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八条学園怪異譚

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第五十八話 地下迷宮その五

「それで幽霊の諸君はそうしておる」
「成程、楽しむ為にですね」
「特殊な能力は時としてな」
 壁抜けにしてもである。
「面白みをなくすものじゃ」
「そうなんですね」
「だからこそはあえて使わずじゃ」
「迷路を進むんですね」
「そういうことなのじゃよ、もっともこの迷路は結界があるから壁抜けは出来ぬからな」
 ここでは出来なかった、やはり結界は強いのだ。
 そうした話をしつつ迷路の中を進んでいく、迷路は博士の話通り相当に広い、道に部屋を次々に通り抜けていってもだ。
 幾つもの扉を開けてもまだだった、それで聖花がこう言った。
「お話は聞いていましたけれど」
「それでもじゃな」
「はい、相当に広いですね」
「学園全体分の面積があるからのう」
「八条学園って広いですからね」
 世界屈指のマンモス校だ、生徒数だけでも相当だ。
「保育所から大学院まであって」
「農学部もあるしね」
 愛実はこのことを言った。
「うちの大学の農学部って面積が」
「そうそう、北海道の農業高校よりもね」
「うちの高校の農業科も使ってるしね」
「相当に広いわよ」
「牧場まであるし」
 この学園の特徴の一つだ。
「それに野球グラウンドもサッカー場もあって」
「相当な広さよ」
「ここまで広い学園ってね」
「他にないからね」
「そうじゃ、それ故にじゃ」
 博士は二人に言う。
「この迷路も相当に広いのじゃよ」
「これじゃあ歩いては無理ですね」
「とても」
 二人は自転車を使う理由があらためてよくわかった。
「本当に」
「これじゃあ」
「自転車は便利じゃ」
 博士も自転車を上手に乗りながら言う。
「足で進むよりずっと速くしかも疲れぬ」
「それでいてカロリーも消費する」
 博士の横にいる牧村も言ってくる。
「いいこと尽くめだ」
「ですよね、私達もよく乗りますし」
「通学にも使います」
「よい発明品じゃ」
 また言う博士だった。
「人類が発明した様々なものの中でものう」
「いいものの一つですね」
「そうなんですね」
「そうじゃ、これまで人類は多くのものを発明してきたがのう」
 それにより文明が発展してきた、古来よりそうして人類は少しずつでも前に進んできた。
「自転車もそのうちの一つじゃ」
「そう思うと偉大なんですね」
「この自転車って」
「そもそも車輪がじゃ」
 自転車の二つの車輪がだというのだ。
「偉大な発見じゃ」
「丸いものが回転することがですか」
「転がることがですね」
「そこからエネルギーが生じる」
 前に向かうそれがだというのだ。
「車でも何でもじゃ」
「そういえば猫車もね」
「そうよね」
 二人は土木工事等で使うそれのことも言った。 
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