| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Element Magic Trinity

作者:緋色の空
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ダブル ドラゴン


妖精の尻尾(フェアリーテイル)の医務室。
ポーリュシカに言われラクサスを呼びに行こうとしているレビィとティア。

「・・・あら?」
「どうしたの?ティア」

何気なくマカロフの3つ隣のベッドを見たティアは首を傾げた。
そこにいるべき奴がいない。

「・・・クロス?」












「いい加減にしろよラクサス。妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもうお前のものにはならねぇ」

バリバリと激しい雷を纏うラクサス。
その気迫や雷の激しさに腕で顔を庇いながらナツが言う。

「なるさ・・・そう・・・駆け引きなど初めから不要だった・・・」

が、その言葉はラクサスには届かない。

「全てをこの力に任せればよかったのだ!圧倒的なこの力こそが俺のアイデンティティーなのだからなァ!」

叫び、雷を全身から放つ。

「そいつをへし折ってやれば、諦めがつくんだなラクサス!」

右手を広げ、左拳に炎を纏わせナツが跳ぶ。
空を切り裂き、地を蹴って。

「火竜の鉄拳!」

そしてそのまま拳をラクサスの顔面へと叩き込む。

「!」

が、ラクサスに大したダメージは見られない。
ただ不気味に口角を上げた。

「まずは貴様だ・・・くくく・・・」

その笑みと言葉にシュランは寒気が走ったかのように震える。
そしてラクサスは右手をナツに向け――――――――――。




「かかってこい妖精の尻尾(フェアリーテイル)!俺が全てを呑み込んでやる!」




その右手から強力な雷が放たれた。

「ぐはぁぁああああっ!」
「ナツ様!」

雷を喰らったナツは壁を昇るかのように吹き飛ばされ、床に落ちる。

「フハハハハハハッ!」

ナツが床に落ちたと同時にラクサスは高笑いを上げながら地を蹴って走る。

「がっ!」

完全に体勢を立て直せていない状態のナツに膝蹴りを決め、ナツは再びよろける。
更に拳と蹴りを連続で放ち、近くの柱までナツを吹き飛ばした。

「!」

柱に両足を付け体勢を整えようとしたナツの目にラクサスが映る。
右手に雷を纏い、腕を横一線に振るおうとしているラクサスの姿が。

「うがぁ!」

その雷はナツとその後ろの柱も壊し、ナツはドスッと床に落ちた。

「ナツ様!」
「次は貴様だ」
「っ・・・!?うあっ!」

それを見たシュランは右手に魔法陣を展開させるが、素早く背後に回ったラクサスの蹴りが無防備だった背中に決まる。

「チッ・・・やるしかないですね」

軽く舌打ちをしながらシュランは自分のローズピンクの髪に命じる。
神はすぐさまうじゃうじゃと蛇に変わり、その赤い目にラクサスを捉えた。
ローズピンクの鱗を光らせ、赤い目を光らせ、鋭い牙を露わにする無数の蛇がシュランの頭に存在していた。

「行きなさいっ!」

その言葉が合図だったかのように、蛇達はしゅるしゅると勢いよく伸びながらラクサスへと向かっていく。
全ての蛇がくわっと口を開き、その鋭い牙の切っ先を光らせた、瞬間。

「スパーキンブリッド!」

ラクサスの手から雷が放たれた。
その雷は蛇達を包み、一瞬にして黒焦げにしていく。

「え!?」

もちろん黒焦げになったのは一瞬で、数秒後には元のシュランの髪の長さの蛇達がうじゃうじゃと動き回っている。
床にはローズピンクの髪が落ちているが、全く減ったり切られたりしているようには見えない。

(私の蛇が一瞬で・・・!?)

