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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
A's~オリジナル 日常編
  49話:和やかなお昼…なのかな?

 
前書き
 
一週間ぶりです。もう少し早く更新したいところですが、オリジナルの話になると展開考えたりするのが難しいので時間かかってしまいます(言い訳)。ごめんなさい。

後一つ。

鎧武、まどマギ色がだいぶ出てきました。
 
 

 
 


「やぁ」
「……またお前かよ」

学校に来て五回目程のチャイムが鳴って、いつも通りのお昼休み。
いつもならあいつらに誘われて、屋上なり教室なりで弁当を食うのだが……最近になって、というよりこいつに出会ってからほとんどこの時間になると顔を見る。

沢渡 カオル。
はやての転校発表の時に出会った人物だ。

「な~んでお前はいつもいつも…」
「食事は人数いた方が楽しいでしょ」

まぁ確かにそうではあるが…

「お前、食事じゃなくて俺達のやり取りの方を楽しんでんだろ」
「テヘッ!」
「テヘじゃねぇよ」

それは男がやっても気持ち悪いだけだぞ。

「士く~ん!」
「おう」

その時丁度なのはから声をかけられた。なのはの近くにはいつもの四人。

「…どうせついてくるんだろ?」
「当然」
「はぁ…」

四年生になってから、なんか厄介事が多くなってきた気がしてきた。

「それになんと、今日はちょっとしたサプライズを」
「あ?」
「お楽しみ」

なんのこっちゃ。

「よくわからんが、はよ行くぞ」

少しニヤニヤしているカオルを無視して、なのは達のところに向かう。

「何してたのよ、士」
「はいはい、変なのに付きまとわれてたよ」
「やっほ~」

俺の後ろについてきていたカオルが、手を上げながら挨拶する。それを見た五人は、呆れた様子でカオルを見た。

「またあんた…」
「にゃはは…」
「なんかいつも通りって感じがするね」
「まぁ人数いた方が楽しいからえぇんやけど」
「そうだね」

五人それぞれの反応に、カオルが拗ねたように口を尖らせる。

「なんだよ~、つまらなそうに」
「いや、つまらないって訳やないんやけど…」
「そんな皆さんにサプライズゲスト~!」

ゲスト?と俺も含めた事情の知らない全員が声を上げる。

「ふふ……こちら、駆紋 龍也くんで~す!」

笑いながら後ろへ手を回した。
そこには、いつの間にか気だるそうに立っていて、頭をポリポリ掻いている少年がいた。

「「あっ…」」
「「「「…?」」」」

そこで声を上げたのは、俺とアリサの二人。他の四人はこの人誰?って顔で首を傾げた。

「って士、こいつの事知ってんの?」
「あぁ、こいつの紹介でな。それにしてもアリサの方は…」

『こいつ』の部分で親指をカオルに向けながら言ったら、アリサは眉を寄せながら頷いた。

「私は家柄っていうか…そういうのの関係で、色々なパーティーに呼ばれたりするんだけど……そこで何度か顔合わせてるし、紹介も一回されたことがあるわ。確か結構有名な会社の跡取り息子だって聞いてるわ」
「ほぉ~、へぇ~」

それを聞いたカオルが駆紋に顔を向けて、マイクを持った時のような手を作って駆紋に差し出した。

「と仰ってますが…?」
「……知らん」
「…は?」

カオルの質問に駆紋は短い返答で返した。アリサもこれには変な声を上げてしまう。

「…へ、ちょっ…嘘でしょ!?何度も会ってるのに…」
「知らんもんは知らん。ていうか覚えてない」

駆紋はこれまた面倒くさそうに息を吐きながら答え、アリサは頬を引きつらせた。
周りにいた四人も口を小さく開けたまま固まっていた。カオルだけはあ~あ、と言って呆れているが、

(そうか…カオルの言っていたのはこういう事か…)

