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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第85話 闇と影は誰もが持つようです


Side ネギ

「『(コンプ)……(レクシオー)』!!」
ガキッ!
「これは……!」


僕が魔法を取り込むと身体が黒化し両腕が凄く冷えて、力が漲って来る。

それを見たエヴァンジェリンさんは嬉しそうな顔で笑う。


「くくく……いいぞぼーや。『闇の魔法(マギア・エレベア)』、会得したか。」

「あなたは僕の記憶から構成された僕の影。言わば僕の一部…。あなたを倒す事がこの試練に

打ち勝つ事ではなかったんですね。」

「フフ、時間がかかりすぎだよ。だがいいだろう……ではその成果―――
ォ ォ ォ オ オ オ
見せて貰おう!!」
ドンッ!

Side out 


Side 千雨

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
「~~~~~~~~ッ!くそっ!まだかよ先生、もう待てねぇぞ……。」


あれから数時間。身体から血が噴き出るような事は無くなったが、一向に先生は目を覚まさない。

空が白んで来て小鳥が鳴き始めて、更に自分の貧乏揺すりでイライラが加速する。

オッサンは夜明けがリミットだと言っていた。キャンセルさせんなら日が昇る前にしないとアウトだ――


「―――ったく!!何で私がこんな役回りを引き受けなきゃならないんだよ!
ガッ
……時間切れだ、先生!」


自分の浅はかさとこの世の不条理ってのにいい加減我慢し切れなくなって、私は巻物とナイフを手に取る。

もう十分もしないで日が昇るだろう。ここで試練を止めなきゃ、先生は魔法を使えなくなるだけじゃない。

良くある、"闇"ってのに心を喰われて目を覚まさなくなるだろう。だが・・・・・・!


「ぐ……!ダメだ、やっぱり出来んっ!試練をキャンセルした場合でもリスクはゼロじゃない。

闇との相性が良過ぎるから、無理矢理ひっぺがせば魔法の能力に後遺症が出る可能性は低くない……って

おっさんは言ってた。それはあたし等にとっても最悪だ。」


ここはやっぱり、先生。あんたが自分で試練を乗り越えれくれんのが一番なんだ。

どうしたよ先生。目を覚ませよ!あんたの決意ってのはその程度のもんだったのか!?


「あーーー、もうっ!しっかりしろ私っ!この頭の悪いファンタジーが現実だ!

覚悟を決めろってんだよ長谷川千雨!!」


なぁ先生・・・あんたさ、なんか私の事妙に尊敬してくれてるっつーか信頼してくれてるみたいだけどよ。

私が偉そうな事言えるのは、私が傍観者だったからだ。それが良いと思ってたんだけどな・・・。

だけど、私だって決めたんだ。あんたらに比べれば青っちょろい、平和ボケした考えなのかも知れねぇけど。


「……私の都合込みであんたの背中押して、あんたはそれを信じてくれて前に進んだんだ。

だから………信じるぜ、先生。あんたがやり遂げんのをよ。」


決意した瞬間、狙い澄ました様に差し込む朝日が強くなって、思考が揺らぐ。

・・・けど、もし先生が目を覚まさなかったら?私の身勝手で、先生の一生を台無しにしたら?

神楽坂とかあの幼馴染とか、いいんちょとかになんて言えばいい?一番ショック受けるのは宮崎だろう。

いや、そんな事より、こいつはまだ10歳なんだ。あの人が何考えてるか分かんねぇけど、

それに巻き込まれて、こんな事になった挙句・・・そんな、理不尽な結末―――


「(駄目だ……!)スマン先生…!!」
ドスッ

感情が昂ったそのまま、さっき投げたナイフを掴み、思いっ切り巻物に突き刺す。

最後まで信じてやれなくてごめん、先生・・・。だけど、命さえ繋いでればいくらでも方法は――


「え―――」

「おはようございます、千雨さん。」


目を開くと、私が突き刺した筈のナイフは先生の指二本で止められ、その上先生が目を覚まして挨拶を

して来やがった。しかも、妙に大人びた顔で。

・・・・・・・・なんつーか、なんつぅかよぉーーー・・・・・・!!


