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八条学園怪異譚

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第五十七話 成長その十五

「結婚のことだけれど」
「そのことね」
「結婚は大学を卒業してからよね」
 問うのはこのことだった。
「そうよね」
「そうよ、愛実ちゃんも知ってるでしょ」
「うん、それで結婚して」
「この家で働くから」
 家の仕事である食堂をだというのだ。
「それで旦那さんもね」
「うちで働くのね」
「そう、けれどね」
「やがてはよね」
「私お店持とうかなって思ってるから」
 家の仕事を継ぐのではなく、というのだ。
「旦那さんとね」
「ってことは」
「お店お願いするかも知れないから」
 愛実を見ての言葉だった。
「その場合はお願いね」
「そうなるわよね、その場合は」
「愛実ちゃんは将来どうするの?」
「ううん、お店に残るつもりだけれど」
 愛実は考える顔で姉の問いに答えた。
「それじゃあ」
「丁度いいわね」
「そうよね、そうなるわよね」
「独立とかは考えていないの?」
「お姉ちゃんが独立するなら」
 その場合はとだ、愛実は特に望むものもないといった感じで答えた。
「別にいいわ」
「そうなのね」
「私はお料理でやっていけたらいいから」
 それで充分だというのだ。
「大学に行くけれどそこで調理師の資格取ってね」
「八条大学はそうした学部もあるしね」
「お料理とか家事ならね」
 そうした技能はというのだ。
「出来るから」
「愛実ちゃんはそちらで生きるのね」
「お家の仕事もね」
「跡を継ぐことも?」
「うん、別に抵抗とかないから」
 そちらで生きると考えているからだ、そうしたことも特に抵抗はないというのだ。
「いいから」
「そう、じゃあ若し私が独立しても」
「後は私が跡を継いでね」
「それで私が残ったら」
「その時は何処かのお店で働こうかなってね」 
 こう考えているのだった。
「それでいくわ」
「そうなのね」
「そう、そのつもりだから」
 愛実はこう姉と話した、そしてだった。
 愛子は次は聖花に顔を向けた、そのうえで彼女にも尋ねた。
「それで聖花ちゃんは」
「はい、私は法学部に行って」
「そしてよね」
「弁護士さんの資格を取れたらって思ってます」
「昔からそう言ってるわよね、聖花ちゃんは」
「けれど弁護士さんになるつもりはなくて」
「パン屋さんよね」
 聖花は別に弁護士として生きていくつもりはないのだ、司法試験に通りたいと思っているだけなのである。
 では何をして生きていきたいか、それはやはりなのだ。
「世界で一番美味しいパン屋さんよね」
「そうなりたいです」
「聖花ちゃんのお家はご兄弟多いけれど」
「家は一番上のお兄ちゃんが継ぎます」
 このことはもう決まっているというのだ。 
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