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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos15日常の新たな友・非日常の討つべき敵~Wiedersehen~

 
前書き
Wiedersehen/ヴィーダーゼーエン/再会 

 
†††Sideはやて†††

「ルシル君たち、間違って蒐集してもうた人たちと会えたかなぁ」

ルシル君たちから聞かされた最悪な大失敗に、今日もまたわたしはお悩み中。昨日の朝早く、ルシル君は情報確認を怠って犯罪者やない人を襲って魔力を奪ったって話や。

◦―◦―◦回想や◦―◦―◦

「もうっ、どうすんだよ! あんなヘマやっちまって!」

「まったくだ、ルシリオン。今までの苦労が水の泡だ」

「ルシル。今後の我らの活動に関してもう一度再考するべきだろう」

リンカーコア回収から戻って来たらしいルシル君たち。“闇の書”だけを転移されたことで後から向かったシュリエルも一緒や。そやけど、なんや騒がしい。ってゆうか「ケンカ?」しとるん?

「聴いてくれよ、はやて! ルシルの奴、犯罪者じゃねぇ奴から蒐集しちまった!」

「・・・・えええええ!!」

気まずそうにわたしから目を逸らしてるルシル君に、「一体何があったん?」って訊いてみるとルシル君は話し始めてくれた。ルシル君が得ていた情報が古すぎて、その事件はもう終わってて、その犯人がすでに亡くなってて、その関係者の裁判は終わって無実になってた事を知らずに、その関係者――管理局に入った人を襲った。しかもそれだけやなくて「民間の人まで・・・?」話をするにつれて土下座の姿勢になったルシル君を見下ろす。

「申し訳ない」

「う~ん、わたしに謝られてもなぁ~」

「で、どうすんだよこの先。局員や民間人に手を出しちまった以上、今までのように出来ねぇぞ」

「ああ。これまで以上に管理局から干渉、捕縛行為を受けるだろう。どうする?」

管理局。次元世界の秩序を守る人たちのことや。全てが終わったらわたし達は自分の足で出頭する予定やったけど、完成する前に捕まったらわたし、どうなるんやろう。せっかくみんなに悪いことさせたのにそれが全部無駄になるんやとしたら、わたしはみんなに何も残せへんどころか罪だけを残して逝ってしまう。それだけは嫌や。

「ルシル君・・・」

「・・・これまで通りリンカーコアは蒐集する。やり方も同じだ。魔導犯罪者を徹底して狩り、管理局員から如何なる干渉を受けても戦闘せず、逃げろ。場合によっては必要な戦いもあるだろう。だが傷つけるな。俺が言えることじゃないが」

「まったくだよ!」

ヴィータの怒りは収まるところを知らず、やな。これはわたしの出番や。わたしは「ヴィータ。ルシル君の言う通りにしよ」ってヴィータの袖を引っ張る。

「はやて、でも・・・!」

「わたしらは元よりアカンことをやってる。確かに今回のルシル君はそれ以上にアカンことをやった。でも、もうわたしらは引き返せへん所にまで来た。そやから進むしかないんや。シグナム、シュリエル。2人にもお願いするわ」

「「主はやて・・・。その命、確かに承りました」

シグナムとシュリエルがわたしの前で片膝をついたから「んもう、そうゆうんはやめてって言うたやんかぁ」溜め息をついてしまう。そんな時にルシル君たちとは別行動やった2人、「ただいま帰りました~」ってシャマルと、「戻りました、主はやて」ザフィーラが帰って来た。

「あの・・・どうしました?」

土下座するルシル君、片膝ついて礼の姿勢なシグナムとシュリエルを見たシャマルが小首を傾げた。わたし達はさっきまでしてた話を2人にもする。当然2人は困惑したけど、わたしがこのまま蒐集をやり続けることをお願いしたら、

「はい、判りました。全力で生きる、それが私たち全員の決意ですもんね」

「我が拳と魔導が、主はやての未来への路を切り拓きましょう」

シャマルとザフィーラも受けてくれた。でもまずは「間違って蒐集してもうた人たちには謝らなアカンなぁ」

みんなのリーダーとしてその人たちに謝りたいからそう言うたんやけど「はやての口調は特徴的すぎるから、最悪、素の時にすぐに感づかれる可能性がある」ってルシル君にあっさり断られてしもうた。
一応わたしにも、楽園の主オーナー、ってゆうコードネームと、デフォルメされたタヌキの被り物も用意されてあるんやけど・・・。う~ん、そんなに特徴的かなぁ、関西弁。ルシル君ら異世界人には馴染みが無いかも知れへんからそう思われとるんかもな。

