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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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15 伝説と雷雲

「大神官ノルンの名において、新生ゼノビア王国宰相エリーと大臣トードの罪を許しましょう」

 アヴァロン島中心都市アムドロシュフォル教会大神殿における罪の告白とその赦免の儀式終了後、私達は即座にゼノビアに取って返す事になった。
 同時に、女王ポルキュスを君主とするカストラード王国が建国されて、新生ゼノビア王国はその独立を承認。
 反人魚感情が強い工業都市トケラウと貿易都市マーケサズはゼノビア領として私預かりになり、即座に下水設備の工事が行われる事に。
 この二都市の代官としてエニグマハンターにクラスチェンジしたスザンナを派遣。
 聖地だからあるかなと思って財宝捜索したら出てきたアイテムシルバークロスに感謝。
 人魚側との調整と第三者的視点の確保から、アヴァロン島のマーメイドであるケートーと、テンプルナイトのディエゴも大神官ノルンの了承の元に派遣してもらっている。
 しばらくはごたつくだろうが、反人魚感情についてはこれを機会に徹底的に直す必要があるからだ。
 また、貿易都市マーケサズを得たことで、ポグロムの森にある貿易都市バイアと交易協定を結び交易を開始する。
 貿易都市マーケサズからは豊かな海産物および、東方との交易品や沈没船から人魚たちが引き上げた財宝が、バイアからは交易に使う帆船用木材が輸出されて私の美味しい収益源となるのだがそれは後の話。
 他にも、ロシュフォル教会の聖地アヴァロン島への巡礼航路が作られて、バインゴインとゼノビアの交易都市カルロバツとフィラーハの間に巡礼航路が開設されて賑わい出している。
 本来ならばアヴァロン島の交易は交易都市ガントークが持つはすで、なんで内陸に作られているかと尋ねたら、

「ここは聖地ですからね。
 巡礼者が優先されて、その他の事務をガントークに押し付けたんです」

との説明を、カストラード海に旅立つ前のテンプルナイトのディエゴから聞いて納得した覚えが。
 あ、そうだ。
 一つ大事な事を思い出した。 

「デスティン。
 ちょっと暇ならデートしない?」




 新生ゼノビア軍の総司令官と宰相の密会ではあるが、それを咎める人間はここにはいない。
 あらかたゼノビアにみんな帰っているのと、私がワイアームのボイナを持っているのを知っているからだ。
 なお、ぽちは今回はお留守番で先にテレポートでゼノビアに帰している。
 という訳で、ここはカストラード海のとあるロシュフォル教会。

「うむ。
 あなたがたならば神の祝福を得ることができましょう。
 この剣をさしあげます。
 この聖剣『ブリュンヒルド』を使いカオスゲートを見つけるのです。
 そして、天空を目指しなさい」

 カストラード海を絶対に攻略しなければならない理由が、この超重要アイテム聖剣ブリュンヒルド。
 天界と下界をつなぐ“鍵”の役割をする聖剣で三神器のひとつでもある。
 天空の三騎士の一人氷のフェンリルが人間にチャンスを与えるために地上に残したといわれがある神聖系剣で、何よりも大事なのは、この剣が無いとカオスゲートが開かない。
 ローディス教国あたりが知っていたら取りに来ると踏んでいたが、そこまで情報は出回らなかったらしい。一安心である。
 ついでに天空の三騎士についても補足。
 彼らはオウガバトル伝説の最後でわれわれ人間に味方してくれた3人の騎士の事で、神に仕えるこの三騎士は、いまも天空から下界の争乱を見守っている事になっている。
 もちろん、そんな連中を魔導師ラシュディが放置する訳も無く、帝国軍は多数の飛行部隊を天空へ派遣して天空も現在は帝国の制圧下にある。

「凄いな……これ」

 流石にデスティンも呆然とするか。
 STR+50に神聖RES+10、暗黒RES-15に全能力成長+1の神聖属性片手剣である。
 現物見て分かったが、タクティクスオウガ仕様だ。これ。
 そんな剣なので実は私もその神々しさに魂抜かれそうになっていたり。
 赦免でALI先に回復しておいて本当に良かった。
 そんな事を考えていたら、見透かされたらしく教会の神父が釘をさしてくれる。

