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IFのレギオス そのまたIF

作者:七織
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糸刻み 追

 
前書き
酔いが廻るー回るー周るー
るーるーるー
 

 
 第一次反抗期。
 それは子供が2~3歳の時期に訪れる成長期における親の難関の一つである、
 自我の発達段階の過程の一つでありその特徴は文字通りの反抗。
 他人が言うことなすことに対して取り敢えず何でも反抗し嫌がる。そういったものである。

 何一つ自分ではできない子供が更に明確に我が儘をいい苦労が増える時期。
 夜泣きを乗り越えつかのまの安息を得たとと思っていた親御さんたちを落とし穴に叩き入れる時期である。
 自分の意見を理由もなく否定される、拒否されるというのは辛い事だ。
 ただひたすらにストレスが溜まり、どうしたらいいか悩み塞ぎ込む親もいるだろう。
 子を持たないただの他人には何の関係もない。
 関わりを持つことすら出来ぬ、許されぬ日々である。
 


 

 メイファーから休みを言い渡され二日がたった。
 その間の二日間は何の問題もなかった。今まで通りの変わりのない日々だった。
 朝起き食事をし部屋で本を読み昼食をとり外を歩き夕食をとり本を読み眠る。
 時たま切れたタバコを買いに行きひげを剃る。一年前には当然のようだったルーチンワークの日々。
 錬金鋼をマトモに起動することもなく、剄を練る事も無い。
 今となっては酷く懐かしく思える一日。たまには良いとさえ思える程に遠ざかっていた一日。

 

 あの時のメイファーは僅かだがその顔の奥に怒りのような感情を隠していたに感じられた。その原因が何なのかは現状定かではないが向けた対象は明らかだろう。
 何かをした覚えはない。生来関心がないことには一切といっていいほど興味を向けぬ性格だ。知らぬうちに、という可能性はあるがそれを考慮したところで気づけるわけもない。
 屋敷で雇っているといっても日に何度か見かける程度。真っ当に雇い主として働いた覚えもない。そういった人事的管理は他の者に丸投げしている。
 
 ならばやはり考えられるのはレイフォンのことに関してだろう。
 というより他に理由が考えられない。
 メイファーがレイフォンのことで怒る。覚えがないといえば嘘になる。何せゴム球をぶつけ足で転がしこれみよがしに煽っている。今更だが普通の親ならば怒るのが普通だろう。

 まあ、それで言ったとしても多分に疑問が入る考えではある。そして何よりそういった行いを辞めるつもりは現状サラサラ無い。
 あの子供の親ではないのだ。どうしても何かしなくてはいけない立場などではない。
 何よりめんどくさい。

(考えるだけ無駄か)

 なる様にしかならないのだ。単に癇癪を起こしている可能性もある。
 もう何日かすれば分かるのだ。それからで十分。
 メイドの出入りなど今までも多数あった。何かあったとしてもその数が一つ増えるだけに過ぎない。

 読んでいた本を顔に乗せ、目をつぶりそのまま眠気に身を任せる。
 咥えたままの煙草が零れ落ちる。
 そのまま宙で細切れになって消えた。










 大抵の考え事というのは杞憂で終わる。
 気づいたときに手遅れなこともあるがそれは稀なこと。印象が強いからいつものように思ってしまうに過ぎない。
 そしてそれは今回もご多分に漏れなかったのだろう。

 あれから更に三日。休みからメイファーは何事もなかったように復帰した。レイフォンも何時も通りに来て何時も通りに外にいる。
 何時も通りでないことといえばレイフォンの表情。何時も通りならつまらなそうにするか眠そうにするか或いは楽しそうにするかだったそれは酷く落ち込んだ表情をしている。
 うつむき加減でじっとするように気力が見当たらない。何かあったのだろう。

 だがそれをいちいち聴くほど興味もなかったので何時も通りレイフォンに向けてゴム球を投げる。
 この半年の間で成長し普通の投げ合いではなくなっている。剄を込められた球は宙で二回三回とくの字に軌道を変えさながら魔球のごとくレイフォンへ向かう。
 顔を上げたレイフォンは向う球を見る。だが視線を向けるだけで何もしないレイフォンが緩慢に動こうとした瞬間、届いた球がその顎を下から打ち抜いた。
 
「何をしている」

 仰向けに倒れたレイフォンはレイフォンは起き上がろうとしなかった。近くに転がったゴム球を手を伸ばして取る。握っては弱め握っては弱めと何をするでもなく球を見つめている。
 声をかけられるとレイフォンは上半身だけ起こす。
 だが何も言わずそこから起きようともしない。