「俺が責任を持って謝罪するよ。ミスした張本人だしな」

「そうだな。お前が謝れ、頭を深々と垂れて」

「いや、ルシリオンだけにはさせん。私も謝ろう。お前が情報確認を怠ったのが原因だが、撃墜したのは私だ。それは私が責を負わなければならないものだ」

「・・・じゃああたしもだな。あの白い奴にはあたしが謝らねぇとな」

シグナムとヴィータが撃墜してもうた人たちのことを思い出したんか苦い表情を浮かべた。結局はパラディース・ヴェヒターの将で、失敗を犯した張本人のルシル君、そしてシグナムとヴィータが代表として謝りに行くってゆうことに。
でもどこに行けば会えるか判らへんから、あちらから接触してくれるのを待つってルシル君は言うてた。その間は現場であるこの世界からあまり離れず、近くの世界で蒐集をするとのことや。

◦―◦―◦回想終わりです◦―◦―◦

「どうしましたかはやてちゃん?」

「え、あー、ううん、なんでもないよシャマル」

わたしの乗る車椅子を押してくれてるシャマルに笑顔を返す。わたしとシャマルは今、風芽丘図書館に来てる。最近はルシル君の授業もなく与えられた課題を熟すだけの自習ばかり。それが終わると当然暇を持て余すことになる。
ルシル君と一緒に料理、ルシル君と一緒に食事、ルシル君と一緒に買い物、ルシル君と一緒にお出かけ、ルシル君と一緒に勉強。日にちが経つにつれてそれらが減ってく。家族が増えたんは純粋に嬉しい。それは確か。そやけど2人だけの時間が無くなって少し寂しいのも本音や。

「シャマル。わたしが場所取りしとるから、まずはシャマルから読みたい本を持って来て。シャマルが戻って来たらわたしも探しに行くで」

「あ、はい、それじゃあすぐに戻ってきますね♪」

シャマルは読みたい本を取りに行くんを見送る。シャマルのお気に入りはレシピ本、そんで恋愛小説。恋愛小説に感情移入しすぎて時々泣いたり怒ったり、いろいろと大変そうや。まぁわたしはそんな純粋なシャマルが好きや。
少し待っとると「お待たせしました~♪」シャマルが1冊の本を大事そうに胸に抱えて持ってきて「これ前から読みたかったんですぅ❤」わたしに表紙を見せてきた。やっぱり恋愛小説やった。

「じゃあわたしも見繕ってくるな」

「あの、本当について行かなくてもいいんですか?」

「大丈夫やよ。行ってくるな」

シャマルに見送られながら本を探しに行く。「どれにしようかな~」と目移りしとる中、「そや」と思いつく。最近は英語の本も読めるようなったし、一度挑戦してみようかな。そうとなればすぐに行動開始や。洋書コーナーに向かう。
辿り着いた洋書コーナーにはファンタジーものばかりが揃えられてた。ふと、ある1冊のタイトルに目が留まる。魔法使いたちの冒険、てゆうタイトル。フィクションやなくて実際に魔法使いなわたしにとって気になるタイトルや。
そやけど問題が。「んんーっ」その本が収められとる棚はちょお高い場所。車椅子なわたしには難関や。頑張って手を伸ばしとると、横から手が伸びて来てその本を取った。

「あの、これでいいですか?」

「あ、はい、ありがとうございます」

取られたんやなくて取ってくれた。その人――ううん、その子はわたしと同い年くらいの女の子やった。以前からここで何度か見かけた事のある子や。声を掛けてみよかなぁって何度か思うたことあったんやけど、なんかな、掛けられずにズルズルと過ごしてしまったわけで・・・。

「えっと、わたし、八神はやて、いいます」

これもええ機会やなって思うて自己紹介。あまりに突然すぎたかなって思うたけど、その子は「私は月村すずか。よろしくね、はやてちゃん」笑顔で名乗り返してくれた。すずかちゃん。わたしと同じように名前が平仮名。そやけどわたしのより可愛らしい響きや。

「そうだ、はやてちゃん。良かったら私の友達を紹介したいんだけど、いま時間良いかな?」

「えっ、ええの?」

「もちろんだよ!」

同い年くらいで女の子の友達っておらんからすっごく嬉しい。そやから「ぜひお願いします」この機会を逃したくないからお言葉に甘えることにした。まずはシャマルのとこに寄ろうと思うたけど、読書の邪魔するのも悪いし、『シャマル。ちょお友達が出来たから、その子とお話ししてくるな』思念通話で断りを入れておく。

