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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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ドッペルドッペルドッペルゲンガー

†††Sideなのは†††

何だろう、今日のシャルちゃんはどこか変だ。どこが?と聞かれればハッキリと答えられないけど、長年の付き合いからの勘というやつだ。それにシャルちゃんだけじゃない。ルシル君もどこか変な感じがする。フェイトちゃんに聞いてみると、フェイトちゃんも同じことを思っていた。

「何て言うか・・・言葉に出来ないけど妙な感じはする」

「そう・・・だよね。何だろう・・・?」

私とフェイトちゃんの前を歩くシャルちゃんとルシル君。すると前からシャマル先生が歩いて来て・・・

「あぁセインテスト君。今日も私のサポートだから、お願いね♪」

「はい」

「?? どうかした、セインテスト君? ぼーっとしてるけど・・・。もしかして風邪でもひいたのかしら? ちょーっと、しゃがんでみて」

ルシル君が頷いて、シャマル先生と同じ高さくらいにまでしゃがんだ。それを見ているシャルちゃんは何も言おうとしない。やっぱり何か変だ。

「んーーー♪」

ルシル君の額に手を伸ばして熱を測ろうとしたシャマル先生。その細く綺麗な指がルシル君の額に当たったと同時に・・・

「「「っ!!??」」」

ルシル君の首がポロリと落ちた。コロコロ転がるルシル君の首に、その場に居た私たちは絶句。そして転がるのが止んだルシル君の首を見て、ようやく思考が動き出す。

「「「きゃあああああああっ!」」」

あまりにショッキングな光景だった。私たちはエースオブエースとかエリート魔導師とかいろいろと言われているけど、それでも女の子だ。だからあんなものを見て悲鳴を上げてしまうのは仕方ない。そもそも上げない方がどうかしてるよ。

「あぅあぅあぅ・・・ルシルがぁ、ルシルの首がぁ・・・!」

フェイトちゃんなんかもう泣きだしてしまっている。シャマル先生は「わ、わたし、殺人犯・・・?」ヘナヘナとへたり込んでしまっていた。

「あ~あ、耐久性がメチャクチャ弱いじゃん。やっぱルシルの異界英雄(エインヘリヤル)化は出来ないか・・・」

そんな時、廊下の角からもう1人のシャルちゃんが現れた。えっ、なんで? だってシャルちゃんは首のないルシル君の隣にいるのに・・・!?

「って、うわっ! ごめん、フェイト、シャマル!」

泣いているフェイトちゃんとへたり込んで放心しているシャマル先生を見て、シャルちゃんが謝りながら駆け寄った。何の騒ぎかと次第に集まってくる隊員たちが近付いて来るのが気配で判る。シャルちゃんも慌てるように指を鳴らすと、シャルちゃんと首なしルシル君が消えた。それで解った。今のシャルちゃんと首なしルシル君は、ルシル君の使い魔と同じ存在だということに。朝から感じていた変な違和感の正体も同時に解った。

†††Sideなのは⇒フェイト†††

場所を移して、シャルから説明された。さっきのルシルもシャルも偽物だってことを。私となのはが朝から感じていた違和感の正体がそれだった。本物じゃなくて偽物。

「ホンっっっトごめん! 耐久性実験していたんだけど、まさかなのは達の前で首ポロリなんて想定外だったから!」

こっちもいろいろと想定外だよ、シャル。目の前でルシルの首ポロリだなんて。思わず泣いちゃったよ。

「それじゃフライハイトちゃん、本物のセインテスト君は今どこ?」

「・・・」

突然黙って私たちから視線を逸らすシャル。なに? シャルはルシルに何かしたの?

