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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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終わる、そして、始まる。


海を走る、一隻の船があった。
そこには普段は絶対に見られない、そして今まで1度も見た事のない光景がある。
それは―――――

「ああ・・・船って潮風が気持ちいいんだな」

ナツだ。
いやナツなんて何度も見たよと言いたくなるのだが、今は船に乗っている事を忘れてはいけない。
そう・・・あの極度の乗り物酔いをするナツが!
船に乗っているのに酔っていないのだ!

「乗り物っていいモンだなーオイーーーーーー!」
「あ」

今までは悪魔としか見えなかった乗り物の良さを初めて知り、大はしゃぎでナツは走る。
だが、そこにウェンディの一言が炸裂した。

「そろそろトロイアが切れますよ」
「おぷぅ」

バランス感覚を養う魔法、トロイア。
それをかけているからナツは酔わずにいたのであって、それが解けてしまえばいつものナツに逆戻りである。

「も・・・もう1回かけ・・・て・・・おぷ・・・」
「連続すると効果が薄れちゃうんですよ」
「放っとけよ、そんな奴」
「酔っててくれた方が静かでいいわ」
「あはははっ!」
「ごめんねーナツー。僕はトロイア使えないから」

先ほどまでのハシャギようはどこへやら。
グロッキー状態のナツにグレイとティアは呆れたように言い放つ。
その光景を見てルーシィは笑い声をあげ、ルーは少し困ったような笑みを浮かべて呟いた。

「本当にウェンディ達とシャルルも妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来るんだね」
「うん!これからよろしく、ハッピー」
「私はウェンディ達が行くって言うからついてくだけよ」

ハッピーの頭を撫でながらアランが微笑み、シャルルは変わらずツンとした態度で接する。

「楽しみです!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!」
「皆さんお世話になります」

化猫の宿(ケット・シェルター)は消えた。
その為ウェンディ達はエルザの誘いに乗り、妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ加入するのだ。







戦いは終わる。
数々の別れを経験して。
―――――戦いが終わって、連合軍はそれぞれのギルドに帰る。
青い天馬(ブルーペガサス)も。

「また素敵な香り(パルファム)を!エルザさん、ルーシィさん、ティアさん」
「今度こっちに遊びに来てね」
「その時は最高の夜をプレゼントするよ」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)も。

「マスターマカロフによろしくな」
「グレイ、脱ぎ癖直せよ」
「お前に言われたくねえよ!」

青い天馬(ブルーペガサス)の一夜やヒビキ、イヴは変わらず『ホスト(ティア曰く)』だった。
脱ぎ癖を直せとグレイに言ったリオンだが、言っている時に服を脱いでいてしまっては説得力は皆無。
当然グレイはツッコみを入れた。
そして天馬のレン、蛇姫のシェリーはというと―――――

「てか・・・あれ、放っておいていいの?」
「仲よしー」
「できてぇる」

ルーシィとルー、ハッピーは呟いた。
その視線の先には、

「と・・・とっとと帰りなさいな」
「さ・・・さみしくなんかねえからな」
「シェリー!」
「レン!」

少しいい感じになっているシェリーとレンがいた。
どうやらクリスティーナを浮かべていた際に進展があったよう。
そんなこんな色々ありながらも、彼らはギルドへと帰っていった。








そしてもう1つ。
ルーシィの手元には、新しく3つの鍵がある。

「エンジェルが捕まって契約が解除されたんだ」
「うんうん」
「「ピーリッピーリッ」」
「ウィーアー、そんな訳でオレっちとしてはアンタに新しい所有者(オーナー)になってもらいてえ」
「ダメでしょうか」

双子宮のジェミニ、天蝎宮のスコーピオン、そして白羊宮のアリエス。
エンジェルと契約していた星霊、その中でも世界に12個しかない黄道十二門の鍵の星霊はルーシィに契約を願い出たのだ。

