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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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「あの光、何だろう」

突如樹海に現れた黒い光の柱をイヴは指さした。
ウェンディとルーが連れ戻された事を知らないイヴとレンは光の柱の出現に足を止めている。

「見ろよ、あの不気味な黒い木から何かが流れ出てる。あの光に吸い寄せられているんだ」
「どういう事なんだろう」

黒い木を見つめ、光の柱に目を向け、気づく。

「まさか、あの光の場所にニルヴァーナがあるのか!?」
「だとしたら、誰かがもう見つけたって事!?」
「連合軍か・・・六魔将軍(オラシオンセイス)か・・・」

見つけたのが連合軍だとすればこちらのやるべき事が終わる為、勝利を意味する。
後はニルヴァーナを破壊して六魔将軍(オラシオンセイス)を倒せばいいだけだ。
が、見つけたのが六魔将軍(オラシオンセイス)だとすると、話は変わってくる。

「ヒビキ!どうなってる!?応答しろ!ヒビキ!」

状況を確認しようとヒビキに念話を繋げるレンだが、全く通じない。

「この魔力が念話を妨害してるんだ!」
「くそ!」
「僕は引き続きウェンディちゃんとルー君の救出に向かう!」
「解った!オレはあの光に向かってみる。気を付けろよ」









「くそっ!何がどうなってんだ」
「何かしら、あの黒い光の柱・・・」

その光はこちらにも届いていた。
リオンを探すグレイとティアは突如現れた光に戸惑いを見せながらも、引き続きリオンを探す。

(リオン様は誰のせいで・・・)

その2人を、虚ろな目で見つめる者が1人。
ゆっくりとその視線を上げていく。

「リオーン!返事しやがれー!リオーン!」
「返事なさいなー!聞こえてるんでしょー!」

その視線の先には、声を張り上げるグレイとティア。
そしてゆっくりと・・・シェリーは堕ちる。

(こいつ等か・・・)












「あれは一体・・・」
「よく解んねぇけど面白そうだな」
「ニルヴァーナ・・・デスネ」

六魔将軍(オラシオンセイス)の1人、ホットアイと交戦するジュラとアルカは背後に見える黒い光の柱がニルヴァーナだと知り目を見開く。

「安心してくださいネ。まだ()()は起動してない。あれは封印が解かれただけ。しかし・・・お金のニオイがプンプンするデスネ・・・んふふ」

嬉しそうに笑みを浮かべて説明をするホットアイ。
ジュラとアルカは一旦光からそっちに目を向けた。

(こんな奴と戦ってる場合ではないか・・・いや、しかし任務は六魔将軍(オラシオンセイス)討伐!戦うか・・・ニルヴァーナを止めるか・・・)
(参ったなァ・・・面白れぇ事がこうも連続で来るとは。ニルヴァーナを見に行きてーが、ジュラのおっちゃんがそれを許してくれるとは到底思えねーし)

目の前にいる敵か、背後の黒い光の柱か、ジュラは必死で考える。
アルカも2つの面白い事のどちらを優先するか考えていた。

「金・・・金・・・これで私達は金持ちに・・・」

両手を広げてホットアイは喜ぶ。

「!」

が、突然喜びの声は止まり、プルプルと震えだした。

「お・・・おお・・・お・・・」
『!』
「おおおおおおお・・・!」

両手で顔を覆って苦しみだすホットアイ。
それに対し、2人は困惑を隠せない。

「な・・・何だ、今度は・・・!?」
「オイオイ・・・随分と忙しい奴だな」












一方、ルーシィとヒビキ、ルー、ウェンディとアランとココロ、ヴィーテルシアとハッピーとシャルルはナツが走り去り先の事を考えていた。

「ナツ君を追うんだ」
「今のこの状況で1人とは何とも危ないからな」
「ナツ・・・ジェラールとか言ってなかった?」

ヒビキとヴィーテルシアの言葉にルーシィは考えるように目線を落とす。
直接面識がないとはいえ、ジェラール側と戦った事のあるルーシィは突然出てきた名前に戸惑っているようだ。

「説明は後!それより今はナツを・・・」
「「あーーーーーーーーーーーーっ!」」

ハッピーが言いかけた瞬間、シャルルとココロの声が響く。

「た、大変ですっ!」
「エルザがいない!」

そう。
先ほどまで毒に苦しみ眠っていたはずのエルザの姿がどこにもないのだ。

「あ・・・ああ・・・」

それを見たウェンディが小さく呻く。

「何なのよあの女!ウェンディに一言の礼もなしに!」
「エルザ・・・もしかしてジェラールって名前聞いて・・・」

シャルルは憤慨し、ハッピーはエルザが消えた理由を推測する。
ジェラールの名前を聞いたエルザが黙っている訳が無い。

「どうしよう・・・私のせいだ・・・」
「ウェンディ違うよ、君のせいじゃない」

頭を抱えて小刻みに震えるウェンディにルーが声を掛けるが、ウェンディの自責の念は止まる事を知らない。

「私がジェラールを治したせいで・・・ニルヴァーナ見つかっちゃって、エルザさんや・・・ナツさんや・・・」

目に涙を浮かべて尚も続けるウェンディ。
それを見たヒビキが右手を前に出そうとした、瞬間。

「ウェンディ!エルザさんはウェンディがいたから救われたんだ!」
「アラン君・・・?」

アランが叫んだ。

「エルザさんがいなかったら僕達は勝てない。勝つ勝たないの前にエルザさんは死ぬかも知れなかったんだ!だからウェンディ、お前のせいじゃない!」
「アラン・・・君・・・」

