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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep2古代遺物管理部“機動六課”

†††Sideフェイト†††

私となのはが見守る中、シャルは“キルシュブリューテ”で“レーガートゥス”と呼んだ眼を片っ端から斬り捨てていく。そのうえ自分に向かってくる砲撃をも“キルシュブリューテ”で斬り裂いていっている。でも次第に反射砲撃だけでなく、小さい眼からも砲撃が放たれ始めて、一体どれだけの砲撃が放たれているのか確認できない。シャルが『「ルシル! 援護射撃!」』ってルシルに向けて念話と口頭両方で叫んだ。

『了解』

――燃え焼け汝の火拳(コード・セラティエル)――

ルシルからの返答はたった一言のみ。次の瞬間、シャルを狙っていたいくつもの砲撃が、貨物車両から放たれた細い蒼炎の砲撃によって全てかき消された。あの細められた炎熱砲撃には一体どれだけの魔力が籠められているんだろう。たぶんだけどSSは超えてる。だって鳥肌がすごい。ビリビリ肌に感じた圧倒的な魔力。そんな膨大な魔力を、魔術を連発できるなんて・・・少し逢わなかった期間にすごい成長してるよルシル。

「よし! 殲滅完了っと」

シャルは“キルシュブリューテ”を消して大きく背伸びをした。まだいくつもの眼が残っているのに、そのリラックスしているシャルを見て唖然とする。

「そんな顔しないの。もう終わってるから大丈夫」

「「え?」」

シャルの言葉の通りにすでに全てが終わっていた。ガラスが割れたような音を立てながら大きい眼が砕け散っていったのだ。シャルは、私となのはが知覚できない速さですでに大きい眼を破壊していた。それに続くようにして小さいのも次々と砕けていく。

「それじゃ改めて久しぶり。なのは、フェイト」

シャルが優しく微笑んだのを見て、ようやく緊張から解き放たれた。私となのはは顔を見合わせて、2年前に約束したことを、ここでする。

「「おかえり!!」」

私たちの、おかえり、を聞いたシャルは少しだけボケっとしたあと、「ただいま!!」って、すごく可愛い笑顔で応えて私となのはに抱きついてきた。シャルの懐かしい香りと温かさ。うん、おかえり。シャル。ルシル。

†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††

罪眼レーガートゥスの殲滅を確認して、改めてリイン達に向き直る。

「さてと、よく頑張ったなみんな。少しばかりだが見せてもらった。あんな小さかったエリオがこんな立派になっているなんて、私は嬉しいよ。それにキャロも。なかなかのサポートだったぞ。フリードリヒも頑張ったな」

エリオとキャロ、そして小さな竜フリードリヒの頭を撫でる。フェイトが保護してきた時とは大違いだ。エリオは良い面構えになっているし、キャロも真っ直ぐな目になっている。2人は少しボケッとしたあと「はい!」と力強く応えてくれた。

「リインもスバルも頑張ったな」

「はいですっ!」

「そ、そんなあたしは特になにも・・・」

リインは大きく返事をして、スバルは少し照れたような仕草で呟いている。私は遅れて来たもう1人の少女へと視線を向ける。ティーダ一尉の身内と思しき少女だ。

「君とは初めまして、だな。ルシリオン・セインテスト・フライハイトだ」

「は、はい。ティアナ・ランスター二等陸士です。あの、管理局にいた頃のセインテスト一等空佐のご活躍は・・・え?」

彼女が敬礼をしようとする前に右手を差し出し、「ダメだろうか・・・?」握手を求める。少し戸惑っていたようだが「あ、いえ! ありがとうございます!」ティアナはきちんと握手に応えてくれた。やはりこの子は殉職なされたティーダ・ランスター一等空尉の妹みたいだ。