「黄道十二門の星霊が一気に3()も・・・!?」

まさかの出来事にルーシィは目を見開く。
が、スコーピオンはルーシィの言葉に引っかかりを覚えた。

「人?オレっち達の数え方は“体”だぜ、ウィ?」

そう。
本来星霊は1体2体と数えるのが普通だ。
ナツ達に星霊の説明をしたルーシィもハッピーにそう教えていたはず。
その指摘にルーシィは照れくさそうに笑った。

「あ・・・うん・・・それ、止めたんだ。ロキとか人みたいでしょ?何か・・・物みたいに数えるの、抵抗出来ちゃって・・・」

星霊思いのルーシィらしい理由。
その言葉に、アリエス達は顔を見合わせ笑った。

「よろしくお願いします、オーナー!」
「うん!こちらこそよろしくね。スコーピオン、アリエス、ジェミニ」









化猫の宿(ケット・シェルター)からハルジオンの港へ。
そしてそこからマグノリアへと向かい、ナツ達はギルドへ到着した。

「・・・という訳で、ウェンディ、シャルル、アラン、ココロを妖精の尻尾(フェアリーテイル)に招待した」
「「「よろしくお願いします」」」

ギルドに帰って来るなり事情を説明し、エルザはウェンディ達を紹介する。
紹介された3人はペコリと頭を下げた。

「かわいーっ!」
「こっちの男の子も素敵だよー!」
「ハッピーのメスがいるぞ!」
「みんな、おかえりなさい」
「おジョーちゃん達、いくつ?」

新しい仲間の加入に、これ以上ないくらいに騒ぐメンバー達。

「マスター」
「うむ、よくやった。これでこの辺りもしばらくは平和になるわい。もちろんウェンディ達も歓迎しよう」

エルザに呼ばれ、マカロフは優しい笑みを浮かべた。

「ルーちゃんおかえり~!」
「よく無事だったな」
「だんだんルーシィが遠い人に・・・」
「レビィちゃん!」

帰ってきたルーシィに、親友のレビィが駆け寄る。
自分達より所属は遅いはずなのにバラム同盟の一角を担う闇ギルドを潰すという大事をやってのけたルーシィに、ジェットとドロイは呟いた。

「ルーちゃーーーーん!」
「きゃっ、もお、大げさなんだからぁ」

目に涙を浮かべながら、レビィはルーシィに抱き着く。
大げさだと言いながらもルーシィはレビィを受け止め、嬉しそうに笑う。

「よぉミラ、帰ってきたぞ」
「おかえりアルカ。無事でよかった!」
「うおっ」

軽い調子で声を掛けてきたアルカに、ミラは嬉しさ全開の笑顔で抱き着く。
一瞬戸惑いながらもアルカは微笑み、その銀髪を撫でた。

「ジュビア・・・心配で心配で目から大雨が・・・」
「グレイ止めろ!」
「溺れる!」
「何でオレが・・・!」

ジュビアの嬉し涙が洪水のように流れる。
それにグレイとマックス、ウォーレンは巻き込まれていた。
これを止められるのはグレイだけだと思うのだが・・・どうやらジュビアの想いには気づいていないようだ。

「姉さんおかえり」
「あら、クロス。ただいま」
「無事でよかったよ姉さん!それにその服も似合ってる!ああ、こんな完璧な姉がいるなんて、俺はこんなに幸せでいいんだろうか!」
「落ち着けクロス」

キラキラと瞳を輝かせるクロスを正気に戻そうとスバルが肩を揺する。
が、そう簡単に正気に戻らないのがクロスであり。
祈るように手を組み、キラキラオーラを纏いながらクロスはしばらくの間そのままだった。

「凄いねウェンディちゃん!」
「うん!」

表すなら、わーわーがやがや。
その言葉通りの様子のギルドを嬉しそうに見回しながら、ウェンディとココロは瞳を輝かせた。
勿論、クロスとは違った意味で、である。

「それでねそれでね!何か“だゾ”って言う羽を着た人とルーシィが戦って、“ウオノメトッター”って勝ったんだよ!」
「ウオノメトッタ?」
「何だそれは」
「・・・それもしかして、“ウラノ・メトリア”?」
「あ、それだ」

エンジェルとの戦いの事を話すルーだが、その内容は支離滅裂。
意味の解らない言葉にヒルダとライアーが首を傾げ、魔法に詳しいサルディアによって訂正された。

「んでよォ、ヘビが空飛んで・・・」
「ヘビが空なんか飛ぶかよ!漢じゃあるめーし」
「漢?」
「関係ないと思うぞ」

ナツの話すキュベリオスについてエルフマンは的外れに「漢」を使い、ヴィーテルシアが呆れたようにツッコみを入れる。

「初めまして、ミラジェーンよ」
「アラン・フィジックスです」
「シャルル!ココロちゃん!本物のミラジェーンさんだよ!」
「噂通り綺麗だね!」
「ま、ミラだしな!」