『あ、はい、判りました。何かあればすぐに呼んでくださいね。すぐに飛んで行きますから』

『大丈夫やよ。同い年くらいの子やし、優しそうな子やもん』

『そうですか。判りました。では私はあの場所で読書を続けてますから、お帰りの際は呼んでください』

『了解や♪』

シャマルに報告して、わたしはすずかちゃんに車椅子を押してもらって友達が居るってゆう場所、図書館の奥にある個室の自習室エリアに向かう。

「ここだよ、はやてちゃん。みんな優しいから、すぐに仲良くなれるよ」

「う、うん」

「みんなお待たせー」

すずかちゃんが扉を開けて、わたしを先頭に(車椅子(わたし)を押してもらっとるから当たり前やけど)入り口を潜った。室内には5人の女の子が居った。みんなの視線がわたしに向けられた。困惑されるんかなって思うたけど、その子たちはパアッと顔を輝かせた。

「なによ、すずか。どこでそんな可愛い子を引っ掛けてきたのよ。やるじゃない」

「アリサちゃん、なんかおじさん臭い・・・」

「えへへ。紹介するね。八神はやてちゃん」

「は、はじめまして。八神はやて言います」

自己紹介すると、活発そうな雰囲気を纏ってる金髪の女の子がニッと笑みを浮かべた。栗色の髪の女の子に、アリサちゃん、って呼ばれた子や。

「あたしはアリサ・バニングスよ。よろしく、はやて」

「私、高町なのは。よろしくね、はやてちゃん」

「私はフェイト・テスタロッサ。そして・・・」

「アリシア・テスタロッサだよ♪」

栗色の髪の子がなのはちゃんで、アリサちゃんと同じ金髪やけど綺麗な紅い瞳の子がフェイトちゃん、そして妹のアリシアちゃん。あともう1人。綺麗な水色の髪にピンク色した瞳の女の子が居る。そやけどその子はジッとわたしを見たまま。わたしの顔に何か付いてるんかなって思うたからすずかちゃんに訊いてみようとした時、「えっ?」その子の両目から涙が溢れてきた。
いきなり泣いたその子にはビックリや。わたし何かしたんかな?ってちょう不安になる。でも他の子たちはそれほど驚いてへんみたいで、優しくその子の側に寄って、その子の手や肩に手を添えたり体を寄せたりした。ホンマに仲がええんやってことが判る。

「ご、ごめん。急に泣いたりして。驚いたよね。なのは達もありがとう。えっと、コホン。わたしはイリス・ド・シャルロッテ・フライハイト。みんなにはシャルって呼んでもらってるから、はやてもシャルって呼んでね」

おお、ルシル君みたいに長い名前や。シャルちゃんは涙を袖で拭ってニコッて可愛ええ笑顔をわたしに見せてくれた。

「アリサちゃん、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、そしてシャルちゃんやね」

すずかちゃんの言う通りみんなええ子やった。初めて会うわたしをなんの摩擦も無く受け入れてくれた。そしてお互いのことを良く知るためにみんなでお話しすることになった。車椅子に座っとるわたしも机を囲めるように移動してくれみんなに「おおきに、ありがとう」お礼を言って就く。わたしの右隣にすずかちゃん、左隣になのはちゃんが座る。

「ねえねえ、はやてちゃん。はやてちゃんって歳いくつ?」

「9歳や。半年前の6月で誕生日で」

「じゃあ、アリシアちゃん以外の私たちと同い年なんだね」

「そう言えばはやてはどこの学校に通ってんの? あたしとなのはとすずかは聖祥小学校なんだけど、はやてを見たことないし」

「あー、うん。海鳴市立風芽丘小学校や。でも、下半身麻痺を患ってからは休学中なんよ」

太腿を撫でながらアリサちゃんにそう答えると、「そう、なんだ」気まずそうに頷いたからわたしは「気にせんで」って笑顔を作る。最初の頃は確かに、なんで?とか思うたけど、今では良かったて思う。この麻痺はシグナム達と出逢うために必要やったことで、そしてルシル君と知り合うきっかけでもあったからな。

「ん? フェイトちゃんやシャルちゃん、アリシアちゃんは違う学校なん?」

「私とアリシアは来週から転入なんだ。シャルは違うんだけど・・・」

ふと気になったから訊いてみた。フェイトちゃんがシャルちゃんに遠慮がちな視線を向けながら答えてくれた。そしたら突然シャルちゃんが「何故、何故(ホワイ)何故(ヴァルム)!!」って叫んで机に突っ伏した。