「え~と・・・そのー、あはは! ルシルはちゃんと自室にいるよ? まぁ動けなくはしてあるけど・・・あはは・・・はは・・・」

「「「・・・はぁ」」」

もう溜息しか出ない。ルシルの扱いがホントに酷くて。それから寮のルシルの部屋に行くと、バインドで締めあげられたルシルが横たわっていた。

「――助かったよ、フェイト、なのは、シャマル。で、そこで土下座するシャル義姉さん。私に言わなければならないことが山より高く海より深く世界より広い程あるはずだが・・・?」

「くぅぅぅ、いくらなんでも重力使って強制土下座ってやり過ぎ・・・」

ミシミシと音を出しながら土下座しているシャル。けどそれも自業自得だから、少し可哀想でも助けない。

「まったく、無理やり私を黙らせる必要はないだろ? 話してくれればある程度の事は考えて、それから手伝う。まぁ出来る範囲内だが」

「あぅぅ・・・はい」

土下座ならぬ土下寝になりつつあるシャル。もう耐えられないみたいだ。

「・・・はぁ」

「っ!?」

急にシャルが跳ね上がった。もし今のが背筋測定されていたら世界記録が叩き出せそうだ。

「き、急に重力解かないでよ! 腰ポッキリいきそうだったじゃない!」

腰を押さえながら怒鳴るシャルに、ルシルは完全に無視を決めこんだ。この場の空気から、すぐにでもまずい方向に行ってしまいそう。それを阻止するために私が何か言おうと考えていると・・・

「えっとシャルちゃん、ルシル君。ひとつ聞いていいかな?」

「「ん?」」

「その・・・えっと、ルシル君の使い魔なんだけど、それってもしかしてスバル達のもいるの?」

右手を上げてなのはが尋ねたのは、ルシルの使い魔の中にスバル達がいるのかということ。ルシルの使い魔というのは、その人が持つ魔法や武器を複製した際に生まれるものだって昔聞いた。ルシルは私やなのはの魔法も使えるから、使い魔の中には私たちもいる。それも以前聞いた。

「どうなのルシル。スバル達の魔法って複製してあるの?」

「・・・まぁ一応は」

「そっか。う~ん・・・よし。午後の訓練はそれでいこう」

「「「まさか・・・」」」」

なのはが何を思いついたのか、すぐに思い至った。フォワードの使い魔、午後の訓練、そこから導き出されるのは実に簡単なこと。それから、食堂でお昼を済ませて、午後の訓練となった。私も参加したかったけど、生憎と別件で出かけないといけない。

「何も変なことが起きないといいんだけど・・・」

嫌な予感があるけど、変なことが起きないことを祈りつつ私は六課を後にした。

†††Sideフェイト⇒シャルロッテ†††

ルシルはシャマルと中で仕事だから、“エインヘリヤル”召喚は私がすることになった。

「えー、午後の訓練はちょっと予定を変更します」

フォワードの子たちは、なのはから告げられた言葉に少し戸惑いを見せている。今までそんなことがなかったから、どんな訓練になるのか期待半分・不安半分なんだろう。

「つうわけで、フライハイト。頼んだぞ」

「ん、了解」

ヴィータには昼休み中に、なのはと一緒に話をつけた。始めはつまらなそうにしてたけど、終盤じゃ興味深々だった。

「あの、シャルさんが僕たちと・・・?」

「ううん、違うよエリオ。みんなが相手をするのは、ある意味最強の敵。さて・・・我が手に携えしは確かなる幻想・・・!」

“神々の宝庫ブレイザブリク”から取り出したのは召喚のためだけの神器。ホントはこんなの必要ないんだけど、機会があれば使いたかったモノで、今がその機会と判断したから取り出した。今取り出した神器の他にも、私の腰のあたりに無数の弾丸が納められたベルトが武装される。それはソイルと呼ばれる特殊な砂が入れられた弾丸。そしてそれを撃ち出すための黄金の魔銃。本来は召喚獣を呼び出すもの。けど今回はすこーしイジって“エインヘリヤル”召喚に使う。

「それじゃあ、まずは・・・スバルから行ってみようか。え~と、スバルだから・・・う~ん・・・」

(スバルのイメージは、大体風、鋼、護りと言ったところ・・・かな)

