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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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MR編
  百三十二話 その名は絶剣

 
前書き
はいどうもです!!

今回は主にアスナのお家事情とOSSについての説明がメインの回ですw

ただ説明回って得てして、ちっさなフラグを隠したりするのにも役に立つ回だったり……w
なんて、保証はしませんがw

では、どうぞ! 

 
リズの問いに対して、アスナは首を傾げながら問い返した。

「ゼッケン?運動会でもするの?」
その問いに、リョウが少し壺には言ったかのように吹き出しながら訂正した。

「違ぇってゼッケンじゃなくて、絶剣。漢字だ漢字。絶対の絶に、俺らがいつも使ってる剣の剣で、絶剣」
「って……アイテムか何かの話し?」
「ん~ん。人の名前……って言うか、二つ名よ」
リズの言葉に、アスナはふむん。と考え込みながら呟く。

「二つ名……」
「多分、とっても強いから、絶対無敵、とか、超絶無比、とかの意味で、誰かが呼び始めたんじゃないかな?今、噂になってるんだよ?」
「へ~、サチも知ってるって、珍しいね?」
「そ、そうかな?」
あはは……と笑いながら言うが、実際彼女が強者の噂を知り得ていると言うのは其れなりに珍しい。サチはどちらかと言うと、そう言った事に関しては疎い方の人間だ。
そう言うアスナはどうかと言うと、強いプレイヤー。と言う言葉には、少なからず興味をそそられる人間である。

まぁSAO時代から其れなりに剣の腕には覚えがる。
何しろ治癒師(ヒーラー)メインであるはずなのに、時々昔の血がうずいたいたりして行き成り前線に出て大暴れしてしまう事も多々あり、そのお陰で《バーサクヒーラー》等と言う不本意な二つ名を頂戴したりしているのだ。
まぁその二つ名も始めこそ大いに不満だったもののいつの間にか慣れてしまい、月例のデュエル大会等にも、最近は積極的に参加している。
空中戦の三次元機動にも慣れて、古参ALO組の強者達ともまともにやり会えるようになってしまうと、やはり新たな強者と聞けば興味が湧いてしまう物だ。

「まぁ、サチが知ってても、アスナが知らねーのは無理ねーよ。この話広まってきたの年末年始辺りだ。お前年末ずっと京都だったろ?」
「あ、成程ね」
「もー、嫌な事思い出させないでよね~」
少ししかめっ面を作ったアスナに、リズがごめんごめん。と笑った。

「まー、良いとこのお嬢さんってのも大変よね~」
「ホントに大変だったんだから。一日中着物着て正座してずっと挨拶。夜こっそり大分しようと思ってわざわざアミュスフィア持って言ったのに泊った離れ、今時無線LANも無いんだもん。持って行き損だよもう……」
「あはは……でも、そう言う所も含めて、伝統とか歴史を大事にしてるってことなんじゃないかな?」
「それは分からないでも無いんだけど……」
苦笑して言ったサチにむぅ、と唸ってアスナはまた一口ハーブティーを啜る。

年末年始のアスナは、彼等の言う通り、つい先日まで京都に居た。
京にある結城本家……所謂、父の実家にだ。
昔は、其れが当たり前だった。年末年始に祖父母の家に行くなど、別段おかしなことだとは思わなかったし、離れて暮らす従兄弟達に会うのも、アスナの楽しみの一つだった。
其れが息苦しくなったのは、中学に上がったくらいの頃か。

結城の本家が二百年以上前からの両替商、銀行家の名家であると言うのは、以前メンバーには説明した事だ。まぁリョウ等はアスナが入院している間に調べて居たようだったが。

とにかく、まぁそんな家の子供たちと言うのは一様に《良い学校》の《優等生》と呼ばれる人種で、親戚が一堂に会するその席では親達が、ウチの子は何のコンクールで表彰されただの、全国模試が何位だっただのと言う事を表面的には穏やかながら、まぁそれこそ一日中応酬し続けているのである。
まるで子供の順位のつけ直しのようだと、幼いながら明日奈は思ったものだ。

そんな息苦しい年始の挨拶に明日奈が出るのも、2022年以来、実に四年ぶりの事だった。
数年間出ていなかった反動や、今年は明日奈の生還を祝う為の、ある意味自分が主役とも言える場だっただけの事もあるのだろう。
祖父母はじめとするそれこそ無現湧きなのでは有るまいかと思えるような数の親類縁者に挨拶の無限ループを仕掛けられたような、それこそ精神力を限界まで削られる行事では有ったが、それでも親戚や従兄弟に会えると言うのは嬉しい物だ。