「わたしだってなのは達と一緒に通いたい~~~ッ!」

シャルちゃんが愚図り始めた。どうゆうわけかシャルちゃんだけが通えへんようや。事情を聴いてみるとシャルちゃんは、フェイトちゃんら家族が海鳴市に引っ越して来たのについて来たって形らしくて、ここでの暮らしは一時的なものってゆうこと。そやから用事が終われば実家に帰らんとあかんゆうわけで学校には通えへん、と。

「シャルが立ち直るまで話を続けましょ」

「そ、そうだね。シャルちゃん、元気出してね」

「おーう。なのはの優しさが、わたしの荒んでく心に癒しの風を吹かせ、生き返らせていくよ」

「今日のシャルはどこか詩人っぽい」

「えっとぉ、あ、はやて、はやて。じゃあ学校の勉強とかどうしてるの?」

フェイトちゃんの妹、アリシアちゃんがわたしの隣に来て、しゃがみ込んでからそう訊いてきた。わたしの顔を見る上目遣いのアリシアちゃん。ヴィータとはまた違う可愛らしさがある子や。ギュってしたい、今すぐギュってしたい。

「(我慢、我慢やわたし)・・・家族にすごく頭のええ子が居ってな。その子に教わってるんよ」

アリシアちゃんにそう答えてすぐ「その子って男の子? それとも女の子?」フェイトちゃんがそう訊いてきたから、「男の子や。弟やよ♪」笑顔で返す。グレアムおじさんに、ルシル君を八神家の正式な家族にしてもらえるよう頼もうとしたけど、ルシル君に断わられたからなぁ。ホンマに形、役割みたいな感じな弟や。まぁ一緒に過ごせるだけでも十分嬉しいからええけど。

「へ~。でも学校に通ってないって、その子も何か病気とか?」

これはどう答えよう。ルシル君は異世界人なんで、って答え・・・られるわけがない。そやから「まぁ、そんなところや、あはは」曖昧に答えるしかないわ~。わたしの様子に小首を傾げてるけど「そうなんだぁ」深く追求せずにスルーしてくれた。

「はやてちゃんってどこに住んでるの? 私とフェイトちゃんの家は藤見町なんだけど」

「じゃあご近所さんや。わたしの家は中岡町やから」

藤見町と中岡町はお隣さんやから、もしかしたらどこかでなのはちゃんと会うてたかも知れへんなぁ。

「じゃ、じゃあ今度翠屋ってお店に一緒に行かない?」

「翠屋・・・あ、知っとるよ。わたしの誕生日の時にもバースデーケーキを作ってもろたし、スイーツを食べたくなった時は翠屋に買いに行っとるんよ」

ルシル君だけやなくてヴィータやシャマル、甘いものが若干苦手なシグナムにも好評や。そうゆうわたしも翠屋のバースデーケーキを食べてからというもの大ファンや。

「え、ホント? 嬉しいなぁ♪」

なのはちゃんがホンマに嬉しそうに満面の笑顔を浮かべた。どうしてそこまで喜んでるのかが判らへんから「どないしたん?」って小首を傾げたら、「翠屋は、なのはちゃんのお父さんとお母さんが経営してるお店なんだよ」ってすずかちゃんに教えられた。

「うんっ♪ はやてちゃんってもしかしてお店に来てくれたことあったりする?」

「あー、ごめんな、なのはちゃん。基本的にさっき話した弟くんが買いに行くんよ。それに大体買いに行くんは平日の昼間とかやから、たぶん会うてないと思うわ」

「そうなんだぁ、残念。あ、はやてちゃん。もしよかったらその弟くんやご家族の人たちと一緒に遊びに来て。翠屋ってスイーツだけじゃなくて洋食も出す喫茶店だから」

「その時はお願いな、なのはちゃん」

なのはちゃんとの約束の証である指切りをし終えた時、「そういやその弟の名前ってなんて言うの?」アリサちゃんに訊かれたから、「ルシリオン君。わたしは、ルシル君、って呼んでるんよ」って答えたその瞬間。

「ルシリオン、ルシル・・・」

シャルちゃんがわたしと顔を合わせた時みたくボーっとしだして・・・そやけど今度は泣かんくって、その代り「はやて。その子の写真とか無い?」って訊かれた。なんでかな、ここでシャルちゃんにルシル君の写真を見せたら、ひどくヤなことになるかも知れへんって思えて「ごめん。写真とかは家やわ」って嘘を吐いてしもうた。ホンマは携帯電話の待ち受けやフォルダにいっぱい入っとる。

「う~。そっかぁ」

シャルちゃんはホンマに残念がったけど、「ま、いつか会えるんだからいいか」って期待に胸を膨らせて、引いてくれた。そうやな。どの道会うんなら、もう今のうちに見せた方がええかもしれへん。そやけど持ってへんって嘘吐いたし、今さらどう言えばええんやろ。

