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魔法少女リリカルなのはStrikerS-King Seong clone of another-

作者:炎狼
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覚醒

 各々の戦いが始まってから数分、既に空に上がったゆりかごと、それを守護するように配置された大量のガジェット。それらを市街地に向かわせないために配属された多くの空戦魔導師達の姿が空に見受けられた。

 その中には苦々しい顔をしたはやての姿があった。

 ……ゆりかごの速度からして完全に軌道上に上がるまではあと2時間近く。クロノくん達は間に合うと思うけど、問題はなのはちゃんとヴィータやな。

 迫るガジェットを撃墜しつつ、ゆりかごの中に潜入したなのはとヴィータを案じた。しかし、その雑念を払うように首を振ったはやてはシュベルトクロイツを構えた。

 ……いや、余計な心配は捨てるんや。あの二人なら絶対間に合う。それに――――

 はやてはフェイトが向かったスカリエッティのアジトと、聖が向かった方向を見ながら、

「……がんばってや、フェイトちゃん、聖くん」

 小さく告げた後、目の前の敵を真っ直ぐと見据えた。






 一方、旧市街の廃墟ではエリオとキャロがそれぞれ、ガリューとルーテシアと対峙していた。二人のバリアジャケットは所々煤けており、激しい戦闘が行われたことを物語っていた。

「ルーちゃん、お願いだから、少しでいいからお話をさせて! さっき貴女が言ってた貴女のお母さんも、レリック探しも私達……ううん、機動六課のみんなが手伝ってくれるから!!」

「ガリュー! 君だって主人であるあの子にこれ以上苦しい思いをさせたくないんだろう? だったらもうこれ以上あの子を苦しませちゃダメだよ! 今のあの子には君が助けにならなくちゃ!」

 二人の呼びかけにガリューは腕を下ろし、ルーテシアは困惑の表情を浮かべる。ルーテシアの心に二人の言葉が僅かだが届いたのだ。

 だが、そのかすかな希望を断ち切るように甘ったるく、人を逆なでするような声が辺りに響いた。

『あらあらぁ? ダメですよルーテシアお嬢様。戦いの最中に敵の言葉なんかに耳を貸しちゃ、いいですかぁ? 邪魔なモノが出てきたらぶっ殺しちゃえばいいんですよぉ。だってこれは戦争なんですから』

 モニタの中の女性、クアットロは丁寧な口調の中にも暴力的な言葉を交えながら、ルーテシアに説いていく。しかし、ルーテシアはそれでもまだ悩んでいるのか、困惑の表情のままクアットロを見上げた。

「でも……クアットロ……」

『あーらら、悩んじゃってますねぇ。まぁそうですよねぇ、お嬢様の純真無垢な心にはそこにいるチビガキ共の言葉は毒ですか……。だったら……ポチッと』

 彼女は笑みを浮かべながら自らの周りに展開されたピアノの鍵盤のようなモニタを操作した。それとほぼ同時に、ルーテシアの足元には薄緑色の陣、彼女の前方、そのほかのビルの上に召喚陣が展開された。

 召喚陣からはルーテシアの召喚獣が召喚され、ルーテシアはフラフラとした状態で苦しげだ。ガリューもこれに困惑しているのか、ルーテシアのほうを心配げに見つめている。

『そ・れ・じゃ・あ。ルーお嬢様が迷わないようにして指しあげまぁす。ドクターが仕込んでくれたコンシデレーションコンソールで、誰にも耳を貸さないとっても素敵な心をプレゼントです』

 クアットロは加虐的な笑みを浮かべながら、端末を操作し、最後のキーを押し込んだ。

 ルーテシアはそれによりさらに苦しげになるが、クアットロはその甘ったるい声をやめずに続けた。

『いいですかぁお嬢様~。目の前にいるのがお嬢様の敵でーっす。全力でぶち殺さないと大好きなお母さんに会えませんよぉ』

 そんな彼女の様子にエリオが怒りのこもった目を向けるが、クアットロは気にも留めていない。

 すると、ルーテシアがポツリと呟き始めた。

「……インゼクト、地雷皇、ガリュー……。こいつ等を殺して……」

「ルーちゃん!!」

 キャロがルーテシアを呼ぶが、彼女は聞く耳を持たず、自らの召喚獣たちに声を張り上げて命じた。

「殺してぇ!!」

 その絶叫にガリューは従い、触手のようなものを出した。キャロの周りにもインゼクトが多数展開し、彼女を取り囲むが、その中でキャロはルーテシアが涙を流しているのを見た。そして、彼女の瞳に悲しげな光が灯っているのを感じた。