「ありがとう。それとそう堅くならなくてもいいよ。私はすでに管理局員じゃないしな」

ティアナは若干困惑した様子で「あ、はい」と小さく頷いた。あはは、さすがにいきなりは無理か。

「ルシル!」「ルシル君!」

とそこに、フェイトとなのは、そして超御機嫌なシャルが合流する。シャルは久々になのは達と逢えたことで、頬が上気していて満足気な顔をしている。ほら見ろ。やっぱり逢って良かったんだよ。あのままなのは達と逢わずに契約を執行し続けていたら、まず間違いなくシャルの心は病んで、壊れていただろう。そう、かつての私のように。

「久しぶりフェイト、なのは。元気そうでなによりだ」

車両の上へと降り立った2人に言葉をかける。2人はお互いを見合わせて同時にある一言を口にした。

「「おかえり!」」 

一瞬なにを言われたか理解できなかったが、少しして頭の中に浸透する。おかえり。それは2年前にシャル達が約束したことだった。ならばそれに応えなければならないだろう。

「ああ、ただいま」

その後、私たちは機動六課の隊舎へと案内された。

†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††

私とルシルは、はやてがリーダーを務める機動六課、その隊舎の部隊長室へと案内された。ここに案内されるまでに隊舎内ですれ違う局員みんな私とルシルを見て一瞬の驚愕、そして「お疲れ様です!」と敬礼をしてくる。
私とルシルが辞めてもう2年になるというのに、未だに私たちのことを慕ってくれるらしい。歩いてる最中に「憶えてくれてるんだね」って呟くと、フェイトが「だってまだ2年だから。2人はすごい人気だったし、そう簡単には忘れられないよ」と笑う。忘れられていない。それが嬉しかった。私たちは、確かにここに居たってことが判る。

「さて、それじゃあシャルちゃん、ルシル君、おかえり。そしてようこそ機動六課へ。それでどないや、私の部隊の感想は?」

部隊長室に備え付けられたソファに腰をかける私たちは、なのはとリインが戻って来るまでの間に世間話をして時間を潰すことになった。

「すごいよホントに!」
 
「私もすごいと思うぞ」

素直な感想を述べる私とルシル。気になっている過剰戦力に関してのことは今は何も聞かないでおこう。きっと何かしらの理由があると思うから。それに、もう管理局の人間じゃないんだし。そういった事情に踏み込むわけにはいかない。

「そういえばルシル。一人称・・・“私”に戻したんだね」

「ん? あぁ駄目だったか?」

「あ、ううん、そうじゃないんだけど、初めて逢った時のこと思い出したんだ。だからかな、なんて言うか上手く説明できないんだけど・・・懐かしい」

「・・・そうか。ああ、そうだな」

確かフェイトがルシルの一人称を“俺”にさせたって話だ。それが会わない間に“私”に戻っているから気になったんだろうね。私としては、ルシルはずっと“私”だったから。逆に“俺”の方が違和感ありありだった。

「あ、でも1つ気になったんだけど、どうしてなのはとフェイトの魔力が低いの?」

私はもう1つ気になっていたことを訊いてみる。それを聞いたはやてとフェイト、それにルシルまでが目を丸くした。あれ? 私って変なこと言ったっけ?
 
「えっとシャル、1つの部隊のおける魔導師ランクの総計規模が決まってるの・・・」

「知らなかったのか?」

フェイトとルシルが信じられないって顔で見てくる。見るとはやても似たような顔だった。

「そやから隊長陣の私やなのはちゃんにフェイトちゃん。シグナムとヴィータもリミッターが掛けられてるんよ。ちなみにデバイスにも出力リミッターが掛けられとるんやけど・・・・」

はやての説明に私がどれだけ知識がなかったか思い知る。それでよく三佐にまでなったな、と自分自身が信じられない。だってほとんど流れに任せて~って感じだったし。

「し、知らなかった。でもそれじゃあ私も入っていたらどうなっていたわけ?」

私のランクがどこまで下げられるのかが気になって聞いてみた。

「そやねぇ、当時のシャルちゃんの場合は6ランクくらい下げてもらわんとアカンな」

「6ランクって・・・Cまで下げられるの?」

そこまで下げられるのはさすがに遠慮願いたい。私の魔法や魔術は全てA+以上の魔力を必要としている。単純な身体強化ですらBランクが必須だというのに、それをCまで下げられたら、それこそ何も出来なくなってしまう。まぁ相手が人間だったら元からある身体能力だけでも十分に無力化できるけど・・・。