「あ、そうだ。はやてちゃん、携帯電話持ってる?」

そう悩んどると、すずかちゃんが携帯電話をポケットから取り出した。わたしは「持ってるよ」と返してスカートのポケットから携帯電話を取り出す。うん、ルシル君とは直接会ってもらおうっと。

「電話番号とメールアドレス交換♪」

「あ、私も!」

「あたしも!」

なのはちゃんとアリサちゃんも携帯電話を取り出して、赤外線通信ですずかちゃん達と交換する。アドレス帳に新しく加わった、同い年で、しかも女の子の友達の電話番号とメールアドレス。

「そう言えばフェイトちゃんやアリシアちゃん、シャルちゃんは携帯電話持ってへんの?」

「あー、うん。この世界(ここ)へ来たのって昨日だから・・・ごめん」

「あ、でもリンディ提督が買ってくれるって約束してくれたから、買った時に交換しようね♪」

フェイトちゃんは残念そうに、アリシアちゃんは買ってもらった後で交換しようって言ってくれたんやけど、その前に「提督?」ってなんやろ。確か海軍とかで艦隊を率いる一番偉い人のことやなかったっけ。

「わぁわぁわぁ!」

「えっと、えっと、提督っていうのはね、あれなんだよ!」

「そ、そう! フェイトとアリシアの保護者のリンディさんって外国の軍人で、軍艦の艦長を務めてるのよ! 艦長より提督の方が格好いいって事で、そう呼ぶのよね!」

「うんうん!」

フェイトちゃんがアリシアちゃんの口を防いで、なのはちゃんが慌てて言い繕おうとして、アリサちゃんが教えてくれて、すずかちゃんが最後に何度も頷いて締めた。勘やけど、たぶんこれは事実や。そやけど何かを隠そうとしてるって感じやな。
気にはなるけど、ルシル君に倣ってこちらからは訊かへん。話してくれるのを待つだけや。そやから「すごい家族を持ってるんやな、フェイトちゃんとアリシアちゃんは」って素直に尊敬する言葉を告げた。無事に誤魔化せた、って風に乾いた笑顔を浮かべるすずかちゃん達。そんな中・・・

「いいなぁ、フェイトとアリシア。わたしには誰も買ってくれない・・・」

「「シャルちゃん・・・」」「「「シャル・・・」」」

またどよーんとした重い空気を背負い始めたシャルちゃんが「わたしだけいっつも仲間外れ~! わたしは寂しいと死んじゃうんだよ~!」ウサギ(迷信やけど)みたいなことを言いだしてしもうた。みんなでシャルちゃんを慰めて数分。最終的に「自腹で買うからその時は交換してね♪」シャルちゃんは自分のお金で買うことにしたみたい。お金持ちさんなんやろか。
それからわたしは、みんながどんなふうに出会ったかとか、そんな思い出話を聴かせてもらった。おかしなことにみんなの出会いはまずはケンカが発端やった。昨日の敵は今日の友って感じや。現実でそんな風に仲良くなれることが出来るなんて驚きや。

「あ、そろそろ夕飯の食材を買いに行かんとアカンわ」

話題は尽きることなくいつまででも話せそうやったけど、携帯電話から午後3時を知らせるメロディが流れて来た。話に夢中になり過ぎて時間を忘れてた。

「あ、そうなんだ。それじゃあいい頃だし、あたし達も帰るとしますか」

「そうだね。フェイトの要望も終わったし♪」

すずかちゃん達は、引っ越して来たばかりのフェイトちゃんとアリシアちゃんとシャルちゃんの為に、すずかちゃん達が普段赴いとる場所にフェイトちゃん達を案内しとるってことや。そんでフェイトちゃんは読書好きで、それはすずかちゃんの影響らしい。さっきまでの話題でわたしも読書好きってことで花を咲かせてた。

「ねえねえ、はやて。わたしが車椅子押してもいい?」

「ん、ええよ。お願いなアリシアちゃん。『シャマル。今から出口に向かうで、そこで合流しよか』」

『あ、はい。判りました。待ってますね』

シャマルに連絡しておく。アリサちゃんはそしてアリシアちゃんに車椅子を押してもらって自習室を出て、図書室のエントランスへ向かう。

†††Sideはやて⇒イリス†††

この海鳴市で新しく出来た友達、八神はやて。初めて会ったはずのこの子にもなのは達と同様に懐かしさを憶えて泣いちゃった。そしてもう1つ。ルシリオン。はやての弟だっていう男の子。その名前を聴いた瞬間、懐かしさとは別の感情がわたしの中に生まれた気がする。そう、恋慕。名前だけしか聞いてないのにわたし、ときめいちゃってる。会いたい、話したい、頭の中でぐるぐると駆け回る想い。