 そこから少し離れた道路上にはスバルとギンガが互いを見据えていた。

 スバルの方がダメージを受けているのか、エリオ達と同じようにバリアジャケットに汚れが目立っていた。

 ギンガは冷徹なまなざしでスバルをじっと見ているが、その顔に感情は見られない。

「ギン姉……」

 スバルが呟くものの、ギンガは容赦なく構えを取る。しかし、スバルもそれに負けじと構えを取る。

〈マスター。大丈夫ですか?〉

「うん、ありがとうマッハキャリバー。でも大丈夫。聖さんにも諦めるなって言われてるから、絶対に諦めないよ」

〈そうですか。ですが、きつくなったら言ってください。私は貴女の相棒ですから〉

 スバルは頷くと拳を構え、ギンガに迫る。

 しかし、ギンガもそれにすぐさま反応するとスバルの拳を受け止め、衝撃を流した後、ブリッツキャリバーを突き出した。

「くっ!?」

 苦しげに反応したスバルだが、何とかシールドを張ることに成功した。だが、ギンガのブリッツキャリバーをひくことはせず、シールドに食い込ませた。

 その瞬間、ギンガの手首から前が回転し始めた。スカリエッティの調節だろうか。回転したことにより、まるでドリルのような力も加わり、スバルのシールドは簡単に突き破られてしまった。

「ぐあっ!!」

 スバルはその衝撃で大きく後ろに吹き飛ばされる。その隙を狙ったギンガがウィングロードを駆使し、彼女に蹴りを見舞いしようとするが、ギリギリのところでスバルは反応し、自身もウィングロードを展開し間一髪その攻撃を避けた。

 ギンガの攻撃から脱したスバルはウィングロードの上で反転し、ギンガに対し構えを取った。

 ……強い。多分、感情も抑えられてるからだと思うけど、さっきのアレはまともに喰らったら絶対にダメだ。

 頬を伝う汗を肩で拭いながらスバルは先ほどのことを分析した。

「でも……諦めるわけには行かない。どんなに強くたって隙はあるはず!」

 スバルはもう一度、ギンガに向かって駆けた。






 スカリエッティのアジトではフェイトが二人のナンバーズと戦闘を繰り広げていた。トーレとセッテだ。以前もこの二人と戦い、互角以上に渡り合ったフェイトだが、今回は違った。

 理由は単純明快であり、ここはスカリエッティのアジトなのだ、言わば敵の腹の中と同じだ。

 ……AMFが重い。この二人を倒してスカリエッティのところまで早く辿り着かなくちゃいけないのに。だけど、ライオットは使えない、アレを使ったらもう後がなくなるし、肝心のスカリエッティのところまで辿り着けなくなる可能性もある。

 フェイトがシューターを展開し、二人の動きを観察しながら悩んでいると、目の前にスカリエッティが投影されたモニタが表示された。

『やぁ、ご機嫌如何かな? フェイト・テスタロッサ執務官』

「スカリエッティ……」

 憎々しげにつぶやくフェイトだが、スカリエッティはそれを気にした風もなく続ける。

『私の作品と戦っているFの遺産と竜召喚師も聞こえているかな? あとはエシェクも聞こえているだろうねぇ』

 くつくつと笑うスカリエッティの言葉からして、彼の声はエリオとキャロ、そして聖の方まで聞こえているのだろう。

『いやはや、我々の楽しい祭りの序章もついにクライマックスに近づいてきたよ』

「何が楽しい祭りだ! 地上を混乱させ、多くの命をもてあそんだ重犯罪者が!!」

『重犯罪? それは人造魔導師や戦闘機人のことかい? それとも私が根幹を設計し、君の母君であるプレシア・テスタロッサが確立させたプロジェクトFのことかい? まぁそのほかにあるとすれば……エシェクの実験のことかな?』

 両手を挙げながらヤレヤレと言った様子で告げるスカリエッティをフェイトが睨むが、彼はさらに言葉を続ける。

『まったく、いつの時代も私のような革新的な技術者は周りからわかってもらえないものだから誤解を生んでしまうんだろうねぇ』

「誤解……? 人の命を弄んでいるのによくもそんなことを言える!」

『怒らないでくれたまえよ、いいじゃないか私の手で本来価値がなかったゴミのような命が、実験材料という貴重な役割をになってくれたんだから。むしろこれは悪行と言うよりも善行だろう』

