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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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コラボ
~Cross world~
  cross world:交錯

パラレルワールドという言葉を、聞いた事はあるだろうか。

ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界を指し、並行世界、並行宇宙、並行時空ともいう世界のことだ。異世界、魔界、四次元世界などとは違い、それは我々の宇宙と同一の次元。

その特性ゆえに、《この現実とは別に、もう一つの現実が存在する》というアイディアは、『もしもこうだったらどうなっていたのか』という考察を作品の形にする上で都合がよく、SFにおいてポピュラーなものとなっている。

しかし、そのあまりにも規模の大きい話のせいか、パラレルワールドが実際に実在する可能性が示唆されている事はあまり知られてはいないかもしれない。

その可能性が研究されているのは、物理学の世界。

例えば、量子力学の多世界解釈や、宇宙論の《ベビーユニバース》仮説などである。ただし、多世界解釈においては、他の世界(パラレルワールド)を我々が観測することは不可能でありその存在を否定することも肯定することも出来ないことで、懐疑的な意見も存在する。

近年、その中でも盛んに議論されているのが《超弦理論》である。

超弦理論。

別名、超ひも理論、スーパーストリング理論。

1960年代、イタリアの物理学者、ガブリエーレ・ヴェネツィアーノが核子の内部で働く強い力の性質をベータ関数で表し、その式の示す構造が「(string)」によって記述されることに南部陽一郎、レオナルド・サスキンド、ホルガー・ベック・ニールセンらが気付いたことから始まる。

超弦理論が登場する以前に最も小さなスケールを記述した理論は場の量子論である。そこでは粒子を点、すなわち点粒子として扱ってきた。

しかし、この理論ではこの粒子を《弦》の振動として表したのだ。

弦には「閉じた弦」と「開いた弦」の2種類を考えることができ、開いた弦はスピン1のゲージ粒子───光子、ウィークボソン、グルーオンなど───を含み、閉じた弦はスピン2の重力子を含む。

開いた弦の相互作用を考えるとどうしても閉じた弦、すなわち重力子を含まざるを得ない。そのため、強い力のみを記述する理論と捉えることは難しいことが分かった。

これは逆に言えば、弦を基本要素と考えることで、自然に重力を量子化したものが得られると考えられる。

そのため、超弦理論は万物の理論となりうる可能性があるのだ。

超弦理論は素粒子の標準模型の様々な粒子を導出しうる大きな自由度を持ち、それを元に現在までに様々なモデルが提案されている。

そして、この超弦理論を宇宙論に当てはめて考えられたのが、《ブレーンワールド》と呼ばれるものである。

ブレーンワールド、すなわち膜宇宙。

『我々の認識している4次元時空の宇宙は、さらに高次元の時空に埋め込まれた(ブレーン)のような時空なのではないか』と考える宇宙モデルである。

この概念を応用して、宇宙の初期特異点の解決を試みるモデルであるビッグバンの起源を複数のブレーンの衝突で説明するエキピロティック宇宙モデル、宇宙のインフレーションをブレーンの運動で捉えるモデル、そして宇宙のダークエネルギー問題の解決を試みるモデルなど、宇宙論のさまざまな分野でアイデアが提出され研究されている。 また高次元模型の自然な帰結として、一般相対性理論を高次元時空で考える研究もされてきた。

このブレーンワールド理論を物理学的に突き詰めていくと、パラレルワールドの実在に行き当たると示唆する学者がいるのだ。

無論、その存在を明確に確認することは、現在の技術水準では不可能だ。

ただ、現在の宇宙は主に正物質、陽子や電子などで構成されているが、反陽子や陽電子などの反物質の存在が微量確認されている。

この物質の不均衡は、ビッグバンによって正物質と反物質がほぼ同数出現し、相互に反応してほとんどの物質は消滅したが、正物質と反物質との間に微妙な量のゆらぎがあり、正物質の方がわずかに多かったため、その残りがこの宇宙を構成する物質となり、そのため現在の既知宇宙はほぼ全ての天体が正物質で構成されているのだと説明はなされている。

つまり、何が言いたいのかというと。

もし、今自分が住み、生きているこの世界とは微妙に異なる、しかしその本質は全く違う世界があったとしても、その二つの世界が互いに干渉しあう確率は、前にゼロが何個付くのかも計りしれない天文学的数値だということだ。