従兄弟達は自分の生還をまるでわが事のようによろこんでくれたし、叔父や叔母たちも本気で自分の事を心配してくれていたので、その気持ちはアスナにとってはとても嬉しかった。
そう。嬉しいだけなら良かったのだ。自分の事を、彼等が哀れみ、同情している事が理解できなければ。嬉しいままで、ある意味幸せだっただろうに、明日奈には其れが理解できてしまった。

まぁ、彼等から見ればアスナは、彼等がこれから先延々と歩む人生のレースから、早くも脱落してしまった哀れな少女なのだろう。
別に、そう思う事は彼等の勝手だ。実際、もしSAOを歩む前までの自分があの場にいたら、自分の事を心底哀れみ、これが自分の未来の姿だと言われれば、あるいは絶望したかもしれない。

だが、今となっては、彼等のそんな視線などそよ風のような物でしかないのだ。寧ろ、一様にその価値観しか持てない彼等に、少しばかり違和感すら覚える。
自分は剣士なのだ。誰かに決められ、敷かれたレールの上を人形のように進むのではなく、自らの力で闘い、進む人間である。それは現実へと戻ってきた今でも変わらない。その信念が、明日奈と言う少女の心を支えていた。
其れが親類のだれにも、あるいは、本家に居る間何処かずっと不機嫌だった母にも理解してはもらえない事は、明日奈にもよく分かっていたが……

とにかく、SAO以前の明日奈を強引に進ませていた強迫観念が消えた以上、今は自分の本当にやりたい事を探す事が第一だと明日奈は考えていた。
まぁ、無論最終目標は今は眠りこけている黒衣の少年と現実世界でもこうして……

「…………」
「アースナー?聞いてるー?」
「え?あ、ご、ごめん!ちょっと考え事してた……」
苦笑して言ったアスナに、リョウが面白がるように笑って言った。

「っはは。なんだお前。向こうで見合いでもさせられたか?」
「へっ!?」
「……あ?」
不意を撃たれたように飛び上がったアスナの反応が、逆に予想外だったリョウが疑問の声を上げながら眉をひそめた。
隣に居たリズが、眉を寄せながらピクリと反応して聞く。

「ちょっと?何引きつってんのよ、アンタまさか……」
「な、ないないない!今のは行き成りでびっくりしただけだから!それ以上でも以下でも無いわよ!!」
「……そう?」
「ま、本人がそう言うならそうなんだろ」
リズの言葉に、リョウが諌めるように苦笑して言った。

ちなみに実際の所、アスナは嘘は言っていない。別に見合いをさせられた訳ではないのだ。
ただ……東京に帰る前日に、何やら本家の銀行の取締役だかの息子だと言う大学生と、まるで示し合わせたように二人きりにされると言う事態が有った。既に就職が決まっているらしい銀行でこれからどのように出世して行くだとかと言う話しを延々続けたその男に対してアスナはひたすら笑顔で応じるしかなかったのだが、もしかするとあるいはアレは大人たちのよからぬ企みでもあったのではないかと思えてならない。

と、何時までもそんな事を考えていても仕方が無い。
嫌なイメージを内心で頭を振って追い払うと、アスナは話の軌道を戻す。

「で、強いの?その絶剣さん」
「ん。超絶なのよ其れが。デュエル専門なんだけどね、24層の北の端っこの方に、ちょっとでっかい木の生えた離れ小島っぽい所が有るでしょ?あそこの根元に毎日午後三時になると表れて、立ち会い希望のプレイヤーと一人ずつ対戦すんのよ」
「えへぇ……大会とか出てた人なの?」
「ううん。新顔よ完全に。まぁスキル数値は高そうだったし多分コンバートだけど、最初は《NeWS(ニュース)》の掲示板に対戦者募集って告知があってさ。生意気な新参者をいっちょ揉んだろうの会の方々が三十人くらい押しかけたわけよ」
「で……返り打ち?」
「綺麗にね」
笑いながらリズは言うが、其れが並の事では無いのは彼女にもアスナにも分かって居た。

「何でも、HP三割削れた人はいなかったらしいですよ?」
「へぇぇ!」
リーファの補足に、アスナは今度は驚きの声を上げた。其れはますます並ではない。と、アスナの隣でタルトをもきゅもきゅしていたシリカがほのぼのと言った。