そのイメージを基に弾丸(ソイル)を選定していく。

「シャルちゃん・・・?」

「ごめん、なのは。大丈夫、すぐに始めるよ。まずは、・・・すぅ・・・はぁ・・・お前に相応しいソイルは決まったぁッ!」

――♪BGM FIN〇L FAN〇ASY : Unli〇ited 魔銃発射――

「「「「「「っ!?」」」」」」

驚かしたみたい。ごめん。でもこのセリフも結構重要みたいだし、ここのところは許して。

「不屈の疾風、キングダムブルー!」

まずはベルトからソイルを1発取り出す。そしてそのソイルを魔銃のシリンダーに装填。

「挫かれぬ鋼の意志、スチールグレイ!」

もう1発取り出し、シリンダーに装填。

「そして、堅牢なる護りの大地、ガイアブラウン!」

最後の1発を装填。魔銃が唸り上げて吼える。その様子を見ているなのは達が唖然としているのを視界の端で捉えた。

「唸れ、エインヘリヤル・・・スバル!」

トリガーを引く。と、大きな発砲音と共に撃ちだされた3発のソイル。それが螺旋軌道を取り、上空で衝突して爆ぜて、その時に生まれた閃光で視界が潰される。次に目を開けた時、私たちの目の前に現れたのは・・・

「あ、あたしがもう1人!? ていうかどうしてタレ耳やフッサフサな犬の尻尾が!?」

スバルと似た姿の“エインヘリヤル・スバル”。本物と見分けるため若干色を変えて、オプションも付けてある。それが犬耳と尻尾。ちなみにボーダー・コリーの耳と尻尾だ。そんな色違いなイヌスバルを見た、スバルを含めたフォワードメンバーが目を点にしていた。

「というわけで、本日の午後の訓練はコレ。敵を知るにはまずは自分から。自分という強敵と闘ってもらいます」

なのはにそう告げられてもまだ再起動しないフォワード。

「おい! 聞いてるのかお前ら!」

「「「「は、はい!」」」」

ヴィータの叱咤でようやく再起動を果たしたみたい。まぁいきなりじゃそうだよね。3週間くらい前に事故で飛ばされた“英雄の居館ヴァルハラ”のことは覚えてないだろうし。

「それじゃティアナ、エリオ、キャロの順番で召喚するね」

まずはティアナ。ティアナのイメージは・・・。

(確かティアナって“夜明け”を意味する言葉だったはず・・・)

じゃあ、まずは夜明けと、ティアナの得意な幻、最後に・・・強い夢・・・夢。そうと決まれば早速召喚開始。

「お前に相応しいソイルは(以下略)! 始まり告げる耀、オレンジガーネット!」

装填。

「全てを欺く夢幻、ファンタジックイエロー!」

装填。

「そして、先なる夢への導、ドリームゴールド!」

装填。

「撃ち抜け、エインヘリヤル・・・ティアナ!!」

そして発射。召喚される色違い+エルフ耳のティアナ。

「な、なんであたしのは耳が長いんですか!?」

ピコピコと耳が動くエルフティアナ。うん、可愛い、可愛い。

「あー、ごめんごめん。まぁ気にしないであげて」

次はエリオ。エリオのイメージは、騎士の誇りとか誓いがしっかりくる。それと雷光。最後に・・・う~ん、風・・・かな。疾いし。

「それじゃあ、お前に相応しい(以下略)! 揺ぎ無き誓い、ロイヤルブルー!」

装填。

「漆黒照らす雷光、ライトニングゴールド!」

装填。

「そして、地駆ける疾風、エアログリーン!」

装填。そして、

「貫け、エインヘリヤル・・・エリオ!」

発射。そして召喚される色違い+(ダックスフンド)耳+尻尾エリオ。

「あの・・・つっこんだらダメ・・・ですよね・・・?」

犬エリオを見て溜息を吐くエリオ。うんうん、諦めが肝心だよエリオ君。

「そんじゃ最後にキャロ」

「あ、はい!」

キャロはそうだなぁ・・・。まず桃色は外せないよね。え~っと、キャロ・ル・ルシエ・・・。う~ん、キャロ・ル、キャロル、祝福・・・祝福でいこうか。あとは、ルシエ・・・は確か、空で輝くって意味だったっけ。

「よし! お前(以下略)! 優しき純心、チェリーピンク!」

装填。

「真純なる祝福、ホーリーホワイト!」

装填。

「そして、天より注ぐ光、ムーンシルバー!」

装填。そして、

「萌えろ、エインヘリヤル・・・キャロ!」

発射。そして召喚される色違い+ネコ(ペルシャ)耳+フワフワ尻尾なキャロ。

「シャルさん!」

ゴロゴロ喉を鳴らして気持ちよさそうに座り込んでいる猫キャロ。それを見た本物のキャロが恥ずかしさの所為か若干頬が赤くしながら叫んだ。

「まあまあ、ああ見えてもちゃんとしているから。なのは、ヴィータ。こっちの準備は終わったけど・・・」

「あ、うん。まぁいろいろと言いたいことがある気もするけど・・・。それじゃ早速、まずはそれぞれの自分と闘ってもらおうかな。スバルは北、ティアナは南、エリオは西、キャロは東に別れて」