「……ししょーは」

 師匠という呼び名は少し前からレイフォンが使う呼び名だ。何度も言い聞かせメイファーが教えた敬称。何ヶ月も掛かり得たまともな呼び名だ。
 その呼び名を呼び、ぽつりとレイフォンは言う。
 
「ししょーは、いずれわかるっていったよね」
「何がだ」
「ぶげいしゃは、がまんしなきゃって。みんなをまもるんだって」

 そう言えばそんなこと言ったなと思い出すと同時、よくそんなことをレイフォンは覚えていたなと思う。
 適当に流されていたと思っていた。子供というのは意外に覚えているものなのだなと感心する。

「……ぼく、がまんできなかった。だから、おかあさんにおこられた」

 それだけいってレイフォンは俯く。
 俯くというよりはこちらと視線を合わせたくないのだろう。
 待っていてもそれ以上レイフォンからは何も言いそうにない。こちらから聞くしかない。
 面倒だがこうなった以上聞かないという選択肢を取っても何もならないのだろう。
 小さく舌打ちしたい気持ちを抑えボサボサの頭を掻きながらレイフォンに近づく。

「何をして怒られた」

 少しして、レイフォンはポツリといった。

「……ねえさんにけがさせた」

 思考を巡らし思い出す。最初にレイフォンを見た時にメイファーの胸に抱かれていた少女。今までもレイフォンの口から何度か聞いた事がある。
 レイフォンとは違う非武芸者の、血の繋がらない義姉。

「おもちゃをかしてほしくて、わるぐちいった。ねえさんもわるぐちいって……」
「それで喧嘩して怪我させたのか」

 俯いたままレイフォンは小さく頷く。

「ねえさん、ちがでてた」

 詳しく聞くと少し前から多少の姉弟喧嘩もどきはあったらしい。内容は下らないものだ。
 いつもなら一言二言の押収で終わっていたがその日は違った。メイファーが口を挟み、それにレイフォンは反発をした。何となく、で何度か反発し引っ込みがつかなくなり無理に姉であるリーリンが持っていたものを取ろうとした。
 レイフォンはその際に無意識に活剄を使ったらしい。そのまま喧嘩し、その姉は容易くレイフォンに押された。
 強化された力のせいで壊してしまった玩具の破片で姉は怪我をした。そこそこ大きな怪我だったらしく血も出た。
 その事でレイフォンはメイファーに怒られた。
 泣きそうになりながらそうレイフォンは言う。

「おかあさん、ぼくのほっぺたたたいてすごくおこってた」
「それはそうだろうな」

 当然のことだとばかりに言い放つ。
 単なる子供同士の喧嘩ならばありふれているが流血沙汰になれば話は別だ。たとえ姉弟喧嘩だとしても武芸者と非武芸者ならば一層だろう。
 
(それに恐らく……いや)

 浮かんだ考えを打ち消す。それは今考えることではない。
 ここ数日休んでいたのはその怪我の対処やレイフォンへの躾といったところだろう。
 あの時のメイファーが怒りを滲ませていたのもわかる。何せ元凶のようなものだ。
 それでも声を荒げず隠そうとしたのは雇い主だからか、それとも親として自分の不手際を思ったのか。

 ただじっとレイフォンを見据える。
 今回のことに関しては己の明確な不手際と言わざるを得ないだろう。
 情緒不安定な子供に剄を教えると決め実際に教授したのだから。
 精神的な方面ではなく技術的な面を先じてしまったのもそうだ。道理の知らぬ子供に抜身の刃を握らせたようなものだ。
 何故一般的な武芸者の家系や流派が本当に早いうちから剄を教えないのか。それを軽んじてしまった。
 危うさを教え導くのは大人の責であるはず。知らなかったは通用しない。それが出来ぬならばでしゃばってはいけない。
 
 風が吹き伸びていた灰が崩れ落ち、思考の海に沈んでいた頭が戻ってくる。
 煙草はほとんど灰になっていた。吸いきった一本を握りつぶし新しい一本を出す。
 ライターを出し手で壁を作り着火する。咥えた煙草をその火に近づけようとし、傷だらけのライターを見てふと思い出す。

『お父さん何だから子供に変なとこ見せないでくださいね』

 かつて己の父が母に言われた言葉だ。
 父親は煙草を吸う武芸者だった。趣味程度でそう吸う人ではなかった。反対に母は煙草を嫌っており、子供の前で吸う父親をそう嗜めることが度々あった。悪影響だと思ったのだろう。
 事実、その子が最初に煙草を吸ったのは父親の影響だ。
 ある日テーブルの上に忘れられていた半分残った箱と使い捨てのライター。ふと手にとったそれが最初だったのだから。