 依然として笑みをなくさずに言うスカリエッティに、フェイトはバルディッシュの刀身に魔力を送り込んだ。

 その影響でバルディッシュの刀身が巨大に変化した。フェイトはそれを高く掲げた。

「来るぞセッテ!」

 トーレが身構えると同時にセッテも身構えた。しかし、スカリエッティがモニタの中で指を鳴らした。すると、地面に赤い陣が展開され、そこから赤い糸のようなものが伸び、フェイトの足と、バルディッシュを拘束した。

「くっ!? これは……」

 フェイトが苦悶に顔を歪ませる。しかし、それを嘲笑うかのように奥からスカリエッティが笑みを浮かべながらやって来た。

 すると、バルディッシュの刀身が糸の締め付けにより粉々に粉砕された。それにフェイトが気を取られているとスカリエッティが手に装着したデバイスからシューターを放った。

「ぐぅっ!?」

 フェイトはそのまま地面に落下すると、その隙を突いたスカリエッティが糸でケージを形成し、フェイトを閉じ込めた。

「君のそういうところは本当に母親譲りのようだねぇ」

 くつくつと笑うスカリエッティは心底楽しげだった。






「フェイト!!」

 その様子をモニタで確認した聖は苦々しい顔をしながら、自らのクローンが放った攻撃を断ち切る。

「チィッ!」

「ほらほら、余所見なんてしている暇なんてないわよ?」

 ドゥーエが聖の心を逆なでするように言葉を投げかけてくるが、聖はそれを無視し、向かってくる己自身と対峙する。

 一人一人の攻撃はたいしたものではない、しかし、彼等の連携が厄介なのだ。一人が責めれば他二人がバインドや、シューターを使った隙を作ってくる。

 それらを避けたり、バインドを断ち切っていれば大きな隙が出来る。その隙を一人が突いて来るのだ。一撃一撃はたいしたことがなくとも、聖の身体には確実にダメージが蓄積していっていた。

「クソッたれ……!」

〈聖様、このままではジリ貧です。一刻も早く倒さねば〉

「わかってるっ! だけど……」

 そう言った聖の目尻には涙が溜まっていた。

 ……この大馬鹿野郎が何今更ビビッてんだよ! ガキの頃に散々殺してきたってのに、今更罪悪感を感じてんじゃねぇ!!

 心の中で己を鼓舞するが、聖の身体はいつものように俊敏に動けていない。

 先ほどから倒せる隙は確かにあった。しかし、聖はその手を止めてしまうのだ。同時に彼の脳裏には過去の凄惨な記憶が蘇る。

 血に濡れた己の拳と、血の海に沈んでいる自分自身。

 それらが今相対している自分自身を攻撃しようとするたびに、フラッシュバックするのだ。

〈聖様!!〉

「っ! しまっ!?」

 安綱に呼びかけられ、雑念を振り払うものの、既に遅かった。

 聖の眼前にまで迫ったクローンの一体が、彼の鳩尾を抉るように拳を叩き込み、聖は大きく後ろに吹き飛ばされた。

「ガハッ!!」

 しかし、追撃は収まらず、聖の後ろに回りこんだ一体が彼を上に蹴り上げ、それを追うようにシューターを放った。

「な……めんなぁ!!」

 空中で態勢を立て直し、何とかシューターを掻き消すが、シューターの方に気を取られていたためか、またしても後ろに回りこまれた聖はそのまま、背中に強烈な踵落としを喰らい、聖は地面に叩きつけられた。