「ひとつ言っとくが、相手は自分だ。自分が考えうる事はもちろん向こうも考える。それに、今まで培ってきた経験もある・・・んだよな、フライハイト?」

「うん、もちろん。昨日までの経験はある」

「つうことは、だ。今までお前らが培ってきた経験はそいつらも持ってる。自分の長所と短所を確実に見極め、その上で乗り越えねぇと勝てねぇってわけだ」

今まで鍛えてきた自分が相手となる今日。長所も短所も全てが同じ。だから考える必要がある。自分の長所で向こうの短所を攻めれば、向こうもまた同じ短所の隙を突く迎撃が来るから。それをどういう風に攻略していくか。自分を乗り越えたとき、また新しい自分を得ることが出来る。

「それを終えたら次はチーム戦を行う。でいいんだよな、なのは隊長」

「うん。それじゃあ始め!」

「「「「はい!!」」」」

大きく答えて、指定された戦場に散っていった。それを見送る私たち。

「・・・はぁ、にしてもすげぇよな。本人だけじゃなくてデバイスまで複製されてんのかよ」

「ん? あぁさすがにルシルでも、デバイスなんて精密機械を複製できないよ」

「は? じゃああの使い魔たちが持ってたのは何だったんだよ?」

「ハリボテ。もちろん純粋な機械でもないしAIもない。だけど性能や動作は同じ」

ヴィータの疑問に答えた。外見は同じデバイスでも、アレらは神器に相当する武装。だから結構な代物だったりする。性能もわざわざ落としてあるくらいだし。

「ハリボテでオリジナルと同性能ってか」

あまりのデタラメさに呆れ顔なヴィータ。なんならその呆れ顔を、今から面白いものにしてあげよう。えっと・・・ヴィータは絶対的に赤関係をひとつ。次は、ヴィータには生命や生活って意味もあるし、緑関係。あとはデバイスは鉄の伯爵“グラーフアイゼン”だし、そっち系でいこう。

「おま(以下略)! 総てを破壊する(あぎと)、デストロイクリムゾン!」

ベルトからソイルを取り出して、魔銃のシリンダーに装填する。

「強き生命の脈動、シーグリーン!!」

2発目を装填。

「そして、挫かれぬ鋼の意思、スチールグレイ!」

最後の1発も装填完了。唸りを上げ始める魔銃。

「破壊せよ、エインヘリヤル・・・ヴィータ!」

「おい! 何勝手なことしてんだよお前!」

もう遅いよ、ヴィータ。トリガーを引いて発射する。放たれたソイルが上空で衝突して爆ぜる。そして現れたのが・・・

「「・・・」」

ウサ耳にフワフワな丸い尻尾、ついでに色違いなウサギヴィータ。その姿は、ヴィータの帽子にも付いてるのろいうさぎがモデル。そんなうさぎ好きだからこそ、“エインヘリヤル”にもその影響を出してあげた。

「うんうん」

それと意図しなかったことだけど、若干ヴィータより小さいから・・・

「チヴィータと名付けよう」

「ぶっ叩くぞっ!」

オリジナルのヴィータより小さいチビだから、チヴィータ。なかなかに良い名前だと思うんだけど、残念ながらヴィータには不評なようだ。

「まあまあ、ヴィータ副隊長。可愛いよチヴィータ」

ウサ耳をピョコピョコ動かしながらキョロキョロしているチヴィータ。身体も若干揺れるから、丸い尻尾もフワフワ動いている。それは確かになのはの言う通り可愛らしい。あぁなんか抱きしめたい。

