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このクラスに《比企谷八幡》は居ない。

作者:御劔優太
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そして『雪姫暦』は胸が大きい。

翌日の朝、俺は先生に呼び出されていた。
「朝っぱらから悪いな♪」
この国語教師は朝から怒る雰囲気を醸し出して脅し、荷物運びを手伝わせている最悪な教師だ。いや教師ってこんな人だっけ?
「悪いと思ってませんよね」
「そうか♪」
いつも額に青筋をたてている先生だが今日は表情が柔らかい。
「何かあったんですか?」
「合コンに誘われたんだ!」
特別棟四階、美術室の生徒の視線が廊下に集まる。
「恥ってものは無いんですか?」
「す、すまん。」
先生は顔を赤くした。この人怒らなければ綺麗だと思うがな・・・・怒らなければ。
「それに設定を重要視するんなら俺を結婚相手として見てくださいよ。」
俺は冗談混じりにそう言った。
「無理だな。専業主婦は受け付けん。」
「でも先生、栄養バランス考えて食事取ってますか?」
「うっ・・それは・・・」
「まぁ、合コン頑張ってくださいね。」
やはりこの人は生徒に合コンの話をする時点で教師失格だ。
「はぁ・・・」
俺は仕事を終え教室へ戻り席に座った。
「はぁ・・・」
俺は痺れた手を休め、本を開く。
俺は読書が好きになったのは最近だ。
俺も昔はゲームをやっていた。
しかし現代のゲームはコミュニケーションツールと化していてコミュ力がない俺には到底出来ない。
だがこの世界にはそうしたコミュニケーション能力がとてもスマートにグレートにエクセレントに出来る人種がいる。
箱根隼人。
滝澤の件もそうだったが優しい皮を被ったリア充である。なめとんのか。
人目みるだけで目が八幡になる。
「いや~今日は無理だわ。」
「え~んじゃ隼人と私達だけでいく?」
「おおっ、ハーレムじゃん。」
なるほどリア充がレベルアップするとハーレムになるのか。もうリトとか読まねぇ。
「いやちげーよ、まぁ今日は暇だし良いけどさ。」
リト・・いや箱根はあくびをしながら答えた。
「ぷっ・・・」
俺はそのやり取りに笑いで答える。
だが、そのやり取りに由比ヶ浜結衣が女王を怒らせることは無く、雪ノ下雪乃が女王を馬鹿にすることも無く、時間は過ぎていく。
「・・・・」
俺は無言で席を立ち、自動販売機まで歩いていく。
「神崎君。」
俺は振り向くと雪姫が立っていた。
「俺が話した女子で二回目に話しかけてきたのはお前が初めてだ。」
「悲しい!?」
「それで俺に何のようだ。」
「いや、一緒にご飯食べないかなって・・」
「断る。」
「なんで!?」
「俺は弁当を持ってきていない、そして友達と食べた事もない。」
いつも一人さ。まぁ須玖にはお弁当持たせてるけどな。美味しいって。誉めてくれるぜ。カナデ、ウレシイ。なめんなよ。
「そ、それじゃあ・・・・」
雪姫は口ごもった後にこう続けた。
「わ、私の食べていいから・・・」
出してきたのは可愛いバンダナに包んだお弁当だった。
えっ!?なに!?俺に、この俺に!?弁当を一緒に食べようとかいって、その上自分の弁当を俺にわたすだと!?
もしかして俺の事好きなの?
