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少年少女の戦極時代Ⅱ

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ヘルヘイム編
  第17話 7分の6の現実 ①



 その日、ヘキサはいつものように、ビートライダーズとしてのステージに立っていた。

 いつも通りにゆらゆらとした振りつけのダンスを踊っていた。客もいつも通り、塾や習い事に行く前のちょっとした時間がある児童が集まって、ピンクと黄色のアイテムを曲に合わせて振ってくれていた。

 曲の終符に合わせてポーズを決める。拍手が沸いた。

(やっぱり何も考えずに集中できる一番のことって、ダンスだわ)


 ――ステージが終わった。客の児童たちがどやどやと帰ってから、ヘキサたちは野外劇場の掃除をしていた。

 「いつも通り」でないことは、その時起こった。

 客席のゴミを集めていると、ポケットに入れてあったスマートホンが振動した。

(めずらしい時間のメール。兄さんたち、何かあったのかしら)

 ヘキサはゴミ袋を置き、ポケットからスマートホンを取り出してメールのアイコンをタッチする。メールの差出人は次兄の光実だ。

 メールの文面を開いて読んで、ヘキサは驚愕した。

 クラックとヘルヘイムの存在が明るみに出た日に、秘密を隠蔽するために行われる大虐殺――スカラーシステム。それが今日行われるかもしれないと文面には記してあった。

(これが、貴兄さんと光兄さんが、ずっと抱えてきたものだったのね)

 ヘキサはスマートホンを胸に押し当てた。まるで文章に宿る兄たちの苦悩を抱き包むように、両手でしっかりと。

 そして、思い出す。
 ヘキサは過日、シドと偶然会った。シドは戦って傷だらけになっていた。

(される側だけじゃない。する側も傷つくことがある。一方的に傷つけるだけなわけじゃない)

 ヘキサは再度メールを読む。文末は、ヘキサもビートライダーズの仲間を連れて地下シェルターに避難してくれ、と括ってあった。添付ファイルは、地下シェルターの位置を標した地図アプリ。

 ヘキサは一度だけ瞑目し、毅然と顔を上げた。掃除のために散った仲間たちに聞こえるように声を張って。

「みんな聞いて。大事な話があるの」




 ――ヘキサは自分のスマートホンを、咲はじめとするチームメイトに回し読みさせた。
 メールを読み終わると、皆一様に青い顔をした。

「ウソでしょ――どこまでトチくるってんのよ、ユグドラシル」
「……独裁」
「今からじゃヒナンするヒマねーじゃん! ヘキサ、このこと、街の人たちは」
「知らされてないと思う」

 ユグドラシルのターゲットは街そのものではなく、秘密を知った街の人間なのだ。避難させる気などあるわけない。

 ――それは籠に入れた鳥を、籠ごと川に沈めるのにも、似て。

「ヤバッ、父ちゃんと母ちゃんに教えねえと」
「待って! オトナに教えたら、そこからウワサが広がって街中パニックになっちゃう」
「じゃあ置いてけってのかよ!」

 反論できず面を伏せた。

「やめなさいよ、モン太! ヘキサを責めたってどーにもなんないでしょ」

 咲がヘキサの前に立った。今度はモン太が俯き、小さく謝ってきた。

「ヘキサ、ヒナン先はわかってるのよね」
「うん。光兄さんが地下シェルターの地図くれたから……」
「じゃあヒナンして。あたしがユグドラシルに行って、止めてくる。そのスカラーなんとかってヤツ」

 ヘキサは唖然とし、咲をまじまじと見つめた。
 ――そうだった。室井咲の決断力は鉄火場でこそ発揮される。初めて咲が変身した時とてそうだった。

(だからこそ、止めなくちゃ。咲が兄さんとキズつけ合うなんてイヤ)

 咲の両手を取り、目を真正面から覗き込む。すると咲は少し怯んだ。

「スカラーシステムが何なのか知ってるの?」
「知らない、けど、行けば分かる! ……と思う」
「止め方も?」
「う…」
「ユグドラシルには4人もアーマードライダーがいるのよね。葛葉さんいないのに勝てるの?」
「ぁぅ…」

 咲がどんどんしぼんでいく。心が痛むが、咲と兄たちが争うよりずっといい。


「咲。変身して戦うだけが道じゃない。わたし、思いついたことがあるの。戦わないで街を守れるかもしれないやり方」 
 

 
後書き
 ついに咲サイドが真実を知りました。

 原作のタイトルを見た瞬間、「ならウチはこれで行こう!」と一発でタイトルが決まりました。咲たちは「真実」ではなく「現実」の真っ只中にいるので、再び原作キャラはほとんど出ないパートに突入です。すみません<(_ _)>

 せっかく教えてもらった秘密を速攻バラしたら、ミッチお兄ちゃんからお仕置きされちゃうよヘキサちゃん。
 といってもこの時の光実も舞たちを地下に連れて行こうと苦しい嘘をつくほど必死なのですが。
 そして紘汰はクラックの向こう側でインベスと戦っていて、貴兄さんはスイッチ目の前に悩んでるわけですが。 
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