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八条学園怪異譚

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第五十三話 空手部主将その九

「君達がここに来た理由だが」
「ここに泉があるって聞きまして」
「幽霊さんや妖怪さん達が出入りされるという」
「泉の候補地があるって聞きました」
「それで来ました」
「ふむ、そうか」
 そのことを聞いてだ、大田は確かな顔で頷いた。
 そのうえでだ、こう言うのだった。
「それならだ」
「はい、それで泉の候補地は何処ですか?」
「この道場のそこは」
「更衣室だ」
 そこだとだ、大田は二人に話した。
「そこだ」
「あっ、着替えて入るからですね」
「別の世界に」
「服を着替えることは大きい」 
 そうだとだ、大田は二人に話す。
「それで己を切り替えることでもあるからな」
「だからですか」
「それでなんですか」
「そうだ、空手家即ち武道家になる行為だ」
 この道場で着替えることはそうした意味があるというのだ。
「だからだ」
「ここでの泉はですか」
「そこかも知れないんですね」
「確かめるといい」
 そうしていいというのだ、大田は二人に話す。
「君達でな」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
「わし等では出来ないからな」
 大田はそのことも知っていた、それで二人に言うのだった。
「その目で確かめることだ」
「そしてそれが教育だからですよね」
 茉莉也は大田にこう言った。
「だからですね」
「そうだ、教育とは何か」
 それは何かというと、大田も言う。
「己で確かめ学ぶことだ」
「そうですよね、ですから」
「それも心身でだ」
 それは一つという考えからの言葉だった。
「そうしていくものだからだ」
「私達もですか」
「今から」
「その為に来たのではないのか」
 愛実と聖花に問うた。
「そうではないのか」
「はい、そうです」
「それで来ました」
「それならばだ」
 余計にというのだ。
「行くといい」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 二人も大田の言葉に頷きそのうえで更衣室に向かうことにした、その更衣室の場所は道場の何処かというと。
 大田は道場の右手の木の扉、二つ並んでいるそこを指差してそのうえで二人に対して確かな声で告げた。
「あそこだ」
「あっ、一方が男子用で、ですね」
「もう一報が女子用ですね」
「そうだ、泉と思われる場所は左側だ」
 そちらだというのだ。
「女子用だ」
「そこに入ればですか」
「若しかしたら」
「そうだ、若しかしたら」
 あくまでだ、その可能性があるというのだ。
「だから入るといい」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
「行くといい」
 大田は二人に告げる、そして。
 二人も大田の言葉に頷きそのうえでその扉に向かった、そして扉を開き二人で中に入ると。
 そこは只の更衣室だった、木造のそうした場所だった。木造のロッカーに椅子とテーブルがある、ロッカーの鉄やプラスチックのところをそのまま木にした様な場所だ。 
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