ、こうも言う秋山だった。
「今の状況はな」
「特撮に出てですか」
「ここまで子供達に言われるなんてな」
「役者冥利に尽きますか」
「最高の気分だよ」 
 悪役としてだ、人気があることはというのだ。
「この前街を歩いていたら親子連れがいてね」
「何か言われました?」
「子供は女の子だったんだけれどね、俺を指差してね」
 そして何を言ったかというと。
「ライダーに代わってあたしがお仕置きしてやるって言ったわ」
「ああ、それはまた」
「面白いだろ」
「最高ですね、それは」
 伊武は羨ましそうに秋山に言った。
「本当に役者冥利に尽きますね」
「全くだよ、お母さんは握手して下さいって言ってたけれど」
「そっちはどうなりました?」
「娘さんがお母さんに近寄るなって怒ってたよ」
 そう言ったというのだ、今度は。
「近寄ったらあたしがやっつけるってな」
「本当に子供達に注目されていますね」
「いいね、特撮は」
「時代劇とか刑事ドラマも好きですよね」
 勿論こちらでも悪役で出てきている、しかしだというのだ。 
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