これは彼女の本気。
本体であるシュランが死なない限りは無限に蘇る不死身の蛇達。
魔法と不死身の蛇、その2つの実力があったからこそ、彼女は幽鬼の支配者(ファントムロード)で最強の女と呼ばれていた。
滅多に出さない本気を一瞬で黒焦げにされたのは初めてだ。

「ライトニングラッシュ!」
「っきゃああああ!」

驚愕しているところに放たれた攻撃にシュランは吹き飛び、勢いよく壁に直撃する。

(強い・・・この方は強い!あの閃光をも超える実力者・・・!)

恐怖の混じった目でラクサスを見るシュラン。
かつて戦ったティアの場合、彼女の最大の武器である『体を水に変える』を封じていたから有利だった。
が、ラクサスに封じるものはない。体を雷へと変えるが、それで封じられるのは移動速度のみ。
魔法ごと封じてしまう事も可能といえば可能だが、そんな小細工が通用するとは到底思えない。

「オラァ!」
「ぐっ・・・うああああああっ!」

壁から離れたシュランを強力な雷が襲う。
直撃してしまったシュランの体はゴロゴロと床を転がり、動きを止めた。

「つ・・・強ェな・・・やっぱり・・・」
「恐ろしい方です・・・ティア様、以上に・・・」

はぁはぁと息を切らしながらナツが呟き、シュランも高い所に居るラクサスを見上げながら呟く。
2人を見下すように、砕けた柱の上に立つラクサス。

「くっ・・・う・・・」
「っ・・・うあっ・・・」

そして高々と・・・拳を天へと掲げた。

「鳴り響くは召雷の轟き・・・」

その拳に雷が纏われる。

「やべぇ・・・体が・・・」
「・・・っ!」

抱えるダメージは大きく、ナツの体は避けようと思っても全く動かない。
それを見たシュランは歯を食いしばりながら必死に起きあがった。

「天より落ちて灰燼と化せ」

ビキビキと雷はラクサスの全身に纏われる。

「くそ・・・!」

悔しそうにナツが目線だけを上げラクサスを睨む。
すると――――――――



「蛇髪・守護」



小さく声が響いた。
それと同時にナツを覆うように、細く長いローズピンクの蛇が屋根のようなものを作る。

「シュラン!?」
「ご安心を・・・ナツ様には一切の攻撃も与えさせません・・・全て私が喰らいますわ・・・」

ナツの後ろに倒れるシュランから伸びる蛇髪は赤い目を光らせる。
その行動にナツが目を見開き―――――――


「バケモノの攻撃を受けるのは・・・バケモノであるべきですから」


シュランが小さく、誰にも聞こえないような声で呟いた瞬間。





「レイジングボルト!」





ラクサスが纏っていた雷が、蛇髪に守られるナツと、その後ろに倒れるシュランに・・・落ちた。

「フフ・・・フハハハハハハハッ!」

だん、と柱から降りたラクサスは狂ったような高笑いを上げる。
煙が晴れ、そこには砕けた床しか残っていない。

「ナツぅ、新人・・・シュランっつったか。このギルド最強は誰だ?」

目の前に向かってそう問いかけるラクサス。
が、そこにあるのはレイジングボルトによって砕けた床だけ。
当然、答えは返ってこない。

「ハハハハハッ!粉々になっちまったら答えられねーか!」

その光景に、再び高笑いを上げるラクサス。
するとそこに、声が響く。




「仲間・・・じゃなかったのか?」




その声の主はラクサスではない。
ナツでもシュランでもない、全く別の声。

「それを消して喜んでるとァ、どうかしてるぜ」

そして続くように、別の声が響く。

「全くだ・・・貴様は明らかに狂っている。姉さんが嫌うのも無理はないな」
「ア?」

聞こえてきた声2つにラクサスが振り返ると、黒髪と青髪が揺れた。



「まぁ、消えてねぇがな。コイツを消すのは俺の役目だからよォ」



1人はガジル・レッドフォックス。
ナツのベルトを右手で掴み、左手にシュランを抱えている。