(どうしたんだろ、わたし。こんな気持ちになったの初めてだよぉ・・・)

戸惑いもあるけど、でもこれが正しいって思えてるわたしもいるわけで。このドキドキを心地よく感じてる。早く会いたい、その思いが強くなる。そんな見も知らずなわたしの想い人、ルシリオンの家族であるはやてが帰るってことで、それならって事でわたし達も図書館を後にすることになって、今はみんなでエントランスに向かってる途中。

「すずかちゃん、なのはちゃん、アリサちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、シャルちゃん。今日はホンマにおおきに。みんなと出逢えて、友達になれて・・・わたし、嬉しかった♪」

はやてが満面の笑顔でそんな嬉しいことを言ってくれた。その笑顔には魔力があるのかも。なのはとは別の安心感を得られる笑顔で、こっちも笑顔になっちゃう。

「私も友達になれてよかったよ、はやてちゃん」

「またメールするから、はやてちゃんも遠慮しないでメールでも電話してね」

「また遊びましょ、はやて」

「忘れないでね、はやて。携帯電話買ったらぁ・・・」

「番号とアドレス交換な。忘れへんよアリシアちゃん」

「はやて。また面白い本お話をしよう」

最後にわたしが締めを言おうとした時、「はやてちゃーん!」って、はやての名前を呼ぶ女の人がエントランスの扉付近に佇んでいて、わたし達――というよりははやてに向かって手を振っていた。その女の人を視界に捉えたと同時。またも来た、懐かしさで泣きたくなる感じ。

「シャマル。みんなが新しく出来たわたしの友達や♪」

「初めまして、みなさん。八神シャマルです。今後ともはやてちゃんと仲良くしてあげてくださいね♪」

はやてが「それじゃあ、右から――」シャマルにわたし達の事を紹介していって、なのはを紹介すると「高町なのはです」ってなのはも名乗る。そして最後にはやてが「――そんで、シャルちゃんや」ってわたしを紹介。

「イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトです。よろしく、シャマル」

「っ・・・! よろしくお願いね、えっと・・・イリスちゃん」

「??・・・あ、シャルでいいですよ」

「じゃ、じゃあシャルちゃん」

なんかシャマルの様子が変? 気の所為かもしれないけど、わたしの名前に動揺した? でもこの世界の住人みたいだし、わたしや親族に会うことはないはずなんだけど。

「みんな。今日はホンマにありがとうな♪ バイバイ」

小さなモヤモヤ感ははやての別れの挨拶で薄れていった。アリシアからシャマルに渡る車椅子のグリップ。シャマルはわたし達に「さようなら」お辞儀して、はやてと一緒に図書館を後にした。

「良い出会いだったね~」

「ね~」

「にしてもまた泣いたわね、あんた」

「う~、それは・・・制御できない感情だししょうがないでしょ」

アリサがわたしに振り向いてそんなこと言ってきたからそう返す。わたしのこの妙な感情の出現は、幼馴染のカローラ姉妹の姉フィレスによれば、

――それってもしかして前世の記憶とかじゃない? 本などで読んだことあるけど、前世の記憶を持ってる人は時折前世に関係する人や物、場所に会ったり見たり、赴いたりした時にフラッシュバックするって話。もしかするとイリスは前世の記憶を受け継いでいるかもよ?――

とのこと。もちろんこの話はすでになのは達にしてある。わたしの前世がどうしてなのは達と関係してるのかは判らないけど、でももし前世でもなのは達と友達だったんならそれはすごく嬉しくて、とても幸せだよ。なのは達もそう言ってくれたし。

「でもはやてちゃんも、私たちの前世と関係してるんだとしたらすっごく素敵だよね」

「シャルの反応からして、ルシリオンって子と会った時も泣くんじゃない?」

アリシアがニヤニヤと何かを勘繰ってそんなことを言ってきて、なのは達はうんうんって頷いてアリシアに同意を示した。けどそれは外れると思う。たぶんわたしは泣かない。それだけに留まらないって思うから。

