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ワンピース~ただ側で~

作者:をもち
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番外6話『航路にて』


 巨人島リトルガーデンを出た一行は静かな波を進んでいた。

「みんな俺はな! いつか絶対にエルバフへ! 戦士の村へ行くぞ!」
「よし、ウソップ! 必ず行こう! いつか巨人たちの故郷へ!」

 すっかり巨人に魅せられたルフィとウソップが肩を組んで「えーるばふばふー」とわけのわからない歌を陽気に口ずさみ、その傍らでビビとナミへとサンジがおやつを差し出す。もちろんその一見して美味しそうなおやつをルフィとウソップが見逃すはずもなく「んまほー」と涎を垂らしてはサンジに「おめぇらの分はキッチンだ」という言葉を投げられてキッチンへと走り行く。

 ゾロは一人で自作したらしい筋力トレーニンググッズで素振り。

「2603……2604……あのロウさけ斬れてりゃ誰を手間取らせることもなかった……甘ぇ」

 激しく息を乱し、一心不乱に素振りを続けるその姿からはリトルガーデンにあった自分の情けない姿に対する憤慨が見られる。
 いつも通りといえばいつも通りともとれる麦わら一味のメリー号。だが、一人だけ船上に見当たらない姿があった。

 ハントだ。
 彼の姿は船上にはなく、船室に。

 一人船室にこもり、目を閉じて正座を組んでいるその姿で瞑想でもしているのか、ただ静かにそこに佇んでいるだけで動き出す気配すらない。ハントは空手家なのだからそういう瞑想という精神修行もある、と言われればなんとなく納得できなくはない気もするが、その割には目を閉じている彼の表情がどこか鬼気迫るものがあり、現在筋力トレーニング中のゾロに通じるなにかが感じられる。

「……ふ~」

 一つ大きな息を吐き出して、彼はリトルガーデンでのことを思い出していた。

 ――俺は弱い……心が弱すぎる。

 歯を食いしばる音が狭い一室に響く。
 苛立ち、悔しさ、情けなさや怒り。ハントが他の誰にでもなくただ自身に対して抱いている感情が船室に滲む。

 まず思い出されるのは巨人を倒した瞬間のこと。
 どうにか巨人の二人を倒したハントがまず思ったのは安堵の気持ち。いわゆる、ホッと一息をつき、油断した。その瞬間をMr.3に狙われて囚われてしまった。
 もちろんブロギーに何度も何度も踏みつぶされたおかげで、大きなダメージを抱えてしまっており、瞬間的に素早く動くことができなかったせいもあるが、そもそも油断しなければ囚われることはなかった。

 まず、これがハントが自身に苛立ちを覚えている理由。
 そして。

 ――ゾロのあれ。

 例えば自分の足が固定されているから、といって自分の足を両断してまでも自由を得て、そして敵を倒そうなどという考えが思いつくだろうか。

 普通は否だ。
 それを、ゾロは実行しようとした。
 少なくともハントには思い浮かびすらしなかった。
 ルフィがまだ捕まっていないのだから、とその時点で他人に任せようとしていた。

 しかも、ナミも一緒に捕まっていたのに。
 自分の力で状況を打破するわけでもなく、ただ他人が来てくれるのを待っていた。
 そんな自分が、ハントは許せなかった。 

 ――ブロギーやビビのあれ。

 ゾロがそれを実行しようと言ったときに、二人はその案に乗って頷いた。そして彼らのその表情には曇りも迷いも、そして恐れすらなかった。
 例えば自分の足を両断してでも戦うというその発想を持ち掛けられたとして、心の底から同意するということができるだろうか。

 これも、普通は否だ。
 だが、少なくともゾロもビビも、ブロギーも本気だった。
 ゾロに「お前もやらねぇか?」と声をかけられたときには頷いたハントだったが、その実内心では足なしで戦えるだろうかという不安にまみれていた。
 そんな自分が、ハントは許せなかった。