ッッッッッッパァァーーーーーン!!
「ふぶぁっ!?あれ、ちょ、千雨さん!?いきなりなんですか!?」
 
「っせーよアホガキ!目ぇ覚ますんならとっとと覚ませってんだよ!人の精神削って楽しいか!?

お約束よろしくギリギリで目覚めやがって!お前等全員馬鹿だバーーカ!いじめっ子にも程があんだろ!」
ボスボスボスボス!
「あ、やめ、ちょ!って言うかなんか体中が痛いんですが…!」

「知るかぁ!!」


キメやがった先生を、巻物とか枕とかそこらに合った物で滅多打ちにする。

人が・・・人が徹夜で看病(?)してやってたのにアホ面しやがって!!そう言うのは宮崎にしてやれよ!

と、先生がピクピクし出した所で何処からともなくおっさんが戻って来た。


「おお、目覚めたかぼー……ず?」

「たった今永眠したよ!!」

「おぉ?……んん?んふぅぅ~ん??なんだ嬢ちゃん、付き添ってたら情が愛情n

「お前も永眠しとけやぁ!!!」
ズッガァァァアアアアアアン!!!
「どぅっはぁーーーーー!?」


ホンッッッット馬鹿ばっかだな!どうしてそういう話にしか出来ねぇんだろうな!?

・・・そう、私はもう決めてんだからな。

Side out


Side ネギ

「ゴホンッ!い、いずれにせよ良くやったぜぼーず!これで漸くスタートラインには立てたな!

そら、両腕に魔力を集中させてみな。」

「両腕……ですか?」


復活したラカンさんの言う通り両腕に魔力を集中させると、何か炎の様な、翼の様な模様が浮き上がる。

これが・・・『闇の魔法(マギア・エレベア)』を習得した証なのかな?

魔力を注いでいると、なんだか落ち着かないと言うか、段々熱くなってくるような・・・?


「お前がお前だけの力で手に入れた技だ。誇りに思いな。けど気は抜くなよ。お前は自分の獲物を

手に入れただけに過ぎん。使いこなして、研ぎ澄ませてこその技だ。」

「は、ハイ!」


取り敢えず魔力を送るのをやめて、体を楽にする。

使いこなして、研ぎ澄ませるか・・・。僕、今まで教えて貰った技を一つも極めてないよね・・・?

中途半端にして次々新しい技を習得してここまで来て。段々強くなってはいる、けど。


「……よぉし!じゃあ早速見せて貰おうか。行くぜ!」

「ハイ!よろしくお願いします!」

「っておいおい、大丈夫なのかよ?ついさっきまで……。」


ラカンさんが楽しげに言うのについて行こうとすると、千雨さんが止めたそうな声色で心配してくれる。

ありがたいけれど、僕だって早く『闇の魔法(マギア・エレベア)』を自分のモノに―――って、そうだった。


「あ、あの、千雨さん。」

「ん?なんだよ、やっぱどっか痛いのか?」

「痛い事は痛いのですが、そうじゃなくて……。その、ありがとうございました。

さっきの事も、これまでの事も。」

「いや、だからだな、礼はいらないっつーか、なんつーか……。」


言い忘れていた感謝を述べると、何故かバツが悪そうに頭を掻く。どうしたんだろう・・・?

千雨さんに落ち度がある訳ないし。聞いても答えてくれないんだろうなぁ。

なら、今は『闇の魔法(マギア・エレベア)』を試すのが先だ!


