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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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お前らに本物のスパロボチート見せてやる・中編

 
前書き
スパロボを厨二と言う奴がいる。
あれは浪漫だと言い返す奴がいる。
どちらも間違っている。

厨二も浪漫も熱血も愛も、等しく全てスパロボの一部である。
全てを愛してこそ、スパロボはより一層輝くのだ。

                  ~海戦型の脳内より抜粋~ 

 
ティーダ・ランスターにとってスカラ・グランセニックは同僚であり、同期であり、年上であり、非常識であり、しかし頼りになる男だ。

少しばかり赤みがかった茶髪の長身と妙にマイペースな言動。執務官志願で生真面目な性格だったティーダにとって、比較的授業態度の悪い方であるスカラはあまり好ましい存在ではなかった。寮内でのルームメイトになった時もこの男とやっていけるのか不安だったし、正直彼ののんびりした所は傍から見るとだらけているようにしか見えなくて好きになれなかった。

だが、スカラはそんな見た目とは裏腹に凄まじい才能の持ち主だった。
魔力ランクSSSの空戦魔導師という数十年に一人レベルの逸材で、解析不能のレアスキルまで所有するまさに才能の塊。趣味でやっているというデバイス弄りの腕もデバイスマスター級。座学も本人のやる気がないだけで、その気になれば満点に近かった。

嫉妬しなかったかと言えば嘘になる。今だってそう言う感情を抱いてない訳じゃない。
でも、スカラには恐ろしく欲が無かった。管理局に入ろうとしたのも単純に就職に辿り着くまでの時間が一番短かったからで、最初の彼は海と陸の部署の関係すら理解できていなかった。挙句の果てに「面倒だからお前が俺の進路を決めろ」とまで言った日には流石に怒って説教した。

しかも自堕落なくせして実技では単独、集団行動共にすこぶる優秀で、彼の援護が失敗した所をティーダは一度も見たことが無い。それ所か魔力運用やバトルスタイルはスカラのアドバイスで向上していた節さえある。指揮官、兵士、教官の一人3役をこなし、頼まれれば大抵のことは手伝ってくれるスカラはいつしか士官学校の兄貴分になっていた。
ティーダたちと同期の皆は、彼のおかげで今も第一線で活躍し続けていると言っても過言ではない。あの世代の卒業生は士官学校の歴代でも最高の平均点を保持していたし、ドロップアウトした奴も誰一人いなかった。皆が口には出さずとも、スカラのおかげだと心のどこかで思っている。


そんな自堕落な彼が突如奇行に走りだしたのが、共に陸の部隊に配属になった時だった。

「す、スカラさん・・・何ですかそれ?」
「何って、バイク型デバイス。カートリッジの術式改変してバッテリーに組み込んだんだよ」

それはもうデバイスの企画に収まっていない、と叫びたかった。
デバイスは杖型が基本だ。現に局内で支給されているデバイスの8割以上が杖であり、ティーダの持つ拳銃型のように杖以外のデバイスは珍しい。が、どんなデバイスでも携帯性などを考慮して歩兵用のサイズにするのが普通だ。それをこの男、バイクを直接改造してデバイスにでっち上げてしまった。改造は違法ギリギリだが、これでも辛うじてデバイスで企画が通るのが恐ろしい。

結論から言おう。このバイク、クッソ強かった。

彼の粋な計らいで二人乗りできる構造になっているそのバイクは魔力と電力の複合バッテリーのため本人の魔力は大して使わず、しかも強力なプロテクションを張ったまま高速移動が出来るため攻撃が全然直撃しない。そして乗っている側からは魔法を撃ちこみ放題。スカラの超絶技巧テクニックもあってか今も壊れず現役である。
最初はイロモノだの絶対死ぬだのと言われていたし、ティーダ自身そのバイクには乗りたくなかったのだが、「これに乗ってたら出世できる」という甘言にひっかかり乗ってしまった。

凄かった。高速で走りながら魔力弾を敵に打ち込むのは普段の自分の脚で移動するそれと違ってシューティングゲームの様な爽快感があった。何せスカラの操縦の恩恵でどんな悪路も走破するし、攻撃が当たる心配をしなくていいのだ。最初は戸惑ったがすぐに病み付きになり、スカラがヘリに興味を持つまでは2人コンビで世紀末モードだった。

考えてもみてほしい。

犯罪者集団にノーヘル二人乗り(しかもティーダは両手離しでも姿勢が安定するよう後部席が調整されている)バイクで突進し、敵をバカスカ撃ち落としながら自身も突進で敵を撥ね飛ばしまくる管理局員・・・しかも二人とも心底楽しそうに法定速度をぶっちぎり、挙句逃げる犯罪者を徹底的に追い立てて武器を破壊していく管理局員・・・

