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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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ドラゴンの咆哮


「コイツ・・・!滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!?」

六魔将軍(オラシオンセイス)の1人、心の声を聴く魔法を使うコブラ。
が、ナツの無新攻撃に小細工なしでは勝てないと気づき、掴んだ拳から毒を噴き出す。
奴の異名は『毒竜のコブラ』・・・コブラは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だったのだ。

「かーーーっ!」

笑みを浮かべてキュベリオスに乗ったコブラはナツとココロへと突進してくる。

「うおっ!」
「うあっ!」

両手が鱗で覆われたコブラの爪は鋭い。
その爪を振るうコブラの攻撃を慌てて2人は回避する。

「ぐほ!」

しかし、コブラには心の声を聴く魔法もある。
ナツの次にとる行動が解っていたかのように、コブラは毒を纏った蹴りを放つ。

「ぐあああ!」

ジュウウ・・・と音を立てて皮膚が軽く溶ける。
蹴りの痛みと毒が皮膚を軽く溶かす痛みの2つが同時にナツを襲った。

「毒竜の一撃は全てを腐敗させ滅ぼす!」
「くっ・・・」

ナツの炎を纏った拳とコブラの毒を纏った拳が直撃する。
小さく唸り声を上げたココロだったが、すぐにぷくっと頬を膨らませた。

「灰竜の咆哮!」

塵を巻き込んだ方向がコブラに向かうが、コブラはそれをひらりと避ける。

「毒竜螺旋撃!」
「っきゃああああああ!」
「くっ・・・!」

ココロの背中に回り込んだコブラは毒を纏った連続蹴りを決める。
それを喰らったココロとヴィーテルシアは弧を描くように吹き飛ばされた。

「ココロ!ヴィーテルシア!」
「だ・・・大丈夫ですっ!」
「俺も平気だ・・・それより自分の事を考えろ!」

空中で体勢を立て直すココロとヴィーテルシア。
鋭いヴィーテルシアの声がとんだ、瞬間――――

「狼の言う通りだ」
「!?ぐっ!ぐおっ!うあっ!」

コブラの声が聞こえた。
それと同時にコブラの毒を纏った蹴り、鋭い爪の打撃、毒の蹴りが決まる。
それを喰らったナツとハッピーは吹き飛ばされた。

「キュベリオス!」

コブラが声を掛けた。
シャアア、という声と共にその口から毒の霧が吹き出される。

「毒の霧だ!」
「うおおっ!」
「・・・あれ?」

吹き出された毒の霧に目を見開くナツとハッピー。
ココロは思わず身構えるが、毒の霧はナツ達には向かってこない。
霧はコブラの方へと吸い込まれていった。
そして――――――

