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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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ヴィヴィオとママと・・・・

全てが白に染まる広さも何も分からない空間。ただその空間にあるのは、淡く碧く輝いている直系5m近い光球。それを囲むようにして存在しているのは11の玉座。玉座1つ1つで色が違い、背もたれの上にそびえ立っている十字架の形も様々だ。その玉座に座っている11の人影も、それぞれ色違いの外套を羽織っていて、玉座や外套と同じ色の仮面をつけている。
ここは“神意の玉座”――また名を“遥かに貴き至高の座”と呼ばれる最高位次元。あらゆる世界の意思“界律”が交差する、全てが在って、全てを識る究極の根源。

「それで? 絶対殲滅対象(アポリュオン)が活発になってきたっつう話だろ?」

そう大して興味もないといった風な声に出しているのは、第二の力と呼ばれる金色の玉座に腰掛け、肘掛に肘を置いて頬杖をついている男・“死と絶望に微笑む者”の二つ名を持つティネウルヌス。

「ここ最近、一切活動を見せていなかったアレらがよく界律に引っかかる」

淡々と話すのは、第一の力と呼ばれる白銀の玉座に腰掛けている者、“心優しき始まりたる者”の二つ名を持つアーク。仮面をつけているために性別は不明だが、声からして男であると思われる。

「現状において活動しているのを確認できるのは、ナンバーⅡ自由リーベルターテム、ナンバーⅧ覚醒ススキターティオー、ナンバーⅨ支配インペリオールム。それに、ナンバーⅩⅠ永遠アエテルニタス。そして、番外位であるナンバーEX大罪ペッカートゥムの6体となっています」

左手を挙げ報告するように告げたのは、第六の力と呼ばれる翡翠の玉座に腰掛ける少女、“舞い散る雪に踊る者”の二つ名を持つ雪姫(ユキ)。仮面とフードを外しているため、その白い肌、綺麗な黒瞳と黒髪がよく見える。

「14体、番外位を入れれば15体中5体が活動中というわけか・・・。それで現在、その5体には誰が当たっているんですか?」

第九の力と呼ばれる蒼穹の玉座に腰掛けている男・“果て無き幻想を追う者”の二つ名を持つ優斗が、それぞれの“界律の守護神テスタメント”に問うた。各々が他の守護神たちと視線を交わして合って少し、この6体に対処している“テスタメント”から声が上がる。

「永遠アエテルニタスは私が担当している」

そう応じるのは1stT・テスタメント・アーク。

「はいはーいっ! 自由リーベルターテムと支配インペリオールムは僕だよーっ!」

勢いよく玉座の上に立ち上がって大声で答えたのは、第七の力と呼ばれる真紅の玉座に腰掛けていた少女・“上位なる神の抹殺者”の二つ名を持つルフィスエル。

「覚醒ススキターティオーは俺だ」

第十の力と呼ばれる銀灰の玉座に腰掛ける男・“欲望のままに詠う者”の二つ名を持つフヴェルトヴァリス。退屈しているのか腕を組みながら、コキコキと首を鳴らしている。

大罪(ペッカートゥム)は私と・・・・」

「私が担当しているわ」

そう答えた二柱の“テスタメント”に視線が集中する。その視線に籠められた意味は“何故?”の1つだけだ。第四の力と呼ばれる漆黒の玉座に腰掛ける“天秤の狭間で揺れし者”ルシリオンと、第三の力と呼ばれる純白の玉座に腰掛ける“剣戟の極致に至りし者”シャルロッテは、その視線を軽く受け流して、苦笑を浮かべた。

「はぁ!? 何で番外位如きにお前らが二柱がかりで対処してんだよ? ありねぇだろうが、普通よぉ」

「うるさいわね、2nd・テスタメント・ティネウルヌス。それに番外位だけとは限らないのよ。私の分身体から送られてきた情報によると、まだ出てくるみたいなのよ、別のアポリュオンが。しかも高位ね」

