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八条学園怪異譚

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第五十七話 成長その九

「神社があってお寺も教会もあって」
「十字架や祠もあちこちにあるしね」
「関帝廟もあったわよね」
「お稲荷さんもね」
「そうしたもので悪い妖怪や悪霊が入って来ても退けられる様にしているのじゃ」
 そうだというのだ。
「茉莉也嬢ちゃんもその役目をしておる一人じゃ」
「先輩もですか」
「あの人も」
「だから巫女なのじゃよ」
 神社、即ち神道のだというのだ。
「他にも偉人の像もあってのう」
「そうしたものがですか」
「全部悪霊とかへの結界なんですね」
「その通りじゃよ」
 博士はこの学園の中に対する結界のことも話した。
「わしもそのことに関わっておるしな」
「博士の学んでこられた魔術や仙術で、ですか」
「陰陽道もありますし」
「そういうことじゃ。実は地下迷宮の結界を張った一人でもある」
 博士は二人にこのことも話した。
「だからあの迷宮のことはよく知っておる」
「それで道案内もですね」
「してくれるんですね」
「そうじゃ、そうしてきた」
 こう話してだ、そしてだった。
 博士は研究室の端を見た、自分の席のすぐ傍だ。
 そこを見つつだ、二人と牧村に話した。
「では今度な」
「はい、今度ですね」
「日曜に」
「行こうぞ、では今日はこれでな」
 博士のこの言葉で終わった、そしてだった。
 愛実と聖花は自分の学園に帰って授業に戻った。そして授業を受けて部活にも行った。しかしここでだった。
 愛実は考える顔になってこう聖花に言った、丁度部活の帰りにだ。
「ねえ、時々考えていることだけれど」
「私達でよね」
「そう、泉を見付けたらね」
「その時よね」
「その時どうするかよね」
 このことをだ、愛実は聖花に言うのだった。
「一体ね」
「そうね、そのことはね」
「泉を見付けて封印したら」
 どうなるかをだ、ここで言った愛実だった。
「どうしようかしら」
「ううん、見付けることしか考えてなかったけれど」
「そうよね、封印するってこともね」
 その考えもだ、愛実はあえて話した。
「あるわよね」
「ええ、ただ」
「ただ、よね」
「そのままにしてもね」
 いいというのだった、愛実はここで。
「問題ないし」
「見付けるだけでもね」
「学園の中にいる人達いい人達ばかりだし」
「普通の人間だけじゃ面白くないっていうかね」 
 聖花もここで愛実に返した。
「寂しいしね」
「いることに気付いてる人は少ないけれど」
 二人にしても彼等のことは入学当初は気付いていなかった、しかし彼等が学園の中にいるということはというのだ。
「あの人達もいればね」
「それだけ賑やかよね」
「寂しいっていうのはね」
 それはどういったものか、聖花は遠い目になって言った。
「慣れている人もいるけれど」
「どうしてもよね」
「ええ、辛いわ」
 こう愛実に話したのだった。
「私もそうだし」
「私も。そんなに強くないから」
 だからだというのだ。 
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