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こんな私(俺)の物語

作者:金猫
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第十六話 聖剣ですか禁手ですか

 
前書き
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もう少し後先考えて行動しなさい。



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「リアス先輩。学園を大きな結界で覆っています。これでよほどのことがない限りは外に被害は出ません」

と、匙がいう。だから脆いって。ショボすぎる。こんなんでどうやって俺に本気を出せと?
駒王(くおう)学園を目と鼻の先にした公園で、俺達、オカルト研究部と、生徒会メンバーは集まっていた。が、木場はいない。
俺の家で療養中のイリナは、生徒会長(ソーナシトリー)の住む家に預けた。勿論、命に別状はない。結局鍛えることはなくなった。
さて、俺は結界の外側に境界線を引く。ただ、これ結構消耗するんだよな。ノラガミだったら結構軽くやってるんだけどなぁ。ちなみに、この世界での(あやかし)と妖怪の違いは、知性があるか無いかだ。
生徒会メンバー全員が張った結界よりも俺一人が引いた境界線の方が強い。はっはっは、スキマ妖怪は伊達じゃないのだよ。まあ、目立たないようにしてるから、なにも変化はないのだけれど。

「これは最小限に抑えるためのものです。正直言って、コカビエルが本気を出せば、学園だけではなく、この地方都市そのものが崩壊します。さらに言うなら、既にその準備に入っている模様なのです。校庭で力を解放しつつあるコカビエルの姿を私の下僕がとらえました」

させねえよ。俺達が住む町だ。誰が壊させるものか。コカビエルの私利私欲のために、俺達が食い物になる理由はない。

「攻撃を少しでも抑えるために私と眷属はそれぞれ配置について、結界を張り続けます。できるだけ被害を最小限に抑えたいものですから・・・。学園が傷つくのは耐え難いものですが、堕天使の幹部が動いた以上、堪えなければならないでしょうね」

集中しろ。まずは、コカビエルの攻撃や流れ弾が町に向かわないようにする。これはスキマでできるだろうが、あまり連続使用は好ましくない。できれば、俺が結界でうまく空に跳ね飛ばせればいい。まずはこれが第一条件だ。町の絶対死守。

「ありがとう、ソーナ。あとは私たちがなんとかするわ」

「リアス、相手は桁違いの化け物ですよ?ーー確実に負けるわ。今からでも遅くない、あなたのお兄様へーー」

しかし、リアスは首を横に振る。紫の耳に、この話は入っていない。

「あなただって、お姉様を呼ばなかったじゃない」

「私のところは・・・。あなたのお兄様はあなたを愛している。サーゼクス様なら必ず動いてくれます。だからーー」

「既にサーゼクス様には打診しましたわ」

二人の会話を遮って朱乃がいう。

「朱乃!」

「リアス、あなたがサーゼクス様にご迷惑をおかけしたくないのはわかるわ。あなたの領土、あなたの根城で起こったことでもあるものね。しかも御家騒動のあとだもの。けれど、幹部が来た以上、話は別よ。あなた個人で解決できるレベルを遥かに越えているわ。ーー魔王の力を借りましょう」

プライベートのため口で、朱乃が詰め寄る。
リアスはなにか言いたげだったが、大きな息を吐き、静かにうなずいた。
それを確認した朱乃がいつものニコニコ顔になる。

「お話を理解してくれてありがとうございます、部長。ソーナ様、サーゼクス様の加勢が到着するのは一時間後だそうですわ」

「一時間・・・。わかりました、その間、私たち生徒会はシトリー眷属の名にかけて、結界を張り続けてみせます」

「・・・一時間ね。さて、私の下僕悪魔達。私たちはオフェンスよ。結界内の学園に飛び込んで、コカビエルの注意を引くわ。これはフェニックスとの一戦とは違い、死戦よ!それでも死ぬことは許さない!生きて帰ってあの学園に通うわよ、皆!」

『はい!』「・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・ん?行くのか?よし、わかった。

『人類と人外の境界』

種族を妖怪に。見せてやるよ。スキマ妖怪に間接的とはいえ、喧嘩を売ったんだ。それ相応のお返しはさせてもらうぞ。

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正門から、私たちは敷地に入る。一応、私は『兵士(ポーン)』だからプロモーションできるけど、あとのためにとっておきましょう。地力がどれぐらいかみるいい機会だわ。