「ちょっと信じられませんよね~、私なんて空中戦闘(エアレイド)に慣れるまでに半年くらいかかったのに、コンバートしたてであの飛びっぷりですもん。私なんて見ただけで勝てないの確信しちゃいました」
「ま、それでもやって綺麗に負けたは此処に居るけどな」
はっはっは。と笑ってリズとリーファを見たリョウに、二人は口を尖らせた。

「うっさいなぁ」
「挑戦してみりゃ良いって言ったのはりょう兄ちゃんでしょ!」
「ん?そうだったか?」
「ちょっと!」
ニヤリと笑ってとぼけるリョウにリーファが文句を言いだし、アスナ達はそれを見て苦笑する。
しかし実際の所、種族的に戦闘に向いておらず、そもそも生産職メインであるリズはともかく、シルフでも指折りの剣の使い手であるリーファを破ると成ると、其れは最早並どころか完全にこのゲームの中では上位に食い込む。

「それは本物っぽいなぁ……うーん、ちょっとワクワクしてきたかも」
「ふふっ……アスナもやっぱり剣で戦うの好きなんだね」
「うーん、自分ではちょっと可愛くないかもって思うんだけどつい……」小さく笑いながら言ったサチに、アスナは少し照れたような顔をして返す。サチは首を横に振ると、穏やかな笑顔のままごく自然な様子で言った。

「ううん。剣で闘ってるアスナ格好良いし、ああ言うのってみんな憧れてると思うよ?」
「そ、そうかな?」
「そうよ。それに今みたいに話聞いて燃えてる方がアンタらしいわよ」
カラカラと笑って言うリズに、アスナも実際返す言葉が無い。自分自身、剣を振って居る時の方がより自分らしいと言う自覚はある。

「そう言えば、話は戻るけど、今も挑戦者の人っているの?それだけ強い人だと、その内挑戦者いなくなっちゃわない?辻試合だと死亡(デス)ペナルティも結構大きいし……」
「ううん。賞品が豪華だから……そんな事無いみたい」
「賞品?」
サチの答えに、アスナが聞き返す。と、シリカが少し興奮したように答えた。

「そーなんですよ。何と、《オリジナル・ソードスキル》を賭けてるんです!それもすっごく強い必殺技級の奴です!」
「OSSかぁ……何系?何連撃のやつ?」
「そこら辺は、サチの方がくわしいわよん。見てたからね」
「え?」
驚いてサチを見ると、彼女は少し焦ったように顔を朱くして言った。

「あ、えと、偶然見たんだ。始めてあの子が木の下でデュエルを始めた時に……」
「へぇー!って、あの子?」
「あ、うん。絶剣さんっていうのは女の子だよ?スキルは……片手剣の、突きの11連撃技かな」
「じゅーいち!?」

《オリジナルソードスキル》
通称OSSと呼ばれるこれはその名の通り、「個人が考案したソードスキル」の事だ。
今は無き伝説にして最悪のゲームタイトル。《ソードアート・オンライン》を、SAOたらしめた代表的なゲームシステム。其れが、戦闘時にシステムアシストによってプレイヤーを動かし、サウンドエフェクトとライトエフェクトを纏った剣を超高速で振るう、皆さんご存じ、「ソードスキル」だ。
このアインクラッドが実装された際に、運営側がそのソードスキルを一部のユニークスキルなどを除き殆どオリジナルのままで実装したのは、なかなかこの運営チームの冒険心が表れていると言えるだろう。
当然、近接武器攻撃の戦術を根底から一気に揺るがすSSの導入はALOの戦闘システムを根幹から変えた。
まぁ始めこそその是非に関しては大きな議論を呼んだものだが、はっきり言ってソードスキルの爽快感と言うのは、ゲーマーであるリョウがはっきりと「段違いだ」と断言するほどの快感が有る。

結論として、古参ALO住人達も皆、一度SSを使用するとすぐにその快感に魅せられてしまった。導入から半年以上が立ったが、今でも《空中軌道》+《ソードスキル》といった奥深いソードスキルを使った戦術は、活発な論議の対象だ。

そんな中、運営が導入したもう一つのシステム。それが、OSSだった。
プレイヤーが自ら考え、登録する事の出来るソードスキル。そんな、男なら(あるいは一部の女性も)誰もが憧れる、《ぼくのかんがえた必殺技》を作りだす事が出来るシステムが導入された直後、おおくの剣士たちはこぞってその開発に乗り出し……そしてことごとく挫折した。
理由は簡単。OSSを作るのが、とんでもなく大変だったからだ。