いや、もう惨めな思いはしない。
しかもこれは雪ノ下雪乃なら罵るか死ねって言うところだろ。
「なんで俺なんかに渡すんだ?もっといいやつ居るだろ。」
箱根とか箱根とか箱根とか箱根とか箱根とか箱根とか箱根とか箱根とか箱根とか箱根とか。
「め、目が怖いよ?」
「ああ、まぁ一緒に食べてやるよ。」
俺はそう言ってコインを自販機に投入した。
俺はコーヒーとオレンジジュースを買った。
「ほら。」
俺は雪姫にオレンジジュース投げると屋上へ向かった。
「何故に屋上なんだ?」
屋上はカップルで埋め尽くされていた。
「これは予想外・・・」
「どこがだよ、大体予想出来たろ。」
「しかも葉や・・箱根君達いるし・・」
「今葉山って言おうとしたろ。」
「そ、そんなことないよ!」
焦って俺に弁解する。まぁ俺も言いそうなときあるけどな。話したことないけど。
「これで男の娘とか中二が出てきたら終わりだろ。」
青春ラブコメを間違ってしまう。
「ははっ、そうだね。まぁ仕方ないし混ざる?」
「ビッチだな。」
「ヒッキーうざ!」
「おお、乗ってくれるとは。」
「伊達に引きこもってないよ。」
雪姫はその谷間を強調するように胸を突き出した。
「っ・・・」
「いやっ、どこみてるの!?」
「わ、悪い・・・」
目線が行くんだよ!嫌なら萎ませろ!いや、俺が許さん!
「まぁ良いけどさ・・」
雪姫は金網に腰かけた。
「ほら、神崎君も食べようよ!」
くっ、俺は友達少ないからな!居ない訳じゃないぞ?いやマジで。
「あ、ああ。」
俺も隣に腰かけた。
「どれいる?」
「どれでもいいぞ?」
俺は弁当を覗く。
ふんわりふっくら黄色に焼き色がついた卵焼きに、形が整った唐揚げ、そしてパリッと揚げた春巻きが入っていた。
「うまそうだな。」
「んじゃ、あ、あーん・・」
「い、いいよ自分で食うから・・」
「ダーメ。」
俺は仕方なく口を開く。
「どう?」
「うまいな、そしてお前があーんってしてくれたからめっちゃうまい。」
「も、もう・・・」
「か、唐揚げもいいか?」
「う、うん・・・」
俺達は雪ノ下がいれば一発で『すいません、ここは奉仕部ではなくラブラブでした。』とか言いそうだ。居ないけど。
「ありがとう、旨かったよ。」
「うんっ!また作ってくるね♪」
先を歩いていた雪姫は振り向いていった。
「ああ、教室へ帰ろう。」
俺はその笑顔をみて思った。
こいつは滝澤が居たからぼっちなのであって、滝澤が居ない今では俺と関わる必要はない。要するにこちら側の人間では無いのだ。
「雪姫。」
雪姫は変わらぬ笑顔で振り替える。
「なに?」
「お前は・・・・・俺と関わってていいのか?」
すると雪姫の表情がこわばった。
「神崎君・・・・そんなこと言わないでよ・・・・」
「えっ?」
「私は好きで一緒に居るだけなの!全て私のわがまま!神崎君は私と一緒に居たくないの!?」
雪姫は涙目で俺に叫んだ。そして八幡では絶対に言わないことを言った。雪姫は自分のやり方を通した俺も自分のやり方を通そう。
「居たいよ・・・居たいに決まってんだろ!?だからこそ・・・大切だからこそ!優しいからこそ!俺と一緒に居て友達を無くして欲しくねーんだよ!」
みんなは・・・少なくとも八幡はそんなことは言わないだろう、これは雪姫と一緒に居たくないと言った方がハッピーエンドだったはずだ。いや・・・俺は自分のやり方を信じる!
「・・・・・・そっか♪」ニコッ
「え・・・」
「私は友達居ないからいいよっ♪」
雪姫は涙を拭い腕を組んできた。
「お、おい・・・」
「いいからいいから!」
良くねーよ、当たってるんだよ。
まぁ、俺は自分のやり方を信じる。そんなことを言ったが間違いだ。俺は雪姫を信じる。これからもそうやって生きていく事だろう。
・・・そして、『雪姫暦』は胸が大きい。  
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