少し先に見える校庭。そこの中央に四本の剣が神々しい光を放ちながら、中に浮いている。それを中心に魔方陣が校庭全体に描かれていた。魔方陣の中心には、バルパー・ガリレイがいた。さらに、上空にコカビエルの気配がある。

「これはいったい・・・」

一誠が魔方陣に対しての疑問を口にする。

「四本のエクスカリバーを一つにするのだよ」

「バルパー、後どれぐらいでエクスカリバーは統合する?」

「ッッ!」

部員全員が勢いよく空へ視線を向ける。最初から気づいていた私は、慌てることなくその姿を目に収める。
中で椅子を浮かせ、その椅子に座っているコカビエル。

「五分もいらんよ、コカビエル」

「そうか。では、頼むぞ。ーーさて、サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?」

「お兄様とレヴィアタン様の代わりに私たちがーー」

ヒュッ! ドォォォオオオオオオンッ!
風切り音の後、爆音、そして爆風が広がる。まあ、対処はできるわね。
爆風の発生源には、なにもなかった。体育館があったが、消し飛んでしまった。

「つまらん。まあいい。余興にはなるか」

体育館があった場所には、巨大な堕天使の光の槍が斜めに突き刺さっていた。
相変わらず無駄な破壊が多いわね。周りに被害が飛ぶじゃない。でも、あの程度なら大丈夫ね。結界一枚で十分止められる。それでも、経験はあちらが上でしょうね。こっちは独学。相手は百戦錬磨。技術的な面では負けているわね。

「さて、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうかな」
パチンッ

コカビエルが指をならす。すると、闇夜の奥からズシンズシンと何かが地を揺らしながら近づいてきた。

十メートルはあるであろう黒い巨体。四足は一つ一つが太く、生えている爪は鋭利。
闇夜に光る血のような真紅の双眸。突き出た口から覗かせる凶悪な牙その二つの特徴をもつ頭が三つ。
地獄の番犬と名高い、ケルベロス。

『『ギャオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォンッッ!』』

それが二匹。六つの首が同時に咆哮をあげる。

「部長!なんですかアレ!」

「ーーケルベロス!地獄の番犬の異名をもつ有名な魔物よ。本来は地獄ーー冥界へ続く門の周辺に生息しているのだけれど、人間界に持ち込むなんて!それも二匹も!」

「ヤバいんスか?」

「やるしかないわ!消し飛ばすわよ、イッセー!」

「はい、部長!いくぜ、ブーステッド・ギアぁぁぁ!」
『Boost!!』

さて、地獄の番犬と呼ばれるのなら、悪魔の犬のようなものかしら?悪魔の犬はメイド長だけで十分よ。

「イッセー、今回私たちはあなたをフォローするわ」

「力を高めて、俺がトドメですか?」

作戦を伝えるリアス。あのねえ、そんなことはここに来る前に済ませなさい。ケルベロスは待ってはくれないわ。

『結界「四重結界」』

ガキィン!

ケルベロスの突進を跳ね返す。あら、軽いわね。四枚もいらなかったわ。

「いえ、あなたにはサポートに徹してもらうわ。高めた力を仲間に譲渡するの。ブーステッド・ギアはあなた自信をパワーアップさせる神器(セイクリッドギア)であると同時に、チーム戦でメンバーの力を飛躍的に上昇させるものでもあるわ」

今この時にチーム戦と同じ説明をしないで。緊張感がなくなるわ。
ガン! ガン!
さっさと説明してくれないかしら?今回の作戦は一誠のブーステッド・ギアを譲渡優先にして臨機応変に動く。これだけでいいじゃない。『(キング)』として未熟ね。

「ところでイッセー。譲渡は、あなた自身のパワーアップも含めて何回使用可能かしら?」

・・・・・・あなたねぇ。そんな大切なことは事前に把握しておきなさい。

「現時点の俺の体力も合わせると、限界まで高めたもので三回か四回です。いや、四回目で俺自身がぶっ倒れそうなので、三回と考えてください」

「そう。無駄撃ちはできないわね」

やっと終わったかしら?朱乃も子猫もスタンバイは完了しているのだけれど、あなた達待ちなのよ?速くしなさい。

「朱乃!」

その声と同時に、リアスと朱乃は悪魔の翼を出し、空へ舞う。その瞬間、私は結界を消す。

「ガルルルウルルルウルルルルッ!」
ゴウゥゥン!

