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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第68話 ロマンティックとプラグマティック


 リュウキの表情が変わったのを確認したキリトは、リュウキの方を向いた。

「リュウキも気づいたか……?」

 キリトがそう聞いていた。リュウキは、キリトの問に首を縦に振った。

「え? ほんとっ?」

 レイナはリュウキの方を向いた。そして。リュウキは数秒後。

「レイナ」

 リュウキはレイナの方を見た。

「わっ! う……うん?」

 レイナは、考えていたリュウキが突然振り向かれたから驚いたようだった。

「確か……、レイナはヨルコさんとフレンド登録していたよな?」

 リュウキはレイナにそう聞いた。彼女と初めて会ったあの時に、アスナとレイナの2人は登録をしていたと記憶している。

「え? あっ……そうだけど。私とおねえちゃんは」

 レイナは間違いないと頷いた。

「ええ、でも……もう」

 アスナも頷いたけれど、表情は暗い。当然だろう。彼女とはフレンド登録をしたんだけれど、その相手はもう、この世界にはいないんだから。……そう思っていたから。

「……違う。キリトが言っていただろう? 確認してみてくれ」
「え……?」

 レイナとアスナ。
 殆ど2人同時にフレンド登録しているヨルコの位置情報を確認した。
 すると……。

「えっ!!」
「なっ!!」

 2人から驚きの声が上がる。キリトもその反応を見て、十分だった。

「やっぱりか……。カインズ氏もヨルコさんも、まだ生きているんだな」
「う、うん!でも……なんで??だって、目の前で……。」

 アスナもレイナもわからない。確かに、カインズもそう、そしてヨルコも。
目の前でその体が砕け散ったのだ。その身体を青く光らせ、そして無数の硝子片となって、砕け散った筈だった。
 何度も目の当たりにした光景を。……何度も二度とは見たくないと思っていたその映像を。

 それは鮮明に頭の中に残っていた。

「圏内では基本的にHPは減らない……でも、オブジェクトの耐久値は減る。……さっきのバケットサンド見たいに」

 キリトはそう説明した。

「だから、キリトは気づいたのか。バケットサンドが消滅した瞬間を凝視して」
「……ああ、似ていたんだ。限りなく同じエフェクトだったからな」

 リュウキの問いに頷くキリト。

「……あの時の槍が削っていたのは、カインズのHPじゃなく、鎧の耐久値、だった。という訳か……。そして、その鎧が砕け散った瞬間に」

 リュウキがそこまで言うと、レイナは、はっとしていた。

「……あっ!まさか……、そのエフェクトに乗じて転移結晶で?」
「……だろうな。光り輝き砕け散るその瞬間を狙って、転移すれば、後に残るのはあの死亡エフェクト同様のもの。《見ているようで見ていなかった》……か。なるほどな……流石だ」

 リュウキは頷いた。キリトの推理、それは見事なものだと感じたんだ。
 僅かな糸口から答えに導き出したのだから。

「いや、オレは運が良かったんだよ。あの砕けたサンドを見て、思いついたんだから。アスナのおかげだな」

 キリトは、そう言いながらアスナの方を見た。

「え……」

 アスナはきょとんとした。さっきまで、驚愕の事実を知って、険しかったその顔が一変した

「あは……」

 レイナはアスナのその表情を見て笑う。あんな風に言われたら……自分だったら絶対に嬉しい。
自分だったら、自分がリュウキに言われたら本当に嬉しいんだから。
 でも……その過程がちょっと複雑だった。