 ――普通じゃだめだ。体だけじゃだめだ。師匠だってエースだって白ヒゲさんだって……俺と同じ場面ならすぐにゾロと同じように考えるはず。その強さが俺にはない。

 膝に置いてあった手に力を込めて、そしてハントは目を開けて呟く。

「強く……何があってもナミを守れるように、麦わら一味でいられるように、師匠を越えられるように……強く!」

 立ち上がった彼が自分を鼓舞するかのように決意を固めたとき「みんな来て! 大変!」
「……?」

 突如甲板から響いたビビの声に、ハントが「ルフィが海に落ちたか?」という呑気なことを思ったときだった。

「ナミさんが! ひどい熱をっ!」

 ビビの声が、より強い音をもってハントの中に響いた。




 夜の海。
 いつもなら一昼夜、風を受けて進んでいるこのメリー号も今日の夜はそういうわけにもいかずに、停泊中。 
 理由はもちろんナミが倒れてしまったから。
 航海士なしの夜のグランドラインの航海は流石に危険すぎる。

「異常なし、と」

 念のため周囲を見てみるけど、俺の言葉通り現状のグランドラインには何の問題も見られない。いつもなら無言で状況確認してるのに今日に限ってわざわざ声に出すのは、なんというか自分でも声を出さないと見張り番という役目を全うできそうにないから。

 今ごろビビがナミの看病にいそしんでいることだろう。他のみんなもきっとナミのことを心配しながら自分たちの部屋で寝ていると思う。本当なら俺も一緒に看病しながらずっとナミの側にいたいけど、残念なことに俺ができることなんてゼロだ。サンジのように看護食を作ってやれるわけでもないし、ビビのように上手に看病できるわけでもない。

 今日でもうナミが倒れて数日が経過している。
 この数日間、ずっとナミが安静にしているというのに容体は思わしくない。ただでさえ体温が40度を超えたりと悪化している状況なのに、不慣れというか看病経験0の俺が行ってもたぶんナミの容体を悪化させるだけだろう。
 ナミのことは好きだけど、こういう時はきっとナミも俺よりナミにとっての『先約』たる人間にいてもらいたいだろうし。

 実はこの数日で船を食べようとするワポルというわけのわからない海賊が襲ってくるという事件があったわけだけど、まぁ話にもならないおっさんでルフィたちがあっさりと撃退した……いや、まぁ正直そんなことはどうでもよくて。とにかく、俺にできることは周囲に異常が発生しないかの確認をすること、ただそれだけ。

 だから、行かない。
 行かないようにしている。
 たまに顔をだして、ナミが辛そうにしている姿に無力感を味あわされるという数日を送っている。

 子供のころはナミと二人で海を冒険しようと思っていたんだから俺も最低限の医学をかじっているべきだったかもしれない。ただナミを守れるくらいに強くなることばっかり考えて、本当に情けない。

「……っ」

 我ながら情けなさ過ぎて自分に舌打ちしてしまう。
 なんとなく首をめぐらせて、丁度後ろに目を向けて――

「……」
「……」

 ――目があった。

 なぜか、サンジがそこにいた。

「よぉ」
「お、おう」

 いきなり現れてきた人物に声をかけられたせいで、少しだけ慌ててしまう。サンジがこんな夜の時間にも起きているというのはなんとなくわかる。たぶんビビのナミへの介護に付き合ってたんだろう。

 けど、それでわざわざ俺のところの来る意味がわからない。思考が追い付かず首をかしげていると、サンジが俺を押しのけるようにして見張り台に座ってきた。状況としてはルフィと背中合わせで見張りをしていた時と同じような状況だけど、はっきりいってサンジが好き好んで男と背中合わせをするとは思えない。

 いや、もちろん俺もルフィも男と好き好んで背中を合わせたりすわけじゃないけど、サンジだと特にそういうのを嫌がりそうなものだから違和感がある。

「何か用か、サンジ」
「用がなきゃおめぇのとこに来るかよ」

 ま、そりゃそうだと妙に納得してしまうのは俺もサンジのことを少しづつだけどわかってきたということなのか。
 煙草をふかしながら、なぜか不機嫌そうに言うサンジが、そのまま言葉をつづける。

「交代だ」
「……え?」

 サンジの言葉の意味がよくわからなかったため聞き返すと「――交代だ!」と、キレてんの? と言いたくなるぐらいのテンションで言い返されてしまった。サンジの機嫌の悪さも理解できないけどいきなり「交代だ」といわれる意味もわからない。

 サンジはたまに俺に代わって夜の見張り番をしてくれることもあるけど、そういうのは大体夕食の時に言ってくれている。このタイミングでいきなり言うからには何かあるのだろうか?

