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こんなチートでもありですかい?そうですかい。

作者:わいわい
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第43話。変人と琥珀。

遠野家の屋敷はロビーを挟んで鳥の翼のように左右対称の東館と西館に別れている。

東館には秋葉・志貴の部屋があり、基本的に彼らは東館で過ごし、書庫と使用人の部屋は西館一階にある。

俺とシオンは、先代当主である遠野槙久の死後、遠野秋葉によりほとんどの使用人が解雇されて以降、使われていない西館の一室に、泊めてもらうことになった。

「今からお部屋の掃除をしますので少々お待ちください。」
「あいよ。」

メイドの翡翠さんがそう告げたあと、俺たちは夕食をごちそうになることになった。

泊めてもらって飯まで悪いな~と思っていたが、妹様曰く、兄さんの友なのだから、相応のもてなしをしないといけないとか。

「いや~。今から地下荒しにいくってのに、飯まで作ってもらって悪いのぉドクター。」
「いえいえ~。お客様を喜ばせることも、使用人の矜持ですから。」
「どくたー?琥珀さんのこと?」
「シッキー。世の中には知らなくてもいいことが沢山あるんやで?」
「そうですよ志貴さん。」

笑顔の俺らに顔を引き攣らせるシッキー。

「所でシッキー。いつからシエルの助手になったん?」
「3学期終わったらすぐにだよ。例外もあるけど、大体2ヶ月現地で任務に着いて、1ヶ月日本で、って感じ。」
「1ヶ月も休みなんか」
「本当は先輩が書類仕事する期間なんだ。」
「なるほど。使えんシッキーはお暇をもらってると言うことかい」
「・・・・うん。まぁそうなんだけどね。」

なんとも言えない表情をするシッキー。その使えなさは、妹様には都合がいいようで、とても嬉しようである。

「でもさ、うちの地下の入口ってどこにあるの?俺知らないよ?」
「一応あるにはありますが、そこは遠野の当主のみが知る場所。兄さんはおろか、余所者に教えていいことではありません」
「どうにかして別のとこから入れってことやな。まぁ、琥珀さんも使こうてるなら、他にあるやろうし」

確かアンバーグランドに行くには、三咲町のどこかにあるマンホールから下水道に入り、公式の地図に記載されていないルートを通らないと行けない。

流石にどこのマンホールとかは知らんし、ルートもわからん。

ふと思ったんだが、下水道勝手に改造してバレたら怒られないか?

・・・・妹様が。地主的な意味で

なるほど、ここまで謀っているのか。流石だな。

しかしだ、残念だったなドクター。こっちにはシオンっていうジョーカーがいる。





夕飯を頂いていると、いつの間にかに琥珀さんが居なくなっていることに気づく。

おいおい。俺に気付かせないなんて・・。まぁ、タタリ発生時の琥珀ドクターを常識で語ってはダメか。

さて、そろそろ俺たちも行動しますかねぇ。

「シオン。」
「なんでしょうか?」
「壁抜けとか出来る?幽霊的に」
「・・・昔は無理でしたが、やろうと思えば。」
「床とかも?」
「恐らく。・・・対象を確認。距離算出。位相変換。移動体の状態把握。座標確認。・・・後は実行だけです。行けます。」

流石ですシオンさん。何度も思うけど、それ絶対錬金術じゃないから。

「え?何するの?」
「おうシッキー。簡潔に言うとな、地面無視して地下に行くんよ。ワープ的な。」
「なんですかその常識ハズレた行動は」
「実際には少し違うのですが・・」
「別にええやん行けるなら。」
「でもうちの敷地内なのは分かるけど、どこにあるかわかるのか?」
「それは大丈夫です。既に推測が付いています。大きく作りすぎなために分かりやすいですね。」

俺の使徒や、シッキーの直死の魔眼より、アトラスの錬金術の方がよほどチートなんじゃね?と思う今日この頃。

外に出てシオンの後に着いていく3人。途中で翡翠さんに遭遇。

姉さんは?との質問には、今から捕まえに行くと告げといた。ため息をついていた

その後、俺とシオンがお礼を言い、妹様が今日はもう休んでいいと告げ分かれる。

「ここら辺ですね。」

西館と東館を挟んだ中庭の中心より、少々離れた場所でシオンが止まる。

「ここから行くと一番開けた場所に行けます。」
「よっしゃ。行くぞシッキー。」
「うん。行くよ秋葉。」
「・・・え?私も行くんですか?」
「え?いかないの?」

きゅーんと子犬のような目で見るシッキー。妹様はよろめく。

分かってやってたら、たいしたもんだなシッキー。

「では行きます」
「おうよ。」
「・・・つきました」
「・・・マジか」

目の前の映像を切り取ってペーストされたかのように、目前の風景が変わる。

雰囲気を出すために置いた髑髏!怪しげな光を出すための蝋燭!図鑑には乗っていない摩訶不思議なキノコ!!

