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八条学園怪異譚

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第五十八話 地下迷宮その七

「わしも協力したしの、妖怪の諸君もこっそりとな」
「そうだったんですか」
「それでじゃ」
 見つからなかったというのだ。
「その頃は皆昼だけで夜は殆ど学校に誰もおらんかったからな」
「いるのは軍人さんだけだったんですね」
「それでじゃ」
 長い間見つからなかったというのだ、居間に至るまで。
「ただ代々の理事長さんとわしは知っておった」
「博士もですね」
「わしの研究室に入口の一つがあるしのう」
 そして作ることに協力していたからだ。
「今でもいざという時には使える」
「シェルターなんですね、ここは」
「そうなんですね」
「そうじゃ」
 まさにそれだというのだ。
「防空壕じゃからな」
「じゃあ空襲とか受けたらですか」
「その時は」
「この中に入られる、実は非常食の用意も出来ておる」
 そちらの方の備えも出来ているというのだ。
「ちゃんとな」
「用意がいいですね」
「そっちもですか」
 二人はこのことを聞いて少し驚いた。
「非常食の用意もって」
「そこまでですか」
「当然じゃ、場所だけあっても仕方がない」
 博士はその二人にこう返す。
「人は場所も必要じゃなが」
「食べ物と水もですか」
「だからですね」
「水はこのすぐ下に地下水脈があってな」
「それも調べたんですね」
「お水も」
「うむ、そこから水道をつなげておるからな」
 水の配慮もしているというのだ。
「普段は止めておくがな」
「いざという時はですね」
「つなげてですね」
「使える様になっておる。あと最近は水を作る機械も置いておる」
 それもだというのだ。
「空気からな。とはいっても外の空気が悪ければ使いにくいがのう」
「空気も大事ですね」
「それもですね」
「まあこれはまずはないが核戦争が起こったらな」
 何処かの世紀末救世主の漫画めいた話にもなる。
「空気がどうなるかわからないからのう」
「ううん、色々考えてるんですね」
「この地下迷宮については」
「いざという時のことはな」
 とかく念入りに考えられているというのだ。
「核戦争でなくとも何があるかわからん」
「災害ですね」
「それですね」
「災害は戦争より恐ろしいのじゃよ」
 戦争は外交でかわせる、しかし災害はそうはいかない。
「それは君達もわかっておるな」
「はい、震災の時はまだ生まれてないですけれど」
「よく聞いてます」
 阪神大震災だ、神戸市民にとってこの震災のことはどうしても忘れられない。
「神戸が壊滅しましたよね」
「お家も何もかもが」
「あの震災は忘れられぬものの一つじゃ」
 二百歳は生きていると言われている博士でもだというのだ。
「安政も関東大震災も名古屋も新潟もあったがな」
「阪神もですね」
「それと東北も」
「全く以てな、特に東日本大震災は最悪じゃった」
 じくじくたる顔になっての言葉だった。
「特に政府が最悪じゃった」
「ああ、あの時は本当に酷かったですね」
「もう思い出したくない位に」
「あの輩は最低最悪じゃった」
 当時の首相であるとある輩のことである、学生活動のリーダーあがりだったらしいがその人格は極めて卑しいと評判である。 
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