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少年少女の戦極時代Ⅱ

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ヘルヘイム編
  第11話 募金をしよう -じゅんび-



 募金をしよう。
 そう言い出したのは、トモだった。

「お金集めて病院に寄付してさ。インベスサイガイ? の人たちのチリョーヒにしてもらうの。インベスの事件はあたしたちのせいじゃないけど、シミンのためになることしたら、ちょっとはビートライダーズのこと見直してもらえるかもじゃない」

 いいかも、やろう、となったはいいが、まず始めるまでが大変だった。

 まず募金という行為自体の始め方を咲たちは知らなかった。
 そこでは発案者のトモが活躍した。トモは、市役所勤めの父親から、街頭募金のやり方を教わってきたのだ。
 さらに、市役所と警察に出さねばならない届出のたぐいはトモ父が何とかしてくれるという。


 咲、モン太、チューやんは、ダンスステージが終わった後、野外劇場に残って工作に勤しんだ。

「モン太。そっちのサインペンちょーだい」
「あいよ。ここビニテいるわ。チューや~ん」
「……持ってきた」

 募金箱を探して買って。さらに募金の使途、寄付先、実施主体を具体的に明示するプラカートを、ホームセンターで買った資材で何とか作っている最中だ。
 ちなみに資金はチームメンバーの寂しいお小遣いから捻出した。

 メディア情報面は、スマホやタブレットに強いナッツがSNSを通じて、募金を実施する日時、場所、目的等を公開し、拡散する作業中だ。

 ヘキサはというと、トモと一緒に募金の寄付先の病院に話をしに行って留守。


「まさかじゅんびでここまで手間取るとはねえ」

 ナッツがスマートホンを持ったまま、作業中だった咲の背中にもたれた。

「そんなもんじゃない? 祭りはじゅんび8割、本番1割、かたづけ1割っていうし」
「初耳だけど」
「今作った。――情報広がってるー?」
「広まってるけどこれ炎上じゃないかしら」
「あははっ。ギゼンシャとか点取り虫とか?」
「まさにそんな感じ」

 咲が覗き込むと、ナッツは画面を咲から隠した。こういう部分でナッツは濃やかだ。

「おかげで閲覧数は上がってるけどね。あとはほっときゃ勝手に拡散してくでしょ」

 ナッツがスマートホンをポケットにしまい、咲たちのプラカート作りに参加してきた。

「ちょっとは元気出た?」
「どゆこと?」
「トモが心配してたよ。あんたが元気ないって。気づいてなかった?」
「トモが……そっか。だから」

 確かに咲は、今後の身の振り方について悩み、このところ気もそぞろだった。それを悟られていたなら、この突飛な募金活動も納得いく。こういう時、本当にいい仲間を持ったと咲は痛感する。

「一番に気づいたのがヘキサじゃないあたり、ヘキサもなーんかありそうだけど」

 咲は工作の手を止めた。

 ――ヘキサは難しい立場にいる。ヘキサの長兄はユグドラシル側のアーマードライダー、しかしヘキサ自身はビートライダーズの一員。それでもヘキサは咲の相談を聞いてくれた。

 リーダーなのにチームメイトの、しかも親友の機微を慮れなかった。

「ダメダメだなあ、あたし」
「がんばれリーダー」
「うん、これから気をつける」

 「これから気をつけます」は咲たちのようなコドモにとって決して形骸化した謝罪文句ではない。気づかなかった過去は変えられないから、結局未来に向けて「がんばる」しかないのだという、ある種の真理を突く言葉なのだ。 
 

 
後書き
 このシリアスな空気の中にあって募金活動という平和な活動を始めたリトスタ。
 何も剣を交えるだけが戦いじゃありません。コドモにはコドモなりの戦い方があるのです。

 これを書くために街頭募金について少し調べたのですが、結構難しい取り決めあり、そして活動する上では心構えや誠意が必要あり、と多くのことを学ばせていただきました<(_ _)>

 ちなみに発案者であるこのトモ、それなりのバックボーンがあるのですが、本筋には関係しないので割愛します。 
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