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八条学園怪異譚

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第五十八話 地下迷宮その三

「家に帰らない時もあるがな」
「研究で忙しい為な」
 牧村もここで言う。
「そうした時があるな」
「うむ、結構のう」
「寝ないと戦うことも出来ない」
 牧村は愛実と聖花が知らない彼と博士、そして妖怪達が知っている事情もここで話した。
「とてもな」
「そうじゃったな」
「今は戦いはないがな」
 また自分のことを話す牧村だった。
「それでも寝ているからだ」
「勝てたのう」
「それが出来た」
「?牧村さんが戦い?」
「どういうことかしら」
 二人は牧村の話を聞いて目をしばたかせた。
「それって何?」
「部活か何か?」
 二人はこう考えた。
「そういえば牧村さんってフェシング部よね」
「あとテニスもされてるそうだから」
「そっちかしら」
「そうみたいね」
「そう思ってくれればよい」
 博士はいぶかしむ二人にこう返した。
「とにかくじゃ」
「はい、今からですね」
「地下迷宮に入ってですね」
「泉を探しに行こう」
 そうしようというのだ。
「よいな」
「わかりました、それでは」
「今から」
 二人は博士の言葉に頷きそのうえで地下迷宮への入口、研究室の隅にあるそこに向かった。妖怪達はその二人にこう言った。
「じゃあ行って来てね」
「帰って来たらお菓子用意してるからね」
「お茶もね」
 それぞれこう言って手を振るのだった。
「後は楽しくやろう」
「そこが泉でなくてもね」
「どうせもうすぐ泉に辿り着くしね」
「明るくね」
「それがいい、俺もだ」
 牧村も博士と二人に一緒に行きながら言う。
「楽しみにしている」
「牧村さん甘党だしね」
「余計にだよね」
「甘いものはいい」
 好きだというのだ。
「食べているとそれだけで幸せになる」
「牧村さんお酒とかは」
「そちらは」
「飲めない」
 二人にもこう答える。
「実はな」
「そうなんですか、お酒はですか」
「駄目なんですか」
 二人は彼のその言葉を聞いて意外といった顔で言った。
「何か結構好きそうですけれど」
「そうなんですね」
「どうもな」
 酒はというのだ。
「駄目だ」
「体質ですね」
「それですね」
「そうだ、体質的にだ」
 まさにそのせいでだとだ、牧村は二人に答えた。 
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