どこからどうみても悪質な暴走族である。

手柄は立ったが、代わりに「世紀末局員」のレッテルを張られていることに気付いた時には流石に涙が出て来た。何度もやめようと思ったが、悔しい事にあのバイクの後部席は間違いなくお気に入りの特等席だった。あそこで風を切りながら二人で無双する爽快感ときたら・・・途中で2丁拳銃に持ち替えたり、フェイク・シルエットで数が増えたように見せかけて敵を攪乱させながら走り回るあの楽しさは今でも忘れられない。

その未練が引いて、こんな辺鄙な部隊に飛ばされた後もあのマイペースな男を恨めずにいるのだ。


・・・まぁいいさ。こうなったら出世のためにとことんスカラさんを利用させてもらおう。何だかんだで執務官の勉強と訓練にも付き合ってくれるから損はないのだ。

何より、妹のティアナに「お兄ちゃんとスカラさんって管理局最強のコンビなんでしょ!?」と目を輝かせながら言われてるから今更コンビ解消なんて出来ないしねー。そうだよーお兄ちゃんたちは最強のコンビだよー!
・・・とは言うものの最近は―――

「斬り込む!付いてこい、レゾナ!ティーダ!ヴァイスは離れすぎるなよ!」
「はい!パパ仕込みの剣術をとくとご覧あれ!」
「狙撃手に無茶言ってくれますね・・・了解!」
「いざとなったら僕がカバーするさ!」

こうして前線に立って援護してる方が多いのだが。

うちの部隊はシグナム隊長が先行攻撃(フロントアタッカー)、ヴァイス君が後方支援(フルバック)、レゾナちゃんが少し変則的な連携支援(ガードウィング)そして僕が陣形中央(センターガード)の形式を取っている。それに必用とあらばオペレータになるスカラを加えて計5名。少数精鋭の強襲部隊は今日も大忙しである。

はぁ、そろそろスカラとバイクでかっとびたいなぁ・・・



===



「せやぁ!!」
「ぐぎゃぁ!?」

目の前の暴徒を非殺傷設定のレヴァンティンで一閃。潰れたカエルの様な声を出した男は後方に吹き飛んだ。その男を助けようと咄嗟に物陰から飛び出した男をヴァイスの魔力弾が的確に捉えていく。恐ろしいほどの精密射撃はただ一発の無駄弾もなかった。

ヴァイスの狙撃は正確無比。恐ろしいまでの腕にはいつも助けられている。魔力に特別優れてはいないが、それを補う非凡な才能を持つ頼もしい部下だ。

「ナイスカバリング!」
「援護に回ります!レゾナちゃんは前へ!」
「待ってました!とぁぁぁーーー!!」

驚くほどの跳躍力で壁を三角飛びしながら前線へ飛び込んだレゾナはその手に持つ片刃大剣型デバイス「モナドmk3」を大降りに振り回した。放たれる長い魔力刃を躱しきれなかった暴徒たちが余りの威力に吹き飛ばされて宙を舞う。レゾナが体勢を立て直すと同時に周囲に落ちてきた暴徒たちが折り重なった。

レゾナの剣は豪放磊落(ごうほうらいらく)。小を呑み込み大を斬る豪快な太刀筋は父親から受け継いだものらしい。ベルカ式とはまた違う術式を使っているが、同じ剣士として頼もしい。

「うわぁぁぁーーーー!?」
「下がれ!迂闊に前に出るな!」
「畜生、撃て!撃ち殺・・・」

すぐさまレグナを取り囲むように拳銃が付きつけられるが、その行動は遅きに失した。

「口より前に手を動かそうか!フルシュート!!」

既に援護の体勢に入っていたティーダの魔力弾が矢継ぎ早に撃ちこまれて暴徒たちは次々に吹き飛ぶ。2丁拳銃に加えて別個に展開した射撃魔法が簡易な弾幕と化していた。

ティーダの援護は挙一明三(こいちみょうさん)。一人のアクションから次に取るべき理想の行動をすぐさま察知して全員の益になる行動へ移れる。理想的なまでのセンターガードだ。

そして私こと隊長シグナムと後方のスカラの2人を加えた5人が「海陸混成第一部隊強襲班」の全てである。


海陸混成部隊とは、管理局でごく最近試験運用で結成された部隊である。結成の理由は、管理局内の「海」と「陸」の関係を発端とする。管理局内には大別して「海」と「陸」の二種類の部隊が存在するのだが、2つの間には同じ組織でありながらも対立している部分があるのだ。