「そういうことだ。私とシャルロッテの召喚された理由が、そこにあるのはまず間違いないだろう」

シャルロッテは外している仮面をいじりながら静かに告げた。ルシリオンもそれに続いて腕と足を組んだ状態で言葉を紡ぐ。

「二柱がかりの契約、ですか。一体、誰でしょうか?」

シャルロッテの隣の、第五の力と呼ばれる桃花の玉座に腰掛ける少女、“愚者と賢者は紙一重”の二つ名を持つマリアが、人差し指をあごに当てながら口にした。

「そうですね、ルシリオン君とシャルロッテ君が召喚されるとなると大事かもしれないね・・・」

第八の力と呼ばれる燈黄の玉座に腰掛ける“高貴なる閃光の者”の二つ名を持つ少年、プリンス・オブ・レディエンスが考えるような仕草でマリアに応えた。
 
「確認が取れていない残りのアポリュオンの実力は、皆さんも知っての通りレベルが高いです。特にナンバーⅢ宇宙ウーニウェルスム、ナンバーⅥ運命フォルトゥーナ、ナンバーⅦ天使アンジェラス、ナンバーⅩⅥ終極テルミナス。この4体が関係してくると、複数同時召喚される場合もありますし・・・・」

6th・テスタメント・雪姫の言葉に、“テスタメント”全員が沈黙する。確かにこの4体が相手になると、複数の“テスタメント”が一度に召喚される。特にナンバーⅦの天使アンジェラス。これの相手のときは間違いなく最低でも五柱が召喚される。だが、それでも勝てたことが一度もない。それほどに強力無比の存在だ。残りの3体もまた、そこまでとはいかずとも強大な力を持っている。

「どちらにしてもアポリュオンがまた姿を現しているのは間違いない。アレらに如何な目的があろうと滅ぼさなければならない。それが我らテスタメントの存在意義。如何な犠牲を払おうとも確実に滅ぼせ」

今まで沈黙を保っていた第零の力と呼ばれる透明な玉座に腰掛けていた者、“創世より嘆きし者”の二つ名を持つアイオーンが、玉座内に響き渡る声で告げた。

†††Sideルシリオン†††

「はあああああっ!!」

「――げふっ!?」

私の鳩尾にそれは綺麗に入るエリオの“ストラーダ”の一撃。障壁も何もないため、ダイレクトに、かつクリティカルなダメージが全身に浸透する。

「Å%☆$Я?*⊿∽・・・・・orz」

「うわぁあぁぁっ! ルシルさん!?」

「ル、ルシルさんっ!?」

今は早朝訓練で、ライトニング2人との訓練の真っ最中。そんなときに“神意の玉座”の本体とリンクしていたため、反応が遅れてつい一撃を受けてしまった。その一撃で弾き飛ばされた私は2~3mと後退したが、背中から落下するという無様は晒さなかった。

「あいたた・・・」

腹を押さえて片膝立ちをしていると、エリオとキャロが急いで駆け寄って来てくれた。

「だ、大丈夫だ・・・、すまなかった、エリオ。少し気が散っていた。許してくれ・・・」

「そんな、僕の方こそすいませんっ!」

「ルシルさん、大丈夫ですか!? 治癒魔法を掛けます!」

「いや、エリオは何も悪くない。大事な訓練中に集中力を欠いていた自己責任だから謝るのは私だけだ。それにキャロも、ありがとう。大丈夫だよ」

「「あ、はい・・・」」

ああいうのは後々に本体から情報が来るため、わざわざ本体とリンクする必要性はほぼ皆無。しかし、現状を早く知るためにも情報が欲しかった。それにリンク中は、別に意識を全てリンクに割かれることはない。
だから訓練中にでも問題ないだろう、と思っていたのが間違いだった。あまりにもエリオを軽視し過ぎていた。そうだ。エリオは、なのはとヴィータ、フェイトの教導を受けてきたんだ(もちろん私も参加していた)。もう六課に来るまでの護られるだけの男ではないんだよな。

「集合!!」

なのはから集合がかかる。なおも心配してくれているエリオとキャロの頭を撫でつつ「もう大丈夫だよ」と微笑みかける。

「それじゃ行こうか、エリオ、キャロ」

「「はいっ!」」

エリオとキャロの肩の手を置いて歩き出す。そして、なのはとスターズと合流した後は軽くストレッチや連絡事項の確認を終え、そして解散した。

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

「お疲れ様、ルシル君」

「ああ、お疲れ様、なのは、ヴィータ」

「おう、お疲れさん」

フォワード陣の早朝訓練を終えて、ヴィータちゃんとルシル君と一緒に隊舎へと向かう。3人でそれぞれが担当した子たちの訓練の出来を報告し合っていると、私の耳に何か鼻歌のようなものが聞こえた。ヴィータちゃんとルシル君にも聞こえているようで、周囲を見渡している。

