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赤城と烈風

作者:fw187
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波及効果と戦史研究
  水中高速潜水艦

 日本海軍は第1次大戦の戦利艦として帝政ドイツ海軍の誇る海の狼、潜水艦7隻を譲渡されています。
 1918年9月4日ブローム&フォス社で竣工、機雷42個の搭載と敷設が可能で航続力に優れる『U125』。
 7月15日・9月20日ブローム&フォス社で竣工、機雷14個を搭載する『UC90』『UC99』。
 5月18日・10月3日ヴェーザー社で竣工、6隻の船を撃沈した『UB125』と『UB143』。
 大型潜水艦は『O1』、沿岸用小型潜水艦は『O4』『O5』『O6』『O7』と仮称。
 1915年12月17日ダンチッヒ工廠で竣工、55隻の商船を撃沈した『U46』は『O2』。
 1916年6月8日ゲルマニア社で竣工、65隻の商船を撃沈した『U55』は『O3』と仮称。

 帝政ドイツ海軍の新型潜水艦は後に新艦政本部が絶賛、戊型潜水艦の先駆者と評価。
 88ミリ高角砲1門を装備、量産に適した設計の中型潜水艦は最優秀の戦利艦と再認識。
 1904年に連合艦隊の戦艦4隻、第1次大戦の際に英仏海軍の戦艦が触雷沈没の事実も重視。
 機雷戦が主任務の大型敷設潜水艦、特殊潜航艇『咬龍』を開発する発端となりました。

 1939年9月に想定外の開戦を迎え、ドイツ海軍は極東の島国へ派遣中の技術将校達を召還。
 第1次大戦後に始まった交流に基き建艦計画は改訂、帰国した彼等の報告を受け更に変貌。
 『赤城』『蒼龍』の見学後に各種情報の提供を受け、未経験の航空母艦は一気に建造を加速。
 重巡洋艦と推進機関の共通化を図り、製造費の格段に低下した姉妹艦3隻は竣工に漕ぎ着けますが。
 1939年の開戦直後には魚雷が命中したにも関わらず、起爆装置が作動しない不具合が多発します。

 ドイツ海軍の誇る潜水艦部隊は実力を発揮出来ず、艦長達から苦情(クレーム)が殺到。
 原因究明と問題解決には一定の時間が必要、困惑した担当者は伝手を辿り新艦政本部に接触。
 要請を受けた潜水艦本部は連合艦隊、海上護衛総司令部と協議の末に機密情報の開示を許可。
 命中衝突時の衝撃で作動する通常型の信管に加え、92式電気魚雷用に開発された新装備。
 艦底起爆装置を含む複数の実用見本(サンプル)、関連する各種技術情報も譲渡されました。

 電線を巻いた線輪《コイル》は敵艦へ接触時、磁気変化が励起され誘導電流が発生。
 微弱な電流を増幅し起爆させる原理ですが、破壊力の発揮に最も効果的とは限りません。
 1904年に戦艦『初瀬』『敷島』『ペトロパブロフスク』を沈めたのは、魚雷に非ず機械水雷。
 艦底を直撃する機雷の破壊力は、水面下の側面を破る魚雷を遥かに凌駕すると実証済み。
 艦底を通過する瞬間に魚雷が爆発すれば、破壊力は最大となり浸水の防止も困難です。

 戦訓を基に各種の艦底起爆装置が考案され、大英帝国海軍や合州国海軍も試作品を実験。
 日本海軍も実用化を図り試行錯誤の末、或る発想(アイディア)の試作品を製作。
 線輪《コイル》の電線を巻く鉄芯の後端に、空気室の前端となる蓋を密着させ性能を試験。
 発射された魚雷が艦底を通過する瞬間、磁気に感応して誘導電流が発生し起爆装置が作動。
 魚雷は間髪入れずに炸裂、標的(ターゲット)の廃棄艦は艦底を破られ姿を消しました。

 再現性が実証され電気魚雷に装備を決定、潜水艦用の酸素魚雷にも原理を応用可能と判断。
 95式酸素魚雷用の実用品も開発され、艦底起爆装置を組み込んだ実用見本を譲渡。
 帝政ドイツ海軍の戦訓に学んだ潜水艦本部は、先駆者に返礼として各種情報を提供。
 水中高速型潜水艦の第71号艦、試作のA標的は新生ドイツ海軍に絶大な衝撃をもたらしました。

 1934年に建造された甲標的の試作潜水艇、1軸電気推進のA標的は水中速力24ノットを発揮。
 1937年12月にはA標的の経験を活用し第71号艦、水中高速実験潜水艦を起工。
 A標的用に開発の大容量特B型蓄電池672個を搭載、主機は国産300馬力ディーゼル1基。
 水中高速性能を追求する為、魚雷と同じ1軸の2重反転プロペラ推進を採用しています。 