「!」

コブラは毒の霧を、まるで食べ物を食べるかのように頬張り始めた。

「ど・・・毒を食べてるの・・・かなぁ」
「か・・・体に悪そうだな」
「私、人の事言えませんけど・・・毒はちょっと・・・」

戸惑うような表情を浮かべてナツとハッピーが口を開く。
灰を食べるココロは苦笑いを浮かべた。
そしてそんな間にもコブラは毒の霧を食べ終え、プハァと一息つく。

「毒竜の・・・」

そして、頬を膨らませる。

「ブレス!?」
「マズイ!」

大きく息を吸い込んで頬を膨らませるコブラを見て、急いで距離を取ろうとするナツとココロ。
だが――――――


「咆哮!」


それよりも、コブラのブレスが速かった。

「ぐああああああ!」
「うわあああああ!」
「きゃあああああ!」
「くっ、ああああ!」

回避行動が間に合わなかったナツとハッピー、ココロとヴィーテルシアは毒に巻き込まれながら大きく吹き飛ばされる。

「く・・・」
「あう・・・」

毒から解放されたナツとココロは体勢を立て直そうとするが―――

『!』

突然がくんっとバランスを崩したように高度が下がった。

「どうしたハッピー!」
「ヴィーテルシアさん!?」

この空中戦でなくてはならない存在であるハッピーとヴィーテルシアに声を掛ける2人。
見ると、ハッピーもヴィーテルシアもヘロヘロのフラフラ状態にあった。

「しっかりしろって!オイ!」
「オイラ・・・何だか・・・体が上手く動かなくて・・・」
「俺もだ・・・意識通りに・・・体が、動かん・・・」

苦しげに途切れ途切れに言葉を紡ぐハッピーとヴィーテルシア。

「言われてみれば・・・私も・・・何か、体が重い・・・」

ココロも顔色が悪い。

「気にすんなっ!オレもだから!」
「気にしよーよ、そこは!」
「どうやったって気になりますよ!」

ナツの発言にツッコみを入れるハッピーとココロ。
そう言うナツもフラフラしている。

「毒竜のブレスはウイルスを体に染み込ませる。そして徐々に体の自由とその命を奪う」
「うぐぐ・・・くうう・・・」
「あぅ・・・くっ・・・」
「このブレスを喰らった瞬間、テメェ等の敗北は決まって・・・」

コブラが言いかけ―――――――

「!」

目を見開いた。

「火竜の翼撃!」
「灰竜の螺旋燼!」

毒を喰らい、動く事すら困難になっているにも拘らず、ナツとココロは攻撃を仕掛ける。
が、その攻撃は心の声を聴くコブラには通用せず、避けられた。

「テメェ等の動きは聴こえてる」
「くそォ~」

コブラを睨みつけ、悔しげな声を上げるナツ。

「しかしオレの毒を喰らってまだここまで動けるとは、()()()滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)にしてはやるじゃねーか」
「旧世代だァ?」
「一体・・・どういう・・・」

『旧世代』という言葉にナツは更にコブラを睨みつけ、ココロは眉をひそめる。

「俺は自らの体内に竜の魔水晶(ラクリマ)を埋め込む事によって竜殺しの力を手に入れた、新世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)
「竜殺しの魔水晶(ラクリマ)・・・?」
「ラクサスと同じだ!コイツ・・・本物の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)じゃないよ!」

ココロは訝しげな表情を浮かべ、ハッピーは眉を吊り上げる。
ハッピーの言葉を聞いたコブラは口を開いた。

「本物?元々、(ドラゴン)のみが習得しているという滅竜魔法を人間が修得する術はねぇ。オレから言わせれば、テメェ等の方が怪しいぜ。この世界に(ドラゴン)なんていねぇんだからな」

その言葉は聞き捨てならない。

「イグニールはいるっての!」
「グラウアッシュだっています!勝手に絶滅させないでくださいっ!」
「いねえよ!(ドラゴン)は絶滅したんだァ!」

ナツとココロの言葉に否定の言葉を叫びながら、コブラとキュベリオスは突撃する。

「毒竜双牙!」
「ぐああああっ!」
「きゃあああっ!」

毒を纏った両腕を交差させるように振るう。
それを喰らった2人は更に上空へと打ち上げられた。

「か・・・体が・・・動かねえ!」
「うぅ・・・あぅっ・・・」
「毒が全身に回ったんだ。そのまま死ねぇ」

毒が全身へと完全に回り、動けなくなったナツとココロにコブラは笑みを浮かべて言い放つ。

「ナツーーーーー!」
「うぐ・・・ああああっ!」

ナツの名を叫びながら何とか空中に留まるナツと、ありったけの精神力を集結させて留まるヴィーテルシア。

「ぐぎぎ・・・うぎ・・・」

ナツは苦しそうに声を上げ―――――

「ハッピー!オレを落とせ!」
「え?」
「ナツさん!?」
「何を・・・!」
「!」

ナツの突然の言葉にハッピーだけでなくココロとヴィーテルシアも目を見開く。
そしてコブラの耳もその声を拾った。

「何・・・言ってんの、ナツ・・・さっき、体・・・動かない・・・って・・・」
「だからこそ、これで決める。ココロ、耳貸せ」
「は、はい!」

ナツの考えが解らず困惑するハッピー。
ココロを呼んだナツは何かを耳打ちする。
それを聞いたココロは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに覚悟を決めたような表情を浮かべた。

「・・・解りました!ヴィーテルシアさん、合図したら私を落としてください!」
「お、おいココロ!?」
「2人とも何するつもりなの!?」

やはり考えが解らず困惑するハッピーとヴィーテルシア。
だが、心の声が聞けるコブラは2人の考えを聴き取っていた。

(『フルパワーの咆哮』!?バカめ!テメェ等の考えは聴こえているぜ)