「エリー様。
 あなたはまだまだ民からの信頼を十分に得ていないようですね。
 そんなことでは、帝国を倒したとしても神からの祝福を得ることはできませんよ」

「はい。
 肝に銘じます……」 

 分かってはいたけど、こうやって説教されるとこたえるもので。
 そんな私のしゅんとした姿を見て、デスティンだけでなく神父も苦笑する。

「王道を歩み、神から祝福を得ることができるなら、いつの日か三騎士と会うことができるはず。
 しかし帝国は、三騎士が反乱軍の味方にならぬよう、天界にむけて軍を派遣したと聞きます。
 天界の三騎士にお会いなさい。
 デスティン様なら、その資格は十分にあります」

 その言葉を聞いて、私は確信した。
 私個人はともかく、新生ゼノビア王国としてのカオスフレームは回復していると。
 なぜならば、今の台詞は本来自治都市トンガレバの賢者のアドバイスから来ているもので、カオスフレームが65以上無いと聞けないからだ。
 そして、聖騎士ラウニィーを仲間にできるのもこのカオスフレーム65以上が必要だからだ。
 ラウニィーだけは、カオスフレームとは別の事情で急いで仲間にしないといけない理由があった。
 私の改変によって、ローディス教国の第四次光焔十字軍発動が目前に迫っているからだ。
 そうなると、国境であるカストロ峡谷が戦場になる訳で、そこにいるラウニィーの足取りが分からなくなる危険があったからだ。
 だからこそ、今のうちに仲間にする必要があったのだが、いまや目に見えないカオスフレームがどのあたりにあるのかだけが心配だったのである。
 アヴァロン島救援やカストラード海の人魚の和解、下水設備建設によるスラム救済など善行を積んでおいて本当に良かった。


 今日はもう遅いのでこの教会に泊まることに。
 で、なんとなく眠れなかったので、星をずっと眺めていた。
 知らない夜空、知らない星、知らない月だが、夜の闇は私の居た世界と変わらない。

「何をしているのかい?」

「星を見ていたのよ。
 思えば遠くに来たものだなって」

 背後から聞こえるデスティンの声に振り向く事すらせずに私は星を眺め続ける。
 考えてみれば、こんな夜は一番最初ぐらいか。

「どこかのばかがプリンセスクラウンを使ってくれたおかげで、貿易都市ダスカニアじゃ『流浪の姫君とその従者』って盛大に勘違いされたっけ?」

「今でも、勘違いされるかもしれないね」

 流石にそれは無いだろう。
 デスティンも今や王国軍のリーダーとしてそれにふさわしいオーラを放っているからだ。
 とはいえ、『王子様とお姫様』と勘違いはされるのだろうが。

「ありがとう」

 イケメンはこんな時にぽろっと心情をこぼすから困る。
 たまらず振り向いた私に、馬鹿デスティンはいけしゃーしゃーと私にお礼をほざく。

「エリーが裏方でがんばってくれたおかげで、安心して戦う事ができたよ。
 感謝してもしきれないぐらいだ」

 夜でよかったと私は夜の闇に感謝した。
 絶対、顔が赤くなっているだろうからだ。
 あ、それで思い出した。

「それを言ったら、ポグロムの森で逃げた黄玉のカペラを倒してくれたでしょ?
 それでちゃらよ。ちゃら」

「ばれてたんだ?」

「分かるわよ。
 デスティンだもの」

 そして二人して耐え切れずに笑い出す。
 こんな感じで話したのは久しぶりな気がする。
 そして、あの時から私もデスティンも色々なものをその背中に背負いすぎてしまっている。
 ワールドエンドで彼が旅立ったのも、そんな背負ったものが重かったからからなのかもしれない。
 