 肺に貯蔵されていた酸素が一気に排出され、聖は一瞬呼吸が止まる。また、彼がたたきつけられた影響で、地面にはクレーターが出来ていた。

「ゲホッ! ゲホッ、グッ!?」

 数度の咳のあと、聖の口からは血が吐き出された。

 それに苦悶の表情を浮かべながら聖は、安綱を地面に衝き立て、何とか身を起こした。

 目の前には三人のクローン達が戦闘態勢を取っていた。しかし、ドゥーエが後ろから指を鳴らすと、彼等は構えを解き、背筋を伸ばした。

「どうエシェク、いい加減諦めはついたかしら?」

「ふざけんじゃ……ねぇ。誰が、諦めるか……グッ!? ゴホッ!」

「そんな状態でまだ強がれるなんて……まぁそんなところも好きなんだけれど。でも、いい加減飽きて来ちゃったからもうお終いにしましょうか。リミッター解除」

 ドゥーエが言うと、彼女の後ろにいたクローン達の装着しているバイザーの色が変化した。先ほどまで緑色に光っていたものが、赤く染まったのだ。

「やりなさい。但し殺さない程度にね」

 ドゥーエが命じた瞬間、先ほどまで以上の速度でクローン達が聖に迫った。しかし、彼等の動きに先ほどまでの連携は見られない。仲間にぶつかることも承知の上での攻撃だ。

 否、もはや彼等に仲間などと言う概念は存在していない。ただ目の前の障害物を排除するということしか感じられない。

 尋常ではない殺気を浴びた聖は、後ろに後退し、間一髪初撃を避ける。だが、その後も追撃は続く。しかし、聖も負けじとそれを安綱を振るいいなして行く。

〈先ほどまでと格段に早さが上がっています。それに攻撃も重くなっています〉

「んなこたぁわかってる! ドゥーエの野郎、何をしやがった!?」

 安綱と話しながらも聖は攻撃をいなし続ける。先ほどまでと違い、連携が取れていないためか一個一個の攻撃を避けるのはたやすくなってきた。しかし、まともに喰らえばかなりのダメージだろう。

〈恐らく、闘争本能のみを強化したのでしょう。余分な感情は全て排除し、ただ貴方を叩き潰すことのみに執着しています〉

「……クソが。どこまで行ってもこいつ等は道具ってわけかよ」

〈スカリエッティに人間らしい感情などありません。油断すればこちらがやられてしまいます〉

 防戦一方のまま聖はドンドンと追い込まれる。それに苦々しい顔をするものの、連続攻撃のせいで攻める隙が見当たらない。

 しかし、三人目の攻撃が止んだところでほんの一瞬、僅かに隙が生まれた、聖はそれを見逃さなかった。

「悪いな……。今度は殺させてもらうぞ……」

 低く言い放った聖はクローンの身体に安綱を突き刺した。

 クローンの腹部から鮮血が舞う。

 そして、安綱の刀身を血液が伝い、地面に落ちる。

 普通であれば確実にこれで大抵の人物は痛みで動きを止めるだろう。

 しかし、まだ終わりではなかった。クローンは腹に安綱が突き刺さっているのにも関わらず、聖に攻撃を仕掛けてきたのだ。

「っ!?」

 聖はすぐさま安綱を引き抜き後ろに飛び退き、攻撃してきたクローンを見据える。確かに彼の腹部には安綱につけられた風穴が開いている。そこからは血がボタボタと流れ出し、傷の深さを表している。

「あぁ、言い忘れたけど。その子たちの痛覚も全て排除してるから。それに恐怖心もね」

 聖の驚きに答えるようにドゥーエがクスクスと笑いながら言うが、聖は彼女の方を睨みつける。

「どれだけ腐ってやがんだテメェらは!!」

「あーらぁ? 昔アレだけ自分を殺しておきながら全部私たちのせいにするのかしらぁ?」

「黙れこの外道が!! 命をなんだと思ってやがる!!」

「命ねぇ……別にいいじゃない。クローンでいくらでも生み出せるんだから」

 狂気に満ちた彼女の言い分に聖はますます怒りを募らせていく。そして、血を流しながらも攻撃を続けるクローンと、残った二人の攻撃をかわす。

 しかし、血を流してまで向かってくる敵に動揺が走ったのか、聖は回避運動が遅れた。

〈聖様!?〉

「チッ!?」

 聖は咄嗟にシールドを張るが、そのシールドは容易に破られ三人分の拳が聖の身体に叩き込まれた。

「ごぁ……っ!?」

 声にならないくぐもった声と、口から大量の血を流しながら聖はまたしても吹き飛ばされる。今度は近場にある岩山に激突し、体が岩に食い込んだ。

 頭からも出血しているのか彼の顔面を血液が伝う。すると、クローンたちとドゥーエがやってきて岩に食い込んでいる彼を見上げた。

「少しは頭が冷えたかしら? もういい加減諦めて戻ってきなさいな」

 ドゥーエは言うものの、今の聖にその声は全く聞こえていなかった。

 ――――あき……らめる? こんなところで。まだヴィヴィオも助け出していないのに……?

