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ケロイド

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第二章

「まあヒロさんはな」
 広樹を仇名で呼んでの言葉だ。
「今大変だけれどな」
「どうってことないですよ」
「大した怪我じゃないっていうんだな」
「ちょっと油がかかっただけですから」
 そうした火傷だからだというのだ。
「何てことないです」
「だといいんだがな」
「二日か三日で包帯取れますから」
 だからだというのだ。
「お気遣いは無用です」
「そうなんだな」
「はい、ご心配なく」
「それじゃあいいがな」
「はい、じゃあもうそろそろ休憩終わりですね」
「ああ、後は昼までな」
 仕事の話になる、監督は今解体中のビル、廃墟から無になろうとしているそのビルを見てこう二人に言った。
「やってな」
「それで、ですね」
「あと一週間だな」
 それで解体が終わるというのだ。
「もう少しだな」
「そうですね、そんなところですね」
 今度は克幸が応える。応えながら髪の毛を後ろから上に束ねなおしてヘルメットに入れた。作業中はそうして髪が邪魔にならない様にしているのだ。
「ここは」
「それで次はな」
「今度はここの隣街のですね」
「そこでの仕事だからな」
「わかりました、まあその時には」
 広樹は自分の左手に手袋を嵌めつつその甲を見て言う。
「ここも何とかなりますね」
「早いな」
「というかちょっとしたものでしたから」
 そうした火傷だったというのだ。
「それもすぐに手当しましたし」
「そうか、今は無理はするなよ」
「わかりました」
 こうした軽いやり取りをした、広樹は自分の火傷について楽観していた。早いうちに手当を慎重にしたこともあってだ。
 それで落ち着いていた、だが。 
 包帯を取ってだ、彼は自分の左手の甲を見てびっくりした。それは朝仕事に行く前のことだ。完治したと思い最後の包帯を取ると。
 その甲を見て我が目を疑った。職場に言ってもそれを克幸に見せてこう言った。
「これどう思う?」
「おい、何だよそれ」
「今朝気付いたんだけれどな」
「包帯はいつも替えてたよな」
 それで火傷の傷跡はチェックしていただろうとだ、克幸は広樹にこのことを問うた。二人は工事現場に向かう車の中で話をしている。既に作業服に着替えている。
「それで見てたよな」
「それでもな。今朝見たらな」
「急にか」
「この形になってたんだよ」
 そうなったというのだ。
「訳がわからないことにな」
「しかしこれはな」
 克幸はその甲、広樹のそこを見つつ怪訝な声で言った。
「ないだろ」
「普通はそうだよな」
「祟りじゃないよな」
 見れば火傷の跡は人の顔の様になっている、目と鼻それに口がある。それを見ていると今にも喋ってきそうだ。
 その人面の様な跡を見てだ、克幸は言うのだ。
「それって」
「多分違うさ」
「そうだよな、幾ら何でもな」
「というか本当にそれだったらな」
「すぐにお祓いしないとな」
 それこそだというのだ。 
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