OSSを作るプロセス自体は、其処まで難しい物では無い。
メニューウィンドウからOSSボタンを押して、剣技記録モードに入って幾つかの細かい項目を入力した後記録開始ボタンを押したら、思うように剣を振り回して、技が終わったら記録終了ボタンを押す。
実にシンプルだ。

ただその容易さに反して、OSSが承認される為の条件は厳しい。
基本的に、斬撃(スラッシュ)刺突(スラスト)といった基本的な動作の単発技は、ほぼ全ての動作が既に既存のSSとして登録済みである。故に、OSSを作ろうと思うと必然的に連続技意外には無いのだが、この連続技は軌道や重心移動にいささかでも無理があっては成らず、しかも登録時には。ソードスキル並みのスピードで剣を繰り出し登録しなければならない。
半ば矛盾と言ってもよいのだ。何しろシステムアシストが無ければ本来不可能なはずのソードスキルを、そのアシスト無しで繰り出せと言っているのだから。
其れを可能にするには、それこそ身体がその動作を覚えるまで延々その動作を反復練習するしかない。

結果として、殆どのプレイヤーはその地味な練習に耐えきる事が出来ず、呆気なくOSS開発を放棄してしまった。
無論、一部の努力家達はそれでも諦める事無くOSSを開発し、中には一代限りOSSは《秘伝書》と言うアイテムとして他者に伝承する事が出来ると言う特性によって、流派の開祖のような地位を手にした者すらいる。

軌道の予想がつかないSSであるOSSは、当然対人戦、対モンスター戦双方に絶大な効果を発揮出来る。そのため、五連撃を超えるような所謂《必殺技級》のOSSの秘伝書は、高値で取引される事もあるほどだ。
ちなみに、現在広く知られている中で最も強力なOSSは、サラマンダー最強の男。ユージーン将軍が編み出した八連撃ソードスキル《ヴォルカニック・ブレイザー》だが、彼は金には困って居ない為、このスキルを未だ伝承させていないらしい。

ちなみに、このメンバーの中にもOSS持ちはいる。一応アスナとリーファは、アスナは五連撃、リーファは四連撃を習得しているし、キリトとも余り公には言わないが七連撃のOSSを開発している。それと、もう一人。リョウはアスナ自身聞いた事は無いし、リズなどが聞いてもはぐらかされるらしいのだが、恐らくは彼もOSSを開発しているだろうとアスナ含めメンバー全員が思っていた。

と、話を戻そう。
ともかく、そんな中で破格の十一連撃のOSSを持つ絶剣の登場だ。其れは挑戦者が絶えないのも無理は無い。

「成程……其れは確かに納得かも。ちなみに、サチは、って事は皆は見て無いの?デュエル中に出したりとか……」
「それがさ、サチが見たその初めての日に演舞で出した後は一度も実戦で使ってないらしいのよ……何て言うか、其処まであの子を追い詰めた相手が居ないみたいね」
「へぇ~ぇ……種族とか、武器は?」
ふむん。と唸って言ったリズにアスナが聞くと、今度はリーファが問いの答えた。

闇妖精(インプ)です。武器は片手の直剣で、アスナさんの細剣(レイピア)と同じくらい細いんですよ。それで……もうとにかく、早いんです。通常攻撃がソードスキル並みのスピードで打ちこまれて来て……結構速いのには慣れてるつもりだったんですけど、目で動きが終え無かったんですよ。凄いショック」
「うーん、リーファちゃんでも見破れない早さかぁ……それ私がやって勝機あるのかなぁ……って、そう言えば……」
不意に、一人の少年の事を思い出して、アスナは揺り椅子を指差した。

「キリト君は?まだ闘ってないの?」
動きの速さ、と言うか剣士としての強さで言うなら、この中ではキリトが最も実力を持っているとアスナは思う。
何しろSAO、ALO通して、一対一の本気のデュエルでキリトを破ったのは、アスナの知る限りGMとしてのシステム的優遇措置(オーバーアシスト)を使用した聖騎士ヒースクリフだけだ。
この中で知っているのはリョウとサチだけだが、アスナも一度キリトと本気のデュエルをした事が有る。確かリョウと出会う数週間前だったか。フィールドボス攻略作戦を検討していた折、KoBをはじめとする攻略優先のギルドと、キリト達一部のソロプレイヤーの意見が反発し、妥協点を見出す事が出来ずに代表者のデュエルを行うと言う出来事が有ったのだ。
その場にはリョウもおり、キリトの軽い挑発もあってアスナはキリトをボコボコにするつもりで挑んだのだが……意外にも(少なくとも当時のアスナにとっては)、一件のんでんだらりとしたキリトと言う少年には、驚くほどの実力が有った。