要するに、人間関係を作るのが苦手…いや、それ以上なのだろう。
こうなってくると、カオルがさせたい事もなんとなくわかるような気もしてきた。

そう思っていると、カオルが駆け寄ってきて、耳元で囁いてきた。

「龍也ってこんな感じなのよ。だからちょっと…協力してくんない?」
「はぁ…そういう魂胆か…」

一応友人として気にかけてるんだな。

「……わかった、協力するよ」
「ん、そんじゃ、お願い」

カオルはそう言い残すと、顔を未だに時間が止まっている四人に向けて…

「皆~、ご飯~」
「あ、え~っと…」
「そ、そうだったわね…」

そこでようやく五人の時間が動き始め、少し慌てたように行動し始めた。

「……で、どこで食うんだ?」
「んぁ、そうだな…」

少しイラついた様子で聞いてくる龍也に対し、俺は顎に手を当てて考える。五人の様子から察するに、今日は教室で食べるみたいだが…

「屋上いかね?最近温かくなってきたし」
「馬鹿ね、はやてが上に行けないじゃない」

俺の言葉に、まるっきり馬鹿にした表情でアリサが返してきた。
それに対して、俺は知ってるよ、と返してはやてに向き直す。

「はやてはどうしたい?屋上行ってみるか?」
「へ?あ、あぁ…屋上かぁ…行ってみたいんやけど…」
「じゃ、決まりだ」

はやての返答に、俺はニヤリと笑いながら返した。

「屋上、行こう」
「えぇ!?」
「でも、はやてが…」
「それさ、結果的に屋上に行けばいいんだからさ」

俺の一言になのはが驚きの声を上げ、フェイトも慌てた様子でいた。俺はそこでいったん言葉を切って、

「俺が抱えていけばいいんじゃね?」
「……ふぇ?」
「「「「…え?」」」」
「へぇ、ふふふ…」
「………」

俺がそう言った瞬間、再び五人の時が止まった。その横にいたカオルは静かに笑みをこぼし、駆紋は興味なさそうにそっぽを向いていた。カオルよ、このやり取りはそんなに面白くないと思うが……

「まぁ、沈黙は肯定と受取ろう」
「へ?あっ…!」

もう時間も惜しくなってきたので、なんか言おうとしたはやてをほっぽって車イスの取っ手を掴んで教室から外に出る。その時ちゃんと俺とはやての弁当を持つのも忘れない。
その途中で後ろを確認すると、四人は相変わらず固まったままだが、カオルと駆紋はちゃっかり歩いてきているのが見えた。

「つ、士君、ちょぉ待って!私心の準備が…!」
「んなもん、どこで必要になるんだよ」

そんな事を話している内に、階段の目の前までやってきた。

「さて、車イスは…カオルに任せるか」
「だ、だから士君、待ってって!なのはちゃん達もまだ来てないし…!」
「いいのいいの、どうせ後から来んでしょ。お~いカオル~。お前車イス任せたぞ~」
「え~、それ電動でしょう?重いよ~」
「ごちゃごちゃ言ってると桃子さんの作ったもんやらねぇ」
「頑張らせてもらいます!」