「こいつ等は消させんぞ、ドレアー・・・いい加減貴様は頭を冷やせ」



1人はクロス=T=カトレーン。
重症状態にあり、苦しそうに息をするが、立ってはいられるようだ。

「ガジル様・・・クロス様・・・」
「ガジル・・・んがっ!」

ばっとベルトから手を離され、ナツが床に顔面から直撃する。

「つかテメェ、医務室にいたんじゃねーのかよ」
「抜け出してきた。姉さんには悪いが少し無茶をする」

ガジルの言葉に悪戯っぽくクロスは笑う。

「また獲物が1匹。ククク・・・」

ガジルとクロスを見たラクサスは狂ったように笑みを浮かべる。
1匹は多分ガジルの事だろう。クロスは既に戦闘不能となっている為、参加不可能だからだ。

「消えろ消えろォ!俺の前に立つ者は全て消えるがいいっ!」

ラクサスは両腕を広げ、吼える。

「ラクサスは俺がやる。2人ともひっこんでろ・・・」
「2人、というのはレッドフォックスとセルピエンテの事か?なら俺はひかんぞ」

こんな状態で状況であるにも拘らず、クロスはザ☆爽やかを貫き通す―――ちなみにシスコン全開モードの時も常に爽やかな笑顔を浮かべており、場合によっては怖い―――。

「コイツには個人的な借りがあるんだよ」

ガジルが口を開く。

「だが奴の強さは本物のバケモンだ。マカロフの血を引いてるだけの事はある」

ガジルの言葉が正しい為、ナツは困ったように沈黙する。

「気に入らねぇが、やるしかねぇだろ」

言葉通り気に入らなさそうな表情をしながら、ガジルは提案した。

「共闘だ」
「!」

その言葉にナツが目を見開く。

「じょっ・・・!冗談じゃねぇ!ラクサスは俺が倒すんだ!つーかお前となんか組めるかよ!」
「そんな事仰ってる場合ではありませんよ、ナツ様」
「シュランの言う通りだ。よく見ろ、あれがテメェの知ってるラクサスか?」

シュランとガジルの言葉にナツは目線を左隣から前に向ける。

「ハハハ・・・消えろ・・・消えろ・・・」

その目に映るのは、ラクサスだった。
――――――狂ったように笑い、ただ目の前にいる人間を消す事だけを考えているラクサスが。
ナツは言葉を失った。

「あれはギルドの敵だ!ギルドを守る為にここで止めなきゃならねぇ!」
「レッドフォックスの言う通りだな。ここに来るまでに見た他の奴等は神鳴殿とやらの反撃で全員動けん。今ここで奴を止めなければどうなるか解っているだろう?ドラグニル!」

そう言われ、ナツは考え込む。
そしてふと疑問を見つけ、顔を上げた。

「お前がギルドを守る?」
「守ろうが壊そうが俺の勝手だろーが!」

ナツの指摘に照れを隠すかのように怒鳴るガジル。

「この空に竜は2頭いらねぇんじゃなかったか?」
「いらねぇな。だが、こうも雷がうるせぇと空も飛べねぇ」
「今回だけだからな」
「当たり前だ!テメェとはいずれ決着をつける!」

言い合いをしながらも、共闘する事は決定となった。

「そうか。ならば俺も力を―――――っ!」
「怪我人は休んでろって」
「すいません・・・私も体が・・・」
「シュランはそいつ連れて後ろにいろ」

クロスもその手に剣を握ろうとするが、魔力の回復が完全ではない為激痛が走る。
シュランは申し訳なさそうに頭を下げ、クロスを引き摺りながら柱の陰へと隠れた。



そして―――――――――始まる。




「「行くぞ!」」




―――――――――火竜と鉄竜、2頭の竜の共闘が。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
もうすぐバトル・オブ・フェアリーテイル編終了・・・。
早い・・・そして早い・・・あ、言ってる事同じだ。

感想・批評・ミスコン投票、お待ちしてます。
・・・今のところ、トップ3は決められるけどそこから下は全部一緒だ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