「触るなバーカ。てか、いい歳してツインテールなんかしてんなよな」

「「「・・・」」」

なのはがチヴィータに触れようとしたら、チヴィータのその可愛らしい口から毒が吐かれた。ミニチュアみたいな“グラーフアイゼン”をなのはに突きつけながらの毒だった。

「ヴィータちゃん。・・・そんな風に思ってたんだ・・・?」

あ、なんかまずい。なのはの背景に、ゴゴゴゴゴ、って見える。

「違ぇーよ! そこの偽者が勝手に言ったことだろ! 真に受けんなよ!」

「そ、そうだよね。うん、ヴィータちゃんはそんなこと思わないもんね」

管理局の白い魔王さまの降臨は阻止された。

「おい、偽者(テメェ)っ! 次に変なこと言ったら空までぶっ飛ばすぞ!?」

「ハッ、やってみろよ! 今日という日を命日にしてやっからさ、このロリっ娘! あぁ違ぇな。何百と生きてんだからロリババアか!」

どっちかと言えば、チヴィータの方がロリだよ?

「ぶっっっっっっっっ殺ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっす!!」

ヴィータが“グラーフアイゼン”を起動して、チヴィータ相手にブンブン振り回す。だけど、その小ささを活かして回避しまくるチヴィータ。

「アイゼン!」

≪Jawohl≫

ちょっとヴィータ、いくらなんでもギガントフォルムは大人げないよ。

「ぶっ潰れ――」

「どこ見てんだよ!」

ヴィータが“グラーフアイゼン”を振り上げたことで生まれた隙を突くチヴィータ。一気に懐に入ってヴィータの脛を“ミニアイゼン”で打ちつけた。

「くぅおおおおおおおおおおぅぅぅぅ!!」

アレは痛い。それを証明するかのように、ヴィータが“グラーフアイゼン”を手放して、右脛を擦りつつ転げ回る。目にも涙を浮かべているし、相当なダメージのようだ。

「見たかよ。これぞ必殺シーン・バイン・シュラーク!!」

聞けばなかなかカッコいい必殺?技名だけど、その意味は、“向う脛に一撃”、だ。

「~~~~~っ」

「ヘッ、こんなもんかよ」

“ミニアイゼン”を、未だに右脛を擦りつつ涙しているヴィータに突きつけた。

「て、テメェ・・・!」

メラメラと怒りに燃えるヴィータ(涙目)。

「ニヤァ」

片や可愛らしい小悪魔な笑みを浮かべるチヴィータ。ウサ耳が若干悪魔の角にも見えてきた気がする。

「え、えっとヴィータちゃん、チヴィータちゃん。な、仲良く、ね。そう、仲良くしよう。・・・無視ですか」

あの危険地帯に挑んだものの敗北して、ガックリ項垂れて戻って来たなのは。私はただそれを迎え入れるしか出来なかった。

「上等だよテメェ。アイゼン!」

≪Raketen form≫

ヴィータは徹底抗戦のようだ。対するチヴィータもノリノリだし、どうしようかなぁ・・・。

(召喚を解くのは簡単だけど、それじゃつまらないし・・・そうだ!)

「(全略)! 遥かなる夜天統べる蒼、ミッドナイトブルー!」

ベルトからソイルを取り出して、シリンダーに装填。

「まさか・・・」

なのはは私が口にした言葉だけで誰を召喚するか判ったようだ。まぁ夜天統べると言ったらただ1人しかいない。

「夜天に舞いたる純白、スノーホワイト!」

装填。

「そして、永久(とわ)なる優しき疾風(はやて)、エターナルグリーン!」

3発目を装填する。

「ツッコめ、エインヘリヤル・・・はやて!!」

トリガーを引いて3発のソイルを撃ち出す。そして現れたのは色違い+タヌキ耳+尻尾のはやて。

「ねぇシャルちゃん、どうして出る子出る子には動物が混ざってるのかな・・・?」

「その方が面白いから」

即答したらなのはが「やっぱり」と呟いて溜息。だって何事も楽しまないと損だよ、なのは。でも、さっきはそう言ったけど、ホントはちゃんと理由がある。オリジナルの前では、対象の“エインヘリヤル”は召喚できないというルールがある。
だから何でもいいから少しだけでもアレンジを加えないと、オリジナルの前には召喚できない。どうしてルシルはそんなルールを作ったのか知らない。でもきっと理由はあるんだと思う。そう。悪用しないようにするとか。誰かの代わりとして、慰み者にしたくない、とか。

