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少年少女の戦極時代Ⅱ

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オリジナル/未来パラレル編
  第19分節 クレシマヘキサ



 貴虎はその顛末を細かに語った。

 その日は、碧沙が通う小学校の卒業式だった。当時碧沙は小学6年生。真新しい中学の制服を着て卒業生の中に立っていた。
 その日ばかりは、貴虎も仕事を休んで妹の門出を祝いに参列したという。
 貴虎にとっても、全ての父兄にとっても晴れがましい日になるはずだった。

 ――卒業式の途中で、講堂にインベスが現れなければ。

 後にインベスが人為的に呼び出されたもので、犯人は卒業生の一人だと判明する。
 その児童の父親はインベス災害の被害者だった。だが、動機は復讐などではなかった。稼ぎ頭の父がそうなったせいで志望校を辞退せざるをえなくなって、最も近くにいるビートライダーズだった碧沙に罪を被せてやりたかった――と。支離滅裂な八つ当たりだった。

 講堂はパニック状態となった。
 児童は我先に逃げようと学友を押しどけ、倒し、走っていた。教師も児童を誘導できないほど混乱し、父兄も我が子を助けるでなく逃げようとした。

 インベスという災厄は当時それだけ恐ろしいものだったのだ。

 その日の貴虎の後悔は、ゲネシスドライバーを持っていなかったこと。紘汰たちと異なり、「仕事」でアーマードライダーになる貴虎は、プライベートではドライバーを持ち歩いていなかった。

 “こいつよ! こいつがロックシードを持ってる! こいつが怪物を呼び出した犯人よ!”

 一人の児童――後に犯人と判明する女子児童――が叫んで掴み上げたのは、他ならぬ貴虎の妹の手だった。その手の中には確かにロックシードが握られていた。

 直後に碧沙は児童の雪崩に埋もれて見えなくなった。

 人波に逆らい、児童の群れを掻き分け、貴虎が駆けつけた時。そこには××れた碧沙の体が





「も――いい、です」

 咲は片手で胸元を押さえ、もう片方の手でテーブルに手を突き、荒い息をどうにか鎮めようとした。だが込み上げる吐き気に邪魔されて酸素が上手く吸えなかった。

(ヘ、キサ――が)

 ()()()()()()()()()()。ヘキサは――とうの昔に死んでいたのだ。

「――1週間ほど前、葛葉から連絡があって頼まれた。もし君が私を訪ねることがあっても、碧沙の件は言わないでくれと」
「じゃ、ど、して」

 教えてくれたんですか? ――咲はようやっと顔を上げた。

「妹は昔、君を親友だと言っていた。あの碧沙がそうまで言う者を相手に隠し通せるとは思えなかった。よそで虚飾された真相とやらを知られるくらいなら、兄である私の口から告げたほうがよっぽどマシだ」

 確かにそうだ。もし貴虎がヘキサについて嘘をついたなら、咲は別方面からどうやってでも碧沙の所在を知ろうとしただろう。ヘキサが生きていると疑いもせずに。

(本当だね、ヘキサ。ヘキサのお兄さんは本当に優しい人だったんだね)

 咲は気力だけで立ち上がり、貴虎に対して頭を下げた。

「辛いことを思い出させてごめんなさい。言いにくいことを教えてくださって、ありがとうございました」 
 

 
後書き
 恨みとは理不尽なもので、集団とは凶器だという話。 
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