「なんで交代?」

 聞いてしまうのはまぁ、仕方ないだろう。

「……んだよ」
「……え?」

 いや、聞こえないから。
 反射的に耳を近づけるとサンジがいきなり立ち上がって俺の耳元に口を近づけてきた。
 あ、やばい?
 そう思ったけどもう遅い。

「ナミさんが熱にうなされながらたまにおめぇの名前を呼ぶっつってんだよ!」

 耳元で全力で怒鳴られた。
 うるさい、とか耳が痛い、とか。

「さっさとナミさんとこ行って来い! このクソ甚平野郎が!」

 甚平バカにすんな、とか。
 そんなことをいろいろと思ったけど、それよりもサンジに言われた言葉が衝撃的すぎて俺の思考回路が止まった。

「ナミが……俺の名前を?」
「わざわざ口に出して繰り返すんじゃねぇ」

 サンジはサンジでやっぱりで怒ってるし。
 うれしいやらなんやらでちょっと自分でも気持ちの整理がつかないままに、それでも無意識に体が動く。見張り台から降りる時に見えるサンジになんだかお礼を言いたくなったけど、そうするとまた怒鳴られそうだからやめておく。

「おい」
「……ん?」
「てめぇ、俺と最初に会った時のこと覚えてるか?」
「?」

 覚えてるけど。
 ルフィはいきなり海賊王になるって言うし、サンジの飯は信じられないくらいに美味しかった。忘れられるはずがない。
 それがどうかしたのだろうか。

「俺がてめぇとナミさんの関係を聞いたとき『兄妹のような関係』って言ったよな」
「えっと……まぁ、そうだな」

 そんなところまで覚えてるのか。
 我ながら言っていてみじめだった言葉だから俺も覚えてるけど、今言われるまで忘れてたような言葉だぞ?
 ……すごいな、サンジ。

「てめぇは兄妹だなんて……思ってねぇんじゃねぇか?」
「っ!?」

 梯子を降りようとしていた足が、あまりにも的を射すぎてる言葉に、止まった。
 あ、あれ……ゾロにもだったけどサンジにもばれてる?
 俺ってそんなにわかりやすいのか?

「……」

 なんて答えたらいいのかわからなくてつい黙り込んでしまう。
 そんな俺に、サンジがわざとらしく舌打ちをして言う。

「はやく行きやがれ」
「お……おう」

 そ、そうだよな。
 だってナミのとこに行かないといけないもんな。

「……ナミさん泣かせたらオロすからな、クソ甚平が」

 頭上から聞こえてきた小さい言葉に、なんとなくだけどサンジの優しさを感じた気がした。

「……」

 ――いや、別にそういう関係じゃないけど。

 反射的に口に出しそうだったけど、わざわざ言うのもやっぱり嫌なので心の中で留めておくことにした。




 そっと足音を忍ばせて、ナミの船室に入る階段扉の前に立つ。

「……」

 声は聞こえない。
 夜だし、もう寝ているんだろう。

 ……いや、断じて盗み聞きとかそういう趣向なのではなくて。そりゃ音だけ聞こえてくるとかいうシチュエーチョンは興奮するけど……いやいやいや断じてそういうわけではなく、単純に今は夜中だからノックとかして起こしたら申し訳ないという気持ちがあって起きてるかどうかを確認するためにであって、ほらもしかしたら寝汗書いて着替えの最中だったりとかしていきなり扉を開けてしまってラッキー的な、普通は気付くから、絶対わざとだろそれ、的な突っ込みが聞こえてきそうな状況にならないために必要な行為であって――