「お待たせー!」

「お待たせですー!」

中央ラボにまで行っていたなのはとリインが帰ってきた。ヘリポートから急いで戻ってきたみたいで、なのはは少し息を切らしている。それから少しなのはを休ませてから話の本題に入る。

「それじゃ本題に入ろか。シャルちゃん、ルシル君、あの眼のこと話してくれるか?」

はやて達が仕事の顔となった。さっきまでの柔らかな空気が重くなる。そっか。あのはやてがそんな顔になっちゃうんだ。良いなぁ、成長できるって。

「・・・アレはレーガートゥスと呼ばれる魔力の塊で、半自律型の使い魔だ。一番重要な話としては、アレにダメージを与えることが可能な術はただ1つ」

ルシルが神器・“グングニル”を具現させて手に取る。初めて“グングニル”を見たリインはポカンとしたあと、「キレイですー!」と言ってはしゃぐ。久しぶりに見たなのはとフェイトとはやては、最初は平然としていたけど、内包されている魔力量に気づき目を見開いた。以前までは形を似せただけのレプリカだったけど、今ルシルが手にしているのは正真正銘の“神槍グングニル”だ。内包している魔力に差があるのは当然のことだ。

「私とシャルが持つ神器と呼ばれる武装、もしくは魔術の2つしかない」

そう、だから私もさっきは“トロイメライ”を使わずに“キルシュブリューテ”を使った。レーガートゥスもまた魔力(厳密に言えば魔術師と魔導師が使うものとはまた別)と神秘の塊だ。神秘のない魔法では傷1つとして付けられない。

「えっと、つまりレーガートゥスは、ルシル君かシャルちゃんにしか壊せないってこと?」

「うん、そうなるね」

なのはが首を傾げながら訊いてきたから私が答えた。ハッキリと断言したことで、なのは達の顔に落胆の色が現れる。そんな中、ルシルは静かに“グングニル”を蒼く光る羽根のように散らせていた。その“グングニル”の綺麗な散り様に、リインが感嘆の声を上げて喜んでいる。可愛いな~、リイン。おっとと。ほにゃっとしてる場合じゃない。隣に座るルシルにリンクを通す。

『ルシル、レーガートゥスが気になる。黙って見過ごせないよ』

『ああ、判っている。これは調査する必要があるな』

さすがにこれを放っては置けない。レーガートゥスは“ヤツ”が使役する使い魔だ。この世界に“ヤツ”が居るのだとしたら、何としても・・・絶対殲滅しないといけない。

「なぁシャルちゃん、ルシル君、よかったら力を貸してくれへんか? もしその話が本当やったら、私たち魔導師やと太刀打ち出来ひんいうことや」

「そ、それは大変ですー!!」

はやてから協力が申し込まれた。なのはとフェイトも同じ意見なのか、私とルシルを見て頷いた。私はその協力について少し考える。ガジェットとともに現れたとなると、“ヤツ”がガジェットを操る者と何らかの関係を持っているのかもしれない。なら機動六課と行動を共にすれば調査しやすいはずだ。はやて達の仕事もちょっと手伝えるかもしれないし。

「ルシルの意見は?」

「私としては協力関係はいい考えだと思うぞ。レーガートゥスがガジェットと行動を共にしていたのなら、今回の事件を追っていけばレーガートゥスの主へと行き着ける可能性が大きいしな」
 
ルシルも私と同じ考えだった。無駄に労力をつぎ込まなくても、なのは達と一緒に行動すれば向こうから会いに来る。なのは達と一緒にいられる、“ヤツ”の手がかりを得られる、まさに一石三鳥というやつだ。えへへ♪

