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偽りの涙

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第二章


第二章

「ユリニウスの祝宴の場までな。よいな」
「はい。これが素晴らしい美しさの方でして」
「それはユリニウスから聞いておるが」
 もうそれは知ってはいた。
「そこまでか」
「ギリシアの美しさとは少し違いまして」
「ふむ」
 それを聞いてまた少し気付いたことがあったがそれは言わなかった。
「切れ長の目を持っておられます」
「するとあれじゃな」
 切れ長の目と聞いてわかった。
「東の方が」
「そうですね。そうした感じです」
 兵士もそうアポロニウスに答えた。
「どちらにしろギリシアのものではありません」
「異国の美女というわけか」
「しかも大層気前のよい方でして」
 こうも述べてきた。
「私への謝礼も。これを」
「それは」
「御覧下さい、この宝石を」
 兵士が見せたのは様々な色の輝きを持つ大きな数個の宝石であった。彼はそれをアポロニウスに見せてうっとりとさえしていた。
「これだけのものを下さったのです」
「宝石か」
「どうでしょうか」
「ふむ」
 アポロニウスはその宝石をまじまじと見だした。そのうえでまた言う。
「一個よく見せてはくれぬか」
「ええ、どうぞ」
 兵士もにこやかな顔で彼に答えた。
「御覧になって下さい」
「はい、それでは」
「うむ」
 アポロニウスは兵士の手の中の宝石を一個取ってみた。それは真珠である。白く眩い光を放っている。その真珠を右の親指と人差し指で摘んでみる。そうして目で見ながら指で何かを計っていた。
「成程な」
「どうでしょうか、この宝石は」
「素晴らしいものじゃ」
 思うことをここでは口に出さなかった。
「しかもかなりな」
「それ程までですか」
「話には聞いていた」
 ここではその思っていることを少し言葉に含ませる。兵士に気付かれないように。
「しかし。実際に見るとはな」
「真珠を御覧になられたのははじめてで?」
「いや」
 それは否定する。
「何度か見ておるぞ」
「左様ですね。それでどうして」
「何でもない。それでじゃ」
「はい」
 話が戻った。
「アポロニウスのところに案内してくれるか」
「はい、それですね」
 兵士もそのことを今思い出した。
「それではこちらに」
「うむ、頼むぞ」
「わかりました」
 こうしてアポロニウスはユリニウスの祝宴の場に案内された。見ればそこにはもう多くの客達が招かれていた。皆そこで笑顔で酒に美食を楽しんでいた。
「おお、先生」
「もうはじまっておったのか」
「はい」
 ユリニウスが笑顔でアポロニウスのところに来た。そうして彼に挨拶するのであった。
「ようこそ」
「うむ、元気そうで何よりだ」
「はい、それで私の妻ですが」
 ユリニウスは早速そちらに話をやってきたのであった。
「御会いになられますか?」
「後でな。今は」
「お休みになられますか」
「コリントまで歩いて少し疲れた」
 まずはこう弟子に対して述べた。
「馳走に美酒を頂きたい。よいか」
「はい。それではまた後で」
「うむ。ではワインに肉を頂こう」
 そう言って顔には笑顔を作って杯を手に取った。そうして重さを測るが。やはりここでも彼の睨んだ通りの結果が出るのであった。
 
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