――ゲフェングニス・デア・マギー――

「「「「「「っ!!」」」」」」

突如、この周囲一帯に結界が張られたのが判った。わたしはすぐさま愛刀の「キルシュブリューテ!」を起動して騎士甲冑に変身する。

≪術式体系は古代ベルカ式。マイスター、気を付けて。相手は騎士ですよ≫

「なのは達はわたしの後ろに下がってて!『クロノ!・・・やっぱジャミングされてるか』」

魔力は使えてもデバイスが無い以上、変身は当然のことながら戦闘なんて出来るわけがない。そんな中で対人戦闘に優れた騎士、ランサーはS+、セイバーはS-、バスターはAAA+。3人中2人がわたし以上。普通なら勝てない戦いだ。
でもわたしが守るしかない。勝てずとも負けない戦いをすればいい。クロノ達が結界に気付いて駆けつけてくれるまで。視線の先、ランサー、セイバー、バスターの三騎士が空から舞い降りてきていた。地上に降り立って、何を思ったのか両手を上げるお手上げポーズで近付いてきた。

「止まりなさい! それ以上の接近は許さない・・・!」

≪Explosion≫

――雷牙月閃刃――

“キルシュブリューテ”のカートリッジを1発ロードして刀身に電気変換した魔力を付加。いつでも戦闘に移れるように両脚に力を込めたところで。

「申し訳なかった!!」

「「「「「「へ・・・?」」」」」」

ランサーがいきなり土下座して、続けて「申し訳なかった」「すまんかった」セイバーとバスターが深々と頭を下げた。完全に戦意や敵意が無いから警戒は怠らずに“キルシュブリューテ”を下ろす。

「こちらの勘違いで、君たち全員に迷惑を掛けた。謝って許してもらおうなどとは思っていないが、せめてもの誠意だ。本当に申し訳ない」

ランサーもセイバーもバスターも頭を上げようとしない。本気で謝ってる。それが判ったからこそ「あの・・!」なのは達が3人に近寄ろうとした。けどそれを「待って」わたしは止める。

「シャルちゃん・・・?」

「第一級捜索指定ロストロギア、闇の書。その守護騎士ヴォルケンリッター。あなた達に逮捕状が出ました。大人しく武装を解除し、主と共に出頭しなさい」

「っ・・・」

「やっぱ気付かれてんじゃねぇか、おい!」

わたしがそう告げてランサーが僅かに頭を上げたところで、バスターがランサーの頭を叩いた。すると、ランサーの頭部――デフォルメされたチーターの頭部がくるくると回った。

「「「「「「ぷふっ」」」」」」

緊張感に満ちたこの空気の中、その異様な光景にわたしやなのは達は吹き出してしまった。ランサーは回る頭部を両手でハシッと止めて、「やめろ」ってバスターを注意。

「・・・ちょ、ちょっと! 真面目な話をしている時に遊ばないで!」

なんとか笑うのを耐えることが出来たわたしはランサーに向かって怒鳴ると、「違う、待ってくれ、我々は本気で謝りに来たんだ!」って焦り出した。

「私が撃墜した騎士、そして補助系魔導師の少女よ、誠に申し訳なかった」

「あのさ、そこの白い奴。撃墜して悪かったよ」

セイバーとバスターも改めてなのは達に謝る。それが決め手になっちゃったって感じ。まずは「私もごめんね、バスター、ちゃん? 帽子壊しちゃって」バスターに謝り返した。

「ま、あんたとそこの小っこいのはランサーの勘違いに巻き込まれちゃった感じなんでしょ? 謝ってもらえるんならあたしはそれで手打ちにするわ」

「私も許します。心の底から謝ってもらっているんだって判るから」

アリサとすずかもセイバーに撃墜されたことを水に流すようで。問題はフェイトとアリシア。特にアリシアはランサーに妹やその使い魔のアルフを撃墜された恨みがある。案の定、アリシアが「ランサー」って低い声を出してランサーに近寄って行く。わたしがそれを止めようとしたら、「待ってシャル」フェイトに制されて、フェイトもアリシアを追うようにランサーに近寄って行く。

「ちゃんと謝ってくれた事は良いと思う。だけど、それだけでフェイトやアルフを墜とされた怒りは収まらない」

「アリシア・・・」

「殴るなり蹴るなり、罵声を浴びせるなり好きにしてくれ」

ランサーが騎士甲冑(へんしん)を解除した。でも頭部は未だにチーター。今なら確実にランサーに決定打を与えることが出来る。デバイスの槍も無し、魔法を防御する甲冑も無い。

(甘い考えだって解ってるけど、まずはアリシアの気の済むようにさせたい)

それにセイバーとバスターがランサーを庇うかもしれないし。慎重にならないと取り返しのつかないことになりそう。無抵抗を決めたランサーに向かってアリシアは微笑みながら「じゃあ、お言葉に甘えて」利き腕の右腕を大きく振り上げた。
そして「えいっ!」ランサーの頭を思いっきり引っ叩いた。するとさっきバスターに叩かれた以上にランサーの頭部が高速回転。アリシアはそれを見て「あはははははは♪」大笑いした。