「――なんで俺必死に言い訳考えてんだ」

 ナミが大変な時なのにバカな考えが浮かぶ自分に心底ウンザリしつつもナミやビビを起こさないように静かに階段扉を開ける。夜中だし、音もしないから多分ナミは寝てると思う。だからノックはしない。

「……」

 開けた扉の中、階段を下りた先にあった光景は自分の予想よりと少し違っていて、驚いた。
 死屍累々といびきをかいている死体の山。

 ルフィも、ウソップもカル―もゾロも、もちろんビビも。みんながこの部屋で雑魚寝している。いくらナミの部屋がメリー号の中で最も大きな部屋とはいえ、こんなにたくさんの人数が寝れるような部屋ではない。

 ビビはナミのベッドに突っ伏して寝ているし、カルーとゾロも折り重なっている。ウソップは机にもたれかかったままだし、ルフィも足を机に放りだしているような状況だ。寝て起きたら体の節々が痛くなっているだろうし、そもそもこんな窮屈な姿勢で寝ても十分な睡眠感は得られない。

 それでもこうしてナミの部屋に集まっている姿を見れば、どれだけみんながナミを心配しているのかがこれだけでもわかる。

「……はは」

 嬉しくなって自然と洩れてしまった自分の笑い声に慌てて口をつぐみ、みんなの隙間を縫うようにしてナミのベッドへと近づく。さすがに野郎どもと違ってビビやナミの寝息は品がある。そもそも寝息に品とかあるのか、と聞かれたらこっちも首をかしげたくなるけど、でもまぁそう感じたんだから仕方ない。

「……寝言は……さすがに言ってないか」

 サンジも『たまに』と言っていたから、当然といえば当然だ。
 無意識化で『先約なる人物』の名前ではなく、俺の名前を呼んでくれる、というのは実に嬉しい。それだけ深くつながっている家族と思われてるんだろう。

 ……考え込むと泣きたくなるからやめておこう。
 首を振ってナミを見つめる。

「しっかし……辛そうだな」

 ただ寝ているだけだというのにナミの呼吸は乱れ、顔も真っ赤。話を聞く限り熱も40度を超えているという。

「……」

 なんとなく目についたナミの額にのってあるタオルを外して、側においてあって水たらいにつけて、軽く絞ってまたナミの額におく。
 俺にできることはこれぐらいで、ただそれだけ。
 何かを意識するわけでもなく、布団からずれそうになっていたナミの手を握り、そっと俺の額に。

「……大丈夫だからな」

 握りしめて、でもこういうのもあまりよくない気がして布団の中へとナミの手を潜らせ、自分の手だけをそこから引き抜く。
 ここに来たはいいけど、はっきり言って今の自分には出来ることがない。名残惜しい気もするけど、そろそろサンジのところに戻ろう。そう思って立ち上が――

「――もういいの、ハントさん?」
「っお!?」

 驚きすぎて変な声が出た。
 振り返るとビビが体を起こしていた。

「……いつから起きてたんだ?」
「ハントさんがナミさんの手を握ったところくらいから」

 ――ちょうど恥ずかしい場面からかよ!

 大声を出すわけにもいかないので内心で叫ぶだけにしておく。今室内に明かりがないから表情はばれても顔色まではばれないからまだいいけど、普段なら絶対顔が赤いとかでからかわれてる。

「ハントさん今顔赤いでしょ」

 エスパーですか?

「……そ、そんなことねぇし」
「ふふ」

 なんか笑われた。

「サンジさんに言われて?」
「そうなんだけど……本当にナミが俺の名前を?」

 サンジに言われたときは舞い上がってて違和感なかったけど、うわごととはいえナミが誰かの名前を呼ぶなんてあるんだろうか。いや、ないこともないんだろうけど家族として俺の名前を呼ぶなら普通はベルメールさんとかノジコの名前を呼ぶんじゃないだろうか?