「……私の作ったお弁当駄目にされちゃったし……」

 アスナは、じとーっとキリトの方を睨みながら言っていた。

「あっ……それは本当にすまんかったです……」

 キリトはそのツッコミで意気消沈してしまった。アスナは項垂れるキリトを見て少し笑顔になると。

「もう、良いよっ……」

 アスナはプイッと顔を背けた。

「あはははっ……!」
 
 レイナは2人を見て笑った。 理由が判らない状態だけど、ヨルコ達が生きていてくれている事が、少なからず、笑顔を誘った様だ。

「まぁ、アスナが怒るのも無理ないか」

 リュウキはそう結論をした。折角作った物を壊されてたのだから。

「あれは、照れ隠しなんだよ?リュウキ君っ!」
「……そうなのか?」

 リュウキはレイナにそう言うわれ、アスナにそう聞く。だけど、アスナは慌てて。

「ななななっ! そんなわけありません!!」

 アスナは思い切り否定していた。それを見て、聞いたリュウキは、再びレイナの方を向いて。

「……アスナは、否定してるぞ?」

「あはっ、女の子は、そう言っちゃうものなのっ!」

 レイナはまたまた、笑顔になってそう説明。だが、アスナは思い切り首を横に振っている。
 つまり、よく判らない。

「ん……難しいものだな」

 リュウキは苦笑いをしていた。
 
「ははは………」

 キリトはキリトで、笑っている。アスナの事もそう、そしてリュウキのキャラについてもだ。
何度見ても思う。
 
 ……こんな男、今時いるのか?と思ってしまうのだ。

 疎い鈍い鈍感。『いくら自分でも、そこまで酷くないぞ。』とキリトは思ってしまっていた。だが、レイナが言うようにアスナが照れ隠し?に関しては素直に頷けない様だが……。
だから、結論はどっちもどっちと言う事だろうか。 



 そして、その後はNPCのレストランに入り、今回の件を最初からおさらいをしていた。

 ヨルコの件、それをアスナとレイナが聞いたのだ。その回答は、キリトとリュウキの2人は一致していた。彼女は、予め 装備にダガーを刺した状態だったんだろうと。
 根拠は彼女はあの場で一度も背中を見せることは無かった。そして、リュウキが近づこうとしたあの時も過剰に反応していた。あの時は怯えていたのだろうと思えたが……、上手く誤魔化せていた様だと思える。窓の方へと行く時も背中を見せることは無かった。

 そして、耐久値が無くなるのを見計らって恰もダガーが突然飛んできたかの様に、見せたのだ。

「……実際に大したものだな。あの2人は」

 リュウキは、騙されていたのが事実なのだが、……感心していた様だ。

 恐らくは、ヨルコとカインズ。

 2人はグリセルダの死に疑問を持ち続けていたのだろう。
 だからこど、その犯人をあぶりだす為に、こんな圏内殺人なんて派手な事件を起こしたと推察される。

「ああ……。後は彼女達に任せよう。この事件でのオレ達の役回りは終わりだ」

 キリトがそう言うと……アスナとレイナ、そしてリュウキも頷いた。彼女達のやった事、それは決して褒められたものじゃない。あれだけのパニックを起こしたのだから。そして、恐怖心に駆られたプレイヤーも少なくないだろう。だが、その源泉はギルドのリーダーの死。それが忘れられなかった、忘れたくなかった。だからこそ、実行に移したんだろう事は簡単に想像出来る。

「……それだけ、慕われていたんだろう。そのグリセルダ、と言う人は」

 リュウキは、そう思った。
 その彼女の無念を晴らす為に、その彼女の死から半年間ずっと方法を練っていたんだろう。そこまでさせられる程の人物。

「そうだな……。オレ達はまんまとその目論見通り動いちゃったけど。オレは嫌な気分じゃないよ」
「そうだね……」
「うん、私もそう思う」

 アスナもレイナも同様だった。

「そうだ、キリト君は、もしそう言う場面になったら、超級のレアアイテムがドロップしたら 何て言ってた?」

 アスナがそう聞いた。
 そう、正に黄金林檎で起きた時の事。それが、自分の身に起きたら……どうしていたのか。
 それを聞きたかったようだ。

「そうだな……。元々オレは、そう言うトラブルが嫌だから、ソロをやっているって言う理由もあるし、リュウキはどうなんだ?」

 隣で座っているリュウキに話をふった。リュウキは一瞬だけ考えると、直ぐに答える。

「ん……オレなら、ドロップさせた者の物。それが一番……だろう? 一番それが公平だ。ランダムドロップするのであればな。勿論事前にそう言う方向性にし、且つ了承がいるとは思うが……」