 子は周囲の影響を受ける。
 それは親であり兄や姉であり或いは師や友人。
 普通の武芸者というのは歳を重ねるうちに周囲の世界や常識を知る。
 或いは同じ武芸者である親の背を見てその行いを教えられる。言葉だけではなく日常の中でだ。
 技術を教える時間を持つ一方、精神面を日常で培わせる。
 そうやって共に成長させていくのだ。

 レイフォンはそういった日常での、精神的な物を育てる時間や基準を与える存在がいない。
 母親と姉は非武芸者。本当の親は恐らくだが死んでいる。
 その状況で技術だけを与えたらどうにもならない。だから今回のこれはきっと、いずれ起こる事だったのだろう。
 現状下で影響を受けるだろう武芸者がいるとすれば己くらいだろう。そしてそれは真っ当という場所からはかけ離れている人間だ。
 本当に安請け合いをしてしまったものだ。

「母親には何て言われた」
「……もうしちゃいけないって。そのちからはそんなことにつかっちゃいけないんだって。ねえさんをまもるためにあるんだって」
「まあ、間違いではないな」

 かといって完全な正答でもないが。
 最もそんな事を言ったところで何が正しいのか明確な言葉で歴然と語れる人間もいないのが事実でもある。

「今更だがその義姉は大丈夫だったのか」
「うん。ゆるしてくれた。いいよって」

 問題ないならば良し。
 だがそのことについて後日、原因の一人としてはメイファーの方には何か言っておくべきだろう。
 本来ならばここでレイフォンに気の利いた言葉でも言うべきなのだろう。
 正義だ倫理だ道理だ思いやりだなどと。
 だが生憎と己はそんな歯の浮くような言葉をペラペラと吐けるような人間ではない。 
 
「レイフォン。何が悪かったのか、それを分かっているか」
「うん。ぼくはぶげいしゃなのに、がまんできなくて、りーりんにけがさせたからおかあさんはおこった」

 レイフォンは理解しているようには見えなかった。
 前に言われたことだから。親に言われたことだから。親に怒られたから。
 だから駄目なのだと、そう理解している。

「立て、レイフォン」
 
 レイフォンの歳ならば仕方のないことだ。レイフォンの環境ならば無理ないことだ。
 そして今ここにいる人間もそれを真っ当に教えられるそれではない。
 だから、立ち上がり見上げてくる視線を受け、半ばまで灰になった煙草を噛み締め呟く。

「レストレーション」

 何時も片方の錬金鋼は復元している。
 だからこれはパフォーマンスだ。確かに錬金鋼を復元したのだと。何をするのかを理解させるためにもう片手の錬金鋼をレイフォンの目の前で復元させる。
 小さな光が宿り錬金鋼の組み込まれた手袋に手が覆われる。
 複雑な衣装が施されたそれを、示すように前に出す。

「レイフォン。お前の何が悪かったのか教えてやる」

 不思議そうに見ていたレイフォンの瞳。
 それが大きく見開かれる。

「煙草を吸い終わるまでの一分弱。全力で逃げろ」

 レイフォンが大きく後ろへ飛び跳ねる。十分に扱えるようになった活剄で強化された足で脇目も振らず地を蹴る。
 それは意識しての事ではなく反射的な動き。目前に染まった恐怖から逃げるためにレイフォンの足は動いていた。
 先程までレイフォンがいた場所には大きな傷跡が刻まれていた。
 鋭い刃物が振り下ろされた様な一本の斬線。逃げていなければレイフォンの腕は間違いなく切り落とされていた。
 
「し……っ!?」

 事態が理解できていないレイフォンは自らの師に問おうとし、それを見て絶句する。
 有ったのは空間一面に張り巡らされた鋼糸。一本でさえレイフォンを殺すには十分なそれが数えることがバカバカしいと思える程の数で犇めいていた。
 レイフォンの全身を叩くのは隠すことなく剥き出しにされた剄の圧力。レイフォンのそれとは比べるのも気が遠くなるほどの絶対的な量を有した剄が空間を支配していた。
 その剄が動く。疑問を挟む余地もなく犇めく鋼糸がレイフォンめがけ殺到する。

 鋼糸の網は庭をドーム状に覆っていた。レイフォンは外に逃げることを許されず向う断頭の刃を必死で避けていく。
 一秒と止まることを許されず、一瞬と視線を逃すことを許されず、刹那も意識を切ることを許されず。
 差を測ることすら許されぬ程の実力差があるのにレイフォンが鋼糸の海を避けられたのはその操り手の意識が全力と遠いところにいたから。
 日々の訓練の中で足蹴にしたりなど多少は動き回らせていたことがあったのもその一因だろう。