ケルベロスが新たに自分に向かってきた敵に威嚇を向け、首の一つが炎を吐く!

「甘いですわ」

朱乃がリアスの前に入り、炎を瞬時に凍らせる。あれは元素の運動停止による凍結なのかしら?

「くらいなさい!」

朱乃の後ろから飛び出したリアスが、黒い魔力の塊をケルベロスに放つ。
ーー滅びの一撃。
触れたもの全てを消滅させる魔力。まあ、防げないものではないわね。私も防いだわ。
ゴバァァァン!

ケルベロスの他の首がさらに火球を打ち出す。私はもう一匹を結界で抑えているわ。物理だけでなく、炎などに対しての耐性も調べないと。

「隙あり」

ドゴンッ!

三発目の火球を打ち出そうとしたケルベロスの頭部に激しい拳打を打ち込む子猫。頭部を狙うとはいいわね。動物である以上、頭を揺らされると脳も揺れるわ。

「さらにもう一撃あげますわ」

朱乃の雷撃がケルベロスに降り注ぐ。

さらに、リアスの滅びの一撃が加わる。
しかし、ケルベロスは消滅せず、脇腹から生物と思えないようなどす黒い鮮血を撒き散らす。
一誠の倍加はまだ限界まで高まっていない。倍加のスピードを倍加すればいいのに。

「グルルルルル」

・・・・・・私としたことが・・・。まさか三匹目がいるなんて。すぐに三匹目も結界に閉じ込めようとする。

しかし、一足早く一誠とアーシアのもとへ駆け出すケルベロス。捕縛は間に合わない。だったら、ケルベロスとの間に結界を張る!

ガイィン。

激しい激突音がなる。少し密度が薄いわね。要練習だわ。慌てただけでこんな杜撰(ずさん)になるなんて、不意に弱いわ。
再度結界に突進しようとするケルベロス。しかし、唐突にケルベロスの首の一つが斬り飛ばされた!
斬り飛ばしたのは、長剣のエクスカリバーを振るうゼノヴィア。

「加勢に来たぞ」

ゼノヴィアは一応仲間だから、境界線に当たらなかったのね。
ゼノヴィアはさらに、苦しんでいるケルベロスの胴体を斬る。
胴体が割れる。煙が立ち込める。

「聖剣の一撃。魔物に無類のダメージを与えるーー」

トドメとばかりに胸元に聖剣を深く突き刺す。その瞬間、ケルベロスは体を霧散させた。

「部長!朱乃さん!ケルベロスを屠れるだけの力を得ました!」

同時に一誠のもとへ降下してくる二人。

「イッセー!あなた、ライザーとの一戦で十字架と聖水の効果を同時に強化していたわよね?」

「え?あー、確かにそうですね」

「なら、同時に強化が可能ってことね!私と朱乃に力を譲渡して頂戴!」

「でも、七割か八割しかできませんよ?」

「それだけあれば十分ね」

「はい、いけますわ」

『お願い!』

「わかりました!いくぜ、ブーステッド・ギア!ギフト!」
『Transfer!!』

あら、結構強化されるのね。でも、二人とももう少し地力を上げた方がいいわね。まだ弱いわ。まあ、ケルベロス程度なら大丈夫でしょう。

「ーーいけるわ。朱乃!」

「はい!天雷よ!鳴り響け!」

朱乃が天に指をかざし、雷を支配する。指の標準がケルベロスに向けられた。
しかし、雷撃を察したのか、ケルベロスがその場を離れようとする!
ザシュッ!
しかし、地面から生えた剣がケルベロスの四肢を縫いとめる。

「逃がさないよ」

あら、やっと到着かしら。木場祐斗。私たちの『騎士(ナイト)』。いいところに来るわね。
そして、身動きがとれなくなったケルベロスに雷の柱が落ちる!

ドオオオオオオオオオンッッ!