「ラーララ~ララーララ~~ラーララーララ~~~♪」

これって、まさか・・・暴れん○将軍のテーマ? 少し音程がズレてるけど・・・。次に聞こえてきたのは、“パカラパカラ”という、まるで馬の走る音。そして私とヴィータちゃんとルシル君は見た。黄金のたてがみをした白馬を。それに跨るシャルちゃんとヴィヴィオ。その後ろからフェイトちゃんがオロオロしながら白馬を追っていた。

「・・・ええええええっ!?」

「うおっ? 馬だっ! しかも脚が8本もある! なんだコイツ!?」

ほんの一瞬だけ思考が止まっちゃった。再起動した私はあまりの光景に大声を上げてしまった。

「お~ま~え~は・・・・アホかぁぁぁぁぁっ!」

ルシル君が叫びながらシャルちゃんとヴィヴィオが跨っている白馬へと全力疾走。その手に持っているのはピコピコハンマー、しかもかなり大きい。ルシル君は跳躍。そしてシャルちゃんの頭上へ一直線に落ちていく。

「あんまーーーーいっ!!」

上から降ってきたルシル君のピコハンを、シャルちゃんはこれもまた大きいハリセンで捌いた。もうわけが解らないよ、2人とも・・・。結構カオスな状況にそんなことを思いながら、私とヴィータちゃんもみんなの元へと駆け寄る。

「えっと・・・シャルちゃん・・・これは?」

「なあ、セインテスト。これもお前の使い魔か?」

「ん? あ、ああ、そうだ・・・!」

ヴィータちゃんは白馬の体を撫でながら訊き、ルシル君はシャルちゃんにピコハンの一撃を入れようと頑張りながら答えてる。シャルちゃんは白馬から降りて、ルシル君のピコハンをハリセンで捌き続けながら応えた。

「まずはおはよう、なのは。で、さっきの質問の答えは“馬”だよ」

そんなの見れば判る。どこからどう見ても馬、それは判ってるんだってば。私が聞きたいのは、どうしてこんなことになっているのか、だよ?というか、余裕でルシルの連撃を捌いてるよね。さすが剣士さん。ルシル君の必死さが可哀想になってくるよ。

「シャル、なのははそういうことを訊きたいんじゃないと思うんだけど・・・」

そうだよ、フェイトちゃん。私の言いたいことをちゃんと判ってくれてありがとうだよ。

シャルちゃんは「えいっ」ってハリセンを振るって、スパーンといい音をさせながらルシル君の顔面にヒットさせた。よろめきながら後ろに退く、鼻を押さえたルシル君。今のは痛そうだ。ヴィータちゃんが「うぉ、クリティカルヒットだっ」って笑う。

「判ってるって、なのはが言いたいことくらい。見ての通り散歩だよ、なのは。フェイトとヴィヴィオが散歩していたのを見て、私も一緒したいな~って思ってさ」

「だ、だからって・・・何故に天駆閃馬(スキンファクシ)を呼び出すかな、君は?」

ルシル君が馬の名前?と思う言葉を口にしながら、未だに馬に跨っているヴィヴィオに近づいていった。ヴィヴィオの方はさっきまでのやり取りに少し怯えているようだったけど、「えへへ♪」ルシル君が頭を撫でると気持ち良さそうな表情を浮かべた。出た、ルシル君のスキル・神の撫で手。ルシル君に撫でられると、本当に気持ち良くてホワってなる。

「まあまあ、そんなことはいいじゃない。天覇神馬(スレイプニル)より遥かにマシでしょ? それにー、楽しかったよね、ヴィヴィオ?」

「うん♪」

ヴィヴィオもすっかりシャルちゃんに慣れたようだ。ヴィヴィオが六課に来て数日が経っている。人見知りが激しいヴィヴィオだけど、私やフェイトちゃん、ルシル君にはすぐに懐いてくれた。だけどシャルちゃんは、理由は判らないんだけどヴィヴィオに怖がられていた。
でも懸命な私たちのフォローのおかげで、ヴィヴィオはシャルちゃんにも懐くようになった。初めてヴィヴィオからシャルちゃんに近付いて行ったとき、シャルちゃんは嬉しさのあまりにパーティを開こうとしたんだよね。