興奮気味にミラの話をするウェンディとココロに、何故かアルカが胸を張る。
アランは礼儀正しく頭を下げた。

「シャルルは多分ハッピーと同じだろうけど、ウェンディ達はどんな魔法使うの?」
「ちょっと!オスネコと同じ扱い!?」

ハッピーと同じような扱いを受けたシャルルは喰ってかかるが、周囲は特に気にしない。
喋る二足歩行のネコとなれば同じ扱いも頷ける。

「あ、僕は魔法格闘術を使います」
「魔法格闘術?」
「マイナーな魔法だから使う人は少ないですけど・・・足に炎を纏って蹴ったり、拳に雷を纏って殴ったりする魔法です」

実際に拳に雷を纏わせるアラン。
続くように、ウェンディとココロが口を開く。

「私・・・天空魔法を使います。天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)です」
「私はえっと・・・灰魔法でいいのかな。灰の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)です」

ウェンディとココロが言った瞬間。

『!』

ギルドの騒ぎが止まった。
メンバー達は目を見開き、固まる。

「「あ」」

その様子を見た2人は小さく声を零した。

(信じてもらえない・・・か)
(まぁ、日常的に見てるのがナツさんだし・・・仕方ないかな)

困ったように微笑み、俯く2人。
が、それと同時にギルドのメンバーが動き出す。

「おおっ!」
「スゲェ!」

返ってきたのは、全く予想していなかった言葉だった。

「ドラゴンスレイヤーだ!」
「すげーーーっ!」
「ナツと同じかっ!」
「ガジルもいるし、このギルドに4人も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が!」
「珍しい魔法なのにな」
「珍しいといったらアランもだろ!魔法格闘術って初めて聞いたぞ!」

止まる事を知らずに沸き上がる歓声。
その言葉に3人は自然と笑顔になった。





「う・・・」
「ガジル様?」

そんな中、表情が硬い男が1人。
ガジルだ。
その視線の先にはナツ・・・と一緒にいるハッピーと、ウェンディ・・・と一緒にいるシャルル。

「ネ・・・ネコ・・・」
「もしかしてガジル様・・・あの2人にネコがいるのになぜ自分だけいないんだとか考えてます?」
「!」

シュランの言葉にガジルは思わず目を見開いた。
少しの狂いもなく、自分が考えていた事と同じだったからだ。

「でもそれを仰られたらココロ様にもネコはいません。それに、ガジル様には私がいますし」
「・・・それもそうか」

シュランに言われ、ガジルはココロにもネコがいない事を思い出し、どこかホッとしたように呟いた。






「今日は宴じゃー!」
『おおおおっ!』

マカロフが宣言すると同時に更に歓声が巻き起こる。
そして同時に騒がしいギルドが倍以上に騒がしくなっていく。

「ウェンディ達の歓迎会じゃー!騒げや騒げっ!」
「うおおおっ!燃えてきたぁぁ!」
「きゃあああ!あたしの服ー!」
「いいぞールーシィ!」
「わわわわっ!ルーシィ早くこれっ!」

ナツに上半身の服を燃やされたルーシィが叫び、頬を赤く染めたルーが自分のブレザーをルーシィに着させる。

「ミラちゃーん、ビール!」
「はいはーい」
「だーっ!ミラと久々に会ったのにオレからミラを引き離すなーっ!」
「知るかよ!」

久々と言っても数週間数か月会っていなかった訳ではない。
だがアルカには耐え切れなかったようで、テーブルを力強く叩いてビールを頼んだ奴に怒鳴った。

「グレイ様、浮気とかしてませんよね」
「な・・・何だよソレ!」
「安心なさいジュビア。連合軍に参加した女はラミアに1人いただけよ。それに、その女はコイツに見向きもしてないわ」
「おいティア!?お前何言ってんだ!?」

ジュビアの質問の意味が解らずグレイは困惑する。
とそこにティアが現れ、その言葉に更にグレイは困惑した。

「シャルル~、オイラの魚いる?」
「いらないわよっ!」

魚を持ったハッピーの言葉にシャルルは鋭く叫ぶ。
ナツはルーシィに思いっきり殴られ、グレイはジュビアに酒を注いでもらいながらもその表情はやはり困惑しており、エルザはカナと雷神衆から飲もうと誘われ、バニーガール衣装に変身したミラがギターを弾きエルフマンがマイク片手に歌う。
酒の瓶やら依頼書やらが辺りを飛び交うギルド。
初めて見るこのバカ騒ぎを、ウェンディ達は満面の笑みで見つめていた。

「これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)・・・凄い騒ぎだね」
「楽しいトコだねシャルル、ココロちゃん」
「うんっ!明るくってこっちも笑顔になっちゃう!」
「私は別に・・・」









その姿を見下ろしている男がいた。
顔を覆面で隠し、5本の杖を背負ったミストガンだ。

「・・・」

ウェンディ、アラン、ココロを見つめた後、ミストガンはその場を去ろうとし―――

「いいんですか?会わなくて」
「!」

ふと、声が掛けられた。
目線を上げると、そこにはキャラメルカラーのセミロングを揺らす少女の姿。

「・・・メープルか。何故ギルドに?」
「秘密です。それより会わないんですか?ずっと気になってたんでしょ?」

唇に人差し指を当て悪戯っぽく微笑むと、メープルは再度問う。

「私にはまだ・・・やるべき事がある」

その問いにミストガンは答えると、ふわっと霞のようにその場から消えた。
一瞬目を見開いたメープルだが、すぐに首を横に振る。

「もぅ・・・“それ”も大事ですけど、たまにはワガママを言ってもいいんですよ?」

誰に言う訳でもなく呟く。
そして・・・彼女もゆっくりと姿を消した。














六魔将軍(オラシオンセイス)は壊滅・・・ふふっ、遂に来たわね。この時が」

真っ赤な髪を揺らし、シグリットが微笑んだ。
すると、そこにエストが現れる。

「準備は出来てるよ、シグリット。“あの方”の命令通り、巫女を連れ帰る」
「あらあら、あんまり急いじゃダメよ?あの子達はまだ勝利に酔いしれてるんだから。酔い覚ましはまだ早いわ」

クスッと笑い、シグリットは髪を耳にかける。

「・・・なあ」
「どうしたの?エスト」
「あの子は・・・私達の事を恨んでいるだろうか」

ふっ、と。
シグリットの顔から笑みが消えた。
それを知っていながら、エストはつづける。

「解ってる、解ってるんだ。このギルドを創った時に決めたからね。あの子の事は忘れると・・・」
「・・・そうよ。私達はあの子を犠牲にバラム同盟の一角を担うまでに成長した・・・そして何の運命か、あの子は敵対する側にいる」
「この状況を誰が望んだのだろうね・・・あの子と別れた時点で、こうなる事は解っていたのかな」

どこか寂しげに呟く。
だが、それは長く続かない。
すぐにシグリットは微笑む。

「とにかく私達は“あの方”の命令を遂行するだけ」
「ああ・・・巫女は必ず連れ帰るよ」

エストの表情に、真剣さが宿る。
その表情のまま、エストは部屋を出た。
残されたシグリットは、ふと窓に目を向ける。

「・・・解ってたよ、こうなるって。あの子は絶対にこっち側には来ないって」









とある豪邸があった。
・・・こういう始まり方はどうかと思うが、そこに立っているのは確かに豪邸である為、こう言うしかない。

「・・・」

その一室に、初老の女性がいた。
女性は険しい表情で窓辺に立ち、呟く。

「貴女には十分すぎるほどに自由を与えた。もう貴女の運命は終わるのよ・・・ティア」










パタン、と。
扉が小さく音を立てて閉まる。
エストは無言で椅子へと腰かけ、フレームに飾った写真を手に取った。
そこにはエストとシグリット・・・そして、もう1人。

「お前とだけは戦いたくない・・・だけど、邪魔をするなら牙を剥く」












激戦は終わった。










だが、それは激戦の始まりでもあった。










闇は蠢き、光を狙う。











光に生きる、1人の巫女を狙って。












その周りの人間も、確実に巻き込んで。












正常に廻っていた運命の歯車が。













―――――――――静かに、狂わされていく。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ニルヴァーナ編終了!そして過去編への引きがっ!
・・・だけどその前に日常編。
そんな戦ってばっかりじゃ疲れるもんね!平和な日常ほしいよね!って事で。
・・・でも日常もナツ達の手にかかれば非日常になる気がするのは私だけでしょうか。

感想・批評、お待ちしてます。
何か『過去編』に代わるいいタイトルないかなー。 
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