「……んー」

 で、なぜそこで首をひねる?
 あれか! 本当はサンジの嘘だったとかいうドッキリか!
 ……いや、でもだとしたらわざわざサンジが嘘をついてまで俺と見張りを交代してくれた意味がわからない。

「……」

 あ、なんかものすごく気になってきた。

 ずっとナミにつきっきりなんだからむしろサンジより詳しいね? 絶対何か知ってるよね! 明らかに今小悪魔的な笑顔浮かべたよね!? もうとりあえず本当のことを教えてくれたらいいから、とにかく教えてくれない!?

 普段なら全力で言えるんだけど、もちろんこれも吐き出してしまえば大声になって出してしまいそうなので内心で我慢。

「ハントさん」
「ん?」
「大丈夫?」
「いや、俺は医者じゃないからなんともいえないけど……どう見ても大丈夫じゃないんじゃないか?」

 なにせナミときたら熱もあるし、辛そうだし――

「――そうじゃなくて、ハントさんが」
「……俺?」

 別に風邪を引いてるわけでもないし、熱があるわけでもない。
 意味がわからない。

「だってハントさん……ナミさんが倒れてから寝てないでしょ」
「ぇ」

 息が止まるかと思った。

 ――なぜばれた。

 ビビの言う通り、確かに一睡もしていない。
 正確にはたまにウトウトして眠りそうになるけど、そうなった瞬間にナミが苦しんでいるのにという言葉が浮かんで目が覚めて寝れない。

 そういう考えがもしかしたらなんとなく雰囲気に出してしまっていたのか「見てたらわかるわよ」とまたビビに軽く笑われてしまった。まぁ、船のみんなとはずっと船上生活をともにしているわけだし、ばれないわけがない、といえばその通りだ。

「ナミが苦しんでるのに……寝れるわけないだろ?」

 観念して言ったはいいけど、これちょっとぶっちゃけすぎたかな?
 もう少し包み隠していったほうが俺のナミに対する気持ちがばれるような気が―― 

「――ハントさんに聞いてみたいと思ってたんだけど、いい?」
「ん? いいけど」
「いつからナミさんのこと好きなの?」
「!!!!?」

 はい!?
 あれ!?
 ばれてる!?
 ちょっと待て! いやいやいやいやちょっと待て!
 とりあえずナミが目を覚ましていたらシャレにならないと思ってナミを見るけど、流石に小声の会話だからか、ナミの目が覚める気配はない。
 よ、よかった。心底そう思った。

「お、俺がナミのことを好きだっていうのを前提に話すのっておかしくないか?」

 べ、別にどもってないぞ。

「……えっと……普段の態度見てたらわかると思うんだけど」
「ふ、ふふ普段の態度って?」

 まるで俺があからさまな態度に出してるみたいじゃないか。

「食事の時はやたらナミさんの隣で食べたがるとか、サンジさんがナミさんにおべっか言うときには不機嫌そうになったりだとか、いつもナミさんの方を見てたりだとか、ナミさんが――」
「――ごめんなさい。認めますんでもうやめてください」

 結構態度に出てたらしい。
 ウィスキーピークでゾロに言われてナミを好きでいようって決めたものの俺的にはそれをあからさまな態度に出しているつもりはなかったんだけど……うん、出てたらしい。死ぬほど恥ずかしいな、なんか。

「……で、いつから?」

 ビビが今日一番の笑顔で言う。
 やっぱり女子が恋話を好き、っていう噂は本当だったのか。ビビのこんなにわくわくしてる表情は見たのは初めてだ、付き合い短いけど。恥ずかしいから答えたくはない……けどビビが言い出すまで話を変えるつもりはない、とでも言いたげな態度でじっと俺を見てくる。
 回避できそうにない。

「……いつからっていうか……気づけばって感じかな。子供のころからずっと一緒にいて航海士としての勉強を頑張るナミを、いつの間にか目で追うようになってた」
「へ~」

 とりあえず王女なのにそういう笑顔はよくないと思うぞ? そう言おうと思って口を開き――

「――ハントはナミのことが好きだったんだな」
「ま、人それぞれってもんがあんだろ」
「いやしかしナミってのは……ハントが尻に敷かれてる未来しか浮かばねぇな」
「クエー」

 順にルフィ、ゾロ、ウソップ、最後はもちろんカル―。
 全員起きてたのかよ!