「さあ、寝ましょうか。
 明日も早いわよ」

「ゼノビアに帰るのかい?」

 教会向けて歩き出す私の横からデスティンが尋ねる。
 それに私は振り向いて、いたずらっぽく微笑んだ。

「いえ。
 カストロ峡谷に。
 本物のお姫様のご尊顔を拝もうかと」



  
 翌日夕方 カストロ峡谷 貿易都市ジェラルアバド

「うわぁ……賑わっているわねぇ」
「本当だね。
 さ。お手をどうぞ。姫君」
「ありがとう。
 勇者様」

 ざわざわとした賑わいの中で、好奇の視線が私たちに突き刺さる。
 そりゃそうだ。
 今、この渓谷には、ラウニィーを探す為に多くの賞金稼ぎが駆けつけているはすだからだ。
 そして、対ローディス戦の最前線になるここはその為に一山当てたい連中がわんさかといる訳で。
 そんな場所でプリンセスローブを着た流浪の姫君と、ブリュンヒルドを持っている勇者様なんていればそれは目立つし、目立たない方がおかしい。
 なお、ボイナは別の用事で一旦帰ってもらっている。
 なるほど。
 軍を連れない場合だと、街の開放にはならないか。
 もしくは、街の政庁に行って迫れば別かもしれないが、戦場になるここを助ける余力は私達にはない。
 街一番の宿屋に泊まり、一階の食堂にて周りの視線を一切気にせずに食事。
 話し声と共に、私たちの席に座った音が三つ。

「ここ。空いているかい?姫様」

「待っていたわ。コリ。
 で、そちら二人はどなた?」

「莫邪のカゲイエと」
「干将のミツイエだ」

 ソードマスターか。
 しかもかなりレベルが高い。
 干将・莫耶の故事を考えるならば、兄弟か義兄弟かな?
 そんな事を考えていると、口を開いたのはカゲイエの方だった。

「俺達を雇わないか?
 お前達には、俺達の力を活かす能力がある!
 どうだ?
 安くしとくぜ」

 しょっぱなからこの台詞である。
 あ、コリとミツイエが顔に手を当ててやがる。

「姫さん。
 こいつの事は気にしないでくれ。
 これでもこいつは傭兵団を率いていてな。
 食わせるためには勝ち馬に乗らなならぬ。
 儂自身は一対一の戦いこそ生きる道と信じておるが、兄弟の助けになればとついて来ている次第」

 ミツイエがまた微妙なフォローを入れるのだが、どうしてくれようか?これ。
 なかなか愉快な人達ではあるのだが、説明をとコリの方をガンたれたら目逸らしやがった。
 後でコリは泣かす。
 なお、この二人酒場で知り合って意気投合したのでつれてきたというのは後で聞いた話。

「つーか、私達の情報売った方が早くない?」

 ストレートにぶっちゃけると、カゲイエが同じくぶっちゃける。

「金が手に入るのは悪くない。
 だが、我等は根無し草よ。
 戦場で金を稼ぎ、その地の酒場で飲む打つ買うで使い果たし、また戦場で金を稼ぐ。
 それに少々疲れてきてな」

「神聖ゼテギネア帝国とローディス教国のどちらが勝つか見当もつかん。
 ならば、漁夫の利を狙う一番弱い神聖ゼノビアに売り込んで、足場を作った方が寝返る時に高く売れるでな」

 そのあまりのぶっちゃけ具合に私だけでなくデスティンまで笑い出す。
 これぞ傭兵団か。

「最高だわ。あなたたち。
 デスティン。
 私の責任で雇うけどいい?」

「エリーがいいと思うならば」

 純白のドレスのポケットから、周りに見せ付けるようにぽろりととある石をテーブルの上に置いてみせる。
 あ、コリ入れた三人だけでなく、店内の空気が変わった。
 たぶんみんなの心は一つになっているはずだ。この宝石のおかげで。

「こ……これは!!
 ブラックパール!!!」

「ほ、本物なのか!?」

 このブラックパール、魔女デネブからおうごんのえだ入手のために貰ったものだったり。
 なお、アヴァロン島の貿易都市ガントークで販売しているのだが、もちろん持ち込んでいるのはこの周辺に住んでいる人魚たちである。
 販売価格は82000コートなり。
 話がそれたが、ちらちら店内を見ると何人か抜けているのを確認。
 カストロ峡谷の支配者である漆黒のアーレスにたれこんだか、あとでこっそりと闇討ちする手はずを取ろうとしているのか。
 そう。これだけ派手な事をしたのは、ラウニィー確保の為の囮である。