 魚雷発射菅1門を艦首中心線の下部、2門を艦首浮力タンク上部の艦外に装備。
 3門とも艦内から魚雷の装填は不可能、予備魚雷は皆無で帰港後に基地で装填。
 1938年8月29日に進水の第71号艦は竣工後、日本潜水艦史上初の水中速力21.3ノットを記録。
 単殻構造の艦体は艦首に浮力タンクを配置、水上の安定性や航洋性は不足し水上速力13ノット。

 艦籍の無い極秘実験艦は1941年夏以降も各種実験に従事、貴重なデータを提供していますが。
 第71号艦を参考に目標は水中速力19ノット、流線型の新型艦は多量の電池を搭載。
 水上砲撃戦は実施しない方針で艦砲を削り、対空用60口径25ミリ機銃のみ装備。
 従来の可潜艦を凌ぎ本格的な海中機動能力を発揮、伊201型水中高速潜水艦が試作されました。

 特殊潜航艇『咬龍』も航続力を延長、運動性を向上させ水中高速潜水艦の波201型へ進化。
 魚雷4本を搭載し発射菅2門は艦首に配置、全溶接構造の量産対応型を設計期間3ヶ月で製図。
 水中運動性能を重視し船体中央部、艦橋直下付近の左右に潜舵を配置。
 第71号艦と同様に推進器の前方で十字形の縦舵、横舵が軽快な操縦性を発揮する筈です。
 海中を機動する高速魚雷艇は急速潜航時間15秒、対空用に単装機銃1挺のみ装備。
 ドイツ仮装巡洋艦へ搭載の予定ですが、離島防御にも有効と期待されています。

 新艦政本部は実験艦の経験を盛り込み、実戦配備が前提の量産化に対応可能な新型艦を計画。
 通商破壊戦に適した水中高速潜水艦の伊201型、離島防御用に小型化の波201型が建造中です。
 デーニッツ提督は末恐ろしい新人の出現に衝撃を受け、水中高速型潜水艦の開発を厳命。
 極東の新鋭艦を凌駕する為、潜水艦部隊の第1人者のみならずドイツ海軍の総力を結集。
 伊201型に匹敵する水中高速潜水艦21型、波201型に相当する水中高速潜水艦23型を計画。
 ドイツ海軍の技術将校と職人(マイスター)達は、意地と自尊心を懸け実用化に挑戦します。

 21型は水中の抵抗を極力減少させ、水中速力17.5ノットは従来型の2倍以上。
 備砲は設計当初から撤去され、対空機銃4基も流線型の被覆(カバー)を付けた引込み式。
 自動装填装置を装備の魚雷発射管6門は艦首に集中装備、搭載魚雷23本は総て艦内に格納。
 10分で6門全ての再装填が可能であり、雷撃用の指揮装置も新型を搭載。
 水中聴音機(ソナー)2種の情報(データ)、探知用と攻撃用の電気信号を自動的に解析。
 潜望鏡を使用しない全没状態で雷撃試験を実施、充分な命中精度を発揮する筈です。

 水中航行用の蓄電池を多数搭載、電動機のみ静粛航行6ノットで連続水中航行48時間が可能。
 浮上時ディーゼル推進の最高速度は15.6ノット、電気推進時は17.9ノット。
 徹底したブロック工法を採用し32ヵ所の造船所、鉄工所で船体を建造。
 11ヵ所の造船所に集め艤装工事の完了後、3ヵ所の造船所で組み立てる体制を構築。
 航続距離は潜航時340海里/5ノット、浮上時15500海里/10ノット。
 円筒を上下に繋いだ様な流線型の艦体が採用され、充分な艦内容積も確保されました。

 標準化された構成単位(モジュール)を結合、一体化させ工期を短縮する大量生産方式を採用。
 機械工業先進国は実力の片鱗を披露、日本を凌駕し理論上176日で建造可能と計算。
 沿岸用の小型潜水艦23型は水上速力9.7ノットを上回り、水中速力12.5ノットを発揮。
 艦首に魚雷発射管2基2本を搭載、航続距離194海里/水中4ノット乃至4300海里/水上6ノット。
 北海で運用された23型は優秀な実績を挙げ、1940年5月以降は英仏海峡の高速艇を翻弄。
 21型を上回る急造型の小型潜水艦は、対潜哨戒艦艇を上回るペースで数を揃えます。

 1937年頃からドイツ海軍に提案された推進装置、ヴァルダー機関を搭載する実験艦も計画。
 過酸化水素を分解して駆動、2500馬力を発揮する低温式ヴァルター・タービンを装備。
 1940年1月に排水量80トンの小型試作艦V-80が進水、潜航中の最大速力26.5ノットを記録。
 沿岸用の潜水艦22型は安全面を考慮、間接型ヴァルダー機関を開発し搭載の計画ですが。
 航洋型水中高速潜水艦U-2501竣工後、英国周辺の海上補給線(シーレーン)を試験的に襲撃。
 各地の造船所や鉄工所から各構成単位を集結、姉妹艦を竣工させ続いて投入の予定です。 
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