 それでも数多の鋼糸はレイフォンの力量を超えていた。
 息をするのも躊躇するほどに全力で、全身の筋肉の疲労を無視し、訓練を遥かに超えるほど剄脈を働かせレイフォンは動く。
 全身が上げる悲鳴を本能からの恐怖でねじ伏せトップスピードで避け続ける。
 それでも取りこぼしは出る。
 鋼糸が触れた場所の皮膚が切れ、服の切れ端や髪が宙を舞う。舞った傍から細切れにされ塵になっていく。


 フィルターの寸前まで燃え、灰が落ちる。それを合図に鋼糸を回収する。
 鋼糸の檻が消えると同時、レイフォンの体が地に倒れる。覆っていた圧力がなくなり緊張が切れ踏ん張りが効かなくなったのだ。
 煙草を代えながらレイフォンの元へと歩いていく。
 慣れない全力での剄の行使と限界を超えた動きでレイフォンは起き上がれずにいた。
 息が出来ないのが辛いのか息をするのが辛いのか。それさえ分からぬ程の様相で胸を抑えて口を開けている。

 暫くの間、レイフォンの息が整うまで煙草を吸って待つ。
 ある程度まともな呼吸音が聞こえてくるとレイフォンを上から覗き込む。

「理解出来たか」

 涙目で見上げてくる視線を真っ向から見下ろし、レイフォンの頭を靴で踏む。

「怖かったか? 痛かったか? 死ぬかもしれないと思ったか? 死なないようにとは手を抜いたが、途中で諦めていれば腕の一本くらいは落ちていただろう」

 腕の一本くらいではそう簡単に死ぬものではない。
 鋼糸の切れ味を考えれば痛みは最小限で済む。切断面も荒れず再接合も容易い。止血くらいならば鋼糸で仮繋ぎや焼けば問題ない。失血性のショック死の心配もない。
 レイフォンの様子は見た目だけなら満身創痍だ。薄皮は切れ何箇所も血は滲んでいる。服の切れ目からも傷跡が薄らと見える。
 最後まで全力で恐怖に駆られ動き続けたからこの程度で済んだのだ。

「何故お前だけ怪我をしているのか分かるか? 煙草を吸っていただけの無傷の男と必死で逃げ回った傷だらけのガキ。何故そんなに違うのか言ってみろ」

 レイフォンの頭に乗せた足の力を少し強める。その足を退けられるだけの力さえレイフォンには戻っていない。
 息も絶え絶えになりながらレイフォンは一度口を閉じ、一拍して苦しそうに口を開く。

「し、ししょー……が、ぼく……ぼくより、ずっと、つよいから」
「その通りだ」
 
 乗せていた足をどける。
 
「お前とはそれだけ力量が違う。子供と大人などという現実としての差ではなく、比喩でもなく、それ以上の絶対的な差があるからだ。そしてこれはそのまま武芸者と非武芸者にも言える」

 寝ているレイフォンの上に再度鋼糸を展開する。
 何百何千何万。数多の鋼糸がレイフォンの頭上数センチに網を張りその鋒を向ける。
 小石を蹴り飛ばすような気まぐれでレイフォンは死ぬ。仰向けになりレイフォンは自分に向けられた今にも降り注ぎそうな凶器の雨を見る。

「逃げていたお前が非武芸者でお前の姉だ。武芸者と非武芸者の間には大きな開きがある。武芸者がその気になれば容易く殺される。逃げるのは嫌だったかレイフォン?」

 レイフォンの呼吸は穏やかになってきていた。
 自分に向かう鋼糸を見つめ、レイフォンはゆっくりと言う。

「うん。……こわかった」
「だろう。お前はお前の姉にそれをしたんだ」

 武芸者が都市で受け入れられているのはそれが自分たちの身を守る力だからだ。
 その気になれば今レイフォンがされたように一方的な蹂躙も行える。
 その力が自分たちに向かない。その前提が、信頼があるから受け入れられるのだ。
 隣の隣人が銃を持っていたら身の危険を感じるだろう。だが警察が持っている分にはそんな事を思いはしない。
 
「暴力が全て悪いわけじゃない。暴れる犯罪者を捕まえる為の暴力は賞賛されるだろう。駄目なのは正当な理由がないことだ。個人のワガママで剄の力を非武芸者に向けるなど許されはしないんだよ」