ナツとココロの行動を理解したコブラは上空を見上げ、笑みを浮かべる。

「ハッピー!今だ!」
「ヴィーテルシアさん!お願いします!」
「あい!」
「ハァッ!」

合図を受け、ハッピーは掴んでいたナツの服を放し、ヴィーテルシアはココロが落ちやすいように身を丸くする。
そして2人は同時にコブラ目掛けて落下した。

(無心で攻撃される方が厄介だった)
「終わったな」

コブラは呟く。

「火竜の・・・」
「灰竜の・・・」

凄まじいスピードで落下しながら、2人は頬を膨らませる。

(無駄だ!聴こえてるぜっ!狙いは『拡散』。どこに避けても当てる気か)

それを見上げると、コブラは軽い身のこなしで飛びあがり――――――

「だが後頭部までは届かねえ!」
「!」
「ナツさん!」
「危ない!」

シュバッと飛んだコブラは左手にナツの後頭部を掴んだ。
そしてそのまま背中に飛び乗る。
落下するココロはヴィーテルシアにギリギリのところで助けられた。

「その頭を砕いてやる」
「ナツーーーーーー!」

爪を立てるコブラを見て、ハッピーが叫ぶ。
が、毒が全身に回ったナツに避ける方法はない。
最後の手段である作戦さえも通用せず、ナツは悔しそうに叫んだ。

「くっ・・・そぉオオォ―――――――――――!」
「!」

ナツの断末魔にも似た叫び。
コブラは自分の耳に違和感を感じた。
そして、断末魔とは別の叫びが響く。

「っ・・・ナツさああああああああああああああん!」

後頭部を掴まれるナツを見た、ココロの叫び。
徐々に大きくなる叫びにつられるように、コブラの耳の違和感も大きくなっていく。
そして――――――――――





「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」






2人のドラゴンの咆哮が、響き渡った。
見開かれたコブラの目が血走っていく。
その叫びは空気を震わせ、大地を揺るがし、ニルヴァーナ全体へと響く。






「何だ、この音は!?」
「怪獣!?」
「ムォ!」
「わわわっ!」
「うおーっ!何か解らねーけど面白れぇーっ!」
「このバカ大音量・・・ナツね」

その叫びはルーシィ、グレイ、ルー、アルカ、ティア、ジュラの6人の下にも響き―――




「!」

エルザとジェラールの下にも響き―――――――





「ナツさん!?ココロちゃん!?」
「うるさいわね・・・」
「何があったんだろう・・・」

ウェンディ、シャルル、アランの3人の下にも響いた。










「耳があああああああああ!ぎゃあああああああ!アァ・・・ア・・・」

そんな2人の叫びを至近距離で聞き、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるが故に耳がよく、尚且つ心の声が聞こえるまでに耳が良いコブラにとってはこれ以上ない攻撃。
コブラは耳を塞ぎながら墜落し、ニルヴァーナへと激突した。

「あ?」
「ほぇ?」

それと同時にナツとココロは正気を取り戻す。
墜落したコブラは白目を剥いて気絶していた。
慌ててハッピーがナツを掴み、キュベリオスはコブラに近づき、ヴィーテルシアはハッピーと並ぶように移動する。

「凄い叫びだったね」
「お・・・おう」
「ココロもな」
「自分でもあんなに大声が出るとは思いませんでした・・・」

ココロは心底驚いたように目を見開いている。

「み・・・耳が良すぎるのも考えもんだな。作戦どーり!わははははは・・・」
「ナツさん・・・偶然ですよ」







「バカな・・・叫びだけでコブラを倒したというのか。何者なのだ、あの2人は・・・」

王の間で全てを見ていたブレインは、呆然と呟いた。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ブレインの最後の言葉だけ聞くとココロも凄いっぽいけど、攻撃当たってないし毒だし、ただナツがやられちゃう!って事で叫んだだけだったりする。
でも距離ある位置で見ていたブレインからしたらココロも凄く見えた、って事で。
実際にはココロの戦闘力は低めです。

感想・批評、お待ちしてます。
次回、ナツとティアが同じ場所に集うその2!ナツ酔ってるけど! 
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