「それじゃ、ヴィヴィオ。なのはさんとルシルさんとヴィータさんにおはよう、って」

ルシル君に馬から降ろされたヴィヴィオが「おはよー」って挨拶した。

「「おはよう」」「おう、おはようさん」

私とヴィータちゃんとルシル君も挨拶を返す。

「なのはとルシルとヴィータも朝ご飯、一緒に出来るよね?」

「うんっ。一緒に食べようね~♪」

「あー、わるい、あたしはダメだ」

「すまない。私も馬鹿と少し話があるから、今日は一緒できない」

たぶん馬鹿というのはシャルちゃんのことだろうね。シャルちゃんもそれが判っているのか「失礼なっ」って言って、未だに手に持っているハリセンでルシル君の頭を何度も叩いている。ちょっとシャルちゃん。ルシル君がハゲちゃうよ。というか痛くないのかなぁ、あんなに連続で叩かれて。

「そっか。それじゃ、仕方ないよね」

「ルシルさん・・・来ないの?」

「ごめんな、ヴィヴィオ。その代わり、お昼は一緒に食べような」

「うん。約束だよ」

「ごめんね~ヴィヴィオ。なのはとフェイトも」

そう謝ったルシル君は白馬を消して、シャルちゃんと一緒に自分たちの部屋に戻っていった。そして最後にシャルちゃんの頭をさっきのピコピコハンマーで思いっきり殴打した。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

なのは達と別れた私とルシルは、大事な話があるってことでルシルの部屋にやって来た。

「ああもう、君に低ランク限定とはいえ異界英雄(エインヘリヤル)の召喚権限を与えたのは間違いだったよ」

「だって面白かったんだもん。それにヴィヴィオも楽しそうにしてたしね」

私がこんなに子供好きだったなんて、自分自身で驚きだったりする。でも小さい頃から結構憧れだったりしてたんだよね、子育てとかそういうのが。もしこれを聞いた生前の同僚や部下たちはどういう反応するだろうな~? きっと、信じられないって言って笑うかもしれない。あ、でもグレーテルとティファなら・・・

――シャルロッテ様のお子さんなら、きっと可愛く強いですよね~――

――その時は私が助産師になってあげる。ま、相手が居ればだけど――

とか言って、祝福して笑ってくれそう。ティファだけは素直に祝ってくれなさそうだけど。

「はぁ、次からは気をつけてくれ。今回はあまりに急だったから驚いたぞ、本当に」

「は~い。ごめんなさ~い」

次からはちゃんと許可を取ってから召喚しようっと。そうしたらどんな“エインヘリヤル”でも召喚できるかもだしね。

「それで? 私に何か話があるみたいだけど・・・・」

気持ちを切り替えて、ルシルが言っていた“話”とやらを聞いてみる。ルシルから椅子に座るように勧められたけど、私は一番近かったベッドに座る。別に汚れていないからそんな、え~、そこに~?みたいな顔しないで。私は服も体も清潔なのよ?

「・・・・。まぁいいか。話というのは絶対殲滅対象(アポリュオン)についてだ。つい先程、本体とリンクして情報を得てきた」

「はぁ? わざわざそんなことしたの? そういう情報って、必要とされたときに必要なものだけ送られてくるじゃない」

現状で必要な情報だけが随時送られてくる。だから本体とリンクする必要なんてない。

「それはそうだが、早めにペッカートゥムらアポリュオンの動向が知りたかったんだ。それで判ったんだが、どうやら近頃アポリュオンの動きが活発になってきたみたいなんだ」

「活発? 他のところにも出現してるってこと?」

「ああ。現在確認が取れているのが、ナンバーⅡ、ナンバーⅧ、ナンバーⅨ、ナンバーⅩⅠ。そして、私たちが担当しているナンバーEXの5体だ」
 
5体が同時活動中? 確かに気になる情報だとは思う。こうまで動く連中が多いと、いつだったかは忘れたけどやった総当たり戦を思い出す。だけど挙げられた連中はさほど強いわけでもない。まぁ斃しきれていないからこそ生き残っているわけだけど。