ケルベロスは絶叫すらかき消され、無に帰した。
さて、私の番ね。『魔眼「ラプラスの魔」』の上位スペル。

『死線「直死の魔眼」』

空間に無数の『眼』が開く。そこから、死の概念を組み込んだ光線が殺到する!生と死の境界を使っているから、触れただけで死ぬわね。直接相手に能力を使わなくていいから、負担が比較的軽い。
無数の光線に貫かれ、悲鳴もあげずに絶命する。呆気ないわね。でも、やっぱり消耗が激しいわ。妖力が少ないわね。

「くらえ!コカビエル!」

リアスがコカビエルに向かって巨大な魔力の塊を放つ。大きいといっても、先程のと比べたらだけど。

その魔力に、コカビエルは片手をつきだした。それだけで防がれ、簡単に軌道を変えられ、空高く消えていった。

「なるほど。赤龍帝の力があれば、ここまでリアスグレモリーの力が引き上がるのか。ーー面白いぞ。これは酷く面白いぞ」

手のひらから立ち上る煙をみて、一人で哄笑をあげるコカビエル。

「ーー完成だ」

バルパーの声。そのとき、校庭の真ん中にあるエクスカリバーから凄まじい光が発せられる。

「四本のエクスカリバーが一つになる」

遮光結界による簡易サングラスを目に張る。
四本の聖剣が一つに重なっていく。目映い光が終わったとき、青白いオーラを放つ一本の聖剣が中央に突き刺さっていた。

「エクスカリバーが一本になった光で、下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかない」

最悪、この学校ごと消し飛ばして魔方陣を消しましょう。

「フリード!」

「はいな、ボス」

「陣のエクスカリバー、使え。最後の余興だ。四本の力を得た聖剣で戦ってみせろ」

「ヘイヘイ。まーったく、俺のボスは人使いが荒くてさぁ。でもでも!チョー素敵仕様になったエクスカリバーちゃんを使えるなんて光栄の極み、みたいな?ウヘヘ!ちょっくら、悪魔でもチョッパーしますかね!」

相変わらずイカれた神父ね。
木場にゼノヴィアが話しかける。

「リアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』、共同戦線が生きているのならば、あのエクスカリバーを共に破壊しようじゃないか」

「いいのかい?」

「最悪、私はあのエクスカリバーの核になっている『欠片』を回収できれば問題ない。フリードが使っている以上、あれは聖剣であって、聖剣でない。聖剣とて、普通の武器と同じだ。使う者によって、場合も変わる。ーーあれは、異形の剣だ」

「くくく・・・・・・」

二人のやり取りを笑うバルパー。

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ。いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことで生き永らえている」

「ほう、あの計画の生き残りか。これは数奇なものだ。こんな極東の国で会うことになろうとは。縁を感じるな。ふふふ」

随分と小馬鹿にするわね。

「ーー私はな。聖剣が好きなのだよ。それこそ、夢にまで見るほどに。幼少の頃、エクスカリバーの伝記に心を踊らせたからだろうな。だからこそ、自分に聖剣使いの適正が無いと知った時の絶望といったらなかった。自分では使えないからこそ、使える者に憧れを抱いた。その想いは高まり、聖剣を使える者を人工的に創りだす研究に没頭するようになったのだよ。そして完成した。君たちのおかげだ」

「なに?完成?僕たちを失敗作だと断じて処分したじゃないか」

しかし、バルパーは首を横に振った。

「聖剣を使うのに必要な因子があることに気づいた私は、その因子の数値で適性を調べた。被験者の少年少女、ほぼ全員に因子はあるものの、どれもこれもエクスカリバーを扱える数値に満たなかったのだ。そこで私は一つの結論に至った。ならば『因子だけを抽出し、集めることはできないか?』ーーとな」

「なるほど。読めたぞ。聖剣使いが祝福を受けるとき、体に入れられるのはーー」

ゼノヴィアが忌々しそうに歯噛みする。

「そうだ、聖剣使いの少女よ。持っている者達から、聖なる因子を抜き取り、結晶を作ったのだ。こんな風に」

バルパーが懐から光輝く球体を取り出す。

「これにより、聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。それなのに、教会の者共は私だけを異端として排除したのだ。研究資料だけは奪ってな。貴殿を見るに、私の研究は誰かに引き継がれているようだ。ミカエルめ。あれだけ私を断罪しておいて、その結果がこれか。まあ、あの天使のことだ。被験者から因子を抜き出すにしても殺すまではしていないか。その分だけは私よりも人道的と言えるな。くくくくくく」