「海」は次元震の観測や次元世界を又にかけた事件の解決や裁判など次元の外に向かう仕事を行うのだが、ミッドチルダではこちらの方が重要度が高いと判断されて人材も資金もこちらに偏っている。当然同じ組織内にある「陸」はこれによって多くの不利益を被る。余りにも予算と優秀な魔導師を持って行かれるものだから肝心の仕事である治安維持にも不都合が生じるレベルであり、結果として2者の対立は悪化の一途を辿った。

その関係を改善しようという動きが生まれたのが2年前の「戦闘機人事件」だ。

戦闘機人。
それは人体を改造し機械と生体を融合させて後天的に高い戦闘能力と魔力を手に入れた、所謂『人造魔導師』というやつだ。万年魔導師不足で苦しめられている現状を解決するために管理局の一部が独断で行っていたこの計画は非人道的であり、当然このような実験は違法である。

シグナムはその研究所を陸がどうやって特定したかとか、そう言った細かい事情までは把握していない。知っているのはその結末だけだ。
手柄を焦った地上部隊はほぼ独断で戦力を投入するも、既に実用段階に至っていた戦闘機人の抵抗を受けて苦戦。あわや死人を出すところまで追い詰められる結果となった。被疑者の半数には逃走を許し、そしてその失態の過程で民間に流出したある映像が決定打となる。


そこには、研究所内をバイクで爆走しながら敵の戦闘機人を追いかけ回す2人乗りの管理局員の姿があったのだ。戦闘機人は明らかに戦意を失っているにも拘らず容赦のない射撃で追い詰めるウィリー走行のバイクは、それはもう凄まじいインパクトだった。


流石に局員と容疑者の顔は塗りつぶされていたが、それを見た「海」側はこう断定した。

―――地上部隊が余りの戦力の無さに暴走(ヒャッハー)してしまった。

バイクで出撃させるなど従来の魔導師では考えられない暴挙である。理由は言わずもがな、バイクを操縦しながらの戦闘行為が運転手にとって危なすぎるからだ。というかいっそ自殺行為と言ってもいい。それも二人乗りでノーヘルとあらばさらに危険度は増す。専門家は運転をしているのが非魔導師で後部に乗っているのが陸戦魔導師であると推測、機動力を得るための苦肉の策だと判断した。(そのバイクが実はデバイスであることが判明したのはだいぶ後である。)

無論地上でそんな真似をしているのはたった2人しかいないのだが、それを切っ掛けに海が地上に戦力を貸与する形の一つとして「海陸混成部隊」の構想が出来上がった。
元々内部では、管理世界と管理外世界の間で行われる次元犯罪などいくつかの受け持ちが曖昧な事件を解決する機動力を持った部隊が求められていたのだ。海陸混成部隊は両方から人材と資金を得ているためどちらの懸案にも問題なく介入でき、一部の特別要請を除いてある程度独自の行動が認められる少数精鋭部隊。既に第1から第14までの部隊が編成されており、司令部の指示に従って元気に活動中だ。どちらかと言えば仕事内容は陸寄りのため、こうして犯罪者を捕まえるのが主な仕事になっている。

なお、構造としては司令部の下に強襲隊、そして強襲隊一部隊は後方支援班と強襲班の2つで構成される。人数としては後方支援隊が圧倒的に多く、海と陸の技術交換の場にもなっているとか。
正直、局に入って日も浅いうちから隊長に指名されて驚いたが、どうやらここは比較的新人や訳ありの人間が多めに抜擢されているようだ。今ではこうしてチームとしてやっていけている。(ちなみにヴィータも別の部隊で隊長をやっている)


と、次々に暴徒を鎮圧するシグナムへ後方のスカラより念話が入った。

『こちらスワロー1。どうした?』
『こちらアルバトロ1、暇です』
『あと5分で終わる。もう少し待て』

相変わらず緊張感のない男だ。普通ならここで油断するなとかフラグだぞとか言ってやるべきなのだろうが、この男には余計なお世話だろう。

『あ、あと長距離レーザー射撃を受けました。5、6発避けたら帰っちゃいましたけど・・・テロリストの所持するのとは明らかに質が違いましたねぇ』
『そっちを先に話せ馬鹿者!』

ヘリを光学兵器で狙撃する手口など今まで報告が無い。これで普通のヘリパイロットなら即死している所だろうが、スカラが操縦していたことを考えると大した脅威に聞こえないのは何故だろうか。・・・よく分からないが苗の所為な気がする。私の人生の驚きの半分くらいは苗相手に使ってしまったからな。現在分身は4体に増え、それぞれ海鳴町、仙人界、幻想郷、ガイアセイバーズ本部で活動しているとかなんとか。