「……お、お前ら……い……いつから」
「ビビと話してる時」

 結構前じゃねぇか!
 声かけろよ!

「……なんかものすごい恥ずかしいんだけど」
「……ま、ルフィとナミ以外全員知ってたんだ、気にすんな」

 ゾロの言葉だけど……それ全然慰めになってないから。むしろちょっと聞きたくなかったんだけど。
 ……あれ、じゃあサンジも気づいてるのか? 
 ……ん? じゃあなんでサンジはわざわざ俺と交代してくれたんだ?

 ナミ優先で物事を考えるだろうサンジが俺に気を使ってくれた? なんか違和感あるなぁ。
 もっと頭がよかったわかるんだろうな、きっとこういう人の感情とかも。

「ナミが好きっておめぇ勇気あんなー」

 わざわざ言わなくていいからね、ルフィ。
 まぁ、もうここまで来たら否定するだけ無駄というのはさすがに俺でもわかる。

「……そういうわけなんだけどさ……最初、俺がルフィと一緒に行くって決めたのはただナミといたいからっていう理由なんだよな。もちろん今はそれだけじゃないけど……でも、なんかごめんな」
 俺を気に入ってくれて誘ってくれたルフィに、なんとなく申し訳なくて頭を下げる。けれどやっぱりルフィは俺が思う以上に大きい男で。

「なに言ってんだ、おめぇがいてくれて俺らだって助かってんだ。それに、今はそれだけじゃないってことはちゃんと俺たちのことも仲間って思ってくれてんだろ?
「……それは……うん、もちろん」
「じゃあそんなことでいちいち謝んな」

 ――飯もお前ぇのおかげでいっぱい食えるしな。

 そう言って「シシシ」といつも通りに笑うルフィがいて。

「……そうだな」

 改めてこの一味に入れてよかった。
 心の底からそう思えた。

 ……そういえばナミが俺の名前を呼ぶことはその日は結局なかった。
 本当にナミが俺の名前を呼んだんだろうか? 
 しかも、それだけはなんでか誰も教えてくれなかったし。
 ……気になる。




 こうしてハントは麦わら一味へとさらに深くつながっていくわけだが、それはさておき。

「島があったぞー!」

 サンジの声が響いた。
 彼らは到着した。
 ドラム島へと。

 
 

 
後書き
ナミの部屋で『階段扉』という表現を出しました。

なぜかというと、船の構造的に。

メリー号の構造についての参照は単行本11巻です。
一応、単行本ないけどアニメとかで見て流れを知ってるから読んでくださっている方がいるかもしれないのでメリー号の内部について大雑把に書きます。


メリー号外部(ぱっと見て見えているところ)の説明はカットです、すいません。

①会議室&キッチン&操舵室
・ふつうに甲板(2F)扉から入れる

②倉庫&砲列甲板
・ふつうに甲板(1F)から入れる
・奥に行くとユニットバスに行ける
・女部屋へ降りるため階段あり(フタ&鍵つき) ※この階段のフタのことを作中では階段扉と表現しました

③女部屋
・もともとカヤのための部屋なので豪華
・なんとバーがある
・緊急時用に男部屋と横繋がり(もちろん普段は通れない、多分)

④男部屋
・むさくるしい
・入るときにはマストのそばにある昇降口から
・緊急時用に女部屋と横繋がり(もちろん普段は通れない、多分)

⑤その他
・描写の必要ないと思うのでカット
・描写の必要出てきたと思ったらまたその話のあとがきで①~④も含めて⑤以降を書きます


ぶっちゃけあとがきとはいえ②と③だけ書けばよかった気がする。

とりあえずこんな感じです。
わかりづらくて本当にごめんなさい。

 
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