「そいつらに対処してるのはどの守護神なわけ?」

「アークがナンバーⅩⅠ、ルフィスエルがナンバーⅡとナンバーⅨ、フヴェルトヴァリスがナンバーⅧだ」

「ナンバーⅡとナンバーⅨの2体の消滅は確定ね。ルフィスエル相手に勝てるわけがない。それにアークが当たっているナンバーⅩⅠも、おそらく消滅するはず。それとナンバーⅧって確か覚醒のススキターティオーだったっけ? あいつって結構強いけど・・・」

以前、私もススキターティオーと戦ったことがある。そのときは逃げられてしまったことで決着しなかったけど、戦い続ければどうなっていたか・・・。だから私より弱いフヴェルトヴァリスにススキターティオーは少し荷が重いかもしれない。ルシルは「大丈夫じゃないか?」って軽く言うけど、みんながルシルみたいな反則なわけじゃないんだから。

「問題は姿を見せていない他のアポリュオンだ。ペッカートゥムがどのナンバーをこの次元世界に呼び出すかは判らないが、私が召喚されたことを考えると、ナンバーⅢ宇宙ウーニウェルスム、 ナンバーⅥ運命フォルトゥーナのどちらかの可能性が高い」

ルシルは、紅茶のカップを私に渡しながらそんな可能性を提示してきた。私はそっとカップに口をつけて紅茶をいただく。ん。相変わらず美味しいんだよね~。確かにルシルの言うとおりかもしれない。あの2体とルシルの因縁がもうどれくらいになるかも判らない。

「なるほどね。一度も決着していないナンバーⅢ、そして勝てたことのないナンバーⅥ。私も一緒に召喚されたということは、後者の方が高いと思うよ、ルシル」

ナンバーⅢウーニウェルスムとは引き分けが続いているけど、絶対に勝てないわけじゃない。そしてナンバーⅥフォルトゥーナは、ルシルを一度斃したことがある。けど、それはルシルにとっての弱点を突いたからこそ勝てたものだ。だから私がルシルの弱点――人命を人質にとられるような事をフォローすれば勝てると思ってる。

「そうか。一応相手がフォルトゥーナかもしれないということは考えておこう」

「了解」

それから対フォルトゥーナ戦のイメージを、なのはから昼食の誘いが来るまで続けた。それにしてもやっぱ強いわ、フォルトゥーナ(泣)。けど負けるつもりなんかないけどね。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

「なのはがヴィヴィオの保護責任者? 私は良いと思うよ。ね、ルシル?」

ヴィヴィオの待つ私とフェイトちゃんの部屋に行く前に、シャルちゃんとルシル君の部屋に寄った。2人と合流して、改めて私とフェイトちゃんの部屋に向かう途中、さっきスバルに話したヴィヴィオの引き取り手が見つかるまでの間、私が面倒を見るって話をした。

「ヴィヴィオが一番懐いているのは現状じゃなのはだしな。悪くない話だと思うぞ」

シャルちゃんもルシル君も賛成してくれてる。

「そうですよねっ。ルシルさんとシャルさんも、なのはさんが保護責任者になるって話を聞いたら、ヴィヴィオが喜ぶと思いますよねっ? さっきなのはさんにそう言ったら、“う~ん、喜ぶかな~?”って言ったんですよ?」

スバルがさっき話してた内容をシャルちゃん達にも訊いてるけど、2人の表情からして私と同じことを思ってるみたい。

「保護責任者、なんて言ってすぐに解れというのはちょっと難しいんじゃない?」

「もっと砕けた言い方の方がいいんじゃないか?」

「そ、そうなんですか? でも砕けた言い方なんてありますか?」

「「「う~ん・・・・」」」

私の後ろで真剣に悩んでる3人。そうこうしてるうちに部屋の前に着いて、扉を開く。

「ぁ・・・!」

私たちに気付いたヴィヴィオが真っ直ぐに私のところまで走ってきて、私に勢いよく抱きついてきた。私も抱きしめ返して、「ヴィヴィオ、良い子にしてた?」ヴィヴィオを抱え上げる。