「じゃあはやて、あそこでバトってる2人を止めてあげて」

「了解や」

手にするのは“シュベルトクロイツ”じゃなくてハリセンだ。描かれたイラストはウサギとカメ――じゃなくてデフォルメされたウサギとタヌキ。そして“夜天の書”は動物図鑑という始末。そんなハリセンと動物図鑑を手に、タヌキの尻尾をフリフリ揺らしながら、ヴィータとチヴィータに近付いていくタヌキはやて。そして・・・

「いい加減にしとき!」

「「みぎゃっ!?」」

思いっ切り振りかぶったハリセンでつっこんだ。スパンッと良い音が出た。今のはプロの、すごく上手い叩き方だ。

「はやて!?・・・じゃねぇぇぇ! フライハイト、お前またやったのかよ!?」

「2人を止めるためだからだよ」

狙い通りにバトルも終わってるし、選択は間違っていなかった。あっちはもう解決したし、なのはに振り返って、「いっそのこと、なのはも自分相手に闘ってみる?」ってなのはの“エインヘリヤル”も出そうかと提案してみる。

「ヴィータも結構チヴィータに苦戦していたみたいだし、良い経験かもよ」

「苦戦なんかしてねぇ!」

ヴィータの反論をスルー。

「わ、私はいいよ。その・・・どんなのが出てくるか知れないし・・・」

「大丈夫、大丈夫! チヴィータみたいな変なのにはしないから」

「おい!」

「う~ん・・・」

随分と深く考えるなぁ。そんなにイヤなのかな?

「どう? 少なくともチヴィータよりはマシだから」

「ざけんなよマジで!」

「そうだなぁ・・・。じゃあお願いしよう・・・かな」

チーム戦で闘っても良いし、と小さく呟いてる。そうと決まれば早速♪

「よし、そうこなくちゃ! 見てて、チヴィータごときより凄いのにするから♪」

「なあ、殴っていいよな? もう殴っていいよな?」

「ああ、あたしも手伝うぜ」

ここに来てヴィータとチヴィータが結託したみたいだ。だけど、こっちにはタヌキはやてという最終兵器があるのを忘れているね。指パッチンで合図。そしてハリセンで脅される鉄槌の騎士とウサ耳騎士。

「凄くしないでいいからね!?」

なのはの言葉もスルー。

「お前に相応しいソイルは決まったぁ! 狙ったもの全て撃ち抜く、ハンティングピンク!」

装填。

「逃れうぬ滅び与える星光、ヴァイオレンスホワイト!」

装填。

「そして、果てなき絆の導、エンドレスレインボー!」

3発目を装填。

「皆殺せ・・・!」

「何でそんなに物騒なの!?」

「エインヘリヤル・・・・なのは!」

若干お怒りのなのははスルーして、トリガーを引き発射。そして例のごとく爆ぜては現れる“エインヘリヤル・なのは”。

「うぉ、すげぇな。悪魔みてぇ」

「アレンジし過ぎだよシャルちゃん!」

「あっれぇ? 予定以上に変わっちゃったなぁ・・・」

バリアジャケットの白の部分が黒で、青い部分も変更して紅くした。そして髪の色も少し変更して灰色、瞳は金色。うわぉ、ほとんど別人だぁ。そんなブラックなのはと目が合うと・・・

「妾の前で頭が高いわ、そちら。とっとと頭を下げよ」

めっちゃ偉そうに言ってきた。なのはの顔と声なのに、言うことが変わるとホントに別人だ。

「(んー、確か性格の変更はしてないはずだけど、あ、まさか・・・)まさか・・・あれが・・・なのはの隠された本性・・・!」

「そんなわけないよ!!」

つっこまれた。

「聞こえなかったのか? とっとと頭を下・げ・よ♪」

目が全然笑ってない。ていうか敵意丸出しでの笑顔なんて怖いだけだ。

「おい、フライハイト。あれちょっとヤバいんじゃねぇか・・・?」

「シャルちゃん、私の顔であんな怖いのもう見たくないんだけど・・・」

「う、うん。まぁさっさと消えてもらおうかな・・・」

今度はちゃんとしたなのはの“エインヘリヤル”を召喚しないと・・・。

「(エインヘリヤル召喚術式強制解除開始。対象、エインヘリヤル・高町なのは)・・・あれ? おかしいな。どうして消えないの・・・?」

デビル――ブラックより昇格ななのはは未だ健在。

「えっと、シャルちゃん・・・?」

「おいおいおい、まさか・・・言うこと聞かねぇのかよ・・・?」

そんなわけがない。私だって“エインヘリヤル”の召喚権限をルシルから借りてるんだから・・・。許されているランク以上の“エインヘリヤル”を召喚したわけでもないし、どうして言うこと聞かないの?