十分近い熱戦は結局キリトのとあるフェイントによりアスナの負けで終わり、ギルド側は折れる形となったのだが、その際アスナの中に小さな芽のように芽吹いて居たキリトに対する心が根付いてしまったのである。
そして同時に、アスナの心に根付いたもう一つが、最強の剣士と言う言葉だ。

勿論、キリトに言わせれば自分よりも強い者はいくらでもいると言うが、実際の所、剣士という枠組みに置いては、キリトよりも強い者はそうそういないだろうと言う確信が、アスナの中には未だ強く有った。

所が……

「あぁ、キリトな、負けたぞ」
「えっ!?」
ニヤリと笑いながらさらっとリョウの言った一言に、アスナは思わず聞き返していた。
慌ててリョウ以外のメンバーを見渡すと、他のメンバーもくすくすと笑い、リーファが言った

「ホントですよ。そりゃーもうかっこ良く」
「な……」
唖然としたまま、アスナが固まる。少しかすれた声で、その続けて聞いた。

「キリト君……本気だったの?」
「うーん、どうなの?」
「ん?」
聞かれたリズが腕を組んでむぅ、と考えた後に、リョウに聞いた。
タルトに大口開けてかぶりついて居たリョウは聞かれた事に気が付いて右の掌で「ちょいまち」のサインを出しながらタルトを呑みこむと、二ヤリと笑いながら返す。

「まぁ、二刀じゃ無かったっつっても、少なくとも一本の時の彼奴としちゃ真剣にやってたと思うぜ。手加減……ってか手を抜いてたって事は先ずねーな」
「ッてアタシ等の中じゃ一番そう言うの分かる奴が言ってるし、そんなんだと思うわよ?」
「…………」
今度こそ、アスナは絶句した。リョウがこれだけはっきり言うと言う事は、ほぼ間違いなくキリトは真剣勝負だったと言う事だ。そのキリトが負けると成ると……と、思ってから、アスナはもう一つの可能性にたどり着いた。

「もしかして……リョウもやったの?」
「あ?」
「あ、そう言えばアンタはやったの?アタシ達といた時はやって無かったわよね?」
「今日は良いや。とか言ってましたけど、あの後はどうしたんです?」
リズとシリカが気になったようにアスナに続いた。どうやら二人はリョウがその絶剣とやった所を見てはいないらしい。三人の問いに、リョウは肩をすくめて苦笑しながら答えた。

「いんや。俺はまだあの嬢ちゃんとは。ってか片手直剣のOSSとか俺がもらっても仕方ねーしな」
「それは、そうですね」
「えー、一度やってみたらいいじゃない。リョウ兄ちゃんなら良い所まで行けそうだよ~?」
「めんどくせぇもんよ。俺はお前らみたいにバトルジャンキーじゃねーの」
うははは。と笑って言ったリョウに、リーファが「とか言って負けるのが怖いだけだったりして」等と言ったが、リョウは何時ものようにニヤリと笑うと、「言ってろ」と言っただけでそれ以上は続けなかった。

どうやら絶剣とやらが、少なくともアスナの知る真の意味での「最強」より強いかは、未知数のようだ。ちなみにリョウがどの程度の強さを持つ者なのかというのは……まぁ此処で説明するのもおかしいので、割合させていただく。

「そう言えば……リョウ、アンタキリトが絶剣と何話してたか知ってるんじゃないの?」
「んー?」
再びハーブティーを口に含んだリョウに、リズが聞いた。リョウは首を傾げると、何の事か分からないと言うように肩をすくめる。

「ちょっとアンタもとぼける訳―?」
「とぼけるって……?」
リズが不満そうにリョウに言うのを見て、アスナがサチに問う。と、サチは苦笑しながら二人を見て答えた。

「キリトが絶剣さんと闘ってた時にね?つばぜり合いになった時、何か話してたみたいで……その後すぐに負けちゃったんだけど、キリトが何を話してたのか聞いても教えてくれないんだって」
「へー……皆で聞いてもダメなら、私が聞いてもダメかな」
苦笑しながら言うと、アスナは一度軽く伸びをして言った。