 リュウキがそう言うと。アスナとレイナはリュウキの方を見ていた。

「リュウキ君の考えはウチと同じ……だね?」

 レイナがそう答えた。

「そうなのか? 血盟騎士団では」

 リュウキがそう聞くと2人は頷く。

「だって、SAOでは、誰が何を入手したのか、それは全部自己申告でしょ?隠蔽のトラブルを回避したかったら。そうするしか無いわ。それに……」

 アスナは、一呼吸を置くと微笑みながら、話した。

「そう言うシステムだからこそ……この世界の結婚に重みが出るのよ……。結婚すれば、2人のアイテムストレージは共通化するでしょ? それまでなら、隠そうと思えば隠せたものが結婚した途端……何も隠せなくなる」

 アスナがそう言うと、レイナも深く頷いた。気持ちは同じ、心底そう思っているようだった。

「ストレージ共通化って、とてもプラグマティックなシステムだけど……。同時にとってもロマンティックだと私は思う」
「うん。本当、だよね? 信じて……信じられて……。真剣にお互いが好き同士じゃなきゃ、成り立たないもの……。生命線とも言える情報を共有するんだからさ……」

 アスナとレイナ、2人して今日一番とも思えるほど穏やかな表情だった。この世界において、個人の情報は レイナが言うようにまさに生命線といっても過言じゃない。それを共有する事が出来るほどに信頼しているんだとすれば……2人の様に感じるのだろう。

「………」

 リュウキはそんな2人を見て考えていた。確かに結婚と言うシステムは互いが最大級に信頼しあっていないと、出来ないものだ。自分自身が、なるのか?と思えばはっきり言ってそこまでに値するプレイヤーは中々いるものじゃない。それに、これはさっきと同じで、自分は良くても、相手が……と言う場合もあるのだ。凄く難しいもの、だとも思える。

 そして、何よりも《好きになる》と言う気持ち。

 はっきり言ってしまえば、リュウキはよく判らない、判っていない。リュウキは、自身の側にずっといてくれた爺やの事は好きだ。大好きだって胸を張って言える。 
 そして、この場にいる3人も好印象を持っていると言えるだろう。

 だが……そう言う≪好き≫とは 違うと思う。

 そして、目の前の女性……レイナに対する心情も違うと思う。だけど……その差異がよく判らないだ。リュウキがそう考えていた時。

「なぁ……2人とも」

 キリトがレイナとアスナに話しかけていた。

「ん?」
「何?」

 2人同時に聞き返す。キリトのその疑問。それを聞いたその時に、2人の持つ、《双・閃光》と言う二つ名。 

 その真の意味を知ることになる。……その身を持って。


「アスナとレイナ……2人とも結婚した事あるの?」


 アスナとレイナ。
 2人は、今回は弁当の時の様に、別に示し合わせたわけじゃない。ただ、2人が同時に反応しただけだった。其々、レストランに常備されているフォークを素早く装備すると、正に閃光が如く速度で、キリトに襲いかかった。

 凄まじい金属音と共に迫る高速の刃。キリトに突きつけるその太刀筋は、交差し、一段階迫力を増していた。

「まままっ! まったまった!! 違う違う! そうじゃなくって!! ほら! さっき、ロマンチックだとか、プラスチックだとか……!」

 キリトはあまりの恐怖体験に慌てながら弁解をしようとするが、2人は止まらない。

「誰も……」
「そんなことッ!!」
「「言ってないわよっ!!!」」

 それと同時にキリトの脛にキックをする。当然、そのキックはノックバックを発生させ、キリトは衝撃を受けていた。

「キリト……、プラスチックって何だ? 全然 違うだろ、《pragmatic》 意味は現実的、実際的、って事だ」

 リュウキはやれやれ……と言わんばかりにそう言っていた。でも、勿論判らない所もある。英語の意味は判っているのだけど。

「だが、何で2人ともそれだけの事で怒っているんだ?」
「もうっ!! だから女の子にそんな事言うのが悪いのっ!!」

 レイナはかーっ! と赤くなりながら怒っていた。そう、怒った意味がよく判らなかったのだ。
 キリトは、ただ疑問を質問しただけなのだが?と。

「??」

 リュウキは、再び首を傾げていた。このやり取りは一体何度目?と思ってしまったアスナは。

「はぁ……。リュウキ君に、言っても駄目だって……」

 アスナはため息をしてそういった。何度目か、判らないやり取り。でも……。こうしたやり取りも楽しくなっているのも事実だった。実際にレイナは怒るように言っているが、楽しんでいる節もあるから。