「おーっほっほっほっ! 偽りのマスター・シャルロッテよ! そちの権限など腹周りの余分な脂肪程に意味のないものよ! それが分かった解ったならば、頭を下げよ」

へぇ、そう。そういうことを言う。なのはの顔と声でそんなこと言っちゃう・・・。

「フフ・・・ウフフフ・・・あーっはっはっはっ! 上等だコラーーーー! 術式解除で消えないなら、ボコって還してやる!」

もういい。自分で召喚しておいてなんだけど、なのはを穢すお前は許さん。久々に“トロイメライ”を起動して、騎士甲冑を身に纏う。

「お、おいフライハイト。落ち着け、な?」

「そうだよシャルちゃん。ここはルシル君を呼んで――」

「ほう、妾のオリジナルとハンマー騎士はずいぶんと腰抜けじゃなぁ。まぁそれもよかろう。とっとと我が主を呼んでくるがよい。その弱々な逃げ腰をもっと見せてくれるのなら見逃したやろうぞ? おーっほっほっほ!」

「「・・・・」」

なのはとヴィータの纏う空気がガラリと変わった。そこで私は冷静になれた。だけど今度はなのはとヴィータを冷静にしないといけなくなった。

「レイジングハート・・・」

≪All right≫

「やるぞ、アイゼン・・・」

≪Jawohl≫

すっかり殺る気になってしまったなのはとヴィータ。もう駄目だ、止められない。こうなったら私も殺ってやる。

「ふむ、よかろう。相手をしてやろうぞ。麗塵愚破亜徒(レイジングハート)恵苦世璃怨(エクセリオン)!!」

デビルなのはもまた“レイジングハート”を呼び寄せた。でもそれはデバイスじゃなくて下位神器、現代じゃ規格外の代物だ。で、そんなデビルなのはが手にしたのは、「オリジナル以上の神々しさに目が眩むというものよ」真っ黒に染まって、何かのシミのようなものがこびり付いた三叉槍(トリアイナ)。しかも穂が分かれる部分にはドクロ(額に肉と書いてある)がある。神々しさのカケラもない。

「「「どこがっ!?」」」

だからつっこまずにはいられなかった。そして一度歯車が狂いだすと、それに続いてさらに繰り出す歯車もある。

「「ひゃっっほぉーーーい!」」

「うおっ!?」

チヴィータとタヌキはやてが裏切った。デビルなのはのところまで走り寄って、その後ろに控えた。だけどそれだけじゃ終わらない。

『あの! もう1人のあたし――」

『トッピロキー!』

『変なんですが!』

『ぼ、僕のも様子が変な――』

『ウニョラー!』

『わ――』

『エイヤハー!』

『うわっ! なん――』

『イィィーハー!』

『なんですけど!』

「「「・・・・」」」

あの子たちのも暴走気味のようだ。

「それではいこうかの。悪瀬流酒雨太亜(アクセルシューター)・・・狩兎人(シュート)!」

デビルなのはの攻撃(ターン)。アクセルシューターと言っておきながら、禍々しいフレイルのようなトゲ付き魔力弾。それがものすごい数で襲いかかってきた。

「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。すぐにこっちと合流!」

『『『『はい!』』』』

さぁ、あの子たちと一緒に来る暴走“エインヘリヤル”を掃討する準備でもしますか。

「いくよ、なのは、ヴィータ」

「うん!」

「おう!」

んで、この後、ルシルに気付かれるまで戦い続けた私たち。暴走した原因は魔銃による異例召喚による術式の混乱。もちろん私は、ルシルからそれはありがたくないお説教を受けました。

「めでたしめでたし」

「全然めでたくないよ!?」
 
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