「決まり。私の剣とルシルの槍、今一度、みんなのために振るわせていただきます」

「よろしく頼む」

なのは達と協力、悪く言えば利用することになってしまうけど、こればかりは許してほしい。“ヤツ”がこの次元世界に間違いなく来ている。そうなれば神秘のない魔法を使う魔導師たちは成す術なく“ヤツ”に殺されてしまう。
ううん、神秘が扱えたとしても、ただの人間に勝てるわけがない。それだけは何としても阻止しなければならない。もしなのは達に指一本でも触れたりしたら・・・ふふ。どこまでも追いかけ、追い詰め、さんざんボロボロにした後、メチャクチャに斬り刻んで滅してくれるわ。

「ちょっ、待ってシャルちゃん、ルシル君! 協力はこっちが頼んどるんやから、頭下げるのは私らの方や!」

はやてが立ち上がってそう言うけど、私たちの方もこれは必要なことだ。この頭を下げる行為には謝罪の意味も含まれているのだから。

「気にしない気にしない♪ あ、それより協力といえば私たちは民間協力者ってことかな? さすがに管理局員に復帰してこの部隊に配属、もしくは出向になったら、保有ランクの問題なんかでこの部隊に入れないよ私たち」

なのは達はこの機動六課に収まるためにわざわざリミッターまで掛けた。そこに私たちが入れば、1つの部隊における保有ランクを超えることになる。そうなればなのは達は、さらに魔力制限の追加を受けることになってちゃうはず。もちろん私たちも滅茶苦茶な魔力制限を受けることになるのは間違いない。

「ん~、そこんところはクロノ提督たちに掛け合ってみるわ。何せ相手を倒せるんがシャルちゃんとルシル君だけやとなると事情も変わってくるし。だから、たぶん何らかの方法で2人には六課についてもらうことになると思う」

はやてが思案顔になって腕を組んだ。確かメールで読んだけど、クロノとリンディさん、そして騎士カリムがこの部隊の後見人っていう話だ。さすがにはやての独断では決定できない事由だとは思う。だからクロノ達に掛け合うということなんだろうね。でも最終的にはお世話になるらしいけど・・・。

「ということは、またシャルちゃん達と一緒に過ごせるってことだよね? そうだと嬉しいなぁ。ね、フェイトちゃん」

「うん、また一緒にいられると思うと嬉しい。いっぱい話したいこととかもあるから」

なのはとフェイトはそう嬉しそうに話している。うんうん、私としても嬉しいよホントに。
 
「話聞かせてもらってありがとうな。そんじゃこれで一応解散ってことでええな。リインは、シャルちゃんとルシル君を空いてる部屋に案内したって」

「はいですっ!」

「ちょっとはやて、まだ決まっていないのに私たちを隊舎においていいの?」

いくら私たちがそれなりの管理局員だったとはいえ、今は完全に民間人だ。 そんな私たちを管理局施設に置かせるなんてまずいんじゃないかな?

「でもシャルとルシルって寮暮らしだったよね。今から泊まれる宿泊施設を探すのも大変だろうし、今日はここに泊まった方がいいよ」

「「あ」」

ルシルと2人して間抜けな声を出す。そうだった。もう帰る場所がないんだった。私だって一応は女だ。さすがに野宿なんてのは絶対に嫌だ。それに・・・

【元管理局員フライハイト三等陸佐、同セインテスト一等空佐の二名が公園内で野宿しているところを、地区内の陸士部隊に発見、保護した】 

なんてことになったら死にたくなる。というか本気で死んでやる。そんな最悪な未来を回避するために、ここはお世話になるしかない。

「決まりだね。それじゃシャルちゃん、ルシル君、またあとでね」

「ルシル、シャル、あとで一緒にご飯食べようね」

そう言って、なのはとフェイトは部隊長室をあとにした。それに続いて私とルシルも、リインに空き部屋へと案内された。もちろん私とルシルは別々の部屋。姉弟とはいえ当然のことだ。で、夕飯までは私に用意された部屋でルシルとのんびり、とはいかなかった。3時間くらいしてはやてに呼ばれた私とルシルは、再び部隊長の部屋へと赴いた。そこには、懐かしい顔ぶれが揃ってた。