「よーし、景気付けに『雷の暴風』を取り込んでみろ!!」

「ハイ!"ラステル・マスキル・マギステル"!」

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subSide フェイト

「廃都オスティア・・・いや、旧ウェスペルタティア王国 王都跡・・・か。」

「我らが主らと世界の魔力が満ちるまで三週間……全て計画通りだ。」


計画の要の一つであるオスティアへ、ツェルの命令で『冠する者』全員で訪れた。

最後に残す為の転移門にとある調整を行う為だ。・・・何の意味があるのかは分からないけれどね。


「当然だ。ツェルとシュウマの計画が外れる訳が無い。更に僕らが修正を加えているのだからね。

・・・でも、順調すぎるのもつまらない、かな。」

「おやおや『運命を冠する者(ディアーション・フェイツ)』、そんな事を言うと創造主猊下に拳骨を頂きますよ?」

「・・・今のは無しだ、忘れてくれ。」
シュタッ
「どぉも~~フェイトはん、ご報告ですぅ。」


ヴァナミスと戯れていると、背後に影の様に少々派手な女の子が現れる。

京都に居た時にお手伝いをして貰った月詠君だ。僕らは気に食わない所が多い子だけれど、その狂性と

可愛らしさがシュウマとノワールさんの目に留まり、こうして隠密に雇っている。


「お姫様は相変わらず行方不明、面倒そうなのは二人。他の行方不明者を探して世界中徘徊しとります。

あ!あとあと、センパイはなんや変なおじさんと徒歩でここに向かっとります。」

「・・・そう、ご苦労様。監視を続けて。」

「はぁぁん、監視だけなんて殺生やわぁ~。いつんなったら死合れるんですかぁ~?

ノワールはんも結局、どっか行ってまうしぃ~~!」

「・・・もう少し我慢して、月詠君。」


二人が目をかけただけあって、裏表、仕事を問わず優秀な子なんだけれど・・・この戦闘狂な所が

問題なんだよね。今は偶に悪魔達を斬らせて我慢させているけれど、そろそろ限界かな。


「せや、フェイトはん。ネギ君の事ですけど。」

「・・・・・・彼が、何?」

「未確認ですが、彼のお仲間が話しとって……。かつての英雄、紅き翼のラカンとか言う人に弟子入りしたとか。」

「ラカン……?"千の刃"か。他の者が生きていたから、まさかとは思ったが。」

「あの野蛮な筋肉達磨君が師匠とは。実戦経験を積むにはちょうど良い相手、と言う事でしょうかね。

いやはや、猊下に稽古をつけて貰っていたと言うのに、嘆かわしい……。」


月詠君が捕捉と言わんばかりに付け加えた話が、一番僕らの耳をそばだたせる。

成程、あの男か。ナギやアルビレオと違い努力タイプの人間だ。今の彼にはうってつけだろう。


「楽しげやけど、ええんですか?ネギ君このままやと……。」

「いいよ。全てが順調な今、彼の存在は僕らにとって、唯一の楽しみだからね。」
ズシン! ズゥン!
「おや、野生の黒竜種ですか。」


少々殺気が漏れた所へ、片角の黒竜が二頭降り立つ。お腹が減っているのかな?

それとも片角を折られて気が立っているのか・・・。まぁいずれにせよ。


パラパラパラ―――
「次に会う時が楽しみだよ。」


無詠唱で放った石の隆起によって、一頭を永久石化させる。

そう、彼は面白い。シュウマが異常に気に入っていると言うのもあるけれど、会う度に強くなっているし、

その思考が、それなりに長い時を生きて来た僕にとっても、初めての相手だ。

・・・あ、そう言えばもう一頭は―――

ブチッ! ビュシュッ ブッシャァァアアア
「アーハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!細切れになれ、劣等生物がぁ!!

我らの前に現れた貴様の不運と愚かしさを呪えぇ!!!」

「あっらぁ~……私より激しいですわぁ。」


・・・ヴァナミスが千切ってたね、可哀想に。まぁ、不運と言わざるを得ない。

まぁ、そんな事はどうでもいい。彼は・・・いや、彼らは―――


「僕らの敵かな、味方かな。・・・考えても、意味は無いか。さぁ、行こう。」

「「Ja.」」

「はぁ~い。」

Side out
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