5分後、予定通りに暴徒鎮圧が完了した。矢張りと言うか、ヘリは相も変わらず無傷だった。



 = = =



漸く仕事が終わった皆を回収して帰路に着く途中、俺意外の全員はこのヘリに搭載してある液晶パネルに映し出される映像を前にコーヒーを一服していた。あまりこだわった珈琲ではないが、インスタントにしてはなかなかいい香りだ。
皆はというと、基地に帰ってからすればいいのに俺を狙撃してきた光がどうしても気になるらしい。完全にワーカーホリックだね。4人とも何度も射撃のリプレイ映像を食い入るように見つめてる。

「ふむ・・・光学兵器には詳しくないのだが、レーザーにしては何というか・・・大出力過ぎないか?これだけの太さで破壊力を持った物となると最早艦載兵器並みの大きさになると思うのだが」
「むしろ粒子砲か魔力砲と言われた方がしっくりきますねぇ・・・威力の減退が殆ど無さそうです」
「この波長パターンを見てください。該当データはありませんが、境界領域の光彩がくっきりしすぎています。変換資質による”定義付け”と類似する点が見られますね」
「となると相手はレアスキル持ちの違法魔導師か?」
「いやいや、そうとも限らんよ?戦闘機人には『インヒューレントスキル』っていう人工レアスキルを標準装備してたらしいからそっちの線もあり得る。人造魔導師系列で探るのもありじゃないかな」

そしてその解析にヘリを操縦しながら答える。コクピットに取り付けたパネルを通して俺も映像を見てたのさ。いわゆるわき見運転だね。ま、別に基地に帰るだけならオートパイロットで行けるので、操縦というよりは計器の監視なのだが。
と、そんな俺の一言にティーダ君の動きがピタリと止まった。

「あれ?どうしたんですかティーダ先輩?」
「・・・・・・・・・スカラさん。戦闘機人事件には僕も貴方と一緒に参加していましたけど、その人工レアスキルの話は初耳ですよ?」
「友達から教えてもらった」
「十中八九秘匿情報ですよね!?誰ですかその友達は!!」
「深追いするな・・・・・・”こっち”に戻れなくなるぞ」
「こっちの意味が分からないのに凄く説得力がある!?」

そいつは三角形の秘密並みに教えてあげられないね。情報提供者はスカさんだけど、あの人が何者かなんて俺も知らんから敢えて言わない。互いに過干渉すれば余計な諍いが起きることが目に見えてるからね。どう考えても堅気の人じゃないし。なんにせよこれ以上の解析はそっちの班に回した方が確実だろうと隊長が話を締めた。

うん、今日も俺はチート能力を殆ど発揮しなかったな。
俺「の」チートは。
 
 

 
後書き
スパロボをやらない人が必ずといっていいほど口にする言葉があります。
「見たことないロボットアニメあるし・・・」
「参戦作品に知らない奴がいるし・・・」
「知ってるやつ一つしかないし・・・」
・・・・・・そんな事を言われたら私なんかアニメを見たことのある作品一つもないままスパロボ始めてるんですよ?スタッフさんが丁寧に知らない作品があってもある程度ストーリーの分かるように丁寧に作ってあるテキストの存在意義をこの思想はぶち壊しています。
スパロボは知っている作品を見に行く場であると同時に、知らなかった作品との出会いの場でもあるんです。シナリオの関係で活躍の少ないロボットもあるかもしれませんが、だからこそスパロボプレイヤーは「この作品の原作を知りたい」と思えるのです。
というわけで露骨に意味のないスパロボやれよアピールをする海戦型でした。最近スパロボプレイヤーが周囲に一人増えて嬉しかったりします。


レゾナ (姓はない。何故なら彼女の住んでいた世界にその文化が無いから)
15歳 二等陸士
余所の管理外世界からスカウトされた女の子。父親が名のある剣豪だったらしく、その太刀筋を受け継いでいる。デバイスのモナドmk3は、厳密には彼女の世界の武器にデバイスの特性を組み込んだ物であり、ミッドではセミロストロギアとでも呼ぶべき武器。接近戦主体でありながらブーステッドデバイスの役割も果たせるため変則的にだが連携支援という位置についている。時々近い未来が見える未来視のレアスキルがあるが、周囲には内緒にしている。

ちなみにゼノブレイド世界の人という設定。妄想ストーリー『陸上警備隊第616部隊』のキャラの一人として妄想してましたのが、ゼノブレイドのシュルクと被ってて彼女もモナドを握ることになったり。 
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