「久しいなフライハイト、セインテスト。しかしお前たち、しばらく見ん内にまた腕を上げたようだな」

「おい、セインテスト。お前、ちょっと逢わねぇうちにSSSランクにまでなってたんだな。どんだけだよ」

「お久しぶりフライハイトちゃん、セインテスト君」

八神家の面々、守護騎士ヴォルケンリッターが揃っていた。

「みんなも元気そうでよかった」

「ああ、久しぶりだ。それにしても相も変わらず小っさいな君は。ちゃんと食べているのか?」

「うっせぇっ!! テメェだって相変わらず女みてぇなツラしやがって!! もういっそのこと女になっちまえ!! バーカ!!」

「い゛っ!?」

ルシルが余計なこと言うものだからヴィータに脛を思いっきり蹴られた。痛がるルシルを尻目にヴィータがソファに座り、偉そうに踏ん反り返っている。

「それで、私とルシルをここに呼んだ理由は何?」

ルシルはもう放っておいて本題に入らせてもらおう。だからはやてにそう訊ねると、部隊長室の中央にモニターが現れる。

『久しぶりだなシャル・・・・ん? ルシルは何をやっているんだ?』

モニターに映ったのはクロノだった。すっごい久しぶり。だってメールすらも送ってこなかったし。奥さんのエイミィは送ってくれたのにさ。

「放っておいていいよ、クロノ。それよりおめでとう、子供生まれたんでしょ」

「お・・おめでとう・・・クロノ・・・」

『あ、ああ、ありがとう』

私に続いてルシルも脛をさすりながら祝辞を述べた。クロノは少し照れている。おめでたいことなんだから照れなくてもいいのに・・・。

「私たちに用があるというのは、クロノね」

『ああ、はやてからの報告は受けた。レーガートゥス、だったな。本当にアレは魔導師には倒せないモノなのか?』
 
真剣な面持ちでクロノがそう訊いてきた。私たちはソファへと腰かけ、話し合いをする姿勢を取る。。

「そうだ。アレに対抗するには、私かシャルの神器と魔術、その2つしかない」

ようやく痛みが引いたのか、ルシルも真剣な面持ちで答える。さっきまでの情けない顔がウソみたいだ。

『やはり、か。君たちの魔術と同じような神秘、というやつなんだな』

「そういうこと」
 
『なんてことだ・・・。君たちの今後の予定に関してなんだが、はやてから聞いたところによると、しばらくはミッドに留まってくれるとのことだが・・・』

クロノはため息を吐いたあと、思い出したかのように私たちの今後の予定を訊いてきた。そんなのもちろん決まっている。

「そうだよ。私とルシルはしばらくミッドに滞在するつもり。だってレーガートゥスの一件が終わるまでは離れられないよ」

「そういうことだ。罪眼(アレ)を全て・・・操る者も例外なく打ち据えないとゆっくりと出来ない」

“ヤツ”から話を全て聞きだし、そのうえで抹消しなければミッドが滅ぼされかねない。それが終わるまでは他の契約なんてしていられない。というか“ヤツ”のことが最優先されるはず。だから他の契約が来ることはない・・・と思う。

『そうか、それは助かる。では君たち2人には、これからしばらく機動六課で民間協力者として働いてもらいたい。それからもう1つ。君たちの魔導師ランクのことだが、さすがにSSSとなるとまずい。だからSSランク、出来ればS+あたりで行動してもらいたい』

クロノからの提案はまぁ理解できる。確かにSSSランクが2人、1つの部隊に居るというのは避けたいだろうなぁ。いくら正規の局員ではないとはいえ、そんなのが地上で活動していたら、おそらく地上本部の実質的なトップ――レジアス中将が黙っていないはずだ。あのおっさん。平和への気概は判るけれど、ちょっと強引すぎるんだよね。最悪、押しつけの正義は偽善にも悪にもなっちゃうというのに。