「ーー同士達を殺して、聖剣の因子を抜いたのか?」

「そうだ。この球体はそのときのものだぞ?三つほどフリードに使ったがね。これは最後の一つだ」

「ヒャハハハハ!俺以外の奴らは途中で因子に体がついていけなくなって、死んじまったけどな!うーん、そう考えると俺様はスペシャルだねぇ。因みに、こういうやつに限ってしぶといとか思ったっしょ、イッセー君?ノンノン。俺はそんなくらいじゃ死なないぜ」

性格破綻者じゃなければ、普通に有能だと思うのよねぇ。皆そう思うでしょ?

「・・・バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命を弄んだんだ・・・・・・」

「ふん。それだけ言うならば、この因子の結晶は貴様にくれてやる。環境が整えばあとで量産できる段階まで研究はきている。まずはこの町をコカビエルと共に破壊しよう。あとは世界の各地で保管されている伝説の聖剣をかき集めようか。さらには、今のところフリード以外持つことすら敵わなかった緋想の剣使いも創ろうか。そして、聖剣使いを量産し、統合されたエクスカリバーと緋想の剣を用いて、ミカエルとヴァチカンに戦争を仕掛けてくれる。私を断罪した愚かな天使どもと信者どもに私の研究を見せつけてやるのだよ」

そう言った後、バルパーは興味を無くしたように持っていた因子の結晶を放り投げた。
木場は静かに屈みこんで、それをとった。
哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに、その結晶を撫でていた。

「・・・皆・・・」

そのとき、木場の持つ結晶が淡い光を発し始める。光は徐々に広がっていき、校庭を包み込む。
校庭の地面、その各所から光がポツポツち浮いてきて、形をなしていく。そして、人の形になっていく。

「この戦場に漂う様々な力が因子の球体から魂を解き放ったのですね」

さらに、外からも人魂が集まってくる。すでに死んでしまった、聖剣計画の被験者の死霊。

「皆!僕は・・・僕は!・・・ずっと・・・ずっと、思っていたんだ。僕が、僕だけが生きていていいのかって・・・。僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。僕だけが平和な暮らしを過ごしていいのかって・・・」

霊魂の少年の一人が微笑みながら、木場に何かを訴える。口を動かしてはいるが、声はしない。

「・・・『自分達のことはもういい。君だけでも生きてくれ』。彼らはそう言ったのです」

それが伝わったのか、木場は涙を溢れさせた。
魂の少年少女達は、一斉に口を動かす。全く同じ動きを、全員が。

「ーー聖歌」

アーシアが呟いた。
彼らにつられ、木場も涙を流しながら、聖歌を口ずさみ始めた。
それは、彼らが辛い人体実験の中で唯一希望と夢を保つために手に入れたものーー。
それは、過酷な生活で唯一知った生きる糧ーー。
それを歌う木場は、幼い子供のように無垢な笑顔に包まれていた。

そして、彼らの魂が青白い輝きを放ち出した。その光が木場を中心に眩しくなっていく。

『僕らは、一人ではダメだったーー』

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けどーー』

『皆が集まれば、きっと大丈夫ーー』

『聖剣を受け入れるんだーー』

『怖くなんてないーー』

『たとえ神がいなくてもーー』

『神が見ていなくてもーー』

『僕たちの心はいつだってーー』

『「一つだ」』

最後の一言。それは皆の心に聞こえた。

彼らの魂は天に登り、一つの大きな光となって木場のもとへ降りていく。
優しく神々しい光が木場を包み込む。

この世界には流れがある。
この世界に漂う『流れ』に逆らうほどの劇的な転じ方をしたとき、神器(セイクリッドギア)は至る。
それこそが、禁手(バランスブレイカー)

闇夜を裂く光が木場を祝福しているかのように見えた。


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Said木場祐斗

ーーただ、生きたかった。
研究施設から一人逃げ出し、森の中で血反吐を吐きながら走った僕はそれだけを考えていた。
森を抜け、とある上級悪魔の少女とであったとき、命の灯火は消えかかっていた。