「ランサー。あなたが本当に私たちに対して申し訳ないって思ってくれているなら、教えてください。あなたたち騎士や主の正体を。そして何を企てているのかを」

フェイトは管理局員として仕事を全うするべくそんな取引を持ちかけた。普通なら応じるわけがない。ここまで周到にことを運んできた騎士たちだもん。なのは達の襲撃ってミスが無ければ全てが上手く行ってたほどの。やっぱりと言うか「それだけは出来ない」ランサーが首を横に振った。

「じゃあ許しません」

「・・・・セイバー、バスター。パラディース・ヴェヒターの将として、最後の指示を出す。これからは口出しするな」

「「・・・・ヤヴォール」」

2人を黙らせたランサーが、フェイトの問いに答え始めた。騎士たちの主が病に臥せっていること、それが“闇の書”が未完成ゆえの呪いの所為であること、それを治すために完成を目指していること、それはどんな治癒魔法でも治せないことを。
だから蒐集を始めた。犯罪者ばかりを狩る理由は、主の未来を民間人の怨嗟や血で穢さないため。主は犯罪者だからと言って蒐集対象にすることに対しても、その犯罪者に申し訳ないって考えるほどに心優しい人だという事も。

「――故に我々は、ここで捕まるわけにはいかない。フェイト・テスタロッサ。君に許してもらえなかったのはやはり残念だが、仕方がない」

ランサーはそう言って立ち上がって、「行くぞ、セイバー、バスター」って2人に声を掛けて去ろうとした。ここで「待ちなさい!」わたしだけが呼び止める。なのは達は黙ってまま。たぶん騎士たちの目的に、テスタメントを思い出したのかもしれない。誰かの為に罪を犯す、って。

(だからってここで見逃すわけにはいかない!)

――閃駆――

一足飛びでランサーに斬り込む。ランサーはまだ騎士甲冑に変身も武装もし直してない。セイバーとバスターはランサーの前を行ってるから、ランサーの背後を守ることは出来ない。あと警戒すべきはランサーの防御魔法だけ。

「(迷うよりやる!)雷牙・・・月閃刃!!」

付加したままだった雷撃の斬撃を打ち込んだ。どうせ防がれる、って思っていたけどわたしの一撃は見事に「うぐぅ・・・!」ランサーに直撃して、ランサーを大きく吹っ飛ばした。セイバーとバスターはそれを見ても何も文句を言わない。ていうか「お前が手を出すなって言ったんだからな、ランサー」ってバスターが呆れ口調でそう言って飛び去って行った。

「無茶をする男だ。全ての魔力を防御から外していたら危なかったぞ」

セイバーも呆れ口調で言いながら、木に叩き付けられて座り込むランサーの元へ。ランサーはセイバーに支えられながら「あ痛たた」立ち上った。

(わざと受けたって言うの・・・!)

騎士甲冑も無しで受けようとする異常さに戦慄して、わたしの一撃を受けても気絶もしないと思われたことに怒りを覚えた。

「ランサぁぁぁぁーーーーー!!」

――舞い振るは(コード)汝の獄火(サラヒエル)――

本気で討つために駆け寄ろうとした時、蒼い炎で出来た3m近い槍30本がまるでわたし達とランサー達を隔てる柵のように降って来た。そして横列している蒼炎の槍が融合して巨大な蒼炎の壁になった。

「ランサー! 聞こえていたら答えて! ロウダウナーが奪ったロストロギア、征服剣! それはあなた達が横取りしたの!?」

返事は期待しなかった。でも、「ロウダウナー全員を潰したが、誰1人として持っていなかったのを確認している。隠したか、別の仲間がいて渡したか、それを調べるのは君たち管理局だ」って律儀に答えてくれた。そしてランサーとセイバーも去って行った。蒼炎の壁が消え、付近を切り取っていた結界も消えたから、わたしは変身を解除して私服姿に戻った。


 
 

 
後書き
イアオラーナ。
アニメ原作や前作でも成し得なかった素顔のシャマルにはやてが、何も知らないなのは達と出会いました。アニメではシャマルが酷く後悔していましたからね、変身魔法を使っていれば、と。
それを叶えさせたく思ってデフォルメアニマルの被り物を追加。めでたくシャマルはなのは達と戦闘する前に彼女たちと出会うことが出来ました。
それにしてもルシルよ、さすが天秤の狭間で揺れし者。理由があるとしてもよくブレるなぁ。

 
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