継ぎ接ぎだらけのその言葉にも誰かを救う力はあった。
ウェンディは目から涙を溢れさせ、そのまま倒れ込むように気を失う。
アランはそれを抱え、小さく溜息をついた。

「すみませんでした・・・行きましょう、ナツさんを追いに」
「ああ」

アランはウェンディをヒビキに背負ってもらい、駆け出す。

(危ない所だった・・・あのままじゃ、ウェンディは・・・)

その桃色の瞳を、動揺に揺らして。











「ジェラール・・・」

怒りを原動力に、ナツは走る。
底知れぬ怒りを踏みしめるように強く走り続ける。

「いたぞ!妖精の尻尾(フェアリーテイル)だーっ!」
「よくもレーサーさんを!」

そんなナツの前に、闇ギルドが立ち塞がる。

「レーサー直属ギルド、尾白鷲(ハルピュイア)の力見せてやる!」
「オオオ!」
「やっちまえーっ!」

レーサーが自爆した事に怒る尾白鷲(ハルピュイア)の面々は、ナツへと襲い掛かる。
――――――が。

「邪魔だ」

それ以上の怒りを持つナツ相手では、足りない。

「どけェ!」

炎を纏った両腕を振るい、一瞬にして全滅させる。
そこには所々焼け焦げたメンバーだけが残った。

「アイツはエルザに近づかせねぇ。近づかせねぇぞー!」












「アラン君、1つ聞いてもいいかな?」
「いいですけど・・・何を?」

ヒビキがウェンディを背負い、ルーシィとルー、ハッピーとシャルルとヴィーテルシア、アランとココロはナツを追って走る。
ヒビキがアランに声を掛け、アランは首を傾げた。

「君は・・・ニルヴァーナという魔法について、何か知ってるんじゃないのか?」
『!』
「どういう事?」

ヒビキの言葉にその場にいた全員が目を見開き、ルーシィが問う。

「さっきのアラン君の行動、あれはただウェンディちゃんを落ち着かせようとして取ったものじゃないと思うんだ」
「・・・」

その言葉にアランは少し俯き、ゆっくりと口を開く。

「・・・その通りです。本当の事を言うと、僕はニルヴァーナという魔法を知っています。でもそれはヒビキさんもでは?じゃないと、僕が知っている事に気づかなかったはず」

アランの言葉に、ヒビキがゆっくりと、でも確かに頷く。

「確かに僕も知ってはいた。ただ、その『性質上』誰にも言えなかった」

真っ直ぐ前を向いたまま、ヒビキは続ける。

「この魔法は意識してしまうと危険だからなんだ。だから一夜さんもレンもイヴも知らない。僕だけがマスターから聞かされている」
青い天馬(ブルーペガサス)のマスターがそこまで徹底して情報を隠すとなれば・・・ニルヴァーナはかなり危険な魔法か」
「うん、これはとても恐ろしい魔法なんだ」

ヴィーテルシアが呟き、ヒビキは頷きながら答える。
アランがゆっくりと口を開き、言い放つ。




「光と闇を入れ替える・・・それがニルヴァーナです」




その言葉に、ヒビキを除く全員が不思議さと驚きを混ぜたような表情をする。

「光と・・・」
「闇を・・・」
「「入れ替える!?」」

ハッピーとシャルル、ルーシィとルーが繰り返す。
ヒビキとアランは頷き、続けた。

「しかしそれは最終段階。まず封印が解かれると黒い光が上がる。まさにあの光だ」
「黒い光は手始めに、光と闇の狭間にいる者を逆の属性にします。強烈な負の感情を持った光の者は・・・闇に落ちる」









メキメキと音を立て、木が動く。
必死にリオンを探す2人の背後で、シェリーは虚ろな目を向けた。











「それじゃ、アランがウェンディにああ言ったのは・・・」
「自責の念は負の感情ですから。あのままじゃウェンディは闇に落ちていたかもしれない」

先ほどのウェンディは自責の念に駆られていた。
ジェラールを復活させたせいでニルヴァーナが見つかってしまった、と。
あのままではウェンディは闇に落ちていた可能性があるのだ。

「ちょっと待って!それじゃ『怒り』は!?」
「そうだよ!今ナツは相当怒ってるよ!あのままじゃナツも・・・!」
「何とも言えない・・・その怒りが誰かの為なら、それは負の感情とも言い切れないし」