しかし、確率論というものは時として、信じられないストライキを起こす事がある。

例えば、百分の一という確率があるとしよう。

これはパッと見、かなり低い値に見えるだろう。モンスターから取れるアイテムのドロップ確率でこの数値が出たら、うへぇと思う人も少なくないと思う。

しかし、よく考えてみてほしい。

この確率は逆説的に言えば、百人でいっせいに一つの動作をやれば絶対に一人は成功する、といった値なのだ。

偶然ではなく必然。

偶然ではなく絶対。

約束された一人は、百分の一という確率を一分の一という確率に昇華する。

出会いは偶然、別れは必然、というが、この出会いだって必然でない確率がいかほどにあるだろうか。仕組まれていないものだと、証明できるだろうか。

仕組まれた出会い。

そんなものがあったら、それはこの世のどんな物よりも色褪せて見える事だろう。

念のため、ここでもう一度明言をしておこう。

偶然なんていうものはない。

全ては約束されたことで、決まっていることなのだ。

全ては、運命の中で廻っている。

世界の中で、廻っている。










うららかな日とはこういう日を言うのだろうか、と《剣聖》ソレイユはコーヒーが入ったカップを傾けた。

イグドラシルシティの大通りに面しているオープンテラスには、春真っ盛りの良く言えばほのぼのとした、悪く言えば平和ボケした陽光がさんさんと降り注いでいた。

その中でゆっくりとカップを傾けているのは、一人の線の細い少年だった。

闇をそのまま取ってきたかのような二つの瞳と、長すぎて後ろで束ねている髪の色も漆黒。グレーのシャツに黒のコート、いくらか色落ちした黒色のジーンズという、総体的に見ればかなり黒尽くめな服装。

ずず、と。

最近オープンしたプレイヤー運営の喫茶店の、自慢の紅茶(キャッチコピーは『革命を起こそうぜ!』)をひとすすりした後、ソレイユは顔をしかめた。

「………マズい」

紅茶にしては砂糖が効きすぎている。イチゴミルク級といえば、その凄さが伝わるだろうか。

いずれにせよ、本場のイギリス人はおろか紅茶にはうるさくない人でも怒り出しそうな味だ。革命を起こしていると言えば起こしているが。

カチャ、とテーブル上にカップを置いて、もう二度と手は付けまいと誓いながらソレイユは視線を己の視界の隅に向けた。

そこにあるのは、簡素な字体で表示されたシステムクロック。

ALOでは、このシステムクロックは任意でいくつかカスタマイズできるのだが、ソレイユのものはデフォルトのままだ。理由はとてもシンプル。面倒くさいからだ。

「遅いな、アイツ」

ポツリと呟いた後、少年はテラスの外に面している大通りに眼を向ける。

火妖精(サラマンダー)水妖精(ウンディーネ)風妖精(シルフ)土妖精(ノーム)闇妖精(インプ)影妖精(スプリガン)猫妖精(ケットシー)音楽妖精(プーカ)鍛冶妖精(レプラコーン)

アルンに次ぐ第二の首都といっても過言ではないイグドラシルシティならではの、多種多様な妖精九種族が石畳の上をすれ違っていく。

その関係も、単なる友達関係から始めまり、商売相手、お客の関係。その中でも異種族間でのカップルが一際輝いているようにも見える。央都以外の都市ではなかなか見られない光景だ。

───俺達もあんな風に見えるのだろうか……?

突然そんな事を思い、うーむと唸るソレイユ。しかし、彼の周囲の人間は口を揃えて言うだろう。今更言うか、と。

数秒間固まり、何を思考したのかボリボリと後頭部を掻き、つい数十秒前に誓った内容を綺麗サッパリ忘れて再びカップに手を伸ばす思春期真っ只中の純情少年。

しかし幸か不幸か、伸ばした指がカップに掛かる寸前で、大通りの中から声が聞こえた。

大勢の声の中でも、光り輝くその声が。

「ごめんね、遅れちゃって~!待ったぁ?」

その声に答えるために、少年は席を立つ。その声の主をからかうために。

そして────










眠いなぁ、と《終焉存在(マルディアグラ)》レンホウは思った。

ぴーちくぱーちくさえずる小鳥の重奏は、しかし大通りを通る数多くのプレイヤーたちが織り成す粗雑な喧騒の中に沈んでいった。

大通りに面するテラスで、アンティークな白いテーブルに伸びているのは、ちっこい少年だった。

小柄な身体を隠すように、少しサイズが大きめな真っ赤なフードコートに、だぼっとした黒いズボン。ラフなグレーのシャツ。闇のような漆黒のロングマフラーは、食事には邪魔だろうと現在進行形でテーブルの上に丸めて置いてある。