「駄目だとは失礼だな……。だが、駄目と言われても仕方ないか。……よく判ってないのは事実だからな」
「たははは……」

 キリトはその返事に苦笑いした。
 2人に真っ向からそう返せるのは、この世界で恐らくリュウキだけだろうから。そして、同時にリュウキにも感謝。2人の閃光の刃の矛先を清々しいまでに変えてくれたから。

「でも、このSAOで現実的って、どういう意味だ?」

 キリトはそうアスナに聞いた。これは、別に聞いても悪い事じゃない。

「はぁ……わからない? だって、身も蓋も無いでしょ?ストレージ共通化なんて……。」

 アスナはため息をしながらそう返した。その意味はリュウキもよく判った様だ。

「まぁ……それはわかるな。ストレージを共通にするんだから………ッ! ストレー……ジ共通化?」

 その時、ストレージ共通化と言う言葉を再度聞いて、そして自身も呟いて、そしてその意味合いを再度考えて、リュウキの中で何かが芽生えた。
 
 ……欠けたピースの一つ一つが合さっていくような感じだった。

 そして、リュウキは……考え込む。

「リュウキ君?」

 考え込むリュウキにわからなかったのか、レイナはリュウキの方を見た。

「……ストレージ共通化……その結婚の相手、その相手が死んだとき 相手のアイテム……それはどうなる?」

 リュウキのその言葉を聞いて、3人は考えた

「え……? それって、グリセルダさんと、グリムロックさんの事?え……っと、相手が死んでしまったら……」
「う……ん。えっと……」

 アスナとレイナははっきりと判らなかった様だが、キリトはすぐに結論が出た様だ。

「ッ……。成る程そう言うことか」

 キリト自身の中でも、全ての線が一本に繋がった。

 今回の事件、それは初めからずっと、何かがおかしいと感じていたのだ。あのシュミットがなんらかの関与をしているとは思っていた。だが、人を殺し且つアイテムを奪おうとするような男ではない。
それはこの4人もわかっていた。
 仮にそんな人間だったとして、と過程すら立てられない。

 何故なら、そんな人間が、攻略組で己の命を張った守備隊のリーダーなどやれる筈も無い。命を何時落としてもおかしくない最前線で、そんな事出来る筈が無いだろう。

 キリトも、その事については判っていた様だった。

 そして、全ての鍵となる言葉を発した。

「……相手のもの、全て 結婚相手のものになる。ってこと、か?」
「「!!!」」
「推測、だが。高確率だと思う。……なら見えてくる真実があるだろう」

 リュウキはそう言う。表情を強ばらせながら。

「指輪は……最初から奪われたわけじゃ無かったって事?」

 レイナは、驚きを隠せずそう聞く。指輪の紛失のせいで、今回の事件が起きたと言っても過言じゃないから。そう言ったが、キリトは首を振った。

「違う。……奪われたんだ」

 その言葉を聞いた瞬間、リュウキの表情がガラリと変った。

「……裏切り、だ。この世で最低だと思えるものの1つだとオレは思う」

 その表情は怒り。
 喜怒哀楽の内の怒りの感情が全面に出たかの様な表情だった。

「え……じゃあ グリムロックが……全ての犯人?じゃあ、何で、2人に協力なんて……。下手をしたら自分のことが……」
「それは……」

 キリトは考える。リュウキは、結論は直ぐに出た様だ。
 
 だが、ここからは急がなければならないだろう。

「……レイナ、アスナ。ヨルコさんの位置情報。もう一度教えてくれないか?……想像が正しければ……。」

リュウキは、2人の方を見て。

「元黄金林檎の3人が危険だ」

 リュウキはその理由を推察を3人に話した。

 今回の事態を悟った4人はすぐさま行動を開始した。

 4人はヨルコが、あの3人がいるであろう 《第19層・十字の丘》 即ち《圏外》へと急いで向かった。


 
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