「了解。でもレーガートゥスとその操り手が現れたら一切手加減しないから」

「まぁ出来るだけ派手なことにならないよう気をつける」
 
『ああ、よろしく頼む。はやても機動六課を頼むぞ』

「了解です」

クロノとの久しぶりの会話は仕事関連だけとなった。それも仕方ないか、タイミングが全て悪すぎた。“アイツ”、絶対許すまじ。

「それじゃあ、こんな時間やし夕御飯食べに行こか。なのはちゃん達も待っとると思うし」

はやての一言で、私のお腹が「くぅ~」と鳴った。あまりの恥ずかしさで赤面、みんなの方を見るとニヤニヤと笑みを浮かべていた。

「し、仕方ないじゃない! だって今日はまだ何も食べてないんだからっ!」

「はいはい、そんじゃ食べに行くで~」

半ばはやてに押される形で食堂へと向かった。

†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††

クロノとの協定を終えたあと、はやて達に食堂へと案内された。そこにはすでにフェイトとなのは、それに新人だというスバル達が揃っていた。私とシャルは用意されていた席へと座り、今日初めての食事を開始した。シャルはスバル達フォワード陣と同じテーブルで、私はフェイトたち隊長陣とだ。そして久しぶりの大人数での食事に、シャルは本当に嬉しそうにしている。

「――それじゃあルシルさんとシャルロッテさんもこれから六課で働くんですか?」

「ええ。あぁそれと私のことはシャルでいいよ。シャルロッテなんて長いから面倒でしょ?みんなもシャルって気軽に呼んでくれていいから、その方が私も嬉しいしね」

「はい、シャルさん!」

「よろしいっ!」

スバルの問いにそう答えたシャルは、自分も愛称で呼ぶように言った。それにすぐさま応えるスバルもすごいな。順応力が高いというかなんというか。

「まぁそういうわけだからスバル、エリオ、キャロ、ティアナ、これからよろしく頼む」

「「「「はいっ!」」」」

私の軽い挨拶に4人は元気よく応えてくれた。ふふ。昔の事を、シエルやカノン、“戦天使ヴァルキリー”を思い出す。だが思い出に浸る・・・ことはせず、まずは食事を冷めないうちに済まさないといけないな。

「ねぇねぇルシル君」

「ん?」

なのはがわざわざ小声で話し掛けてきたから、小声で話す必要があるのだろうか、と思いつつ私も小声で応対した。

「ルシル君とスバルって知り合いだったの?」

「言われてみればそうだね。いつ知り合いになったの?」

なのはにつられてフェイトも小声になる。そういえば当時のことは何も言っていなかったか。

「管理局に入ってすぐの頃だったか、クロノに謀られて首都防衛隊に研修させられた際にスバルの母親、クイントさんに目を掛けられてね。よく拉致に近い形でナカジマ家に御呼ばれさせてもらったことがあるんだ。そこでまだ幼いスバルやギンガと顔見知りになったというわけだ」

あの頃を思い出しながらそう説明した。強く優しかったあのクイントさんには今も感謝している。しかしクイントさんはもういない。確か、俺がなのはを庇って墜とされた際に負った怪我を無理やり女神の祝福コード・エイルで治し、退院してすぐだったか。クイントさんが任務中の事故で亡くなったと知ったのは。そのときは信じようとしなかったのを覚えている。

「そうなんだ。ルシル君も大変だったよね、あの頃は・・・」

「クロノが半ば騙す形で、ルシルをいろいろなところへと研修させてたもんね」

「あはは、そやったな~」

「笑い事じゃないぞ本当に」

まったく、クロノにはいつも苦汁を飲まされたものだ。気がづけばあれよあれよと無限書庫から離れていったあの日々。あのときはクロノに会うたび愚痴を零していたな。今となってはいい思い出・・・・なわけがない。

「はぁ、思い出したら泣きたくなってきた・・・」

まぁそんなこんなで、私とシャルは機動六課へと席を置くことになった。これが楽しいひと時となるか、それとも辛いひと時となるか。シャルにとっては楽しいものであるように願わずはにはいられない。辛いものは、すべて私が引き受けるから。

 
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