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世田谷東署落ちこぼれ事件簿

作者:りきまる
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世田谷東署落ちこぼれ事件簿1-4

「今、娘が配達に出てるから帰ったら聞いてみて、近所だから直ぐに帰るから」

 妹の彼氏の名前は直ぐに分かった。
 名前は天野雄治。豆腐屋の女将さんの言った通り、元暴走族で前科はないが補導歴があるちょっと問題のある男だと分かった。今は暴走族を抜けて実家の商売の手伝いをしている様だ。それほどマークされている男ではないが、今でも昔の暴走族上がりの半グレ連中と付き合いがあるらしい。ちょっと問題があるのは、その半グレ連中が振り込め詐欺に関係している疑いがあり警視庁がマークしている事だった。
 あの夜、手伝いに来ていた近所の主婦が言っていた、奥さん側の家族と一緒に現れた茶パツの男がいたと言っていた事を山本刑事は思い出した。その茶パツが妹のボーイフレンドの大野雄治と言う事だ。しかし、大野雄治は犯行可能時間帯には帰っていたので網に引っ掛からず容疑者リストから漏れていたのだ。
「大野雄治、ちょっと怪しいですね」
「帰ったとしても、自分は手を出さず妹に命令してやらせたかも知れないなからな」
「どうします」
「考えたくないが・・・茶パツを引っ張ってる時間がない。仕方がない妹に直接聞いて確かめるか」
「そうですね」
 二人は奥さんの実家である魚金で家業を手伝っている妹に話を聞くことにした。
「言われたわ、ねーちゃんのケータイを抜き取れって、ダチにケータイを用意しろって言われたって言ってた」
「それで言われたとおり抜き取った」
「馬鹿言わないでよ。出来る訳ないでしょ、ねーちゃんの取れる訳ないでしょ」
「それじゃ」
「ぶん殴ってやったわ、そしたらあいつ帰っちゃった。次の日の葬儀にも来なかった」
 それで天野雄治は途中から居なくなったのだと山本刑事は納得した。
「天野とは」
「通夜にもお葬式にも来なかったし、それっきりであの馬鹿とはバイバイしたわ」


1-5に続く 
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