 心の中で自らに問いかけながら聖は虚ろな目を自らの目の前で話すドゥーエに向ける。しかし、彼女はそれに気付かずにいる。

 ――――こいつ等を捕まえるんじゃなかったのか? そして、ヴィヴィオを取り戻すんじゃなかったのか?

 ドクン、ドクンと心臓の鼓動が異様なまでに大きく聞こえる。同時に体がふつふつと熱くなる。

 ――――バカヤロウ。新人共にも言ったじゃねぇか。諦めるなって、だったらこれしきのことで諦めるわけにはいかねぇだろうよ。

 心の中で自分を奮い立たせ、聖はゆっくりと口を開く。

「……つな、……ード。リ……ース」

 途切れ途切れだったが辛うじてドゥーエにも聞こえたのか、彼女は聖を再度見上げる。すると、聖は先ほどまで虚ろだった瞳に光をともし、高らかに告げた。

「安綱!! モード・リリース!!!!」

 聖が言うと、安綱が待機状態に戻った。そして、聖も自ら魔力を放出し、岩の拘束から脱する。

「あらぁ? 戦闘状態を解いたってことは……いよいよ諦めたのかしら?」

「ハッ!! 誰が諦めるかよ! 言ったろ、テメェらを捕まえるってなぁ!! やるぞ、安綱!!」

〈わかりました〉
 
 彼が命じると、安綱もそれに返答した。

 その反応にドゥーエとクローン達は身構えた。

「……安綱、封印解除!! 真名解放!!」

〈真名解放、了解〉

 それとほぼ同時に彼の体から白銀の魔力があふれ出す。するとドゥーエはクローン達の後ろに下がり、クローン達はそれを守るように壁を作った。
 
 だが聖はそれでもお構いなしに叫んだ。

「安綱改め『クラウン』!! セットアップ!!!!」

 その瞬間、体から溢れていた白銀の魔力が七色に輝き始めた。そして、聖の身体にも異変がおきる。

 黒だった髪の色が塗料がはがれるようにはがれ、ヴィヴィオと同じ色の髪が覗いた。そして、片方の瞳にひびが入ったかと思うと、その下から緑色の瞳が現れた。

 その姿はまさにヴィヴィオと瓜二つ。

 しかし、彼の表情は苦しげだ。

 ……痛いな。だけど……こんなもんで音を上げるわけにもいかねぇんだよ!!!!

 痛みを払うように聖は己を鼓舞すると、詠唱を始めた。

 ――――我が腕に宿るは聖なる力――――

 ――――我が胸に宿るは王の魂――――

 ――――不退の力よ今こそ形となりて現出せよ――――

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」

 体中に走る激痛を無視しながら聖は全ての詠唱を完遂する。

 そして、彼の姿は完全に七色の魔力に包み込まれた。

 光の中で聖の身体にバリアジャケットが装着されていた。

 素肌を守るように纏われた黒い内着。

 腕には鈍い光を放つ黒い色のガントレット。

 胸には騎士を思わせる黒い鎧。

 脚には同じく黒いグリーヴ。

 それらを覆い隠すように纏われる肩から羽織われる白いマント。そして、それと同じように腰から伸びる同じく白いマント。

 聖は右の拳を己の顔の前に掲げた後それを一気に横に振りぬいた。

 その衝撃で先ほどまで張られていた七色の魔力が四散し、聖の姿があらわになった。

 ドゥーエは聖の姿を確認すると驚嘆とも歓喜とも取れるような表情をした。

「あぁっ!! まさかそこまで進化しているなんて、貴方は本当に最高ねエシェク!!」

 自分の身体を抱き、僅かに頬を上気させながら言うドゥーエに、聖は別の色の双眸で彼女を真っ直ぐと見据えた。

「さて、仕切りなおしと行くか」 
 

 
後書き
聖くん覚醒!!
失敗作って言われてたのになんで聖王の魔力使えるの? って方もいられるかと思いますが、それは次のお話で明らかにしますのでしばしお待ちを。
 
最初の方は原作をちょっといじっただけのところもありますが、そこはちゃんと変えていきます。
ティアナとなのは、ヴィータ、シグナムは忘れてたわけじゃないよ!?
ちゃんと次の話で出てくるよ!!

感想ありましたらよろしくお願いします。 
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