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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第6章:女の決意・男の勘違い
  第30話:悲しみは闇より、憎しみは作為的に

(天空への塔)
ロザリーSIDE

各所にある塔の窓からは透き通った星空が見える。
室内(塔の中)とは言え、この高さだと昼夜の温度差が激しい。
ただでさえ空気の薄いこの状況で、手強い敵と戦い続けるのは不可能でしょう。
だから私達は塔の袋小路に陣を取り、毛布に包まって夜を明かすつもりです。

皆さんがお疲れで野営の準備も出来ない中、唯一高所でも普段通り活動できるリュカさんに甘える形で休息しております。
しかしリュカさんに、そんな過去があるなんて驚きです。

「驚きましたね……あの脳天気な男に、そんな暗い過去があったなんて!」
「確かに吃驚ですけど、脳天気は言い過ぎですよラピスさん」
簡単な食事を済ませ、ラピスさんと寄り添うように毛布に包まり、囁き声で話します。

「そうですか? 他に言葉が見つからないのですが……」
「“朗らか”と言うのは違いますかね?」
リュカさんとラピスさんのベッドシーンを目撃して以来、気を遣ってるのか彼女の方から話しかけてきてくれます。ずっと側に居てくれたのに、やっとお友達になれたような気がします。

「まぁどっちにしろ、あの男からは想像できませんでした」
「そうですね……そんな辛い過去を持ってるなんて……」
先程リュカさん本人から聞いた話を思い出しながら、やるせない気分に陥ってしまう。

「私も人間からは迫害を受けました……ですが奴隷になった事はありませんし、リュカの様に長期にわたって強制労働をさせられた事もありません。何だかリュカの心の広さを見て、以前の自分が恥ずかしくなります」

「そうですね、私も苛められた事は沢山ありますが、逃げ出す事も出来ましたし誰かが助けてくれる事もありました。私にはそんな力も勇気も無かったですけど、抵抗しようと思えば抵抗だって出来たはずです。ですがリュカさんには、それらの手段をとる事さえ許されなかったんですよね」

「ロザリー様……私には、デスピサロ様が行おうとしている事に疑問があります。以前の私は、虐げられてきた人間への憎しみから、デスピサロ様の行いに疑問を浮かべる事すらありませんでしたが、リュカの様に過去に酷い目に遭いながら、それでも人間を憎んだり魔族を忌避したりしない男を知って、新たな価値観を得た様な気がします」

「私も同じ気持ちです。今までは漠然と“人間を滅ぼす事は酷い事”と思ってただけですけど、リュカさんやビアンカさん等ご家族を見て、共存共栄をし仲良く楽しく暮らせる事が分かりました。早くピサロ様に再会して、人間を滅ぼす事を止める様に説得しなきゃなりません。勇気を出して、私が説得しなければ……」

「はい、私もお手伝い致します。デスピサロ様も本当はお優しい方ですから、きっと解ってもらえると思います」
星空から隣のラピスさんへ視線を移し、互いに頷き合って決意する。

ピサロ様もリュカさん達と一緒に数日生活すれば、きっと人間全てが悪い人で無い事が解るはずです。

ロザリーSIDE END



(デスキャッスル)
デスピサロSIDE

やっとエビルプリーストの居場所を見つけた。
人間に打ちのめされ、魔の瘴気漂うデスキャッスルへと養生しに帰っていた。
ここへ戻り養生せねばならないとは……余程の相手だったと思われる。

「やっと見つけたぞエビルプリースト。怪我の具合はどうなのだ?」
「こ、これは……デスピサロ様!? も、申し訳ございません……人間ごときに」
エビルプリーストは顔の左側を包帯で痛々しく包み、左目を癒やそうとしていた。

これは相手に左目をエグられた事を意味する。
潰されただけであれば、眼球その物は目の中に残ってるので、ベホマで回復する事が出来るが、エグられ眼球が消失してしまった場合は回復の見込みは無い。

とは言え、高位魔族ともなれば魔瘴気を存分に取り込み、時間をかけて養生すれば欠損部分を復活させる事も出来る。例え腕を切り落とされ失ったとしても……
しかし時間が膨大にかかる為、エビルプリーストの左目は当分使えないだろう。指先1センチを復活させるのに、1年はかかってしまうモノだから……