 ここまで言い、ふと理解できているのだろうか疑問に思う。
 相手は子供なのだ。もっと分かりやすく簡潔に言うべきではないだろうか。

「あれだ。正義の味方が悪を殴り殺すのはいいけど、普通の人を殴ったら怖いだろう。……いや、この言い方も悪いか?」

 再度考える。理屈で話せる相手の有り難さを思う。
 もっとわかりやすい言葉を考える。

「つまりあれだ。自分がされて嫌なことは他人にするなという事だ。これからはちゃんと学んで気をつけろ。分かったか」

 考えた結果物凄く安直というか、ベタな言葉に収まった。今したことの集大成がその言葉になったことに疑問に思うがまあ、いいのだろう。多分。

「わかった」

 レイフォンが言う。
 本当にそう思ったのかは疑問だが表情に嘘の気配や適当に言った感じは無い。

 鋼糸を再度回収し片手の錬金鋼を待機状態に戻す。
 地面に手を付き、レイフォンが立ち上がる。疲れからか立ち上げる際、生まれたての動物のようにプルプルしていた。
 レイフォンが頭を下げる。

「ごめんなさい、ししょー」
「何故謝る」
「まえにいわれたこと、まもれなかったから。わるいことしたらあやまれって、おかあさんにいわれた」
「そうか。まあ悪いと理解できたなら良い」

 別にこちらは損を被った訳ではないが真面目なのはいいことだ。
 
「ししょー。きょうはなにするの」
「やる気だな。さっきのことがあったというのに」
「これからちゃんとまなべって、さっきいったよ」
「……そう言えば言ったな」

 落ち込んでいたのがやる気になったのはいいがどうしたものか。
 教えること自体を辞めるつもりはない。というよりも辞めるわけにはいかなくなった。
 変に知識を付けさせ問題を起こしてしまった以上、ある程度分別がつき剄をきちんと扱えるようになるまで。少なくとも危険性がなくなるまでは教えなくてはいけない必要性が出た。

 だがある意味満身創痍なレイフォンを見てどうしようかと考える。
 傷自体は深くならないように糸を操っていたから軽傷だけだ。活剄で治癒能力を向上させれば次の日には問題なく塞がっている程度でしかない。
 未だに少しプルプルしているレイフォンの足を見る。不意を付き軽く足でつついてやると容易くレイフォンは転んだ。
 起き上がろうとするたびに軽く小突いて倒してやる。
 
「なにするんだよー!」
「それだけ疲れてるなら今日はいい。適当なメイドでも捕まえて新しい服貰って帰れ。訓練で怪我したと言っておけ」

 最後に一度大きくレイフォンを転がす。ゴロゴロと転がる姿を見て背を向け屋敷へと戻っていく。

「ししょーのばーか! ししょーみたいになんかぜったいなるもんか!!」

 元気な声に足を止め振り向く。
 馬鹿にしたような声で、万感の思いを込め言う。

「次からは真面目に教えてやる。だから、こんな武芸者になってくれるなよ」
 
 
 屋敷へ戻っていく歩みの中、その背に届く幼い罵倒を受け続けた。










 
 

 
後書き
「そういえば子供用の服などあったか……まあいいか」






 以下あとがき。



 一応の区切りのつもりです。
 本当はもっといい感じにしんみりと終わらせる予定でした。脳内ではそんな感じになってたんです。
 ただ書いてみたら必要なところが出てきて気づいたら温くなってました。
 まあいっか。

 これで二、三年一気に飛ばすです。三歳児とか知らんのです。五、六歳位の方がまだ書きやすい。
 そしてやっとメイドが出るのです。ヤンデレな茨邪気眼の人とかも出せるのです。
 幼い交流とかペッ!ですよもう。俺はヤンデレとかメイドとか鋼糸とか家庭問題とか都市問題が書きたいだけなんじゃ。
 活剄の修行とかはすっ飛ばして二、三年後だし衝剄結構収めてる感じで二話くらいして鋼糸に入るかと考えてます。
 そしてまた書きたいこと書いたら二年くらい飛ばすです。
 八~十一歳くらいが一番書きやすいよね。うん。
  
 師匠の性格がアレだし、レイフォンを正統進化などさせるものか。
 真面目な正統派真面目ちゃん清純派(夢たくさん)とかいらないっす。書いてて楽しくないっす。っす。
 こっちはIFと違って真面目路線ではないのさ。おふざけ満載なのさ。
 そんな感じで。

 おまけ冊子見て知りましたがメイファーさん胸デカらしいですね。
 私としては比較された発言的に女王の方が……ああまあそんな感じで。
 なんかそんな感じで。
 それだけです。 
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