ジェラールへの怒りに燃えるナツを思い出したルーシィとルーは慌てる。

「どうしよう・・・意味が解らない」
「アンタバカでしょ」

そしてハッピーは何の事だか理解出来ていなかった。
シャルルは呆れたように言い、ココロが口を開く。

「つまり・・・ニルヴァーナの封印が解かれた時、正義と悪の間で心が動いてる人が性格変わっちゃうって事、ですよね?」

アランは「そう」と頷き、口を開く。

「それが僕やヒビキさんがこの魔法の事を黙っていた理由・・・ですよね」
「ああ。人間は善悪を意識し始めると、思いもよらない負の感情を生む」

アランに問われ、ヒビキは頷いて続けた。

「あの人さえいなければ・・・辛い思いは誰のせい?何で自分ばかり・・・それら全てがニルヴァーナによりジャッジされるんだ」









「ぎぃ・・・何・・・を・・・」
「くぁ・・・シェ、リー・・・アンタ・・・」

既に1人・・・闇へと落ちた光があった。
細身の木の人形にグレイとティアは首を絞められている。

「ぐああああ!」
「きゃああああ!」

大きな悲鳴が2つ響き―――――。
ドサッと、2人は気を失い倒れ込んだ。

(仇は討ちました、リオン様・・・次は誰です?こいつ等の仲間?妖精の尻尾(フェアリーテイル)ですか?)











「おおおおおっ!金!金・・・!金・・・!」

ぶるぶると震え、顔を覆うホットアイ。

「な、何だというのだ・・・」
「ちょ・・・大丈夫かコイツ!?」

突然苦しみだしたホットアイに対し、驚きと戸惑いを隠せないジュラとアルカ。

「金ェーーーーーーーーーーーー!」

そしてホットアイが天を見上げ叫びをあげた、次の瞬間――――――――



「・・・などいりませんデス♪」



ホットアイの表情が、とてつもなくニコやかになった。
苦しみからの満面の笑み・・・突然の豹変に2人は呆然とするしかない。

「私・・・生き別れた弟の為に必死デシタ・・・お金があれば見つけ出せると思ってましたデス。しかし・・・それは過ちだと気がついてしまったデスネ」
「え・・・?」
「は・・・?」
「さあ・・・争う事はもう止めにするデスヨ」

先ほどまでの敵対意識はどこへやら。

「世の中は愛に満ちています!おお!愛!なんと甘美で慈悲に溢れる言葉でしょう。この世に愛がある限り、不可能はないのデス!」

金ではなく愛に感激し、クルクル回りながら叫ぶホットアイ。
遂には感激し、ダバダバと号泣し始める。

「さあ・・・共に私のかつての仲間の暴挙を止めましょう!彼等に愛の素晴らしさを教えるのデス!」

そう言ってホットアイはジュラとアルカをがしっと抱きしめる。
でも、やはり―――――――

「えー・・・と・・・」
「何があったんだコイツ・・・」

2人は困惑するしかないのだった。











「ぐっ!」

ドサッと、イヴは倒れ込んだ。
それを見下ろすように立つのは―――――

「狩りの始まりだ」

六魔将軍(オラシオンセイス)の1人・・・ミッドナイト。

「な・・・何だコイツは・・・魔法が当たらない・・・」
「へぇ、まだ生きてたんだー」
「ひっ」

イヴの表情が恐怖に染まる。

「うわあああああっ!」
「ボクは優しくないんだ」












「そのニルヴァーナが完全に起動したら、あたし達みんな悪人になっちゃうの?」
「でもさ・・・それって逆に言うと闇ギルドの奴等はいい人になっちゃうって事でしょ?」

ルーシィとハッピーの言葉に、視線を落としたままヒビキとアランは口を開く。

「そういう事も可能だと思う」
「ただ・・・ニルヴァーナの恐ろしい所は、それを意図的にコントロール出来る点なんです」
「そんな!」
「意図的にって・・・そんな事したら!」

ココロが目を見開く。
アランはゆっくりと瞬きをし、口を開いた。

「例えば、ギルドに対してニルヴァーナが使われた場合」

その頬を、一筋の汗が流れる。

「仲間同士での躊躇なき殺し合い・・・他ギルドとの理由なき戦争。そんな事がいとも簡単に起こせるんです」

もし、もしも六魔将軍(オラシオンセイス)がニルヴァーナを手に入れ、それを正規ギルドに向かって使用したら・・・。
全員が目を見開いて驚愕し、青ざめる。
ヒビキは言い放った。



「一刻も早く止めなければ、光のギルドは全滅するんだ」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
過去編の・・・具体的な話がイマイチ思いつかない。
序盤だけ、とかなら思いついたんですけど、戦闘場面とかどの辺りでティアの過去について話をしようかな、とか・・・。
あー、オリジナルって大変ですね。

感想・批評、お待ちしてます。 
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