よし、交渉成立だ。

「それじゃあ失礼しますよ、お嬢さん」
「ちょっ!?だから待ってってゆうて…!」
「問答無用!」

はやてが反論する前に、素早く首の後ろと膝裏に腕を通し、

「ひゃぁっ!?」
「っと、大丈夫か?」

一気にはやての体を持ち上げた。その時はやてが変な声を上げるので、顔を覗きながら尋ねるも、頬を真っ赤にして慌てふためくだけで返答はなかった。

「あっ、はやてちゃん!」
「お、やっと来たか」

そこへなのは達四人もようやくやってきた。たく、どんだけ突っ立てたんだよ。

「全員揃ったし、行くか」
「行くかじゃないわよ!」

アリサがうるさいがそんなの置いといて、俺ははやてを抱えたまま一気に階段を駆ける。

「ちょ、門寺君車イス重いんだって!屋上まで持ってくのつらい!」
「男ならそんなことで音を上げるな!」

踊場で曲がるとき、ひ弱な男・カオルがぐちぐち言いながらもちゃんと車イスを持ち上げようと頑張っているのが見えた。

「士君…」
「あ?」
「あの~…重くない?」

抱えられるはやてが、気恥ずかしそうに尋ねてくる。なんだ、そんなことかよ。

「全然。このまま投げ飛ばせるぐらい」
「えぇ!?」

因みにこの状態は魔力での強化もなしだ。

「てか軽すぎだろ。大丈夫なのか?」
「い、いや~…まぁずっと車イスやったし、大丈夫やと…思う…」

まぁ、女子に体重の話をするのはあまりよくないな。

「まぁもうすぐ屋上だし、もう問題ないな」
「あ…」

今いるこの踊場を曲がれば、目の前に屋上に出れる扉が見えてくる。
そこで一度立ち止まり、後ろ…というより下をのぞき込む。

「いやこれ…マジ、重い…」
「ちょっ、危ない!ちゃんと持ちなさいよ!」
「……早くしろ」
「ちょっと風当り強くない!?」

カオルの叫び声が聞こえてくるが……

「よし、大丈夫そうだな」
「あれは大丈夫っていうんやろか…」

いいんだよ、あれはあれで。

「んじゃ、行くかね」
「う、うん」

再びはやてを抱えたまま、階段を上り始める。もう向かいには屋上への扉がある。

「実際小学校の屋上食える場所あるのって、数少ないと思うんだけどな~」
「え?何やて?」
「んにゃ、なんでもない」

前の小学校は給食制で屋上で食べるなんてやったことなかったから、俺にとっちゃ昼の弁当を屋上で食べるなんてちょっと贅沢な気がしてならない。

「それじゃ、屋上入るぞ~」

そう前ふりを置いてから、扉のドアノブをひねる。

屋上は既に数組のグループがいて、長いすもいくつか使われていた。
そんな中、一つだけ使われてない長いすを確認する。

「お、空いてるの発見」

その見つけた長いすに向かって歩いていき、ゆっくりと注意深くはやてをイスの上に乗せる。

「あ、ありがとう…」
「おう」

そのはやての横に座り、持っていたはやての弁当を渡す。

「ま、ここで『礼なんていらない』なんて言えたらかっこいいけどな」
「まぁそやね」

俺の一言にクスクスと微笑むはやて。それを一度写真に収めたかったな、とカメラを持ってきてないのを後悔しながら空を仰いだ。

「てかさ、お前はもう少し我儘になってもいいと思うぞ」
「…え?」

とぼけたような声を上げるはやての顔を、横から見ながら続ける。

「前はその…一人だったのは俺も知ってる。でも今は俺も、なのはもフェイトも、アリサやすずか、シグナム達だっている。もっと言えばリンディさんや桃子さん、付き合い短いけどカオルや…まぁあんな奴だけど駆紋だっているし」
「……うん…」
「少なくとも、俺はお前から我儘言われて、それに応えないようなことはするつもりないし…そこら辺は多分、なのは達も同じだろうから」

それにさ、と言ってからはやての膝を軽く叩く。

「この足だって今すぐでなくとも、いずれは治るんだ。そうなりゃあ色んなところに行けるし、今までできなかった色んな事ができるようになる。そうなれば、人生楽しくなるぞ~」
「士君、なんかおじさん臭いで」

実は(精神)年齢的にはおじさん近いんだけど、なんて言える筈もなく。

「ま、何がいいたいかと言うと…遠慮なく頼れ。一つ二つの我儘ぐらい、俺一人でもどうにでもなるし、俺に頼めなくても、なのは達にでも頼めばいい。皆でやれば、大抵のことはできるしな」
「う、うん…」

……ちょっとキザっぽかったかな。
なんて思いながら、肘を太ももの上に置いて頬杖をつき顔を背けた。

「……それじゃあ…お願いしよかな」
「ん?」
「んや、なんでもない。かっこいい言葉、ありがとーな」
「お、おう…」

ちょっと恥ずかしい気分でいたが、はやてがこう言ってくれると少しばかりうれしい気持ちが出てくるのも事実。

「づ、づいだぁ~…」
「あ、あそこだ!」
「あんた遅すぎよ」
「ちゃんとしろ」
「ほんとに風当り強すぎるよ!」

ようやくやってきたなのは達六人。若干一名汗だくで髪を垂らしているのがいるが、そこは突っ込まない。

「さてさて、これで念願叶って屋上で飯が食えるな」
「い、いや、念願やないけど」
「そこは乗っといた方がいいやろ」
「あ、関西弁に合わせた」

はっはっは!これこそ通年三十生きた末の技術よ!