「うんっ」

「アイナさん、ザフィーラも、ありがとうございます」

「いえいえ」

この寮を管理してくださっている寮母のアイナさんと、ザフィーラに感謝する。アイナさんは、ヴィヴィオの世話を志願してくださった優しい女性(ひと)で、母親経験もあるから安心して任せられる。

「ヴィヴィオ。今日はね、大事なお話があるんだ。ちょっと難しいかもしれないけど、しばらくの間は私が、ヴィヴィオの面倒を見る保護責任者、っていうのになったんだよ」

「ほご・・・せきにん??」

やっぱり難しい話だったみたいで、判っていないみたい。だから「ほら、やっぱりよく判らない」って後ろで控えてたスバルに振り向く。シャルちゃんとルシル君は微苦笑。スバルは何か上手な説明をするためか唸ってる。

「え~と、なんて言えば解るのかなぁ。う~ん・・・・あ、つまり、しばらくはなのはさんがヴィヴィオのママだよ、ってこと・・・?」

スバルが散々悩んで口にしたのが、私がママになるということ。いきなりそんなことを言われて「え?」とか思っちゃったけど、でもママっていうのも悪くないかもしれないな~。

「・・・ママ?」

「え、あ、え~と・・・いや、その・・・」

ヴィヴィオが私を見上げて「ママ?」と呼んできた。そしてママという案を出したスバルは私を見て、しまった、みたいな顔をしてる。いやいや、どうしてそこでそんな顔をしちゃうのかな? 私じゃママになれないってこと?

「いいよ、ママでも。ヴィヴィオのホントのママが見つかるまで、なのはさんがママの代わり。ヴィヴィオはそれでもいい?」

床に下ろしたヴィヴィオの瞳をしっかり見るために屈む。頑張って理解しようとしてるのか、ヴィヴィオはちょっとの間、呆けちゃった。

「どうかな?」

「・・・ママ?」

「はい、ヴィヴィオ♪」

そう応えると、「ママ・・・ママ・・・!」ヴィヴィオは泣き出して抱きついてきた。それから少しの間泣き続けたヴィヴィオを宥めた後、落ち着いたところで食堂へ向かってフェイトちゃん達と合流、そしてみんなで昼食を食べた。

†††Sideなのは⇒ルシリオン†††

なのはとヴィヴィオが期間限定の母子となった翌日。

「おはよう、はやて。同じ時間帯の朝食は久しぶりだな」

「はやて、おはよう♪」

シャルと一緒に朝食を摂るために食堂に来ると、はやてがすでに朝食を始めていた。だがはやての家族であるシグナム達の姿はない。この頃、あまり食事の時間が合わないな。

「おはよう、ルシル君、シャルちゃん。そやねー。なんや久しぶりやね」

「ヴィータ達はもう終えたのか?」

「うん。あの子らも忙しいしなぁ。ゆっくりと一緒にご飯食べたいもんやね」

はやての居るテーブルは、絶賛空席叩き売りとも言える空き具合。シャルと一緒に空いている席に座って、はやてと一緒に朝食を摂り始める。そこにフェイトとなのは、それにトコトコ歩くヴィヴィオの3人がやって来た。

「おーい。なのは、フェイト、ヴィヴィオ、こっちこっち♪」

シャルが手を振りながら3人を呼んだ。はやても倣って「一緒に食べよ♪」手を振った。3人はシャルとはやてが手を振っているのに気付いて、このテーブルへと真っ直ぐに向かってくる。フェイト達も椅子に座り、「おはよう」とそれぞれ挨拶を交わした。だが、最後の1人の挨拶には一同が驚愕した。

「おはよー、ルシルパパ♪」

「「ぶっ? ヴィ、ヴィヴィオっ!?」」

「ぶぅーーーーっ!!」

「な、なんやてーー!!?」

ヴィヴィオからこのテーブルに核弾頭が落とされた。私たちの座るテーブルに発生した大爆発の実質的な被害者は私とシャルの2人。シャルは人が少ないとはいえ人の目のある食堂で、盛大にお茶を噴いた。私はシャルと向かい合うように座っていたために、シャルが噴いたお茶を顔面に受けた。

(・・・なんだこれ・・・)