「あなたは何を望むの?」

死に逝く間際の僕を抱き抱え、紅髪の少女は問う。
かすれていく視界の中で僕は一言だけ呟いた。
ーー助けて。
僕の命を。僕の仲間を。僕の人生を。
僕の願いを。僕の力を。僕の才能を。僕をーー。
ただただ、それらを籠めて願った。それが人間としての最後の言葉だった。

「ーー悪魔として生きる。それが我が主の願いであり、僕の願いでもあった。それでいいと思った。けれどーー。エクスカリバーへの憎悪と同士の無念だけは忘れられなかった。・・・いや、忘れてもよかった。僕にはーー」

今、最高の仲間がいるんだ。
イッセー君、子猫ちゃん、紫さん。復讐にかられた僕を助けてくれた。
共に聖剣使いを探し回っていたとき、思ってしまったんだ。僕を助けてくれる仲間がいる。
「それだけで十分じゃないのか?」ーーと。
だけど、同士達の魂が復讐を願っているとしたら、僕は憎悪の魔剣をおろすわけにもいかない。
だが、その想いも先程、解き放たれた。
ーー自分達のことはもういい。君だけでも生きてくれ。
同士達は僕に復讐を願ってはいなかった。願ってはいなかったんだ!

「でも、すべてが終わったわけじゃない」

そう、終わりではない。目の前の邪悪を打ち倒さないと僕たちの悲劇は繰り返される。

「バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼさない限り、第二、第三の僕たちが生を無視される」

「ふん。研究に犠牲は付き物だと昔から言うではないか。それだけのことだぞ?」

やはり、あなたは邪悪過ぎる!

「そうね。確かに研究に犠牲は付き物だわ」

紫さん!?

「だけど、その犠牲を許すかは別問題よ。ーー私はあなたのしたことを許さない」

紫さん・・・・・・滅多に怒らない紫さんが怒っている。

「木場ぁぁぁぁっっ!フリードの野郎とエクスカリバーをぶっ叩けぇぇぇぇぇ!」

ーーイッセー君。

「お前は、リアス・グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』で、俺の仲間だ!俺のダチなんだよ!戦え木場ぁぁぁぁっっ!あいつらの想いと魂を無駄にすんなぁぁぁぁっ!」

君は僕を助けてくれた。何の得がなかったのに、主に罰を受けるかも知れなかったのにーー。

「祐斗!やりなさい!自分で決着をつけるの!エクスカリバーを超えなさい!あなたはこのリアス・グレモリーの眷属なのだから!私の『騎士』はエクスカリバーごときに負けはしないわ!」

「祐斗君!信じてますわよ!」

部長、副部長・・・。リアス部長!朱乃さん!

「・・・・・・祐斗先輩!」

子猫ちゃん。

「あなたならできるわ。越えてきなさい」

紫さん。

「ファイトです!」

ーー皆。

「ハハハ!何泣いてんだよ?幽霊ちゃんたちと戦場のど真ん中で楽しく歌っちゃってさ。ウザいったらありゃしない。もう最悪。俺的にあの歌が大嫌いなんスよ。聞くだけで玉のお肌ががさついちゃう!もう嫌。もう限界!さっさとあのアマを殺したいんスよ。まずはてめえを切り刻んで気分を落ち着かせてもらいますよ!この四本統合させた無敵の聖剣ちゃんと、緋想の剣で!」

フリード・セルゼンーー。その身に宿る僕の同士の魂。これ以上悪用させるわけにはいかない!
この涙は決意の涙だ!

「ーー僕は剣になる」

同士達よ。僕の魂と融合した同士達よ。
一緒に超えようーー。あのとき、達せなかった想いを、今こそっ!

「部長、仲間達の剣となる!今こそ僕の思井に応えてくれ!魔剣創造(ソードバース)ッッ!!」

僕の神器(セイクリッドギア)と同士の魂が混ざりあう。同調し、形をなしていく。
魔なる力と聖なる力が融合していく。境界を超えていく。
ーーそう、この感覚。僕の神器(セイクリッドギア)が、僕の同士達が教えてくれる。これは昇華だと。
神々しい輝きと、禍々しいオーラを放ち、境界を超え、僕の手元に現れたらのは一本の剣ーー。
完成したよ。皆。これが僕のーー


禁手(バランスブレイカー)だ」


 
 

 
後書き
元ネタは勿論『空の境界』。直死の魔眼。
美脚その4 
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