「おい早く来いよ!飯食おうぜ~」
「はいはい」
「こいつがいけないのよ。車イス持ってくるの遅いんだもん」
「そう思うんだったら手伝ってよ!」

ぞろぞろとやってくるので、座る場所を端に移す。
俺が離れたことに対してなのか、はやてがあ、と声を上げた。その間になのは達が座り始める。

「お昼お昼~♪」
「はいはい、わかったわかった」
「そんな呆れたような言い方するなよ」
「………」
「…いや、黙られるのもあれだよ?」

上からカオル、俺、再びカオルで駆紋、最後にカオルの順だ。
ま、いっか。と言ってから、カオルは弁当を取り出し、蓋を開けた状態でこっちに差し出してきた。

「てか早く桃子さんの料理!」
「はいはい」
「だから呆れたように言うなよ」

そう機嫌悪くするな、と言いながら開けた弁当の中からから揚げをカオルの弁当の中へ入れる。

「Wao!待ってました!」

電動の車イスを屋上まで持ってくるという重労働の後という所為か、いつも以上に喜びながらから揚げを口に運んだ。

「そういえば士、最近はあんたが作ったりはしないの?」
「ん?あぁ、最近はちょっと忙しいから桃子さんに任せっきりだな」

忙しい、というのもほとんど管理局関係だ。なんでもクロノの話だと、今は所属先は武装隊扱いだが、いずれは特別な部隊を作ってくれるらしい。

何やら上の連中…なんだったか?『なんとかの三提督』とかが怪人の存在、もっと言えば大ショッカーの存在をかなり危険視しているらしい。
で、そこら辺の魔導士じゃなんの役にも立たないってことも伝わっているらしく、奴らに対抗する為の部隊を作ることになった。その為の資格勉強やらもやってたりするのだ。

まぁそれでも当分は武装隊員だし、要請がない限りは仕事もない。職場上はなのはと同じというのも、なんだかいつも通りな気がしてそこまで困るようなこともなかった。

「なんだアリサ、俺のおかずでも食って文句の一つでも言いたいのか?」
「んな訳ないわよ!」

ふん、とアリサは鼻息荒くそっぽを向いてしまう。何そんなに不機嫌になってんだよ。

「最近士君の料理食べてないんだよ」
「へぇ~」
「まぁ士にも色々あるし、仕方ないよ」

弁当食べていたなのはやすずか、フェイトが食べながら会話する。

「…色々って?」
「あ、あ~!じゅ、塾とかその他諸々だな!うん」

ちょっと焦ったが誤魔化すのはちゃんとできた。うん、俺偉い。

「はぁ~…って士!あんたまた私のおかずを!」
「ん?バ~カ、遅ぇよ。お前がそっぽ向いた瞬間にもらっておいたから」

カオルに上げた所為でおかずが減ったからな。その分もらった。

「あんたはいつもいつも…!」
「はっはっは!いつもいつも隙を見せる貴様も悪い!」

こうして過ぎていくいつもの昼食時間。
弁当を食べ終えてもベラベラと話し続け、それはチャイムが鳴るときまで続いた。

因みに。はやての車イスはカオルが運ぶことになった。

「てかこれ、最初っから下に置いて行ってもよかったんじゃ…?」

車イスを運び終わった後のカオルの呟きには、誰も突っ込まなかった。
………別に俺は運べなんて言ってないし。


 







 
 

 
後書き
 
もう数話書けたらStrikersに入る前に長編(?)を入れます。

ではまた次回。
  
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