イグドラシルシティに新しくオープンしたという喫茶店に行ってみたいという理由で、長くなりそうだった女性のお買い物から脱出したまではいいが、正直やることがなくなって暇なこともあった。

頼みの綱だった喫茶店で、試しに注文してみた紅茶はドが付くほどのマズさ。角砂糖何個入れたんですか?と訊きたいくらいの甘さだった。

まだ三分の二も中身が残っているカップは、微妙に少年の身体から遠いところに押しやられている。思い出しただけで胸焼けがしてきた。

サイドメニューであるサラダやパン類を片っ端から注文したものの、NPCレストランではないことを忘れていた。

結果的に、厨房と思しき方向から、うららかな春の陽気とは正反対の怒号や悲鳴みたいなものが聞こえてくることになったのだが、少年はそれを聞かなかった事にしたいらしい。視線をひたすらに大通りに向け、店の内部には決して顔を向けようとはしていない。

それにしても、と少年は思う。

良い陽気である。

基幹システムである《カーディナル》を、SAOクリア時よりは幾らか古いバージョンとはいえコピーしているALOでも、やはり天候という物はそうそう良くはならないというのが通説である。これほど良いのは珍しい。

ヒラヒラ、と目の前を蝶が飛んでいく。

ダメもとで手を伸ばすと、なんと驚いたことに蝶は数秒迷うように伸ばした人差し指の周りを飛び回ると、先っぽに軟着陸したではないか。

「へぇ、背景小物(クリッター)にも触れたんだ。それとも圏内だから、ってゆう事なのかな?」

ぐでーっ、とテーブル上に寝そべっていたレンは気の抜けたような声とともに、いかにも注意力散漫ですという感じで蝶を眺める。

数多のMMORPGの中でも、かなりファンタジー要素の強いALOだからこそなのか、蝶の外見も現実世界のそれとは思えない配色だった。

メタリックな素体の中心辺りに大きな目玉が一つ。せめて目玉がなければまだ可愛げがあるのに、と思いつつレンはふぅーっと蝶に息を吹きかけた。

驚いたように蝶は翅を羽ばたかせ、空に浮き上がってどこかへと行ってしまう。

それを寝そべった状態のまま、視線だけで追いかけるレンの耳に、幼い声が人込みの中から聞こえてきた。

「レーン!終わったんだよ~!」

「待たせてしまって申し訳ありません」

答えようとするために、少年は椅子を引いて立ち上がる。

そして──── 
 

 
後書き
そーどあーとがき☆おんらいん!はやんない!だってネタがないんだもん!ww
はい、一ヶ月もお待たせしてしまい、申し訳ございません(汗
ホントはこんなにまでスパンを長くする予定などなかったのですが、ちょっと五月病的なモチベーション不足でして…………はいすいません言い訳ですごめんなさい!
さて、という訳でコラボ編です←どんな訳?
まずはたくさんのご応募、ありがとうございました!何とか部屋のスミスからの誘惑を撥ね退けることができたぜい………!
しかしその中から選びきるにはかなりの時間がかかりましたw主に私の精神的な意味で(笑)
その中で今回のコラボ相手に決定したのは、字伏さん率いるソレイユくんチームううぅぅ!!←なんかの実況?
素直に、描写したいと思った人ですね。ソレイユくんはw
字伏さんは戦闘描写もすごいし、正直付いて行けるかという点ではちょっと、いやかなり……ものすごく不安です。しかし、何事もれっつちゃれんじ!張り切ってカタカタキーボードを打っていく所存ですので、どうか暖かい眼でご支援を!
落選してしまった先生方には、本当に申し訳ございません。
個性ある素晴らしい作品を、私なぞのコラボに応募してくださって本当に嬉しかったです。いやマジ、本当に。
さすがにGGOの後の事についてはまだ未定も未定なのですが、もし次の機会が設けられる時がくれば、その時に再度ご応募くださったら、これ以上の嬉しい事はございませぬw
それまではどうか、このコラボ作品を存分にお楽しみください。 
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