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八条学園怪異譚

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第五十七話 成長その十二

「入学してから暫く暗い顔をしていたけれど」
「それが、なのね」
「随分明るくなったわ」
 その顔がというのだ。
「それだと男の子にももてるでしょ」
「いや、それはないけれど」
 愛実は姉の笑顔での言葉にすぐに苦笑いで返した。
「別にね」
「そうなの?」
「商業科だからね」
「女の子が多いからっていうのね」
「そう、競争激しいから」
 男はすぐに彼女が出来る、しかし逆はこの場合は真ではない。
「そうそうね」
「うかうかしてるとね。じゃあ聖花ちゃんもかしら」
「はい、私もです」
 実際にそうだとだ、聖花も苦笑いで答えた。
「彼氏は」
「そうなのね。まあそのことはおいおい頑張っていくということで」
 それでだというのだ。
「とにかく顔がね」
「明るくなったのね」
「いい顔になったんですね」
「暗い顔をしているより明るい顔をしている方がいいのよ」
 愛子はお茶を飲んで饅頭で甘くなった口を一旦すっきりとさせてから述べた。
「笑う門にはっていうでしょ」
「笑顔だと、よね」
「いいことがあるんですね」
「暗い顔をしていると運気が落ちるのよ」
「それでかえってよくないんですね」
「気持ちも余計に沈みますし」
「無理をしても笑うべきなのよ」
 愛子は何処かダンディズムめいた言葉をここで言った、女であろうともダンディズムは入るということであろうか。
「そうすればいいことがやって来るから」
「だからっていうのね」
「笑う門にはなんですね」
「そう、けれど今のあんた達はね」
 どうかというのだ、今現在の愛実と聖花は。
「心からそうだから」
「余計にいいのね」
「そうなんですね」
「そう、いいのよ」
 笑っているだけでもいいが心から笑っているのならさらにだというのだ。
「いいお友達に会えたのかしら、明るくなっていい感じにね」
「成長しているんですね」
「今の私達は」
「そう見えるわ」
 二人をそれこそ幼稚園に入る前から知っている愛子から見ればだというのだ。
「明るくなっただけじゃなくて優しくなって器が大きくなったっていうか」
「そんな感じでなの」
「私達成長してるんですね」
「いいところは余計によくなって」 
 そしてだというのだ。
「悪いところは小さくなったわ」
「悪いところはなの」
「小さくなってますか、私達」
 愛実と聖花はそう言われて目をしばたかせた、そしてだった。
 そのうえでだ、お互いに顔を見合わせてこう話した。
「だったらいいけれどね」
「私達が成長出来ているのなら」
「やっぱりね」
「嬉しいよね」
「そうなれたのも」
「あの人達と会えてよね」
 こう話すのだった、二人で。
 そのうえでまた愛子に顔を戻してだ、彼女に言った。
「色々な人に出会えたから」
「それでお付き合いしてるからだと思います」
 学園の中の妖怪や幽霊達のことをオブラートに包んでの言葉だった、流石に妖怪や幽霊がいるとは言えなかった。 
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