「じゃあ、後はその人に直接聞いてみるしかないかな?」
「あ、じゃあやっぱり……」
「うん。勝てるとは思わないけど、ちょっと気になるし……何か、デュエル意外に有りそうな気がするんだ」
「うん。それは、私も少し思うよ。……がんばってね?」
「うん!」
大きく頷くと、リズがニヤニヤと笑いながらアスナを見た。

「お、いよいよ騎士姫様出陣?」
「ちょっと!その名前何処から聞いたのよ!?」
何処かで聞いた呼び方に顔を朱くしてアスナが聞くと、リズは当然のようにリョウを見た。

「あ、リズてめ……」
「リョウ!!」
「あー、まぁまぁ、そう怒んなよ。バーザクヒーラーより良いだろ?騎士姫様?」
「か ら か わ な い で ! !」
怒ったように言ったアスナに、苦笑しながらリーファが止めに入った。

「まぁまぁ。リョウ兄ちゃんの事は後でこってり叱っておきますから!」
「おい、ちょ、ま」
「それより行くなら何時にしますか?私達も付き合いますよ?ね?」
「はいっ!こんな勝負見逃せませんよ!」
リーファの言葉に反応したリョウの事を綺麗にスルーして聞いた彼女に、シリカが大いに頷く。

「午後三時に現れるんだっけ?じゃあ……明日の二時半に此処に集合で、それから行こっか」
「りょーかいです!」
時計を見ながら言ったアスナは、既に時刻が六時近い事に気付く。

「っと、もうすぐ夕飯だから、そろそろ落ちるね?」
「あ、じゃあ今日はこの辺でお開きにしましょうか」
話している内に、皿の中のタルトもポットのお茶も片付いた。皆でサチに御馳走様を言うと、彼女は微笑みながら答えて片づけを始める。
シリカ達勉強組も其々のテキストデータを保存して消し、リーファはニヤァと笑うと。ゆっくりと足音を消してキリトの座る揺り椅子に忍び寄り、行き成りその椅子をガッコンガッコン揺らし始めた。

「おにーちゃん起きてー!帰るよー!!」
「オボゥオボゥオボゥオボゥ!!!!?!!?!??」
……と言うか膝の上のピナ達まで一緒に揺れているのだが大丈夫だろうか。
そんな様子に微笑みつつ、ふとアスナは一つの可能性に思い当って、リョウへと駆け寄った。

「ねぇ、リョウ」
「ん?」
「さっき絶剣はコンバートのプレイヤーだって話してたじゃない?でもそれだけ強いなら、もしかして元SAOのプレイヤーって線もあるんじゃないの?」
仮に容姿がALOらしい物だったとしても、プレイヤースキルはSAOからALOと移行する分には殆ど失われないし、アウィンやアイリのように容姿は変えつつSAOのデータを落とす事も不可能な訳ではない。寧ろその可能性は十分あるのではないかと思いアスナは聞いたのだが、リョウは苦笑すると首を横に振った。

「いんや。そりゃねーな」
「え?どうして……?」
「んー、《二刀流》有っただろ?」
「え?あ、うん……」
「あれ、聞いた話だと、SAO内の全プレイヤー中一番反応速度の速いプレイヤーに渡されるスキルだったって話だったろ?」
「うん。エギルから聞いた話でしょ?」
現在のALOの運営側と繋がりが有るエギルにその話を聞いたのは、もうずいぶん前だ。其れを知った時、キリトはなんとも形容しがたい顔をしていたのを、良く覚えている。

「……あの絶剣って嬢ちゃん、キリトより反応速度ならはええよ」
「……それって……」
「ん。そう言う事だ。もしあいつがSAOに居たんなら……」
ぽりぽりと頬を掻いて、リョウは言った。

「《二刀流》の持ち主はキリトじゃねぇ。あの嬢ちゃんだっただろうぜ」
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

そう言えば、前回のお話になんと五件も感想がきまして、嬉しくて画面の前で小躍りしてしまいましたw

この話題に触れるのは今更なのですが、KT先生がとにかく感想を書きまくると言うSAO祭りを行ってらっしゃったそうですねw
もしかしたらその影響もあるのかな?

ただ、期間が開いても感想を書きに来て下さる読者の皆様の声は本当に励みになりました。ありがとうございます!
また、感想を残す残さないにかかわらず、自分のような若輩者の小説を読んでくださる全ての方々に、改めてお礼を申し上げます。

さて、次回は少しリアルのお話を挟みます。
早いとこユウキの事も書きたいんですが、ま、まぁいつもの過程と言う事で、ご容赦いただければ幸いです。

ではっ! 
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