・・・そして彼女の趣味で置かれた巨大ギロチン!!

そう!ここは地下の王国!その名もアンバーグランド!!

何となくカイジ風になってしまった。恐らくここの雰囲気がそうさせるんだろうさ。

「あやや!皆さんお揃いで何故ここに~」

風呂敷を背負い、逃走を図ろうとしていたのだろ琥珀さんにエンカウント。

「・・・琥珀?なんですかここは?」
「あれ~?秋葉様もいるなんて予想外です~」
「シッキーに子犬的目線で、一緒に行こう言われたら、妹様断れんやろ」
「秋葉様は志貴さんの御主人様ポジションにいたいようですけど、実際はメロメロな乙女ですから。面倒臭いですよね~」
「ちゃうちゃう。そこはかーわーいーいーと言ってやればええんよ」
「五月蝿いわよ貴方達!!」

まぁまぁ、とシッキーとシオンに宥められる妹様。

「まぁ、ここらへんでお縄に頂戴やで?」
「ぐぐぐ、晋吾くんに捕まる所以なんてありませんよ」
「人の家の地下を勝手に改造しておいて、何を言っているのです。さぁ、やってしまいなさい」
「ガッテンダオヤビン!」
「あぁ、秋葉。晋吾に向かってなんてことを・・・。先輩に聞かれたら大変なことになるぞ」
「大変どころか、聖戦を仕掛けられても仕方ありませんね」

ニヤニヤとして下品な表情でジリジリと琥珀さんとの距離を詰める俺。

してやられた!の表情で少しずつ後退する琥珀さん。

両者共通して言えることは、この状況を楽しんでいることであろう。

流石ドクター。ただものではない。

「こうなれば!そうれっ!」

掛け声と共に投げ出されたのは木の苗を植えた植木鉢。苗は枝を勢い良く回転させ、晋吾を襲う。

「なんだよそれ!いくら琥珀さんでも無しだろ!!」
「これは・・・タタリの影響でしょうか?」

志貴は激しく、シオンは冷静にツッコミを入れる。秋葉は、『何も見てない』と存在を強く否定した。

「残念だが・・そいつの弱点はすでに露呈しとるわ!!」

晋吾はスライディングで地面を滑り枝を掻い潜り、植木鉢を蹴り上げる。

鉢を壊されれ、地面にへばりついたカキノキ科のサイコガーデンは、地面で魚のようにちびちびと跳ね、暫くして動かなくなった。

「流石。と言った所でしょうか?一瞬で私の育てた子の弱点を暴くとは・・・。」

神妙な顔持ちで息絶えた(?)苗を見る琥珀さん。

「しかし!私はまだ倒れるわけにはいかないのです!!」

そう言って奥に逃げ出す琥珀さん。

「追いますよ!」
「ガッテンダオヤビン!」
「今思ったんだけどさ。晋吾楽しんでない?」
「それは逃げている彼女にも言えるのでは?」

はぁ。とため息を一息ついて、志貴は妹と友人と、使用人を追いかけるのであった。 
 

 
後書き
NGシーン。
「今からお部屋が掃除をしますので少々お待ちください。」
「マジか。」

使用人の矜持。
たとえ相手がテリトリーを荒しに来る相手であろうと、
お客様であるのならエイこらせ。

日本にいる一ヶ月の間のシエルがやること。
前の依頼の事後処理。志貴とデート。教会に前の依頼の報告。志貴とデート。
必要経費の要求。志貴とデート。次の依頼の確認。志貴とデート。
秋葉が彼女とブッキングする日は近い。

シオンの地面すり抜け術。
対象確認。距離算出。位相変換。移動体の状態把握。座標確認。実行。
以上の6工程と並列演算補助式を含めた7つを4人分。28式を同時計算。何度も言うけどそれ、錬金術じゃないから。やろうと思えば日本からブラジルまで一瞬。

カイジ風の地下。
戦闘BGMがペリカな件について。

晋吾と琥珀。
波長が合う二人。しかし合いすぎて恋人同士になることはない。
親友と書いて悪戯同盟と読む。おもに妹様が被害を受けるらしい。

>やってしまいなさい!ガッテンダオヤビン!
シエルには志貴と晋吾の二つの理由で秋葉に聖戦を仕掛ける理由が出来た。

サイコガーデンの弱点。
常々作者が思っていたこと。鉢蹴飛ばしたら終わりじゃね?
その弱点を克服したのがジョニー。固定砲台。サイコガーデンの真価はここからだ

>追いますよ!ガッテンダオヤビン!
ガッテンダオヤビン! 
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