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寂しきロックンローラー

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第四章

「どうもな」
「調子が出ないみたいね」
「違うな、やっぱりな」
 浮かない顔での言葉だった。
「あいつがいないとな」
「いつも二人だったからね」
「テレビでもラジオでもな」
「けれど一人になることは覚悟していたわよね」
「していても実際にやってみるとな」
「勝手が違うのね」
「俺が右にいてあいつが左にいてな」
 これがビッグバードのポジションだ、それがないからなのだ。
「左から風がすーすー入ってくる感じでな」
「寂しいのね」
「ああ、寂しいな」
 実際にそうだというのだ。
「小学校の頃からだったからな」
「だから余計になのね」
「ああ、寂しいぜ」
 釈然としない顔での言葉だった。
「どうもな」
「そう、じゃあね」
「じゃあ?何だよ」
「暫く助っ人を頼む?」
 ソーサーはドワンゴの顔を見てこう言って来た。
「そうする?」
「助っ人かよ」
「そう、誰かね」
 ラビルがいない間というのだ。
「テレビでの演奏も一人だから」
「いらねえよ」
 ドワンゴはソーサーの提案にこう返した。
「そんなのはな」
「いいのね」
「ああ、いいよ」
 別にだというのだ。
「全然な」
「そうなのね」
「あいつしかいないからな」
「貴方のパートナーはなのね」
「ああ、だからいいよ」
 こう言うのだ。
「そんなのいらねえよ」
「いいのね、それで」
「どうせ半年の間だけだろ、だったらな」
 それならというのだ。
「あいつを待つさ」
「わかったわ、それじゃあね」
「あいつ以外にいないからな」
 またこう言うのだった。
「だからいいさ」
「ええ、じゃあこれからもね」
「あいつが戻って来るまでな」
 それまでの間はとだ、ドワンゴはここでも言った。
「待つさ」
「そういうことね」
「片翼でもビッグバードだからな」
 だからだというのだ。
「俺はやっていくさ」
「いいこと言うわね、じゃあ私もね」
「あんたもかよ」
「その貴方を全力でフォローするわ」
 微笑みを彼に向けての言葉だ。
「そうさせてもらうわ」
「それはどうしてだよ」
「決まってるじゃない、私は貴方達の何かしら」
「マネージャーだよ」
「マネージャーなら当然でしょ」
 自分が預かるアーティストの為に働くことはというのだ、ソーサーは微笑んでドワンゴにこう言ったのである。
「そうでしょ」
「そうか、じゃあ頼りにさせてもらうな」
「任せておいてね」
「それじゃあな」
 こうしてだった、ソーサーのフォローも受けながら。
 ドワンゴは今は一人でやっていくのだった、仕事は本当にテレビとラジオ等一人でもやれることだけだった、だから。 
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