「契約料よ。
 仕事次第では街一つあげてもいいわ。
 という訳で、これもあげる」

 ぱんとテーブルに大量に置くのは7リーグブーツ。
 傭兵団をこの場で信用するつもりははなから無い。
 無害化できるならば安いもので、戦場で使えるならば更に優遇という訳で。

「契約成立だ。
 今後ともよろしく。
 姫様」

 あ、こいつできるやつらだ。
 わざと最後の姫様だけ皆に聞こえるように言いやがった。



同日 深夜 カストロ峡谷 貿易都市ジェラルアバドの宿屋にて

「ここか?」
「はい。
 姫様とそのおつきの騎士が泊まっているのは?」
「よし。
 踏み込むぞ!
 ニンジャは周りを固めろ!
 ジャイアントは城門前で待機!
 一人たりとも見逃すんじゃないぞ!!
 突入!!!」
「いません!」
「こちらにも!」
「馬鹿野郎!
 ちゃんと見張っていたのか!!」
「ちゃんと見張ってましたよ!
 一番高い部屋に二人でしけこんで出てこなかったからてっきりやっているとばかり……」
「畜生!
 何処に行きやがった!!!
 街中を探せ!」



同時刻 カストロ峡谷 貿易都市ジェラルアバドの南にあるロシュフォル教会

「ここかい?」
「ええ。
 この教会よ」
「ようこそいらっしゃいました。
 デスティン様。
 ラウニィー様がお待ちです」

 便利な呪文である。テレポート。
 もちろん、部屋に入って即テレポートで抜け出したのだ。
 で、匿っているロシュフォル教会にやってきたという訳。
 この教会との繋ぎとローディス教国への監視をコリはしていたのである。
 なお、コリはカゲイエとミツイエと共に7リーグブーツで貿易都市マーケサズに飛んでもらって、二人の監視をしている。
 ボイナを戻したのはこれが理由で、コリやスザンナの言う事を聞かなかった時の為の切り札になってもらったのだ。
 彼ら傭兵団が使えるならば、そのままゼノビアに連れてゆく予定。
 話がそれた。
 私達二人が教会の中に入ると、鎧を身にまとった女騎士が待ち構えていた。
 持っている槍はサンダースピアか。
 バックラーをつけた手でデスティンと握手し、アーメットで隠れきれない金髪の美しさと言ったら。
 なるほど。
 これが本物か。

「わたしはラウニィー。
 ハイランドの聖騎士です。
 今、帝国は間違った道を歩もうとしています。
 エンドラ様はすでにラシュディが示した暗黒の力の虜になってしまわれ、エンドラ様が示す暗黒の力にハイランドの民たちが虜になろうとしています」

 凛とした声からもカリスマが溢れる。
 こりゃ、王妃になったらそりゃ王国切り盛りするわな。

「心ある騎士たちは、みな中央から遠ざけられ、残っているのは悪魔に魂を売り渡した者ばかり。
 ……わたしの父も魂を売り渡した者たちの一人となってしまいました。
 帝国を止められるのはあなたがた王国軍だけ。
 どうかハイランドの民をお救いください。
 お願いできますか?」

 もちろん、断る理由も無い。
 手を握ったまま、デスティンは頷く。
 長かった。
 デネブとラウニィーの両方ゲットの為に足掻いたかいがあったというものだ。

「ありがとうございます。
 では、わたしもあなたがた王国軍と共に行きましょう」

 挨拶も終わった。
 私も自己紹介をして、一枚の魔術書を取り出す。

「リターンハーフ。
 これで一気に本拠地に帰ります」

 さて、この場合どこが本拠地になるのだろうと使ったのだが、ゼノビアに一気に飛んだ。
 これは覚えておこう。




「大将軍と宰相ともあろう二人が、二日も空けて逢瀬とはいい身分じゃな」

 帰ったらナーナ女王陛下のいやみが……
 みんなにやけているし、どうしてくれようか……
 
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