私はティーカップに口を付けたままの状態で完全にフリーズ。シャルの噴いたお茶が雫となってテーブルに滴り落ちていく。それにしても我ながらよくコーヒーを吹かなかったと思う。褒めてやりたいよ、本当に。核弾頭を落とした張本人であるヴィヴィオは「ん?」不思議そうな顔をしているな。はやては立ち上がって力いっぱい叫んだし、フェイトとなのははヴィヴィオの爆弾発言に未だにオロオロしている。

「・・・なぁ、フェイト、なのは」

「「は、はいっ」」

ハンカチで顔のお茶を拭いて、ヴィヴィオに何かを吹き込んだであろう2人の聴取を開始する。シャルは咽ながらも朝食を再開。私の顔面にお茶を噴出した謝罪は無しか・・・・おい。一言くらいは謝罪があっても良いだろうに。はやてもチラチラと視線を私たちに向けながら、ご飯を口に運んでいる。傍観に徹する、か。ヴィヴィオはピラフを美味しそうに頬張っている。ヴィヴィオ、頬にご飯粒が付いているぞ。

「さて、何故ヴィヴィオが私を、パパ、と呼んだかを教えてほしいな」

ヴィヴィオの頬に付いたご飯粒を取りながら2人を問い質す。

「え、え~と・・・それには事情がありまして・・・・」

「う、うん。昨日の夜のことなんだけど・・・・」

2人から語られたのは昨夜の自室でのことだった。保護責任者のことで、フェイトが自分もヴィヴィオの母親になったと言うようなことを言ったのが事の発端だった。なのはとヴィヴィオの後見人がフェイトになったという話だ。それで、2人がヴィヴィオのママになったんだよ、とここまでは本当によかった。
だが、ヴィヴィオが、パパは?と訊いたらしい。もちろん2人に答えられるわけがない。返答に窮した2人が咄嗟に口にしたのが、何を思ったのか・・・

――ルシルさんがパパ、はどうかな?――

――ルシルさんがパパだったら嬉しい?――

私を引き合いに出して来たのだ。ヴィヴィオはそれを聞いて、うれしい、と答えたそうだが・・・。

「おーい。君たちはもう少し考えろー」

「「ごめんなさい」」

フェイトとなのはがすまなさそうに頭を下げる。もう少し考えてほしいものだ。確かに現状でヴィヴィオに懐かれている男陣は私とエリオ(父というよりは兄だな)、そしてザフィーラ(論外)の3人?くらいだ。ここにユーノが居てくれれば、また変わっていたかもしれないが・・・。本当に惜しいぞ、ユーノ。この場に居れば、なのはと結ばれるかもしれないフラグが立っていただろうに。タイミングが果てしなく悪い。

「あの・・・それじゃあ、ダメ、ってことかな?」

「急にごめんね、ルシル。気を悪くしないでもらえると――」

「いいよ。ヴィヴィオが引き取られるまでの間の父親役、私が引き受けよう」

正直フェイトとなのはの2人の母親がいればよさそうだが、まぁ仕方ない。ヴィヴィオのキラキラした視線がさっきから・・・。私の心に突き刺さって・・・。

「いいの? 本当にいいの?」

「今更それはないだろ、なのは。ヴィヴィオが私を一度でも父親として見た時点で、私に断るという選択肢がなくなった。なら最後まで付き合おうじゃないか」

「ありがとう、ルシル! ヴィヴィオ、ほら、ルシルパパだよ♪」

「うん。ルシルパパ」

ものすごい可愛いらしい笑顔なヴィヴィオ。まぁこれはこれで悪くはないかもしれない。というかフェイト。なんでそんなに嬉しそうなんだ。私が困っているのが面白――なわけないか。

「ほぁ~、ルシル君がパパかぁ。それでなのはちゃんとフェイトちゃんがママって、なんやすごい家族構成やね」

はやてがようやく参加してきた。空気が緩んだところで参加とは、調子のいいことで。だがそれを言ったら、もっとすごいことになるぞ。

「あはは、なら私の義姉であるシャルは、おば――」

そこから昼過ぎまでの記憶がどこにもありません。何故ですか、シャマル先生・・・・?

「それはセインテスト君が悪いわねぇ~♪ メっ❤よ」

だそうだ。
 
 

 
後書き
やっぱり成人男性キャラがSTRIKERSに登場すると、ヴィヴィオの父親になるというのが王道のような気がしてます。
ルシルもそんな一人だったりしますし・・・。

 
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