「キサマらしくないな……人間ごときに深手を負わされるなんて。それほどの手合いだったのか?」
「はっ、正直申しまして……今のデスピサロ様でも、あの男に勝つ事は難しいかと思われます。きっと奴こそが伝説の勇者なのかもしれません」

「馬鹿な……勇者は既に抹殺したではないか! あの村人共も、勇者を守る為に自らの命を賭して抵抗してきたではないか!」
「そこが(勇者)の狡猾なところ……あの村人共には嘘を教え込み、本当の勇者は既に何処かへ逃亡していたのでは? そして虎視眈々と我ら魔族を滅ぼす算段を練っていたのではないでしょうか?」

あり得ぬとは言わぬが……
「それにしては、あの後に勇者の情報が入ってこなかったのは何故だ? 生き延びて我らを滅ぼす事を考えていたのなら、多少の情報は入ってきたはずだが……」

「デスピサロ様……先程も言いましたが、奴は真に狡猾なのです! バトランド地方で勇者捜しをしていた者が行方不明になりましたが、奴が自分の情報を広めない為に派遣した者を殺した可能性があります」
た、確かに……急に行方が判らなくなり情報が滞った時期もあった。

「更に……進化の秘法を完成させる為に必要な『黄金の腕輪』も、奴が我らに渡るのを阻止したと思われます。何故ならば、私の目を潰した男の腕には、黄金に輝く腕輪がありました……」
そんな馬鹿な!? 私の計画を(勇者)は完全に崩そうとしている……

「そして……大変言いにくいのですが……ロザリー様を攫ったのも……」
「何!? ロザリーが奴等と一緒に居たのか!?」
何故それを早く言わない!

「はい……居ましたが、私の襲来で……亡くなられました。私の目の前でロザリー様を惨殺され、動揺してしまった隙に目をエグられて……申し訳ございません。殺される直前まで、ロザリー様はルビーを得る為に犯されてた様子でした。勇者は強欲な人間共と共に、ロザリー様を拷問し、犯し、そして無残にも殺したのです」

「そ、そんな……ロ、ロザリー……」
俺は言葉を失った。
その場に崩れ、ただ地面を叩き、愛する者を失った悲しみに喘いでいた。

「デスピサロ様……申し訳ございません。悔しいでしょうが諦めましょう。奴の手に黄金の腕輪がある以上、進化の秘法は完成しませんし、あの男相手では我々に勝ち目がありません。エスターク様を失った我らに、これ以上の武力抵抗は不可能です」

優しく俺の肩に手を置き、諭す様に降参を進めるエビルプリースト……
だが、そんな事を認めるわけには行かない。
失ったロザリーの為にも……

デスピサロSIDE END



(デスキャッスル)
エビルプリーストSIDE

さぁ怒れ……さぁ悲しめ……
お前に残された手段はもう無い。
ただ一つを除いては……

「エビルプリースト……このままで終わらせるわけにはいかぬ! 力で勝てないからと言って引くわけにはいかぬのだ!」
そうだ、こんな簡単に諦められては困る。

「では……どうするのですか?」
「進化の秘法だ……あれを使い私は更なる進化を遂げる! 不完全な部分は、この魔瘴気で補わさせれば、多少は完全に近付くはずだ。このデスキャッスルに籠もり、私は進化の秘法でパワーアップしてやる! 時間はかかるだろうが、魔瘴気を取り込み完全なる進化をしてみせる」

そうだ、お前は手の付けられない化け物に変わり、世界を滅ぼすのだ!
滅ぼす物が無くなれば、お前は悲しみから自らを滅ぼすだろう。
そして何も無くなった世界に、私の世界を築くのだ!

「ではデスキャッスルを結界で封鎖しましょう。万が一勇者がやってくるかもしれません。四方の結界の祠から、強力な結界を張り時間を稼ぎましょう」
「やってくれるかエビルプリースト」

「勿論ですともデスピサロ様! ロザリー様を失った悲しみは私にも伝わってきます。憎き人間共を滅ぼす為、私はデスピサロ様について行きます!」
「頼む……」

憎しみを帯びた赤い目で私を見ると、言葉少なく指示を出してデスキャッスルの玉座へ座るデスピサロ。
奴等が本当に勇者なのかは判らぬが、これで世界は滅びるだろう。

私の思い描いた通りに……

エビルプリーストSIDE END



 
 

 
後書き
章題の女の決意・男の勘違いは、まさに今回の事です。
女は決意し、男は勘違いする。 
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